知財訴訟とバリュエーション 金融・証券分野の経済分析 背景 上場企業の開示をめぐる状況は、市場からの要求水準が高まる一方、法的な責任がより強く意識されるようになり ました。かつては皆無であった証券訴訟が旧証取法改正以降増加し、適時開示等の問題に関わる西武鉄道事件やラ イブドア事件をはじめとする大型訴訟の判決で多額の損害額が認められるようになりました。このような証券価格 に関わる紛争は、合併等を通じた事業の再編やMBOにおける買取において適用される「公正な価格」の認定の問題 としても発生しています。最近は、インサイダー取引に関わる情報漏洩の問題が顕在化しており、インサイダー取 引や情報漏洩に関わる損害賠償の場面で株価の分析が必要になる場面も増加することが予想されます。金融商品の 販売に関しては、リーマンショックや為替相場の急激な変動等に伴い投資家に大きな損害が発生したこともあって 説明義務違反や適合性の問題を根拠とした損害賠償を請求する事件が急増しています。NERAは、金融や証券に関 わる様々な紛争・訴訟に係わり、先進的アプローチを用いた分析サービスを提供しています。 NERAの経済分析サポート NERAは、金融・商事訴訟において以下のような領域において専門性を有しています。 (1) 証券集団訴訟-NERAの専門家は、日米欧の数多くの金融・商事訴訟において、厳密で合理的な経済分析を 適用し、損害をはじめとする経済的事実の立証を支援してきました。このような専門的スキルや経験を活用 し、日本における金商法上の訴訟において以下のようなサポートを提供しています。 ①当局対応/②訴訟サポート/③相手側の主張に対する反論準備/④鑑定意見書/⑤裁判における証言 わが国においては、金商法第21条の2第2項により、虚偽記載に起因する損害は、虚偽記載に係る訂正情報 などの公表日の前後1カ月の平均株価の差額として推定することが認められています。ただし、同条第4項に よれば、被告が虚偽記載以外の事情によって株価が下落したことを立証した場合には、損害額が減額されま す。従来の訴訟では、ほとんどのケースで減額の抗弁が行なわれ、NERAによるイベント分析が複数のケー スで裁判所に提出されるなど実際の裁判への経済分析の適用が広がりつつあります。 (2) 株式買取請求訴訟ー事業譲渡、合併、分割、株式交換等に反対する株主は、一定の要件を満たせば、会社に 対して「公正な価格」で株式の買い取り請求をすることができます。NERAは、株式買取請求に関わる紛争 において「公正な価格」の分析を行っています。 (3) ブローカー・顧客間紛争-NERAは、ブローカー・ディーラー・投資顧問・ファンドマネージャーらと投資 家の間の紛争に関して経済学的な分析を提供してきました。NERAは、説明義務違反や過当販売のような申 し立ての検討を行うことで法的責任の有無を検証し、また、他の投資案を選択することにより得られていた 「なかりせば利益」の推定に基づく損害額の算定を行なっています。 (4) 逸失利益分析にもとづく損害賠償額算定-NERAは金融・商事紛争における損害賠償請求訴訟に係わり、逸 失利益の分析に基づく損害額の推定を行います。単に「前後」の比較をする損害額の算定は、必ずしも合理 的ではなく、損害の原因以外の経済・産業・規制等の変化が会社の事業に与える影響を考慮して損害額の算 定を行う必要があります。NERAは、計量経済学・統計学、経済学、会計学、ファイナンスの知識を事案の 事情にあわせて適用するオーダーメードのアプローチを用いて損害額の算定を行います。 (5) 金融リスクマネジメント-NERAは、会社や組織が直面しているリスクの定量的な分析を行います。NERAは 、個別のリスク項目間の相関関係やリスク項目のシナジー効果などを考慮して、会社や組織が直面するリス クを一括して評価することが可能です。クライアントは、リスクの大きさを理解し、総合的なリスク管理の 観点からどのようなリスク低減策をとるべきか、必要となる予算はいくらになるかなど、全体感をもったリ スク管理を行うことが可能となります。 主要実績例 NERAは1961年の創業以来、数百に上る証券訴訟において 経済分析を用いた損害算定などを支援してきました。日本 においては、虚偽記載、株式買取請求、インサイダー取引 などに関わる証券訴訟においてイベント分析を提供してき た実績を有しています。 (1) ワールドコム事件-米国の史上最大規模の損害額が争 われたワールドコム事件において、NERAエコノミス トは被告の金融機関より依頼を受け、被告の行為と損 害との因果関係や損害額について、様々なイベント分 析の手法を適用して経済分析を行ないました。NERA はまた、これらの論点についての相手側専門家の意見 書に対する批評を行ないました。同事件は2005年、 62億ドルの損害を支払うことで和解に至りました。 (2) サブプライム関連訴訟-サブプライム関連商品の価格 下落をめぐり、サービサー大手の金融機関を相手取っ て提起された複数の訴訟において、NERAエコノミス トは金融機関が採用した損失予測モデルやパフォーマ ンス評価方法などについて詳細な分析を行ない、サー ビサーの契約履行に問題がなかったかを検証しました 。