Weekly Outlook

投資情報室
2014 年 11 月 13 日(木)
Weekly Outlook
週刊投資情報 No.180
CONTENTS
1.日本株見通しとポイント
2.米国株見通しとポイント
3.円相場見通しとポイント
4.国内経済動向
5.新興国市場・経済動向
6.JPX 日経 400 先物上場のインパクト
7.米国株式~ハイテク株 7-9 月期決算動向
8.国内政治・政策動向~消費再増税の扱いをどう説明するか?
9.インド~発足から間もなく半年を迎えるモディ政権
10.来週・再来週の主なスケジュール
1/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
1.日本株見通しとポイント~投資家心理に打ち勝つ時
長谷川 浩
先週末以降の日経平均は、11 日に、来年 10 月に予定されている消費税増税が先送りされるとともに、年内
にも衆院の解散総選挙が行われるのではないかとの観測が高まり、終値で 17,000 円台を回復した。一方、
個人投資家は株価上昇局面で売り越しとなり、下落局面で買い越しとなる傾向が見られる。足元の投資環
境は良好であり、今後、株価調整が軽微にとどまったとしても、株式資産を積み増すことを推奨したい。
っている。また、日銀は金融緩和に積極的である。マク
ロ経済では、雇用環境が堅調さを維持しており、今年 4
月の消費税増税による消費の反動減は終息しつつある。
鉱工業生産、出荷には底打ちが見えてきた。今期企業
業績は上方修正含みであり、為替は円安基調だ。バリ
ュエーション指標である PER に割高感はない。株式需
給面では NISA や GPIF による買いが期待される。
◆にわかに高まる消費増税先送りと衆院解散観測
日銀の追加緩和から 1 週間が経過し、短期的な株価
急騰後の落ち着きどころを探る展開となった。株価は総
じて横ばいの推移となっていたが、11 日、来年 10 月に
予定されている消費増税が先送りされて年内にも衆院
の解散総選挙実施へ、との観測が高まると日経平均は
大幅に上昇。7 年 1 ヵ月ぶりに終値で 17,000 円台を回
復した。その後も、消費増税先送りをめぐる要人発言等
に相場は左右されたが、比較的堅調に推移した。
ボックス相場から離脱後の上昇相場の初期は、年初
来高値を買う勇気が必要な局面である。上昇した株価
から値下がりしたところを“安い”と感じる心理に打ち勝
つのは容易ではないかもしれない。銘柄選別に迷った
ら株価指数型の ETF を検討するなど、今は資産構成に
占める株式の割合を高める時であろう。
◆2005 年の上昇時、個人投資家はどう動いたか
現在のように、日経平均が大幅上昇後 1~2 年のボッ
クス相場を経た後に、節目を抜いて再び上昇した相場
と言えば、2005 年 8 月以降の動きが想起される。当時、
景気は踊り場を迎えていたが、同年 8 月に株価が前年
高値水準を抜いたきっかけは、8 月 8 日のいわゆる郵政
解散によるあく抜け感に加え、同 10 日の政府・日銀によ
る景気の踊り場脱却宣言がなされるなど景気の先行き
に対する強気の見方の台頭があった。日経平均は 2005
年の年末には 16,000 円台まで上昇したが、当時、
12,000 円からの上昇初期に個人投資家は売り越しで応
じた。個人投資家が買い越しに転じたのは、同年 10 月
の 14,000 円手前での下落局面であり、その後は翌年春
に向けて上昇する過程で、押し目のたびに買い越し額
を膨らませている(図表 1)。心理的に、株価上昇が続い
た後の値下がり局面で「株価が安い」と感じ、買い越し
額を膨らませたと推察される。多くの個人投資家は 2005
年の上昇相場の初期波動に乗れなかったとみられる。
図表 1 2005 年頃の日経平均と個人投資家売買動向
(円)
18,000
12,000
10,000
日経平均(左軸)
16,000
8,000
14,000
6,000
2004年以降の株価上限
12,000
4,000
10,000
2,000
8,000
0
6,000
‐2,000
4,000
‐4,000
2,000
‐6,000
個人投資家(差引)(右軸)
0
‐8,000
04/1/3 04/6/26 04/12/18 05/6/11 05/12/3 06/5/27 06/11/18
(年/月/日)
(注)棒グラフは、週次ベースの二市場一・二部の売買代金差引。図表 2 も同じ。
(出所:Astra Manager よりSMBC日興証券作成)
図表 2 2013 年以降の日経平均と投資部門別売買動向
◆足元の投資環境は良好
20,000
今回は、10 月 31 日の追加金融緩和後、日経平均は
大幅に上昇し、9 月 25 日の高値 16,374 円や、2013 年
12 月 30 日の高値 16,291 円を上抜けて推移している。
追加緩和の日が含まれる 10 月第 5 週の投資部門別売
買動向では、買いの主体は海外投資家、売りの主体は
個人投資家だった(図表 2)。戻り高値を更新していく過
程で買い越すのは、多くの場合海外投資家である。今
回も、日銀の緩和という好材料が出ていながら、個人投
資家は株価の急騰を見て売り越しで対応した。
18,000
(円)
(億円)
海外投資家(差引)(右軸)
20,000
16,000
日経平均(左軸)
16,000
12,000
14,000
8,000
12,000
4,000
10,000
0
8,000
‐4,000
6,000
‐8,000
個人投資家(差引)(右軸)
(株価データは11/12終値まで)
4,000
‐12,000
13/1/5 13/4/6 13/7/6 13/10/5 14/1/4 14/4/5 14/7/5 14/10/4
足元の投資環境は良好だ。国会で過半数の議席を
保ち、基盤の安定した政権は経済重視の政策運営を行
(年/月/日)
(出所:Astra Manager よりSMBC日興証券作成)
2/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(億円)
20,000
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Weekly Outlook No.180
2.米国株見通しとポイント~上昇スピードが鈍る可能性
河田 剛
11 月 6 日以降の米国株は、前半には堅調な経済指標や企業決算から小幅に上昇したものの、手掛かり材
料が少なかったことや、高値警戒感から頭打ちとなった。7-9 月期決算は堅調な内容となっているが、アナリ
ストの先行き予想は下方修正が優位にある。予想 PER もやや割高な水準となっているため、目先の株価上
昇スピードは鈍化する可能性が高いと考えられる。
87.5)などが注目される。7-9 月期決算発表はほぼピー
クアウトし、12 日時点で S&P500 採用企業のうち 455 社
が発表済みだが、1 株当り利益は前年比+8.9%と堅調な
内容になっている。ただし、アナリストの先行き予想は下
方修正が優位で、リビジョンインデックスは低下傾向とな
っている。2014 年通年の S&P500 の 1 株当り利益の予
想も 10 月 3 日時点の前年比+8.0%から 11 月 7 日時点
では同+7.6%と低下している。12 ヵ月先予想 PER も 11
月 12 日時点で 15.9 倍とやや割高水準にあるため、目
先の株価上昇スピードは鈍化する可能性が高いと考え
られる。
◆先週、今週のレビュー~小刻みに上昇後、頭打ち
11 月 6 日の米国株市場は、11 月 1 日終了週の新規
失業保険申請件数が事前予想を下回ったことや、ドラ
ギ ECB(欧州中央銀行)総裁が追加緩和に前向きな発
言を行ったことなどから、ダウ工業株指数(NY ダウ)は
前日比+69 ドルとなった。7 日は 10 月雇用統計の非農
業部門雇用者数が事前予想を下回ったことや、ディズ
ニーの 7-9 月期決算が低調だったことなどから、売りが
先行したものの、原油価格の上昇でエネルギー株が連
れ高し、NY ダウは同+19 ドルとなった。週明け 10 日に
は、手掛かり材料が少なかったものの、ヘルスケア株や
金融株が上昇し、NY ダウは同+39 ドルとなった。11 日
は、住宅建設大手 D.R.ホートンの 7-9 月期決算が堅調
だったことから住宅関連株が買われたが、利益確定売り
に押され NY ダウは同+1 ドルとなった。12 日は小売関
連株が買われたものの、高値警戒感や原油価格の下
落によりエネルギー株が軟調に推移したことなどから
NY ダウは同▲2 ドルとなった。
注:事前予想は Bloomberg、2014 年 11 月 13 日 10 時時点のもの
図表 1 非農業部門雇用者数の推移
(千人)
600
非農業部門雇用者数
(前月比)
400
200
◆10 月の雇用統計
7 日に発表された 10 月の雇用統計では、非農業部門
雇用者数が前月比+21.4 万人(事前予想:+23.5 万人、9
月は+24.8 万人→+25.6 万人、8 月は+18.0 万人→+20.3
万人に修正)、民間部門雇用者数が同+20.9 万人(事前
予想:+22.5 万人、9 月は+23.6 万人→+24.4 万人、8 月
は+17.5 万人→+20.0 万人に修正)と、事前予想を下回
ったが、9 月分、8 月分はともに上方修正された。失業率
は 9 月 5.9% →10 月 5.8%と低下し、事前予想(5.9%)
を下回った。労働参加率の上昇(9 月 62.7%→10 月
