Page 1 Page 2 外力項付き多孔質媒質方程式の解に対する H6ーder

の
みず
し
まさ
氏 名 ・(本 籍 )
水 野 将 司
学 位 の 種 類
博
学 位 記 番 号
理 博 第 2 5 7 8号
学位授与年月 日
平成2
2年 9月 8 日
学位授与 の要件
学位規則第 4条第
研究科, 専攻
東北大学大学院理学研究科 (
博士課程)数学専攻
学位論文題 目
士 (
理
学)
1項該当
Hol
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(
非線形退化放物型方程式 の解 に対す る H6
1
de
r正則性)
論文審査委員
(
主査)
教
授
小
川
卓
克
教
授
石
毛
和
弘,三
論
文
沢
正
史
目 次
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Cha
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r4. H6
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y
論
文
内 容 要
旨
本論 文 で は,主 に非線形退化放物型偏微分方程式 の正 則性理論 ,特 に偏 微分方程式 の弱解 に対 す る
H6
1
d
e
r連続性 を考察 す る.一般 に,拡散係数が0にな りうる放物型偏微分方程式 を退化放物型偏微分方程
式 と呼ぶ.拡散係数が0にな る点で は,偏微分方程式 は放物型 の特性 を失 い,双 曲型 に類似 の性質 を持っ.
とりわ け,退化放物型偏微分方程式 の弱解 は一般 に滑 らか にな らない.それゆえ,退化放物型偏微分方程
式の解 の性質 を調べ るためには,放物型 と双曲型 の両方 の偏微分方程式 の性質 を考慮す る必要がある.本
論文で は,非線形退化放物型偏微分方程式 の弱解が どれだ けの正則性 を持っかを H6
1
d
e
r正則性 の立場か
1
1
e
r
Se
g
e
l方程式系 の解 の時刻無限大での漸近挙動 を解析
ら考察す るとともに,その応用 と して,退化 Ke
す る.
I
6
1
de
r評価
外力項付 き多孔質媒質方程式の解 に対 する I
-1
0-
(
第 2章)
外力項付 き多孔質媒質方程式の解 に対す る H61
de
r連続性 について考える.多孔質媒質方程式 に対 し,そ
の台が コンパ ク トとなる特殊解である Ba
r
e
nbl
a
t
t解 の存在 によ り,弱解 は一般 に滑 らかにな らない.そ こ
で,H61
de
r連続性の立場か ら,多孔質媒質方程式 の解の正則性 と外力項の関係を明 らかにす る.
de
r連続性 はよ く知 られている.外力項 のついた多孔質媒質
外力項のない多孔質媒質方程式 の弱解 の H61
方程式の弱解 の H61
de
r連続性 は,Di
Be
ne
de
t
t
oI
Fr
ie
d
ma
n によ って十分条件が指摘 されているが,証明 は与
え られていない.さらに,弱解の H61
de
r評価 と外力項 との関係 は応用上の観点か ら重要 な問題である.本
章では,外力の条件を彼 らの与えた条件 よ り拡張 し,弱解 の H61
de
r評価を外力項の積分量 を用 いて明示的
に示 した.
H61
de
r評価を導 くために,Di
Be
ne
de
toFr
ie
d
ma
nによ って導入 された,多孔質媒質方程式の退化性を反映
t
させた内在的スケール別を用 いる.彼 らの手法では,弱解 の H61
de
r評価 と外力項 との関係 を明 らかにす る
ことが難 しいと思われ る.そ こで,彼 らの手法 を修正 し,ca
c
c
i
o
ppol
i型不等式 を外力項を繰 り込んで精密
化 し,分割交代型の補題 を新たに確立す ることによって,弱解 に対す る H61
de
r評価を示 した.
