量子力学の示す不可思議な世界構造 第1章 はじめに

量子力学の示す不可思議な世界構造
2年 4組 竹部 航
所属:物理系ゼミ
第1章 はじめに
第1節 テーマ設定の理由
現在自分たちの履修している古典力学とは大きく異なる世界観を示す量子力学について出
来るだけ深く理解し、古典力学との矛盾点について考えてみたいと思ったから。
第2節 研究のねらい
現代物理学を自分なりに正しく理解・解釈し、そのうえで古典力学と比較・評価を行うこ
と。また古典力学と現代物理学との共通点も発見することができたらいいと思う。
いまだに答えの出ない量子論についての謎に対する自分の考えを発表する。
第3節 研究の内容と方法
1
研究の内容
・古典力学の示す世界観について
・
「量子」というものの性質
・量子の性質を踏まえた量子論による世界観
・量子のふるまいを示す方程式
・量子論と古典物理学の矛盾とそれに対する自分の考え
2
研究の方法
専門書による学習やインターネット上の信用するに値する情報などによって進めて
いく。
第2章 研究の展開
第1節 古典力学の示す世界観
現在私たちの学習している物理は古典物理と呼ばれるものである。ご存じの通り、ある
時間 t における物体や波の状態はニュートン力学においては速度 v と質量 m が分かればあ
らゆる時間における物体の状態が分かることになる。
(ラグランジュの運動方程式やハミル
トン方程式などもあるが、結局表し方が異なるだけでこれらは等しい)これはつまり、未
来の事象は計算によって導くことができ未来はすでに決まっていることを示している。こ
れを決定論という。有名な例として「ラプラスの悪魔」という思考実験がある。これはと
ても簡単な話で、仮に『ある時間におけるこの世界のすべての物質の状態がわかりそれを
解析する能力をもつ生物が存在するのであれば、その生物は未来と過去の任意の時間のす
べての物質の状態を知ることができる。
』というものだ。このように、原因がわかれば結果
を予測することができるという物理の考え方を因果律という。
第2節 「量子」というものの考え方
先ほどまでの物理学は古典物理学といわれるものであった。古典物理は私たちの日常、
すなわち私たちの生きるスケールを記述するにほとんど十分であった。しかし1900年
代になって物理は私たちの見慣れないミクロの世界へと進んでいった。ここで発見された
のが量子である。この量子の存在が予測されたきっかけは光の存在である。光は古来より
波の性質があることが分かっていた。しかしさまざまな実験の結果によるとなんと粒子の
性質も持ち合わせていることがわかった(具体的な粒子性はエネルギーの広がり方。均等
に広がるのか無数の塊が散乱するのかによって粒子性をもつのか波動性を持つのかが変わ
る。光電効果がよい例)
。ここで提唱されたのが「光は粒子であり、波でもある」という考
え方だ。この時点で明らかにおかしいのであるが、ミクロの世界では私たちの常識は全く
通じないのでどうしようもない、これはこういうものだと飲み込むしかない(現時点では)
。
これの根拠は実証実験によるものであり、否定することはできないのである。ここでも
う一つ、私たちの常識を超えている性質がある。量子は他の粒子と相互干渉していないと
き波としてふるまい、相互干渉すると粒子としてふるまう。しかし波は存在に広がりを持
つが粒子とはある一点に存在が収束しているのでこれはどうしたらよいのか、というと波
として広がりを持っていたものがある一点に「確率的に」収束するというのである。ちな
みに波として広がっていた時の波の腹の部分では存在確率があがり節の部分では確率0と
なる。
第3節 量子論のあらわす世界観
ここで話をまとめてみると、どうやらある時間の粒子の位置というのは確率的に示され
るようだということがわかってきた。とするとこれはつまり「未来は決まっておらず、観
測するまで未来は分からない」という結論へと導かれる。これは古典力学に矛盾をきたす
ように見えるかもしれない。しかし実際は「古典力学は、量子力学の近似値を示す物理学
である」というのが現在の解釈だ。実際、量子力学が導く確率のもっとも高い確率の部分
をもとに物理法則を組み立てれば古典力学と同値になる。このような例は不思議ではない。
皆もよく知る通り、物理では多くの近似を行ってきた。だがそれはマクロな視点だから無
視できるのであってミクロな視点からでは無視することはできない、ただそれだけのこと
なのだ。
第4節 現代物理を表す数式
ここまでは現象やそれの解釈を説明してきた。だがそれだけでは物足りない方も多いと
思うので、ここでは量子力学の基礎の方程式であるシュレディンガー方程式の成り立ちを
説明していこうと思う。前述した通り量子の確率の広がり方は波である。よってまずは古
典力学の波の方程式を復習かつ発展させていこうと思う。
最初に波の媒質についてのニュートンの運動方程式を立ててみる。
強く張った弦を伝わる横波を考える。横波とは,弦に対して垂直に弦が変位し,それが
弦に沿って伝播する波である。弦の単位長さあたりの質量を σ,弦の張力を T とする。弦
の長さの方向に x 軸をとり,それに垂直な変位を u で表す。変位 u は位置 x,及び時間 t
の関数 u(x, t) である。
図1 に示すように,
時刻 t に,弦の位置 x にある媒質である点 P が u(x, t) だけ変位して点 P1に,そこから
微小な距離 Δx だけ離れた位置 x + Δx にある点 Q が u(x+Δx, t) だけ変位して点Q1に移
ったとする。
点 P と Q において弦が x 軸となす角を,それぞれ,θP と θQ とする。