本件はNERAの分析結果に沿った内容で和解に至り ました。 (3) ライブドア事件 -ライブドア事件において、NERAは 虚偽記載と損害との因果関係と、これに基づく損害額 の推定を含むイベント分析に基づく専門家意見書を提 出しました。東京地裁は金商法第21条の2第5項に基 づく裁量により損害額を決定しましたが、イベント分 析の手法が合理的な手法であることを認めました。 (4) インテリジェンス事件-インテリジェンスとUSENと の間の合併に際してインテリジェンスの少数株主は、 裁判所に対し株式価格決定の申立てを行いました。 NERAはイベント分析を行い、株価に外的に影響して いたと考えられるリーマンショックなどの効果を取り 除いた株価の公正な買取価格を推定しました。本件は 、イベント分析による株価補正が我が国ではじめて認 められた判例となりました。 (5) SEC v. Jon-Paul Rorech/ Renato Negrinインサ イダー取引事件-NERAはSECからの依頼を受け、ドイ ツ銀行とヘッジファンドであるMillennium Partners の間に生じたオランダのメディア事業会社であるVNU のCDS(Credit Default Swap)商品に係るインサイ ダー取引の疑いについて経済分析を実施しました。 NERAは、VNUの債券利回り格差(ボンドスプレッド )とCDSのスプレッド差の関係を分析し、その差の時 系列推移には、既存の学術的研究とも一致するような 一貫性があり、インサイダー取引とは一致しないと証 言しました。このNERAの経済分析の結果は、その後 の関連訴訟で頻繁に引用されるものとなりました。 (6) 金融機関によるインサイダー取引事件-近年我が国で はインサイダー取引に関わる情報漏洩の問題が顕在化 しています。NERAは、ある金融機関による情報漏洩 疑惑に関わり、情報漏洩によって生じたと考えられる 株価の変化や損害額の大きさを、報道資料、株価デー タ等を用いて、イベント分析やその他の計量経済学的 手法で分析しました。 (7) MF Globalの倒産によるブローカー・顧客間紛争ー ブローカー会社MF Globalが倒産し、MF Globalの顧 客とMF Globalの間で、清算対象となるMF Globalの 価値について紛争が起こりました。NERAは、顧客 側の依頼により、清算が行われる日と清算方法が決 定された日で清算価値が異なり、清算対象となる価 値は清算方法が決定された日に評価されるべきであ ると主張しました。裁判では、NERAの意見書が認 められて顧客側に有利な判断が示されました。 (8) イギリス大手リテール銀行の信用リスク評価ー銀行 顧客の債務に保険がかけられていない割合が高いた め、突然の金利上昇などのショックが多額のデフォ ルトを引き起こすリスクに敏感になっていたイギリ スの大手銀行の依頼を受け、NERAはクレジットカ ードの債務不履行リスクの分析を行いました。 NERAは時系列計量経済分析を実施し、失業率・住 宅ローン・金利などの要素が債務不履行に与える影 響を定量的に評価しました。 NERAとは NERA エコノミック コンサルティング( www.nera.com)は、経済学、ファイナンス、統計 学の原則を応用して、複雑なビジネス・法律の問題に 取り組むエキスパートで構成される、国際的に展開す るコンサルティング ファームです。NERA のエコノ ミストは、半世紀にわたって政府系機関や世界中の主 要な法律事務所、企業向けに戦略策定や調査研究、報 告書の作成、専門家による法廷証言、政策提言を行っ てきました。厳格な経済学の理論や客観性、実務の経 験をもとに、競争や規制、公共政策、戦略、財務・金 融、訴訟などから発生する問題に対応しています。 最先端のアプローチを適用し、明確で、説得力のある 議論を展開するNERA の能力や、客観的な分析結果を 提供することに対するコミットメント、サービスの質 や独立性についての高い認知度は、クライアントから 高く評価されています。世界最大規模のエコノミック コンサルティング ファームとして、NERA は信頼性 の高いリサーチ部門を有し、エコノミストと各分野の 専門家により構成されるNERA のチームは、理論の一 貫性や高度な分析スキルを背景に、顧客からの信頼を 得ています。NERA はニューヨークにメインオフィス を置き、北米や欧州、アジア太平洋地域に25 カ所以 上の拠点を展開しています。 お問い合わせ 石垣 浩晶 東京事務所代表/ヴァイスプレジデント 03-3500-3295 [email protected] 金子 直也 コンサルタント 03-3500-3294 [email protected]
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