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●サンヨー ・ プロダクト ・ トピックス●
薄膜化を実現し省燃費や省エネに貢献
意匠性の高いデザインを可能にする
自動車内装表皮材用ウレタンビーズ『メルテックス LF
LF』
』
自動車のインパネに(写真提供 = 日経 Automotive Technology)
自動車内装で最も目に付く場所は、やはり
スピードメーターなどの計器類が並ぶインス
トルメントパネル︵インパネ︶でしょう。イ
ンパネは、ポリプロピレン︵PP︶など硬質
の樹脂を射出成形して作られる感触が硬い
ハードインパネと、PPなどからなる基材、
クッション性を有するフォーム層、感触のよ
さを得るための表皮材の三層構造で構成され
るソフトインパネに大別されます。今回の
テーマは、ソフトインパネなどに使用される
自動車内装表皮材用の材料です。
スラッシュ成形
ソフトインパネ用表皮材の代表的な製造法
には真空成形法とスラッシュ成形法があり、
意匠性やデザインの自由度の面でスラッシュ
成形法が優れています。スラッシュ成形法と
は、一一㌻の図に示すように微粒子状の樹脂
を加熱した金型に流し込んで樹脂を溶融させ、
均一な厚みの表皮を作る成形法です。スラッ
シュ成形用材料としては、耐傷つき性が良好
なポリ塩化ビニル︵PVC︶が主流でした。
しかし環境への配慮から脱PVCの機運が高
まり、熱可塑性ポリオレフィンが検討されま
したが、成形性や物性に課題があり、広く採
用されるまでには至りませんでした。
そこに登場したのが、三洋化成が長年にわ
たって蓄積したウレタン技術を総動員してこ
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2014 夏 No.485
表皮材
フォーム層
基材
ソフトインパネの断面
『メルテックス LF』
れらの問題を解決したスラッシュ成形用ウレ
タンビーズ
﹃メルテックス﹄
シリーズです。﹃メ
ルテックス﹄の特長は、①粉体流動性や溶融
性が良好で、複雑な形状のインパネ金型でも
成形性に優れる、②弾性に富みソフト感があ
る、③PVCと比較して耐熱性、耐光性に優
れ、経日変化が生じにくいなどで、二〇〇〇
年にトヨタ自動車の﹁セルシオ﹂のインパネ、
ドアトリムなどに採用されて以来、採用車種
が急速に広がりました。
しかし、二〇〇八年のリーマンショックに
端を発する世界経済悪化の影響を受け、コス
ト面から再びPVCに回帰するメーカーも出
てきたことから、コスト面に対応しながら画
期的な特長を備えた新製品として開発、上市
されたのが﹃メルテックスLF﹄です。
﹃メルテックスLF﹄
﹃メルテックスLF﹄は、従来の﹃メルテッ
クス﹄シリーズの特長を備えています。さら
に最大の特長は、分子の構造を工夫すること
で樹脂強度を従来の二倍と大幅に向上させた
ことです。このため表皮の厚みを約半分にで
き、材料の使用量が半分で済むことから、従
来よりもコストを低減できます。こうしてイ
ンパネ、ドアトリム、コンソールボックスと
いった表皮材全体の軽量化を実現して省燃費
に貢献します。加えて、成形コストの低減も
三洋化成ニュース
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➡
▲
■スラッシュ成形法の工程
樹脂粉末
表皮材
表皮材
メルテックスLF 他社TPU(粉砕) PVC 変性PVC
意匠性
2
コスト
耐久性
5
❹ 溶融後、冷却
❺ 脱型
❸ 回転
❷ 樹脂粉末をセット
❶ 金型加熱 (200∼250℃)
良好 不良
5 1
ステッチ加工
触感
➡
➡
■『メルテックス LF』の特性バランス
4
3
1
0
可能にしています。というのは、PVCは
二三〇∼二五〇℃で成形するのに対し﹃メル
テックスLF﹄は二〇〇℃程度で成形できる
からです。表皮材は成形後に手で剥がせる温
度まで冷やし、そして再度加熱して成形、冷
却を繰り返します。このサイクルでは、温度
差やサイクル時間が少ないほど省エネが可能
になり、また熱履歴が少ないことは金型の寿
命を延ばすことにもなるため成形コストが低
減できるというわけです。
現在のインパネは、助手席側のエアバッグ
が飛び出す開裂ラインを表皮材の裏側だけに
入れたインビジブル加工が主流になっていま
す。インビジブル加工では開裂ラインの部分
は薄い表皮一枚でつながっているため、長期
間の使用でも耐久性が強く開裂ラインが裂け
ない強度が要求されます。一方、PVCのイ
ンパネではソフト感を出すために大量の可塑
剤が使用されますが、可塑剤は揮発したり
クッション層にしみこんでしまうので硬く
なったり、反りや割れが生じます。
意匠面では本革ステッチ︵縫い目︶のよう
な疑似ステッチ加工や、実際にステッチ加工
を施したリアルステッチをきれいな仕上がり
で実現します。高強度でソフト感のある﹃メ
ルテックス﹄の優位性ははっきりしています。
三洋化成は、これからもユーザーニーズに
応えた製品開発に注力していきます。
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2014 夏 No.485
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