62.8%)をともなっての失業率の低下は、雇用が堅調で
あることを示していると考えられる。FRB(連邦準備制度
理事会)が重視する全人口に占める雇用者数比率も 9
月 59.0%→10 月 59.2%と改善した。27 週以上の長期失
業者、経済的理由でのパートタイマーも減少した。時間
当たり賃金はわずかな増加にとどまったが、労働市場
関連の指標は概して改善方向にあると考えられる。
0
‐200
3ヵ月平均
‐400
09/12 10/6 10/12 11/6 11/12 12/6 12/12 13/6 13/12 14/6
図表 2 S&P500 のリビジョンインデックス
0.4
上方修正優位
0.2
0.0
‐0.2
‐0.4
下方修正優位
◆当面の見通し~上昇スピードが鈍る可能性
‐0.6
経済指標では 14 日発表予定の 10 月の小売売上高
(事前予想:前月比+0.2%)、14 日発表予定の 11 月のミ
シガン大学消費者信頼感指数(速報値)(事前予想:
‐0.8
‐1.0
12週移動平均
リビジョンインデックス=(業績予想上方修正数-下方修正数)/全修正数)
06
07
08
09
10
11
(出所:Datastream よりSMBC日興証券作成)
3/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(年/月)
(出所:Datastream よりSMBC日興証券作成)
12
13
14 (年)
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Weekly Outlook No.180
3.円相場見通しとポイント~景気最優先姿勢がリスクオンの円安に
本間 英至
円相場は、消費税率再引き上げの先送り観測から全面安の展開となり、米ドルは一時 116 円台を回復した。
消費増税先送りが決定すれば、安倍首相の景気最優先の姿勢が改めて示されることとなり、リスク選好的
な円安外貨高基調の継続が期待され、来週にも見込まれる同首相の最終決断が注目されよう。また、米国
で発表の相次ぐ経済指標、イエレン議長をはじめとした FRB 関係者の講演も注目材料となろう。
◆この 1 週間(11/6~)のレビュー
になるものと予想される。
6 日のドル円相場は、やや上下に振れながらも日銀
の追加緩和効果等を背景に堅調に推移し、7 日には
115.59 円まで上昇した。その後、米雇用統計が予想以
下に留まったことでドル売りが優勢となり、週明け 10 日
には一時 114 円を割り込んだ。しかし 11 日、日本の消
費税率再引き上げの先送り観測の強まりから円は日本
株の上昇と共に全面安商状に。GPIF(公的年金)の外
貨建て資産購入の思惑も加わって米ドルは一段高とな
り、一時 116.10 円と 2007 年 10 月以来の高値をつけた。
ユーロは、6 日に ECB(欧州中央銀行)の追加緩和観測
から下落後、10 日にかけて 142 円台半ばを挟んで膠着
と な っ た が 、 11 日 の 消 費 増 税 先 送 り 観 測 を 受 け て
144.71 円と、2014 年 1 月以来の水準を一時回復。豪ド
ルも対円で上昇し、足元 100 円台で推移している。一方、
英ポンドも 12 日に 184.68 円と約 6 年ぶりの高値をつけ
たが、利上げ観測の後退から売られ、現在 182 円台前
半で推移している。(東京時間 11/13 正午時点)
今週は米国で注目経済指標に乏しい週だったが、本
日以降来週にかけては、小売売上高(11/14)、鉱工業
生産(11/17)、住宅着工(11/19)といったハードデータ
(いずれも 10 月分)や、NY 連銀およびフィラデルフィア
連銀の製造業景況指数(11/17、11/20。ともに 11 月分)
等のソフトデータなど、注目度の比較的高い経済指標
の発表が目白押しとなる。後述するように、ドル円相場
はこのところ日本発の材料が主たる変動要因となってい
るが、本日以降は米国側の材料も要注目である。また、
FOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨(10/28~29 開
催分、11/19)や、イエレン FRB 議長(11/13)、ダドリー
NY 連銀総裁(11/13)、フィッシャーFRB 副議長(11/14)
など FRB 関係者の講演も、金融政策の先行きを占う上
で注目材料となろう。
◆ドル円の見通しと来週にかけての注目材料
◇順調な回復を示した米雇用統計
米国で 7 日に 10 月の雇用統計が発表され、非農業
部門雇用者数は前月比+21.4 万人と市場予想(同+23.5
万人、Bloomberg 調査)を下回る結果に終わった。ただ、
過去 2 ヵ月分の 3.1 万人の上方修正を加味すれば、概
ね予想通りといえる。過去分の上方修正により、月当た
り 20 万人超の増加幅を 9 ヵ月連続で達成。失業率も
5.8%(9 月:5.9%)と 2008 年 7 月以来の水準まで低下す
る等、雇用市場の順調な拡大が確認されたといえよう。
一方、イエレン FRB(連邦準備制度理事会)議長が
注視する雇用市場の slack(たるみ)に関しては、時間当
たり賃金は前月比+0.1%と期待外れに終わったが、経
済的理由によるパートタイマー、27 週以上の長期失業
者数がともに減少。前者は 4 ヵ月連続、後者は直近 8 ヵ
月中 7 ヵ月でそれぞれ改善しており、slack の解消に向
けて着実に前進している様子も窺えた。7 日のドル円は、
雇用者数の増加幅が予想を下回ったことでドル安円高
に動いたが、内容は良好である。今回の雇用統計で示
されたような雇用市場の順調な拡大、およびそれを受け
た米景気の堅調推移が市場のゼロ金利解除への思惑
を徐々に強め、米金利の上昇と共にドル高の支援材料
4/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
◇消費増税先送りの判断が目先最大の注目に
円相場は、日銀異次元緩和の拡大に続き、今週は消
費税率再引き上げの先送り観測という新たな国内材料
を受けて全面安の展開となり、米ドルは一時約 7 年ぶり
に 116 円台に乗せる場面があった。
消費税率再引き上げの是非については見解が分か
れるところである。財政再建への取り組みの観点から実
図表 1 米失業率と雇用者数(前月比)の推移
(千人)
(%)
9ヵ月連続で月当たり20万人超の
雇用増を記録
11
51.6万人
500
400
300
10
200
100
9
0
-100
-200
8
-300
-400
失業率(左軸)
7
-500
-600
非農業部門雇用者数(前月比・右軸)
-700
6
-800
-900
2008年7月以来の低水準
5
-1,000
09
10
11
12
13
(出所:米労働省データよりSMBC日興証券作成)
14
(年)
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
ルの上昇局面で一時上値を抑え、調整局面で下値サ
ポートラインとなった 114 円が意識されそうだ。
施すべきとの見方にも根強い支持があろう。ただ、国内
の景気動向をみると、消費税率引き上げ後の落ち込み
からの回復ピッチが当初見込みに届かず、力強さを欠
いた状態にある。夏場は悪天候という一時要因の影響
が指摘されていたが、11 日に発表された 10 月の景気ウ
ォッチャー調査・現状判断 DI や消費者態度指数が、共
に消費税引き上げ時の今年 4 月以来の水準に落ち込
むなど、景気のもたつきは依然続いている模様である。
こうした中での財政再建への取り組みは、いうまでもなく
景気失速リスクを高めてしまう。日本が再びデフレ経済
に戻るようでは元も子もない。景気が冴えない中での財
政赤字の削減策が景気の悪化と税収減をもたらすのは、
ギリシャの例をみても明らかだろう。先ずは景気をしっか
りと回復させ、デフレからの脱却をより明確にするなど日
本経済の再生を最優先とし、その上で財政再建に取り
組むという考えは自然であり、合理的であると考えられ
よう。また、日銀の異次元緩和の拡大に加えて、消費増
税先送り、円安対策を含めた財政拡大といったポリシー
ミックスは、安倍内閣の景気最優先姿勢を再確認させる
ものであり、海外投資家も概して好感するものと予想さ
れる。消費税率再引き上げの先送りは、財政規律への
疑念による円売り要因ではなく、リスク選好的な動きによ
る円安要因と位置づけられよう。
◆米ドル以外の来週にかけての注目材料
ユーロについては、円に対しては 10 ヵ月ぶりの高値
をつける等堅調に推移したが、対米ドルでは引き続き軟
調。7 日には 2012 年 8 月以来となる 1.24 ドル割れまで
下落する場面があった。6 日の ECB 理事会後の記者会
見で、ドラギ総裁は一段の緩和措置に向けてスタッフに
準備を指示したことに言及。これまで同総裁が記者会
見で言及するに留めていた ECB のバランスシート拡大
の規模の目途を、声明文に初めて盛り込むなど、必要
ならば追加緩和措置に踏み込む姿勢を改めて示す格
好となった。ユーロ圏の冴えない景気動向や定着しつ
つあるディスインフレ状況を踏まえれば、当分、ドラギ総
裁のハト派姿勢が和らぐことはないと推測される。引き
続き、米欧の金融政策の方向性の違いを材料に、ユー
ロは対ドルで弱含みが予想され、投機筋の買い戻しで
ユーロが反発する場面があれば戻り売り姿勢が望まし
いとみている。対円では、ドル円の値動き次第。足元、
急ピッチなドル高円安の影響から、予想以上にユーロ