2点 PQ のあいだの微小部分の運動方程式を考える。
この部分にはたらく力は弦の張力で,微小部分の左端 P では弦の接線方向左下向きに T
右端 Q では弦の接線方向右上向きに T である。
この部分の質量は σΔx,加速度は時間についての2階微分であるので,x 軸方向の運動
方程式は
σΔ
(
2
)
2
=
である。微小変位に対しては角 θQ,θP も微小であるので,上式の右辺は
=(
=(媒質の接線の微小変化)=
) (⊿ )}×⊿
(
)
⊿
=(媒質のグラフの変位についての2階微分)
と表せる。よって,運動方程式は
(
σ
) 2
(
)
2
この式はこれを満たすような関数 u(x,y)は波の方程式であるということを意味する。
これは波動方程式(wave equation)と呼ばれる。この波動方程式は,弦の微小部分にニ
ュートンの運動法則(第2法則)を適用して導かれ,従って,時間についての2階微分
(∂2u/∂t2)を含む。これは加速度を表す。
ここで先ほどの波動方程式を満たす波の方程式 u(x,t)をたてるとき、u(x,t)の値は媒質の
もとの位置からの変位を表し、その波の角速度ωと変位 x と時間 t の間には次のような関
係のような場合がある。
(
)
A
2π (
λ
)
(1)
定数部分を簡単にして
※k=2π/λ(kは波の波数)
(
)
A
(k
ω)
(2)
k=
2π
λ
ω=2πv(vは振動数)
k=
ω
vλ
これが成立するようなとき、ご存じの通りこの波は正弦波である。
ここでもう一つ u(x,t)と異なる正弦波の式 s(x,t)を考えたとき
(
)
Aco (k
ω)
(3)
を考えてもこれは正弦波の式であることは自明である。
ところで、ある一般的な関数 f(kx-ωt)と g(kx-ωt)を考えたとき、実はこれらは常に波の方
程式を満たすことが分かっている。
これについての証明は先ほどたてた波の媒質に関してニュートンの運動方程式
2
(
)
(
)
2
を f(kx-ωt)や g(kx-ωt)が満たすことから証明できるのだが、それは割と簡単なのでここで
は割愛する。気になる方は調べてほしい。
ここで先ほど考えた二つの関数の和である関数Hも明らかに波の方程式
である。なぜならこれらは2つの波の重ね合わせであるに過ぎないこと
からだ。また式からも
f(k
ω ) + g(k
ω)
H(k
ω)
となることからも自明である。
よって次のような波の関数を考えてみよう。
co (k
ω )+
(k
+
ここでオイラーの公式、co
(ちなみにオイラーの公式は
ω)
(4)
ei より次式を得る。
や co 、ei をテイラー展開すれば成り立つことは確か
められる。
)
co (k
ω )+
(k
ω)
e^ (k
ω)
(5)
さて次はようやく量子についての式を立ててみることにする。
質量 m、速度 v、運動量 p の量子の持つ運動エネルギーE は次式であらわされる。
1
E= ・mv =
p
m
(6)
一方、量子は波としての性質ももちその量子の波の振動数を v、角振動数をωとすると、
量子のエネルギーは振動数に比例することが分かっているのでその比例定数であるプラン
ク定数を h とし
E=hv
2πhω
(7)
また、波数 k は比例定数を 1/h を比例定数とし運動量 p に比例するので
p
k= h
(8)
ここで波数 k と角振動数ωとの間には
2
(2πh)ω=E=
p
2m
=(2πh) ・
k
2
(9)
m
の関係がある。ここで 2πh=H とする。
古典的波動のときは、ωと k はともに一次の数だったが、今回は k の 2 乗がωに比例する
から量子の波の関数 u(x,t)は
(
H
)
2
(
)
m
という式を満たすと考えられる。
ここでこの式を満たす u(x,t)は実は
(
)
Aco (k
ω )+A
(k
ω)
A ei(k
−ω )
(10)
のみである。なぜならば u(x,t)が余弦関数のみや正弦関数のみであると、それを微分する
と右辺の時間についての1階微分と左辺の変位についての2階微分では左辺と右辺が余弦
と正弦という異なる関数になってしまうからである。
この波の式の表わす値は、その地点のある時間の量子の存在確率を示している。
第5節 量子論の示す未来についての考察
量子論の示す未来についてはさまざまな考察が考えられている。たとえば終息したとき
に、存在するはずだったほかの可能性はどこへいってしまったのかという問いもある。こ
れは多世界解釈という答えやただ単に消滅するのみだという答えもある。しかし実際のと
ころは不明である。またある意見ではさらに有能な方程式があり、それの示す未来は確率
的ではなく決定論的であるという意見もある。
ここでの私の意見は、未来はあくまで非決定論的であるということだ。そもそも決定論
であることが当たり前のはずだ、などという視点は所詮人間が古来から量子力学の近似で
ある古典力学に親しかったからであり、粒子や波という概念も人間の近似にすぎない。量
子のふるまいが不可思議にみえるのは極端にいえば錯覚にすぎない。つまり未来が決まっ
ていないのはこの世界、宇宙にとっては当たり前なのである。
第3章 研究のまとめ
今回、難しいテーマである量子力学にチャレンジできてとても楽しかったと思う。
このテーマは大学に行ってからも研究したい内容なので今のうちからもっと知識を蓄え
たいと感じた。物理もここまで難しくなると高等数学を用いる回数が増えてきていて物理
と数学の深いつながりがあって面白かった。今後も自主的に研究を続けたい。