解説記事

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ロボットコンテストにみる
子供の創造能力・発想力の育成ポイント
埼玉大学 大滝 英征
*おおたき ひでゆき 埼玉大学 名誉教授,日本機械学会フェロー
解 説
創造能力(発想力)をいかに育てるかというこ
とは極めて難しい課題である。そのため,各企業
でも独自の手法が開発されてきている。その手法
の根幹となっているのは KJ 法(川喜田二郎;『発
想法』:中央公論社(昭和 45 年))であろう。KJ 法
は,種々の過程を踏みながら,創造力を引き出す
ものである。
筆者は,さいたま市青少年宇宙科学館で開催さ
れている「若田名誉館長杯キャリアシュートロボ
ット大会」
(主催 さいたま市青少年宇宙科学館。
旧称「科学者の卵コンテスト」
)を長年に渡って
見守ってきた。同コンテスト(杯)を通じて子供
たちの持つ素晴らしい創造能力(発想力)を痛感
してきた。子供や親に話を聞いて廻ると,KJ 法
とは若干異なって,子供達は子供達なりの過程を
踏まえて,創作に至っていることがわかった。本
稿では,子供達の発想の原点を筆者なりにまとめ,
その上で作品紹介をしてみたい。
コンテストへの参加を通じて
飛躍的に発想力が伸びる
⑴ コミュニケーションを通じてイマジネーショ
ンが育つ
友達同士や親子の会話を通じたコミュニケーシ
ョンの大切さを痛感させられる。これは年少期に
おいては,極めて大切なことである。人間は言葉
を持つ。そして,誕生した瞬間から言葉とその言
葉が対象としている生物や物体と 1 対 1 の対応を
付けながら育つ。電車内でも,子供から,
“あれ,
なーに?”と聞かれ,母親が“しんごうよ”と答
えていたりするのを見かける。子供は,点滅する
信号と“しんごう”という言葉を一体化させて,
頭脳に記憶させるのである。しばらくすると,親
子の間では,いちいち実物を尋ねなくても,
“し
んごう”と発すれば,あの赤や青に点滅する装置
を頭に描くことができるようになる。このように
して,極めて多くの言葉と実体を結びつけて,人
間は成長していく。
それに伴って,友達や親兄弟同士の間でも,実
体を目の前にすることなく,言葉を発するだけで,
コミュニケーションが生まれ,意思疎通が図られ
る。仮に,一方の人が知らない実体についても,
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機 械 設 計