高円安が進んでいるが、上値余地は限定的と考えてい
る。来週にかけては、7-9 月のユーロ圏実質 GDP(速報、
11/14)が注目される他、11 月独 ZEW 期待指数(11/18)、
11 月ユーロ圏マークイット PMI(11/20)などの経済指標
も発表される。また、ドラギ総裁(11/17、11/21)をはじめ、
ECB 関係者の講演も多い。
各メディアの報道を見る限り、消費税率再引き上げの
先送りは既定路線といえるが、一方で、12 日には菅官
房長官が増税先送りと衆院解散が固まったとの見方を
否定したと報じられたことで一時日本株が売られ、ドル
安円高に振れる場面もあった。最終的には「政治判断」
であり、来週にも見込まれる安倍首相の決断までは政
治的駆け引きも予想されよう。それまでは、首相官邸か
らの情報やメディアの報道、17 日の 7-9 月実質 GDP(速
報)などを受けて上下に振れやすい展開が予想される。
◇チャート的には 116 円の明確かつ早期突破が注目
日銀の異次元緩和拡大を機に大きくドル高に振れた
ドル円相場は、その後調整らしい調整もないまま下値、
上値とも徐々に切り上げる展開となっており、ドルの地
合いの強さが窺える。ストキャスティクスなど逆張り系の
テクニカル指標は、過熱ゾーン入りを示しつつも売りサ
イン点灯には至っておらず、ドルは一段の上値を試す
展開も期待されよう。メドとしては、前週号でも紹介した
通り、滞留日数で 118~120 円処に大きな山が形成され
ている。また、1998 年 8 月高値(147.66 円)から 2011 年
10 月安値(75.35 円)の値幅の 0.618 倍戻しが 120.04 円
となっていることもあり、120 円近辺がターゲットとなりそう
だ。一方、今週 2 度 116 円台に乗せたが、いずれも短時
間に終わっている。上値を試す際に同水準を明確に超
えてこないと、短期的な上値の重さが意識され、一旦は
調整に転じる可能性があろう。下値のメドとしては、米ド
豪ドルは、注目経済指標の発表は予定されていない
が、18 日に金融政策会合の議事要旨とスティーブンス
同国中銀総裁の講演が注目材料となろう。
図表 2 1998 年以降のドル円の推移(バーチャート、週次)
(円/ドル)
160
150
140
147.66円(1998.8.11)
72.31円 下落幅の0.618倍値戻し=120.04円
150
140
130
130
120
120
110
110
100
100
90
90
80
80
70
75.35円(2011.10.31)
70
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(年)
(出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成)
5/19
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(円/ドル)
160
※直近週は11/10~11/12までのレート
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4.国内経済動向~景況感低下も消費税再増税先送り論を後押し
野村 真司
10 月の景気ウォッチャーは現状判断 DI、先行き DI 共に低下。特に現状判断 DI は消費増税が実施された 4
月以来の水準まで落ち込んだ。当面も景況感が浮上するきっかけは乏しい。消費税再増税の行方を左右す
る 7-9 月の実質 GDP 発表を前に、市場で広がる増税先送り論を後押しする結果となった。一方、設備投資
の先行指標である 9 月の機械受注は堅調。年明け以降の設備投資は比較的強い回復が期待できよう。
◆10 月景気ウォッチャー:現状 DI は一段と悪化
10 月の景気ウォッチャー調査(調査期間 10 月 25 日
~31 日)では、足元の景況感を示す現状判断 DI が前月
比▲3.4 ポイントの 44.0 となり、横ばいを示す 50 を 3 ヵ
月連続で下回った。水準的には消費増税が実施された
4 月(41.6)以来の水準まで落ち込んだ。家計関連では
小売関連、飲食関連中心に低下。企業関連では、引き
続き円安を背景とする燃料高や原材料高を受けて製
造・非製造業とも低下した。また、雇用関連では一部で
求人の増勢に一服感がみられたことから低下している。
2~3 ヵ月先の景気に対する先行き判断 DI は、前月比
▲2.1 ポイントの 46.6 となり 5 ヵ月連続の低下。節目の
50 を 2 ヵ月連続で下回った。エネルギー価格等の上昇
への懸念から、家計関連、企業関連、雇用関連すべて
で低下。当面も景況感が浮上するきっかけに乏しい。企
業関連では、消費増税後に積み上がった意図せざる在
庫が出荷の持ち直しで多少解消されたものの、在庫調
整は時間がかかる。また、家計関連での判断理由では
「消費税率 10%への引き上げに伴う心理的不安」、「生
活必需品の値上げ等から、買い控えが進行」とのコメン
トが聞かれた。足元は日銀の異次元緩和拡大を受けて
円安はさらに加速。市場では、景気のもたつきを背景に
消費税再増税先送りと年内解散・総選挙をセットにした
見方が急速に広がっている。消費税再増税の行方を左
右する 7-9 月の実質 GDP 発表を前に、今回のデータは
そうした見方を後押しするものとなろう。
図表 1 景気ウォッチャーと消費者態度指数の推移
(DI)
60
55
50
45
40
35
30
25
景気ウォッチャー調査:現状判断DI
20
景気ウォッチャー調査:先行き判断DI
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年)
(出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」、
「消費動向調査」よりSMBC日興証券作成)
図表 2 景気の現状判断 DI・個別項目の推移
年
2014
4
5
6
7
8
9
10
41.6
45.1
47.7
51.3
47.4
47.4
44.0
(▲3.4)
家計動向関連
37.2
42.1
45.1
49.4
45.8
46.7
42.3
(▲4.4)
小売関連
31.9
39.2
43.0
48.2
44.4
46.2
41.1
(▲5.1)
飲食関連
48.1
43.7
47.0
49.1
45.7
43.5
37.8
(▲5.7)
サービス関連
44.1
47.7
48.9
51.5
47.9
48.4
45.8
(▲2.6)
住宅関連
44.7
43.4
46.6
51.2
49.4
46.8
42.6
(▲4.2)
企業動向関連
48.5
47.4
50.3
53.9
48.5
47.9
46.2
(▲1.7)
製造業
50.0
47.9
48.8
53.9
48.4
47.3
45.3
(▲2.0)
非製造業
47.5
46.9
51.8
53.6
48.4
48.4
46.8
(▲1.6)
55.9
59.3
57.9
57.7
55.3
51.2
50.0
(▲1.2)
月
合計
雇用関連
(前月差)
(出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」よりSMBC日興証券作成)
図表 3 国際収支の推移
80,000
(億円)
(季節調整値)
*四半期ベース
60,000
40,000
20,000
0
-20,000
-40,000
貿易収支
第一次所得収支
経常収支
サービス収支
第二次所得収支
-60,000
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(年)
(出所:財務省「国際収支」よりSMBC日興証券作成)
6/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
消費者態度指数(郵送法による)
(シャドウ部分は景気後退期)
10
◆9 月経常収支:季節調整値では 6 ヵ月連続の黒字
9 月の経常収支(季節調整値)は+4,144 億円(8 月
+1,308 億円)と、6 ヵ月連続の黒字となった。貿易赤字
は 4 ヵ月ぶりの縮小。輸出の伸び率(前月比+7.3%)が、
輸入の伸び率(同+5.1%)を上回ったことが背景にある。
また、第一次所得収支(原数値)は、本邦企業による直
接投資の配当金等の受取増等から、9 月として比較可
能な 1985 年以降で最大の黒字となった。季節調整値
でも比較可能な 1996 年以降では 2 番目の高水準。当
面も、第一次所得収支は円安効果もあり高水準の黒字
を維持することが見込まれる一方、貿易収支は赤字基
調が継続する公算が大きい。従って、経常黒字が明確
な拡大基調に転じる姿は展望しづらい。
消費者態度指数(訪問留置法による)
15
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
◆9 月機械受注:7-9 月は 2 四半期ぶりのプラス
図表 4 機械受注の推移
9 月の機械受注統計によれば、民間設備投資の先行
指標である船舶・電力を除く民需は、前月比+2.9%と 4
ヵ月連続の増加となった。足元の設備投資は調整局面
にあるが、先行指標である機械受注のトレンドは上向い
ている。内閣府は基調判断を「緩やかな持ち直しの動き
がみられる」で据え置いた。業種別にみると、製造業は
同+12.0%と 2 ヵ月ぶりの大幅増加。石油・石炭製品向け
のボイラーやタービン、電気機械向けの半導体製造装