臨界的非線形性 を持つ退化 Ke
l
l
e
r
Se
ge
l方程式系の解の漸近挙動 (
第 3章)
退化 Ke
l
l
e
トSe
ge
l方程式系の解 の時刻無限大での漸近挙動 について考え る.Ke
l
l
e
r
Se
ge
l方程式系 は,細
l
l
e
rとse
ge
lによって提唱 され,粘菌の拡散測度が,それ
胞性粘菌 の集 中現象 を記述す るモデルと して,Ke
自身の個体数密度 に依存す る場合 に,退化 Ke
l
l
e
r
Se
ge
l方程式系が得 られる.
l
l
e
r
Se
ge
l方程式系の減
非線形性が劣臨界的,または臨界的であるとき,小 さい初期値 に対 して,退化 Ke
衰す る大域解が得 られ る.Oga
waは,非線形性が劣臨界的であるときに,時刻無限大での漸近形状が多孔
質媒質方程式 の Ba
r
e
n
bl
a
t
t解 になることを示 し,質量 を保存す る空間 において,剰余項の収束の速 さを陽
的に表示 した.しか し,非線形性が臨界的であるときは,弱解の H61
de
rノルムに対す る減衰評価が明 らか
de
r評価 を用 い
でなか ったため,剰余項の収束 の速 さが得 られていなか った.本章では,前章 における H61
て,弱解の時刻無限大での漸近挙動 と剰余項の収束の速 さを陽的に与えた.
証明 は,前方 自己相似変換 をほどこした関数のエ ン トロピー汎関数の減衰評価を導出す ることによる.
エ ン トロピー汎関数の減衰評価 を求めることによ って,剰余項の収束の速 さを得 ることがで きる.エ ン ト
ロピー汎関数の減衰評価を得 るためには,エ ン トロピー汎関数の時間変数 に関す る微分 を求 めればよい.
方程式が双曲型の性質 を持っため,時間変数 に関す る微分 を調べ るためには,空間変数 に関す る微分可能
性を調べればよい.しか し,方程式の退化性か ら,解 は一般 に微分可能 にな らない.そこで,微分可能性 の
かわ りに,H61
de
r連続性 を用 いることで,この困難 を解決す ることがで きる.実際,解 の自己相似変換 に
対する-様な H61
de
r連続性を導出す ることで,エ ン トロピー汎関数の減衰評価を導 くことがで きる.
p調和写像流の解 に対する H61
de
r連続性 (
第 4章)
p>2に対 して,発散型外力項 を持っp調和写像流の解の勾配の H61
de
r連続性を考える.p調和写像流 は,
退化 した放物型方程式であるため,解 は一般 に滑 らかにな らない.p調和写像流の解の勾配 は,多孔質媒質
方程式 と関係があるため,2章の結果か ら,解の勾配 に対す る H61
de
r連続性が期待で きる.そ こで,p調和
写像流の解の勾配 に対する H61
de
r連続性 と外力項 の関係を明 らかにす る.
外力項のないp調和写像流の解の勾配が H61
de
r連続 となることは,Di
Be
ne
de
t
t
oFr
ie
d
ma
n,Wi
e
g
ne
rなど
によって示 された.外力項を持っp調和写像流の解の勾配 に対す る H61
de
r連続性 は Mi
s
a
waによ り示 され
ているが,p調和写像流の持っ時間方向における平滑化効果が外力項 に取 り入れ られていない.本章では,
方程式を不変 にす るスケール変換 を考えたときに,自然 な条件の もとで,解の勾配 に対す る H61
de
r連続性
を示 した.また,得 られた条件 は,Mi
s
a
waによって与え られた条件を含む ことを示 した.
外力項のないp調和写像流 の解 の勾配 に対す る H61
de
r連続性が知 られているため,外力項 を摂動 をみ
-i
l
i
l
-
なす ことがで きれば,外力項 を持つ方程式 の解 の勾配 に対す る H61
d
e
r連続性が示せ る.H61
de
r連続性 の証
mpa
na
t
oの手法 と摂動法 に基づ くが,時間に依存す る平均振動 と poi
nc
a
r
6不等式 を用 いることで,
明 は Ca
外力の時間方向に関す る正則性 の条件 を緩和 した.
Appe
ndi
xにおいて,非線形退化放物型方程式 に関係 の深 い,平均曲率流方程式 に由来す る,あ る非線形放
物型方程式 の解 に対す る Ha
ma
c
k評価 を示 した.
