LD分科会

たんぽぽ教室
第3回定例研 LD等分科会
「ADHD児 Aさんの指導を通して」
静岡市立清水興津小学校
たんぽぽ教室担当 佐野 裕美
ADHD児 Aさん(他校男子)との出会い
(小3~小6)
通級児童数の現状
1年
2年
3年
4年
5年
6年
合計
自閉症
0
2(1)
1
1
(1)
3
8(2)
ADHD
3
3(2)
2(1)
1
(1)
1
11(4)
LD
0
0
0
1
1
3
5
合計
3
5(3)
3(1)
3
3(2)
7
24(6)
・ 学区は、清水地区の清水袖師小より東・北の地区
・ 原則として週1回45分間の個別指導(月1回グループ活動)
・ 自校6名は、午前中の取り出し
・ 他校18名は午後の通級
Aさんが“楽しく生活できる子”になるために
在籍学級担任との連携
・ 通級指導の記録送付
・ 在籍校でのエピソード
・ 互いの指導を参観する
・ 個別指導計画の作成
・ 前後期スキルチェック
保護者との連携
・指導後の話し合い
・グループ活動の記録記入
・前後期2回の保護者学習会
/
・
・れん
・
・
医療機関との連携
医療機関の提案による
在籍校での子ども支援
会議
・自校のみ連絡ファイル
・
たんぽぽの指導
個別指導
・特性に合わせた指導
・ 意識を変える指導
・ ことばを増やす指導
グループ活動
・ コミュニケーション力を
育てる指導
ADHD
・ 3歳から医療機関に掛かり、
年長からコンサータを服用している。
・すぐに気が散り、やるべきことが時間内
になされない。
・ 些細なことでカッとなり、殴る、蹴る、かみつく。
・ 他の子から避けられるか、からかいの対象になる。
・ 優先順位がわからず、行動の段取りが立てられない。
自閉症
・ かんしゃくを起すと自分の非は全く認めず、相手を批判する。
・ 暗い所が怖い。
LD
・ 相手の言いたいことがよくわからない
ときがある。
・ 自分は面白がってやっていることが、周囲
・ 算数がとても苦手。
は引いている。
・ 字形が整わず、書く作業に時間
・ 多弁で偉そうにしゃべる。
がかかる。
・ 相手の気持ちを考えずきついことを言う。
・ 運動の不器用さがある。
たんぽぽ教室での個別指導
1.特性に合わせた指導
・ 1分間集中トレーニング(数+1)
・ プープー星人
・ あたましりとり(りんご→こおり→たこ→)
・ まちがいさがし
・ バラバラ あいうえお(ビジョントレーニング)
・ ことばあつめ→走って積んで
・ MIMの絵カードサイン
・ 折り紙
・ 段取り名人になろう
2.意識へのアプローチ
・ こんなときどうする?
・ 最近の自分について
・ 偉人物語(相手の挑発に乗らなかった野球チー
ムの例など)
・ グループ活動の反省
・ 担任の先生からのエピソード紹介
・ 担任の先生のスキルチェックで振り返る
・ 自分人生ゲーム作り
3.教科(算数)の補充
・ 在籍学級の授業に合わせた復習または予習
たんぽぽ教室のグループ活動
1.サーキット(在籍学級の中で必要となってくる運動の
力をつける)
・ なわとび
・ フラフープ
・ 鉄棒
・ 長縄
・ ボール投げ
2.発表(きき方・話し方の基本を身につける)
3.コミュニケーション(友達に声をかけ、同じ話題で話す)
・
・
・
・
・
自分の名前
学校
学年
係の名前、好きな遊び、楽しみなこと等
理由や説明
5・6月 名刺交換、友達紹介
(自分から声をかけ、一つ質問し、名刺や シールを交換する)
7.9月 おなじところさがし
(相手と自分の共通点を質問しながら見つける)
10・11月 同じ話題で話そう1
(同じ好きなものを見つけ、そのことについて質問する)
2.3月 同じ話題で話そう2
(同じ好きなものを見つけ、そのことをもとにやりとりを続
ける)
4.集団参加・ルールの理解(1)
5・6月 名刺づくり・名刺交換
5.集団参加・ルールの理解(2)
(決められたルールと時間の中で名刺を作り、全員と名刺交換する)
7.9月 ~から始まるリズムに合わせて
(ルールを理解し、自分の名前が呼ばれるかしっかり聞く)
10・11月 かけざんビンゴ
(ルールを理解し、友達と相談しながら、言う数字を決めていく)