置等が堅調だった。また、非製造業(船舶・電力を除く)
は同+1.7%と 2 ヵ月連続の増加で、通信業や情報サー
ビス業向けのコンピューター等の受注が好調。
(億円)
16,000
(季節調整値・月次ベース)
14,000
外需
12,000
民需(除く船舶・電力)
10,000
8,000
非製造業(除く船舶・電力)
6,000
4,000
2,000
製造業
*マーカー入りの太線は3ヵ月移動平均。
0
2008
四半期ベースでみると、7-9 月は前期比+5.6%と 2 四
半期ぶりのプラスで、6 月下旬時点の見通し(同+2.9%)
を大きく上回った。また、同時に発表された 10-12 月見
通し(調査時点は 9 月下旬)は前期比▲0.3%と再びマイ
ナスに転じる見通し。但し、10-12 月見通しを達成するた
めには毎月の前月比が▲1.8%以上であれば可能であ
り、足元のモメンタムを勘案すれば 2 四半期連続のプラ
スも可能であろう。9 月の日銀短観からも明らかなように
既に企業の設備過剰感は解消しており、むしろ更新投
資は不足気味。また人手不足・賃金上昇で省力化投資
のニーズは高まっており、先行指標である機械受注の
データからは、年明け以降の設備投資が比較的強い回
復となることが期待できよう。
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年)
(出所:内閣府「機械受注統計」よりSMBC日興証券作成)
図表 5 実質 GDP の需要項目別寄与度の推移
(前期比、寄与度、%)
4
1.7 2.6 1.7 1.5 2
0.7 0.1 1.1 1.4 1.5 0.2 1.0 1.2 0.8 0.4 0
‐2
‐0.5 ‐1.1 ‐1.2 ‐0.7 ‐1.8 ‐0.1 ‐0.5 ‐0.7 住宅投資
民間在庫品増加
設備投資
実質GDP
‐4
‐4.0 ‐3.3 ‐0.1 公的需要
外需
個人消費
‐1.8 ‐6
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q
2008
◆10 月消費者態度指数:基調判断を下方修正
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年/四半期)
10 月の消費者態度指数(一般世帯・季節調整値)は
38.9 と前月比 1.0 ポイント低下(図表 1)。3 ヵ月連続の悪
化で、過去平均(1982 年 6 月~2014 年 10 月)の 42.2 を
大きく下回った。内訳項目の「暮らし向き」、「収入の増
え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の 4
指標すべてが低下(2 ヵ月連続)。内閣府は消費者心理
の基調判断を 9 月の「足踏みがみられる」から「弱含ん
でいる」に下方修正した。基調判断の引き下げは 3 ヵ月
連続となる。
(出所:内閣府「国民所得統計」よりSMBC日興証券作成)
◆来週の注目点
17 日に消費税再増税の行方を左右する 7-9 月の実
質 GDP 成長率(一次速報)が発表される。弊社では前
期比年率+1.0%(4-6 月同▲7.1%)と、2 四半期ぶりのプ
ラス成長を見込むものの、4-6 月の大幅マイナス成長に
比べ小幅なプラスにとどまると見込む。需要項目別では、
個人消費が牽引役となろう。外需も小幅プラスが見込ま
れる。ポイントとなる民間在庫は、4-6 月からの反動減と
しては小幅なものにとどまる公算が大きい。但し、民間
在庫は事前予測の精度には限界がある。在庫調整が
想定より大幅なものになれば、2 四半期連続のマイナス
成長に陥る可能性も十分あり得る点に留意が必要だ。
7/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
山本 正樹
武田 泰典
5.新興国市場・経済動向
白岩 千幸
前田 佑太
足元の新興国株式市場はまちまちの動き、新興国通貨は対ドルではやや軟調となったが、対円では総じて堅
調に推移した。足元ではグローバルな注目イベントが概ね一巡したこともあり、当面の新興国市場は、各国固
有の材料に左右されやすい時間帯に移ってこよう。今週末・来週は、新興国では、7-9 月の実質 GDP の発表
がメキシコ等で、金融政策の決定がトルコ、南アフリカで予定され、南アフリカでは利上げの可能性があろう。
◆最近の新興国市場の動向
誘拐事件を巡る暴動の拡大などから下落した。
足元の新興国株式市場は、まちまちの動きとなった。
米国株が連日過去最高値を更新するなどリスク選好ム
ードが続く中、新興国株も概ね堅調に推移した一方、
個別の悪材料から軟調となるところも一部でみられた。
新興国通貨は、対米ドルではやや軟調となったもの
の、対円では総じて堅調に推移した。消費増税が先送
りされ年内に解散総選挙が実施されるとの見方から、円
がドルに対して一段と下落したことがその背景にある。
直近 1 週間の株価騰落率(図表 1、12 日時点)をみる
と、中国・上海(+3.1%)の上昇が目立つ一方、メキシコ
(▲2.9%)は大幅に下落した。上海株は、17 日から上海
市場と香港市場の株式相互取引を開始するとの発表
(10 日)を受け上昇した。一方、メキシコ株は、指数の構
成比率で 2 割弱を占める通信最大手アメリカ・モビルの
資産売却が難航していることや、国内の大規模な学生
直近 1 週間の通貨騰落率(図表 1、12 日時点、対円)
をみると、ブラジルレアル(▲1.7%)が大幅に下落。政府
は 11 日、会計上の操作によって今年の財政目標を実
質的に引き下げる法案を議会に提出、ルセフ政権によ
る財政再建への期待感が後退した。(前田、武田)
図表 1 主な新興国市場の動向
騰 落 率 (% )
直近値
11 月 12日 201 4年 初 来 2 013年 年 間 過 去 1週 間 過 去 30 日 間 過 去 90日 間 過 去 1年 間
株価指数
中国
インド
韓 国
インドネシア
タイ
マレーシア
フィリピン
ロシア
トルコ
南アフリカ
ブラジル
メキシコ
為替
上海総合指数
香港ハンセン指数
SENSEX30種指数
韓国総合指数
ジャカルタ総合指数
SET指数
FBM KLCI総合指数
フィリピン総合指数
MICEX指数
イスタンブール100種指数
JSE全株指数
ボベスパ指数
ボルサ指数
2,494.47
23,938.18
28,008.90
1,967.27
5,048.84
1,562.03
1,816.24
7,232.87
1,513.83
80,394.94
50,374.85
52,978.89
43,744.57
17.9
2.7
32.3
▲2.2
18.1
20.3
▲2.7
22.8
0.6
18.6
8.9
2.9
2.4
▲6.7
2.9
9.0
0.7
▲1.0
▲6.7
10.5
1.3
2.0
▲13.3
17.8
▲15.5
▲2.2
3.1
1.0
0.3
1.9
▲0.4
▲1.0
▲1.3
0.3
1.2
1.8
1.3
▲1.3
▲2.9
5.4
3.4
6.2
2.1
2.8
1.3
1.1
3.8
9.4
7.0
6.3
▲8.6
1.5
13.1
▲3.5
7.3
▲4.7
▲2.1
1.3
▲2.4
2.4
7.6
3.6
▲1.4
▲5.0
▲2.3
17.3
4.5
38.1
▲1.4
15.3
10.5
1.2
14.4
0.9
11.8
10.8
2.3
10.5
24.9
7.5
22.7
▲2.3
13.5
14.1
12.9
12.8
0.7
▲2.2
5.4
19.7
0.5
0.7
0.2
0.4
0.4
1.0
1.0
0.5
0.4
0.3
▲1.7
0.8
8.1
7.5
5.3
8.1
6.6
4.8
6.9
▲2.8
8.9
6.6
0.7
7.2
13.2
11.6
5.0
8.0
9.3
7.2
9.5
▲9.7
7.8
6.2
▲0.5
8.7
15.2
20.5
13.5
10.2
11.6
11.3
12.8
▲15.3
5.8
7.4
5.3
12.6
※プラスは外貨高・円安、マイナスは外貨安・円高
中 国
インド
韓 国
インドネシア
タイ
マレーシア
フィリピン
ロシア
トルコ
南ア
ブラジル
メキシコ
円/人民元
円/インドルピー
円/韓国ウォン(x100)
円/ルピア(x100)
円/バーツ
円/リンギ
円/フィリピンペソ
円/ルーブル
円/トルコリラ
円/ランド
円/レアル
円/メキシコペソ
18.84
1.88
10.53
0.94
3.51
34.55
2.56
2.56
51.27
10.31
44.97
8.51
8.4
10.5
5.4
9.5
9.2
7.7
8.4
▲19.8
4.7
2.9
0.9
5.5
(出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成)(注:「直近値」については、当該日付が休場となっている場合は、その前営業日の値を掲載)
8/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
◆新興国市場関連トピック
インド~インフレの鈍化傾向が継続
12 日に発表された 10 月の消費者物価指数は前年比
+5.52%と 3 ヵ月連続で鈍化し、9 月に続き現行統計の開
始(前年比算出は 2012 年 1 月)以降、前年比での最低
記録を更新した。内訳では、ウェイトの大きい食品、燃
料をはじめとして、広範な項目で伸びが鈍化した。この
ところ原油をはじめとする国際商品市況が下落傾向に