-1
2-
論文審査の結果の要 旨
退化放物型方程式 は多孔質媒質への水の浸透 などを記述す る多孔質媒質方程式 bor
o
usme
di
um 方程式)
や レオ ロジーなどにおいて現れ る p-ラプ ラス熱流 などに代表 され,一般 に空間方向の主要部が零 になる
部分で退化を起 こし,解の正則性が得 られない. こうした場合,解のあ り得 る最大の正則性を考えること
r
e
nbl
a
t
t
Pa
t
t
l
e解のような特解か ら,解
は偏微分方程式論 の もっとも基本的な問題 の一つである.特 に Ba
は高 々 H61
de
r連 続 性 を持 つ こ と ま で が 期 待 され る. 単 独 の po
r
o
us me
di
um 方 程 式 に対 して は
La
dyze
ns
ka
yaらによ り, 弱解 の有界性 が知 られ, また Di
Be
ne
de
t
t
oI
Fr
ie
dma
n, Wi
e
g
ne
rらによ り弱解 の
H61
de
r連続性が知 られていたが,外力項を持っ問題 に対す る弱解 の H61
de
r連続性 の顧わな証明 は不明で
あ った. 特 にベ ク トル値 の問題 を考 察 す る際 に は比較 定 理 に よ る方 法 は適 用 で きな い. 申請 者 は
Di
Be
ne
de
批)
Fr
i
e
d
ma
nによる交代選択の手法を再考 し, 内在的放物領域 を本質的に取 り替えて証明を再構
成 し,外力項 の大 きさを正確 に取 り込んで,比較定理 に寄 らない解の H61
de
r連続性 を証明 した.外力項
の影響 は,有界性以上の正則性 を得 るのに必要な可積分性条件を強 Lp積分条件を弱 Lp条件 に拡張 して与
えたの と同時に,H61
de
r連続性評価 を線形熱方程式 の評価 の拡張 とな るよ うな形で与 えた.解 の H61
de
r
連続性 を得 るには,解の上半 レベル集合の測度の密度の大 きさに応 じた,解の大 きさの評価を選択的に得
る交代選択定理 を得 ることが本質的ではあるが,問題を設定す る本質的な放物領域の大 きさを解 の振幅で
はな く解の放物領域 における最大値 に取 り替え,交代選択補題を再構成 した. このような証明法のおかげ
で,得 られ る H61
de
r連続性 における外力や解の大 きさの寄与が顕わに与え られ る.選択交代定理 その も
のは, いわゆる Ca
c
c
i
o
ppol
i評価 と逆 H61
de
r不等式を確立 して解 の上半 レベル集合の測度 に対す る評価 を
得 ることによって示 した.
l
l
e
r
Se
ge
l系 の臨界指数 における,弱解の時間
さ らにこうした弱解 の正則性評価の応用 として,退化 Ke
無限遠での漸近挙動の研究 に応用 した.退化 Ke
l
l
e
r
Se
ge
l系の時間大域的な挙動 は劣臨界指数の場合 には
摂動項 の影響 を失 い主要部 の特解である,Ba
r
e
nbl
a
t
t
Pa
t
t
l
e解 に漸近収束す ることが知 られているが,主
要部の非線形指数がち ょうど臨界 となる 22
/
nの場合には Llノルムによる一様漸近評価が得 られていなか っ
た. こうした退化型の放物型方程式の時間無限遠での漸近挙動 を知 るには漸近展開の次数 と同等の解の正
則性が必要 となる場合が多い.解の連続性だけを前提 にす ると漸近系への収束性のみは得 られるが,漸近
収束 の次数 を得 ることは困難である. ここで は方程式 の前進 自己相似変換 を施 した問題 に対す る弱解 の
H61
de
r連続性が証明のための焦点であ ったが, 申請者 は弱解 に適 当なモーメ ン トの有界性 を仮定 した上
で,前進 自己相似変換 した問題 の解の H61
de
r連続性 を確立 し,臨界指数 の場合の時間無限大での解 の漸
近形への一様漸近収束評価を証明 した.臨界指数の場合 は様々な指数がち ょうど釣 り合 い劣臨界の場合 に
比べて非常 にぎりぎりの評価を要す るが,前進 自己相似変換後の弱解の正則性を適用 したことで臨界時の
証明を明白に している.
以上 の成果か ら,学位申請者である水野将司 は単独で未開の問題 を探索す る能力,独特の手法によ りそ
れ らに肯定的な解決を与え得 る,独立 した研究者 として高度 な研究能力 と学識を兼ね備えていると認 め ら
れる. よって水野将司提出の論文 は博士 (
理学)の学位論文 として合格 と認める.
-1
3-