クリスマスケーキ作り
(途中まで協力して作り、飾りつけは各自で行う)
2.3月 あたましりとり
12月
(ルールを理解し、始めの音で終わることばを考える)
(わからなかったら、友達にきく)
5・6月 じゃんけん島は、なかよし島
(仲間どうしで同じものを出すよう相談し、じゃんけんする)
7.9月 しっぽおに
(決められた枠の中で、自分のしっぽを取られないように、お
にから逃げる)
10・11月 ドッジボール
(内野チームと外野チームにわかれ、外野が1分間で内
野を当てる)
2.3月 風船バレー
(必ずチーム内でパスをしてから相手コートに打つ)
在籍学級担任との連携から
・
・
・
・
・
・
学級参観
個別支援計画(前期・後期)
毎回の指導記録を送付
担任からの返事(学級でのエピソード)
前後期に行うスキルチェック
子ども支援会議(教頭・担任・医療機関・通
級担当・保護者)
・ 通級指導参観
Aさんの学級担任の評価
100
80
集団参加
60
集会
40
整理整頓
20
5年生6月
感情
休み時間
3年生6月
4年生6月
0
掃除場面
・
・
・
・
指導中の支援
指導後の話し合い
グループ活動中の支援・記録と懇談会
保護者学習会(4月・11月)
6年生 Aさんの様子
集団行動
特別行事
保護者との連携から
6年生6月
授業参加
給食場面
今後の課題
・ 中学校側の理解
態度面(口答え、友達へのきつい口調、
目つき等)・指示理解の低さ(提出物の内
容、期限)・周囲のからかい
・ 教科により学習に対する意識の差があること
と、それに対応する保護者の疲労
○ 社会では積極的に発表し、素晴らしいひらめきを見
せた。
○ グループ活動の発表では1番に手をあげ、発表した。
○ 個別指導で自分について語れるようになった。
○ 5年生では1日に数回かんしゃくを起こすことも珍しくな
かったようだが、今ではほぼ毎日落ち着いて過ごしてい
て、成長を感じる。(6年担任より)
○ 運動会では応援団に立候補し活躍し、音楽会では打楽
器を担当し、成功体験を積んだ。
● 自分の非をなかなか認められない。 (6年担任より)
● 人を不快にさせる言動がまだある。 (6年担任より)
● 算数の授業になると途端に集中できなくなる。(保護者より)
1
質疑応答
○児童の見立てはどうか
・ADHDという診断である。
○医療機関との連携について
・学校とのケース会議を一回行った。
○家庭環境について
・一人っ子。
・父親は海産物会社の社長である。会話には出ない。
・母親はAさんを守っている。
○母子関係について
・母親には一目置いている。反抗的な態度は取らない。
○小5の担任について
・男性。1年生のときも担任している。
○現担任との関係について
・反発が無くなった。
○本人が中学校で頑張りたいことは何か
・サッカー。
・大学へ行って、お父さんみたいになりたい。
○グループ活動について
・6年生4人、5年生1人で行っている。
・穏やかな3人には、失礼な言動をする。 → 個別のときに指導する。
2
感想等
○担任の先生の評価(他者評価)が役立つ。
○ADHDと自閉症を併せもつ児童の見立て
・診断名だけでの判断はどうか。
・算数の何ができないのか。
・小さいうちに不器用さへのアプローチをする。
○中学校では、ADHD児の指導に一番困っている。
○ADHD児の中には、反抗挑戦性障害から行為障害になる子がいる。
・反抗挑戦性障害では、母親や女性の担任への反抗が見られることがある。
○保護者との連携
・親が変わることが大切 → Aさんの変化
・方法を話し合い、環境調整をする。(例…段取りが悪いことへの関わり)
○母親へは、「辛かったね。これから一緒に頑張ろうよ。」の声掛けが必要である。
○全部信じてあげることが大切 → 受け入れられる存在になる。
○褒めること
・母親に褒めてもらっているのか。
・褒めてもらいたいタイミングで褒めているのか。
○肯定的な見方を知らない。
○中学校側の理解
・中学校について、子どもに伝える。
・直接、担任に伝えていくことが必要である。
○まわりの子を変えていくのは大変である。自分が変わっていくとよいことを伝える。
○親子で対戦型のゲームを取り入れたらどうか。