あり、通貨ルピーは対ドルでは弱含みながらも比較的底
堅く推移している。輸入依存度が高く、インフレへの影
響が大きい原油価格(ルピー換算した北海ブレントの月
中平均値)は、8 月に前年比でマイナスに転じ(▲10%)、
10 月には▲20%へマイナス幅が拡大しており、原油安
は引き続きインフレの鈍化を後押ししよう。
一方、同日に発表された 9 月の鉱工業生産は前年比
+2.5%と、低調となった 7 月(+0.4%)、8 月(+0.5%)から
は持ち直し、市場予想(+0.8%、Bloomberg 以下同じ)も
上回った。ただ、四半期ベースでは、3 年ぶりの高い伸
びとなった 4-6 月(+4.5%)に対し、7-9 月は+1.1%にとど
まり、景気にはやや足踏み感も窺える。もっとも、モディ
政権発足(5 月)により、設備投資や公共投資など先送
りされていた投資の回復が期待される状況に変わりはな
く、景気の回復基調は継続するとみている。
一方、10 日に発表された 10 月の消費者物価指数
(CPI)は、9 月および市場予想と同じ前年比+1.6%とな
った。食品価格は+2.5%と 9 月の+2.3%から上昇率が若
干高まったが、非食品価格は+1.2%(9 月+1.3%)と 4 ヵ
月連続で低下した。10 月の生産者物価(PPI)は前年比
▲2.2%と 2 年 8 ヵ月連続でマイナスとなり、3 ヵ月連続で
マイナス幅が拡大した。(白岩)
図表 3 中国の貿易統計
(前年比、%)
(100万ドル)
50
50,000
貿易収支(右軸)
40
今回発表された一連の経済指標は、最近の原油価
格急落を背景に市場で高まっていた利下げ期待を一
段と後押し、株式市場には概ねポジティブとなろう。
(山本)
40,000
輸出(左軸)
30
30,000
20
20,000
10
10,000
0
0
-10
図表 2 インドの消費者物価指数
16
向けも伸び率が鈍化した(9 月+34.0%→10 月+24.0%)。
商品別では、iPhone6 の販売好調で携帯電話の輸出が
+41.0%と大幅に増加した。一方、9 月に+678%となった
貴金属が 10 月は+187%と伸びが大幅に鈍化した。輸
入は前年比+4.6%とほぼ市場予想通りとなり、9 月の同
+7.0%から鈍化した。内訳では、鉄鉱石の輸入が大幅
に減少。APEC(アジア太平洋経済協力会議)開催に向
け、北京周辺の高炉が停止されたことなどが背景とみら
れる。この他、倹約令の強化による豚肉需要の低迷から、
飼料となる大豆の輸入は減少傾向が継続している。輸
入の低調を主因に 10 月の貿易収支は+454 億ドル(黒
字額は前年比+46.3%)となった。
-10,000
輸入(左軸)
-20
(前年比、%)
-30
-30,000
13/1
14
-20,000
13/4
13/7
13/10
14/1
14/4
14/7
14/10
(年/月)
(出所:CEIC、中国通関統計よりSMBC日興証券作成)
12
10
図表 4 中国の消費者物価指数
8
(前年比、%)
6
12
4
総合
食品・飲料・たばこ
燃料・電力
衣服・寝具・靴
住宅
その他
10
2
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
(年/月)
8
食品
(出所:インド中央統計局よりSMBC日興証券作成)
6
4
全体
中国~足元の経済指標はまちまち
2
8 日に発表された 10 月の貿易統計によると、輸出は
前年比+11.6%と、市場予想の+10.6%を若干上回ったも
のの 9 月の+15.3%を下回った。景気下振れが目立つ
EU 向けが一桁の伸びへ鈍化し、水増しが噂される香港
非食品
0
12/1
13/1
13/7
14/1
14/7 (年/月)
(出所:CEIC、中国国家統計局よりSMBC日興証券作成)
9/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
12/7
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
南アフリカ~ムーディーズが格付けを引き下げ
格付け大手のムーディーズは 6 日、南アフリカの長期
国債格付けを「Baa1*」から「Baa2*」に引き下げた。見通
しは「ネガティブ」から「安定的」に変更した。格下げの
背景として、電力不足、政策金利引き上げ、ストライキ、
中国等の海外経済低迷などによる成長率見通しの悪化、
それに伴う政府債務の更なる拡大を挙げている。ただし、
政府が中期財政計画で債務を抑制する方針を示して
いることや、インフラ投資計画に基づいて長期的には電
力不足の解消が見込まれることなどを理由に、見通しは
「安定的」とした。なお、他の格付け大手の格付けおよ
び見通しは S&P が「BBB-*(安定的)」(外貨建て)、フィ
ッチは「BBB*(ネガティブ)」(外貨建て)となっている。
フィッチは年内にも格下げの是非を判断することを示唆
しており、格下げが実施される可能性があろう。
末にかけて、米国の個人消費の動向は要注目である。
一方、欧州では、景気・インフレ等の指標下振れが市場
の懸念を招くリスクはあろうが、ECB による金融緩和期
待が下支えとなり、グローバル市場へのネガティブな影
響は限定的とみている。
一方、新興国では、7-9 月実質 GDP の発表がマレー
シア(14 日)、タイ(17 日)、メキシコ(20 日)で予定されて
いる。主要な新興国の 7-9 月実質 GDP の発表が今後、
順次発表され、新興国間の好不調が明らかになるにつ
れ、市場でも選別色が強まる可能性があろう。
このほか、金融政策の決定が、トルコ、南アフリカ(い
ずれも 20 日)で予定されている。南アフリカでは、インフ
レ懸念から利上げの可能性があるとみており、その場合
は、通貨ランドの下支え要因となろう。(山本)
6 日の通貨ランド対ドル相場は、全般的なドル高を背
景にやや軟調に推移していたが、ムーディーズの格下
げ発表を受けて下げ幅を拡大し、前日比▲1.0%で引け
た。(武田)
(注)「*」は日本では無登録の格付け機関による格付け。
◆今週末・来週のスケジュールと見通し
10 月半ば以降のグローバル市場では、10 月前半のリ
スクオフから一転して概ねリスクオンの局面が続いてい
る。10 月半ばにかけてのリスクオフ局面の背景としては、
日米欧中の「四極」の中で、唯一ともいえる世界経済の
牽引役であった米国が他の 3 つに足を引っ張られるの
ではないかという不安があった。この不安が和らぐため
には、第一に米国経済の堅調さが確認されること、第二
に景気の下振れリスクを抱える日欧中の政策当局によ
る適切な政策対応が不可欠とみていた。10 月半ば以降
一転して、リスクオンモードとなった背景には、この 2 つ
の条件が順次満たされたことがあろう。具体的には、米
国の 7-9 月実質 GDP 等により、米国経済の堅調さが確
認されたこと、サプライズとなった日銀の追加金融緩和、
ECB(欧州中央銀行)理事会後のドラギ総裁によるハト
派的な発言等が挙げられる。もっとも、足元ではこうした
グローバルな注目イベントが概ね一巡したこともあり、当
面の新興国市場は、各国固有の材料に左右されやす
い時間帯に移ってこよう。
今週末から来週にかけては、米国で個人消費や住宅
関連等の経済指標発表、10 月の FOMC(連邦公開市
場委員会)議事要旨の公表(19 日)などが予定されてい
る。欧州では、ユーロ圏の 7-9 月実質 GDP や 10 月の
消費者物価(14 日)、ドイツの 11 月 ZEW 景気期待指数
(18 日)などが注目されよう。
車社会の米国では、原油安によるガソリン価格の低
下が個人消費を押し上げる効果が期待されており、年
10/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
6.JPX 日経 400 先物上場のインパクト
太田 千尋
JPX 日経 400 先物取引が大阪取引所で 11 月 25 日に始まる。このインパクトとしては、指数構成銘柄の流動
性向上が見込まれる。また、これに伴って大規模パッシブファンドの組成がしやすくなると考えらよう。JPX 日
経 400 に連動するパッシブファンドは未だ規模が小さいが、GPIF 等が今後、数兆円規模でパッシブファンドを
組成すれば、時価総額の割に流動性が低い銘柄にポジティブなインパクトが予想される。
◆JPX 日経 400 先物が 11 月 25 日に上場
図表 1 JPX 日経 400 パッシブファンドの残高推移
JPX 日経 400 先物取引が大阪取引所で 11 月 25
日に始まる。取引時間は他の株価指数先物と同様(9
時~15 時 15 分、16 時半~翌日 3 時)で、限月数は
3・6・9・12 月を対象とする 5 限月(上場日時点では、最
長が 2015 年 12 月限)で、日経平均先物と比べて少な
くなっている。取引単位は指数値の 100 倍で、日経平
均(1,000 倍)や TOPIX 先物(10,000 倍)と比べて小さく、
最小取引金額は 100 万円強と日経平均先物や TOPIX
先物の 1 割以下となっている。呼値の単位も 5 ポイント
と小さくなっており、他の主要な株価指数先物の取引制
度と比べ、概ね同等か、利便性が高まるような制度にな
っていると言えよう。
◆先物上場により指数構成銘柄の流動性は高まる
株価指数先物が上場すると裁定取引が行われるため、
指数構成銘柄の流動性が高まる。2011 年 10 月以降の
データでは、ある銘柄が TOPIX 構成銘柄になった場
合、出来高は平均的に採用前のおよそ 2 倍に増加し、
日経平均の場合でも 3 割程度増加している。JPX 日
経 400 の場合でも、先物自体の取引がどの程度行わ
れるかにもよるが、流動性が高まる効果が考えられよう。
◆パッシブファンド増加に伴い一部にポジティブインパクト
JPX 日経 400 に連動するファンドの規模は、2014
年 10 月末時点でも 1 兆円にははるかに及ばない規模
と考えられる。これは、ファンド組成に伴うマーケットイン
パクトが発生しないよう、構成銘柄の日次平均出来高の
1 割を上限としてパッシブファンドを構築すると、先物が
無い時点での JPX 日経 400 の場合、最大でも 250 億
円程度のファンドしか組成できないためと思われる。先
物が上場し、十分な流動性が供給されれば、より大規
模なパッシブファンドを組成しやすくなろう。GPIF 等公
的年金などが、今後、数兆円規模でパッシブファンドを
組成すれば、時価総額の割に流動性が低い銘柄にポ
ジティブインパクトが予想される。なお、TOPIX パッシ
ブからのスイッチを想定した場合、東証 1 部以外の構成
銘柄のポジティブインパクトが相対的に大きくなることが
見込めよう。
(億円)
5,000
ETF
4,000
1,692
投信
3,500
3,000
1,618
1,600
1,684
2,500
1,581
2,000
1,500 1,458
1,500
500
0
89
147
14/1
2,050
1,507
1,533
1,000
1,703
1,759
772
587
553
609
474
205
362
412
496
617
695
803
253
14/2
14/3
14/4
14/5
14/6
14/7
14/8
14/9 14/10
(年/月)
992
(注:14 年 1 月末以降の各月末の JPX 日経 400 に連動する ETF および
公募投信の残高に、GPIF が保有する JPX 日経 400 ファンドの残高合計を
示す。GPIF 保有分は、2014 年 3 月末の残高合計に配当込 JPX 日経 400
指数のパフォーマンスを乗じて各月末の残高を推定。)
(出所:QUICK、SMBC日興証券)
図表 2 ファンド乗り換えのケースのインパクト試算
~2 兆円の JPX 日経 400 パッシブファンドが組成され、
1 兆円の TOPIX パッシブファンドが解約された場合の試算~
コード
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
7458
4095
2782
7451
8544
8356
8385
8051
8359
8382
8418
6425
9031
9003
4967
2702
4088
6465
9042
4045
銘柄略称
第一興商
パーカライ
セリア
三菱食品
京葉銀
十六銀
伊予銀
山 善
八十二
中国銀
山口FG
ユニバーサル
西 鉄
相鉄HD
小林製薬
マクドナルド
エア・ウォーター
ホシザキ
阪急阪神
東亜合成
上場市場
JQスタンダード
東証1部
JQスタンダード
東証1部
東証1部
東証1部
東証1部
東証1部
東証1部
東証1部
東証1部
JQスタンダード
東証1部
東証1部
東証1部
JQスタンダード
東証1部
東証1部
東証1部
東証1部
推定フロー インパクト
(百万円)
(日)
952
4.20
543
3.61
728
3.61
245
3.36
664
3.03
732
2.73
1,716
2.65
283
2.58
1,681
2.53
1,577
2.41
1,463
2.28
237
2.27
816
2.24
986
2.22
993
2.21
1,508
2.12
1,443
2.12
1,581
2.11
3,794
2.02
561
1.99
(注:このケースはネット 1 兆円の新規組成となる。インパクトは各銘柄推定売
買代金を、過去 20 営業日平均売買代金で除したもの。11 月 11 日時点の
データを使用。表はポジティブインパクト上位 20 銘柄。)
(出所:東京証券取引所、QUICK、SMBC日興証券)
11/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
GPIF
4,500
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
7.米国株式~ハイテク株 7-9 月期決算動向
河田 剛
ハイテク企業の 2014 年 7-9 月期決算は S&P500 指数に採用されている 65 社中 58 社が発表済みの時点
で、1 株当たり利益は前年比+4.6%となっている。個別ではインテル、テキサス・インスツルメンツ、アップル、
マイクロソフトの 1 株当り利益は事前予想を上回った。10-12 月期もハード関係の需要拡大でセクター全体
の 1 株当り利益は同+6.5%と堅調に伸びる予想となっている。
ハードウェア・機器が同+9.3%となっている。ハード関係
は景気拡大を背景に需要が増加しているものとみられ
るが、一方でソフトウェア・サービスの伸び悩みはインタ
ーネット関連企業の先行投資負担などが影響している
とみられる。ただ、ソフトウェア・サービスも 2015 年は回
復に向かう見込みとなっている。
◆ハードウェアの需要は堅調
ハイテク企業(情報テクノロジーセクター)の 2014 年
7-9 月期決算は S&P500 指数に採用されている 65 社中
58 社が発表済みの時点(11 月 12 日)で、1 株当たり利
益は前年比+4.6%となっている。主要企業はほぼ決算
発表を終えており、同セクターの直前予想(同+4.3%)を
やや上回るものとみられる。
(直前予想、事前予想は Bloomberg)
個別では、10 月 14 日発表の半導体大手インテルは
堅調な法人需要を背景に売上高が前年比+8%の 146
億ドル(事前予想 144 億ドル)、当期利益が同+12%の
33 億ドル、1 株当り利益が 0.66 ドル(事前予想 0.65 ドル)
と事前予想を上回る決算となった。半導体メーカーで重
視される粗利益率も 4-6 月期 64.5%→7-9 月期 65.0%と
改善した。10 月 20 日発表の半導体大手テキサス・イン
スツルメンツは自動車、産業機械向けなどが堅調で売
上高が前年比+8%の 35 億ドル、当期利益が同+31%の
8.3 億ドル、1 株当り利益は 0.76 ドル(事前予想 0.71 ド
ル)となった。20 日発表の IT 機器大手アップルは、
iPhone の新製品が 9 月に発売されたことなどから売上
高が 421 億ドル(前年比+12%)、当期利益が 85 億ドル
(同+13%)、1 株当り利益は 1.42 ドルとなった。売上高、
1 株当り利益ともに事前予想(売上高 399 億ドル、1 株当
り利益 1.30 ドル)を上回った。10 月 23 日発表のソフトウ
ェア大手マイクロソフトは、売上高はクラウド型ソフト・サ
ービスの需要増などから前年比+25%の 232 億ドルと事
前予想(220 億ドル)を上回り、リストラ費用を除いた 1 株
当り利益も 0.65 ドルと事前予想(0.55 ドル)を上回った。
10 月 16 日発表のインターネット大手グーグルは、売上
高は 132 億ドルとほぼ事前予想通りだったが、広告単価
の下落や営業費用の増加などにより 1 株当り利益(特別
費用除く)は 6.35 億ドルと事前予想(6.53 ドル)を下回っ
た。
インターネットサービスの一部で業績拡大ペースが鈍
化しているが、ハードウェアに対する需要は堅調で、ハ
イテクセクターは良好な環境が続いているとみられる。
80
粗利益率
60
40
(%)
売上高前年比伸び率
20
0
‐20
‐40
05/6
06/6
07/6
08/6
09/6
10/6
11/6
(出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成)
12/6
13/6
14/6
(年/月)
図表 2 iPhone 販売台数の推移
(万台)
6000
iPhone5S、5C iPhone6、6Plus
(13/9/10発売) (14/9/19発売)
iPhone5
(12/9/21発売)
5000
iPhone4S
(11/10/14発売)
4000
iPhone4
(10/6/24発売)
iPhone3GS
(09/6/19発売)
3000
2000
iPhone3G
(08/7/11発売)
iPhone
(07/6/29発売)
1000
0
07/6 07/12 08/6 08/12 09/6 09/12 10/6 10/12 11/6 11/12 12/6 12/12 13/6 13/12 14/6
(出所:会社資料よりSMBC日興証券作成)
10-12 月期については、情報テクノロジーセクター全
体の 1 株当り利益は前年比 6.5%と堅調な伸びが予想さ
れている(11 月 7 日時点の Bloomberg 集計)。内訳では、
半導体が同+27.6%、ソフトウェア・サービスが同+0.6%、
12/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
図表 1 インテルの業績推移
(年/月)
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
8.国内政治・政策動向~消費再増税の扱いをどう説明するか?
司
淳
女性閣僚のダブル辞任で安倍内閣を取り巻く環境が暗転したが、安倍総理は長期政権の土台を築くため、起
死回生の衆院解散に打って出るようだ。当面は、経済再生と財政再建の両立を図る上で消費再増税の扱いを
どう説明するかが注目される。総選挙予想では政権交代に至る可能性は極めて低く、第 3 次安倍内閣が発足
する見込み。税制改革や予算関連の成立時期は 1 ヵ月超遅れる見込みだが、大きな問題ではないだろう。
◆やはり「潮目が変わった」~年内解散確実視~
◆安倍新内閣発足で政策 1 ヵ月超遅れも問題なし
10 月 20 日、女性閣僚 2 人のダブル辞任で安倍政権
を取り巻く環境が暗転、「潮目が変わった」「消費再増税
先送り」との見方が出て、それまで安定していた政治情
勢がにわかに不透明となった。その後の報道等を総合
すると、現時点では「安倍総理は消費再増税の判断を
12 月上旬を待たずに 11 月 18 日にも延期と判断し、19
日にも衆院を解散する。ただし再増税の時期は菅官房
長官が明示せずに、先送りだけを表明すべきと主張し、
財務省と調整中」という内容のようだ。当初、「解散風」は
自民党内の締め付けが狙いであり、野党が選挙準備に
追われることから国会でのスキャンダル追及の手を緩め
させる効果も期待され、安倍、菅、谷垣 3 氏による意図的
な情報戦術とされた。しかし、安倍総理は 11 月に入って
どうやら本気モードに転じたようだ。元来、安倍総理は消
費増税には反対であり、「あと 2%はハードルが高い」とさ
れていた。政治の世界では、解散の大義は自ら作り出す
もので、税財政政策の転換はもってこいの大義となろう。
選挙は「フタを開けてみなければ判らない」と言われ
るが、世論調査や地方取材、惜敗率など前提条件を置
いた大手各誌シミュレーションによれば、どのケースでも
政権は交代しない。最悪、「野党が一本化でき圧勝する」
ケースでも、自民党は過半数割れとなるが、自公では過
半数を維持できる。その他のケースでは、自民党が 40
議席弱減少、民主党は 30~40 議席増加となっているが、
前回総選挙「自民大勝・民主大敗」の反動が主因であり、
自民党単独で過半数を維持する見込みとなっている。
現時点でのスケジュール感は、憲法上、解散後 40 日
以内に総選挙、総選挙から 30 日以内に特別国会を召
集し、首班指名選挙を行い組閣するため、12 月 14 日投
開票となれば、新政権発足は 1 月となろう。1 月中旬ま
でに今年度補正予算を決定し、1 月下旬には来年度税
制改正大綱と当初予算案を決定する運びだ。補正予算
審議が優先され、当初予算の年度内成立は困難で暫
定予算編成を余儀なくされるが、大きな問題ではない。
◆消費再増税の扱いに注目
図表1 当面の主な政治・政策スケジュール
一部報道によると、選挙公約の経済分野の骨格とな
る自民党の経済対策骨子では、「地方」「女性」「安全・
安心」の 3 分野 57 項目からなっており、18 日に総理が
政府に経済対策の検討を指示すれば、政府・与党が一
体となって取り組む予定である。ただ、今国会で審議中
の重要法案のうち安倍政権の「二枚看板」の一つである
「地方創生」関連 2 法案は 19 日にも成立見込みである
が、「女性活躍推進法案」等、他の重要法案は委員会
での審議途中で会期末を迎えた場合、審議未了・廃案
となるため、野党から「本末転倒」との批判は免れまい。
2014年
11月16日
11月17日
〃
11月18日
〃
11月19日
当面の注目点は、消費再増税の扱いである。菅官房
長官の上記主張通りに先送り時期を明示しない場合、
さすがに市場は織り込んでおらず、その反応が懸念さ
れるため、適切な表現方法を思案中とみられる。おそら
く菅官房長官の主張の背景には、仮に 1 年半と延期時
期を明示したとしても、6 ヵ月前の 2016 年 10 月 1 日ま
でには再び判断を迫られる。その際、いわゆる「景気条
項」も付けるならば、同じことの繰り返しとなり、「永遠に
先送りではないか」との批判が危惧されるためであろう。
その批判をクリアできるような説明が求められる。
日本7-9月GDP一次速報
今後の経済財政動向等の点検会合④
今後の経済財政動向等の点検会合⑤(最終)
安倍首相が消費再増税の扱いを判断、経済対策を指示(?)
衆院解散(?)~臨時国会会期末は11月30日
11月下旬
「アベノミクスを成功させる会」が消費増税先送りを提言
12月1日
7-9月法人企業統計
12月2日
衆院選公示(?)
12月8日
日本7-9月GDP二次速報
12月9日
衆院選公示(?)
12月14日
衆院総選挙投開票日(?)
12月21日
衆院総選挙投開票日(?)
1月中旬
特別国会召集(首班指名選挙)~第3次安倍内閣発足(?)
2015年
〃
1月17日
1月18日
下旬
2014年度補正予算案決定
民主党大会
自民党大会
政府税制改正大綱(法人税減税と消費税の軽減税率の導入時期を判断)
〃
2015年度当初予算案決定
3月
2015年度暫定予算成立
4月以降
〃
2015年度当初予算成立
法人実効税率引き下げ開始
4月12日
統一地方選(道県知事選、道府県議選、政令市長、市議選)
4月26日
統一地方選(政令市以外の市区町村の首長・議員選)
5月?
9月
集団的自衛権関連法案を一括提出
自民党総裁選(9/25任期満了)
(出所:各種報道よりSMBC日興証券作成)
13/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
沖縄県知事選挙(米軍普天間飛行場の辺野古移設が焦点)
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
9.インド~発足から間もなく半年を迎えるモディ政権
山本 正樹
インドでは、ここ数年で不振に見舞われた経済の再生へ向けて投資拡大による供給サイドの強化が不可欠
であり、そのためには財政赤字削減や海外からの直接投資拡大等が求められる。こうした視点から、モディ
政権の半年を振り返ると、これまでのところ着実に改革を進めていると評価できよう。足元の株式市場は短
期的にはやや過熱感も窺えるものの、長期的な観点からは引き続き押し目買いスタンスで臨んでよいだろう。
◆インド経済再生へ向けた新政権の役割
海外からの直接投資誘致に関しても、首相が各国を
訪問、“Make in India(メーク・イン・インディア)”をスロー
ガンに積極的に対印投資を呼びかけている。主要国で
最初の訪問先となった日本とは、今後 5 年以内に対印
直接投資と進出日系企業数を倍増させることで合意し
た。政府は既に防衛産業や建設業等で外資規制の緩
和に踏み切っている他、税制、労働法、土地収用法等
の見直しにも意欲を示すなど、投資環境の改善に努め
る姿勢をみせている。
総選挙で所属するインド人民党(BJP)を圧勝に導い
たモディ氏が首相に就任(5 月 26 日)後、間もなく半年
を迎える。景気の停滞やインフレ高止まり等、不振に見
舞われた経済の再建へ向け、期待を一身に集めての就
任であった。インドでは既に前政権時代、政府による経
常収支赤字の抑制策や、昨年 9 月に就任したインド準
備銀行ラジャン総裁による巧みな金融政策運営等が奏
功し、通貨安の流れには歯止めがかかっていた。もっと
も、前政権時代の政策対応はいわば「応急処置」の色
彩が強く、「根本治療」は新政権に委ねられたといえる
だろう。足元で沈静化したとはいえ、構造的なインフレ・
経常赤字体質を改善するには、ここ数年低迷していた
投資を拡大し、供給サイドを強化することが不可欠とな
る(図表 1)。そのためには財政赤字削減や海外からの
直接投資拡大等が求められよう。
◆市場の評価も概ね良好
総じてみると、モディ政権はこれまでのところ着実に
改革を進めていると評価できよう。一部の格付け大手も
格付け見通しを引き上げており、株価や通貨の年初来
騰落率は新興国の中でトップクラスとなっている。足元
の株式市場は短期的にはやや過熱感も窺えるものの、
長期的な観点からは引き続き押し目買いスタンスで臨
んでよいだろう。
財政赤字の削減に関しては、前政権のポピュリズム
的なスタンスを修正する動きがみられる。政権発足早々
に国鉄運賃の引き上げを決めた他、農作物の政府買い
取り価格の引き上げ幅を前政権に比べて大幅に抑制し
た。また、10 月にはディーゼル油の価格統制廃止にも
踏み切っており、補助金削減を通じて財政再建へ寄与
すると期待される。
14/19
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
図表 1 実質 GDP 成長率および投資比率の推移
33
32
投資比率(左軸)
実質GDP成長率(右軸)
31
7‐9月
4‐6月
1‐3月
7‐9月
2012年
10‐12月
4‐6月
1‐3月
7‐9月
2011年
10‐12月
4‐6月
1‐3月
7‐9月
2010年
10‐12月
4‐6月
1‐3月
7‐9月
2009年
10‐12月
30
2013年
4‐6月
34
10‐12月
35
1‐3月
(前年比、%)
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
(%)
36
4‐6月
モディ政権の半年を振り返ると、まず目立ったのは
「モディノミクス」推進の土台となる統治機構の改革に対
する強いこだわりである。首相は総選挙で「最小の政府
で最大の統治」をスローガンの 1 つとしていたが、新政
権では閣僚数を大幅に削減した。また政権発足後、100
日間で優先的に取り組むべき行動計画を発表し、各省
庁に具体的な計画の提出を指示した。この他、旧ソ連を
模した国家計画委員会の廃止を決めるなど、社会主義
の残滓や官僚主義を払拭しようとする姿勢も鮮明にして
いる。一方、インドは州の自治権が強く、改革を浸透さ
せるには BJP が地方でも勢力を拡大することが不可欠と
なっている。現在 BJP 政権の州は少数にとどまってい
るが、10 月開票の 2 つの州議会選挙で同党は総選挙
の勢いを維持して大勝した。地方での勢力拡大へ向け、
順調なスタートを切ったといえよう。
1‐3月
◆モディ政権による改革は着実に進展
2014年
(注)投資比率は GDP に占める投資の割合(4 四半期移動平均値)
(出所:CEIC、インド中央統計局よりSMBC日興証券作成)
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
10.来週・再来週の主なスケジュール
<来週のスケジュール>
発表日
国・ 地域
日本
11月 17日 (月 )
米国
ユーロ圏
NZ
タイ
ブラジル
日本
11月 18日 (火 )
英国
独
日本
11月 19日 (水 )
米国
英国
ロシア
南ア
ブラジル
日本
11月 20日 (木 )
米国
ユーロ圏
英国
中国
トルコ
南ア
マレーシア
11月 21日 (金 )
ロシア
メキシコ
11月 22日 (土 )
11月 23日 (日 )
10月
7-9月期
-
-
10月
11月
9月
7-9月期
7-9月期
9月
-
-
-
10月
11月
-
-
10月
-
10月
10月
10月
10月
-
10月
10月
10月
10月
10月
10月
10月
10月
10月
10月
10月
11月
11月
11月
10月
11月
-
-
10月
10月
7-9月期
全国百貨店売上高(前年比、発表日未定、~21日)
実質 GDP ( 前期比年率、 1次速報)
今後の経済財政動向等についての点検会合(第4回)
下院共和党指導部改選
鉱工業生産指数( 前月比)
ニュ ーヨーク連銀製造業景況指数
貿易収支(季調済)
実質小売売上高(前期比)
実質GDP(前期比)
経済活動指数(前月比)
安倍首相が消費再増税の扱いを判断し、 経済対策の検討を指示( ?)
日銀金融政策決定会合(~19日)
今後の経済財政動向等についての点検会合(第5回、最終)
消費者物価指数(前年比)
ZEW景気期待指数
安倍首相が衆院を解散( ?)
黒田日銀総裁が記者会見
JNTO訪日外客数
FOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨(10月28~29日開催分)
住宅着工件数( 前月比)
住宅着工許可件数(年率換算)
住宅着工件数(年率換算)
住宅着工許可件数( 前月比)
MPC(金融政策委員会)議事要旨(11月5~6日開催分)
鉱工業生産(前年比、発表日未定、~20日)
消費者物価指数(前年比)
失業率
全国コンビニエンスストア売上高(前年比)
全国スーパー売上高(前年比)
貿易収支
貿易収支(季調済)
輸出( 前年比)
輸入( 前年比)
中古住宅販売件数( 前月比)
消費者物価指数(除食品&エネルギー、前年比)
フィラデルフィア連銀製造業景況指数
製造業PMI(速報)
サービス業PMI(速報)
小売売上高(除自動車、前月比)
HSBC製造業 PMI( 速報)
政策金利発表
政策金利発表
消費者物価指数(前年比)
実質小売売上高(前年比)
実質GDP(前期比)
市場予想 前月・ 前期・ 前年
▲0.7%
-
2.2%
▲7.1%
-
-
0.3%
10.00
-
-
1.9%
0.10%
-
-
1.0%
6.17
158億ユーロ
1.2%
0.9%
0.27%
-
-
-
-
-
-
-
-
-
0.8%
104.0万戸
102.5万戸
0.9%
-
-
-
1.2%
▲3.6
-
-
109.9万人
-
6.3%
103.1万戸
101.7万戸
2.8%
-
1.5%
-
5.1%
-
-
-
-
-
-
▲0.4%
1.7%
18.3
-
-
-
-
8.25%
-
-
1.2%
0.8%
-
2.8%
5.9%
4.9%
▲1.3%
▲1.0%
▲9,606億 円
▲10,701億 円
6.9%
6.2%
2.4%
1.7%
20.7
50.6
52.3
▲0.3%
50.4
8.25%
5.75%
2.6%
1.7%
1.0%
(注)発表日は現地時間。市場予想と実績は 2014 年 11 月 13 日 12 時時点の Bloomberg の値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります。
(出所:Bloomberg および各種報道などよりSMBC日興証券作成)
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本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
<再来週のスケジュール>
発表日
11月 24日 (月 )
国・ 地域
日本
英国
独
ベトナム
日本
11月 25日 (火 )
米国
ベトナム
南ア
-
11月
11月
11月
-
-
11月
7-9月期
9月
9月
1-11月
1-11月
7-9月期
10月
10月
11月 26日 (水 )
米国
英国
米国
ユーロ圏
11月 27日 (木 )
豪州
NZ
フィリピン
-
日本
11月 28日 (金 )
米国
ユーロ圏
11月 29日 (土 )
11月 30日 (日 )
インド
ブラジル
台湾
日本
10月
10月
10月
10月
10月
11月
7-9月期
-
10月
11月
7-9月期
10月
7-9月期
-
10月
10月
10月
10月
10月
11月
-
10月
11月
7-9月期
7-9月期
-
-
休場(勤労感謝の日、振替休日)
全国住宅価格(前年比、発表日未定、~29日)
IFO景況指数
消費者物価指数(前年比)
黒田日銀総裁が講演(名古屋での経済界代表者との懇談)
日銀金融政策決定会合議事要旨(10月31日分)
コンファレンスボード消費者信頼感指数
実質 GDP ( 前期比年率、 改定値、 前回値は速報値)
FHFA住宅価格指数(前月比)
S&P/ ケース シラー住宅価格指数( 前年比)
輸出(前年比、発表日未定、~28日)
輸入(前年比、発表日未定、~28日)
実質GDP(前期比年率)
個人所得(前月比)
PCEコア ・ デフレータ
( 食品・ エ ネルギ ーを除く個人消費デフレータ、 前年比)
個人支出(前月比)
新築住宅販売件数( 前月比)
中古住宅販売成約指数(前月比)
耐久財受注( 除輸送用機器、 前月比)
耐久財受注( 前月比)
シカゴ購買部協会景況指数
実質GDP(前年比、改定値)
休場(感謝祭)
マネーサプライM3(前年比)
経済信頼感指数
民間設備投資(前期比)
貿易収支
実質GDP(前期比)
OPEC(石油輸出国機構)総会
全国消費者物価指数( 生鮮食品除く、 前年比)
失業率
家計調査-実質消費支出(前年比)
有効求人倍率
小売業販売額(前年比)
都区部消費者物価指数(生鮮食品除く、前年比)
ブラック・フライデー(米クリスマス商戦突入)
失業率
消費者物価指数( 速報、 前年比)
実質 GDP ( 前年比)
実質 GDP ( 前期比)
台湾統一地方選挙
臨時国会期末
市場予想 前月・ 前期・ 前年
-
-
9.0%
-
103.2
-
3.2%
-
-
-
-
-
94.5
-
3.5%
-
0.5%
-
5.57%
-
13.4%
-
11.2%
-
0.6%
-
0.2%
-
-
(注)発表日は現地時間。市場予想と実績は 2014 年 11 月 13 日 12 時時点の Bloomberg の値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります。
(出所:Bloomberg および各種報道などよりSMBC日興証券作成)
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本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
1.5%
▲0.2%
-
0.2%
-
0.3%
-
▲0.1%
-
▲1.1%
-
66.2
-
3.0%
-
-
-
2.5%
-
100.7
-
1.1%
-
- ▲13.50億NZドル
1.9%
-
-
-
3.0%
-
3.6%
-
▲5.6%
-
1.09倍
-
2.3%
-
2.5%
-
-
-
11.5%
-
0.4%
-
5.7%
-
▲0.6%
-
-
-
-
-
2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
無登録格付に関する説明書
格付会社に対しては、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録
制が導入されております。
これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合には、金融商品
取引法により、無登録格付である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。
つきましては、格付会社(ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク、スタンダード&プアーズ・レーティング
ズ・サービシズ、フィッチ・レーティングス)の「無登録格付に関する説明書」を下記の通りお知らせ致します。
記
<無登録格付に関する説明書(ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③
格付対象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務
等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、
これらの規制・監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インクグループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページ(ムーディーズ日本語ホームページ(http://www.moodys.co.jp)の「信用格付事
業」をクリックした後に表示されるページ)にある「無登録業者の格付の利用」欄の「無登録格付説明関連」に掲載されております。
○信用格付の前提、意義及び限界について
ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク(以下、「ムーディーズ」という。)の信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務
類似証券の将来の相対的信用リスクについての、現時点の意見です。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義
務を期日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用
格付は、流動性リスク、市場リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。また、信用格付は、投資
又は財務に関する助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するものではありません。ムーディーズ
は、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定
の目的への適合性について、明示的、黙示的を問わず、いかなる保証も行っていません。
ムーディーズは、信用格付に関する信用評価を、発行体から取得した情報、公表情報を基礎として行っております。ムーディーズ
は、これらの情報が十分な品質を有し、またその情報源がムーディーズにとって信頼できると考えられるものであることを確保するた
め、全ての必要な措置を講じています。しかし、ムーディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有
効性について常に独自の検証を行うことはできません。
この情報は、平成 26 年 2 月 18 日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証す
るものではありません。詳しくは上記ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
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2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
<無登録格付に関する説明書(スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③
格付対象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務
等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、
これらの規制・監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)
第5号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規
制関連」の「無登録格付け情報」(http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。
○信用格付の前提、意義及び限界について
スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「レーティングズ・サービシズ」)の信用格付は、発行体または特定の債
務の将来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確率を示した指標ではな
く、信用力を保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流動
性や流通市場での価格を示すものでもありません。
信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因に
より変動する可能性があります。
レーティングズ・サービシズは、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達
することができるだけの十分な品質および量の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、
レーティングズ・サービシズは、発行体やその他の第三者から提供された情報について、監査・デュー・デリジュエンスまたは独自の
検証を行っておらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全性、適時性を保証
するものではありません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスク
が存在する場合もあることに留意する必要があります。
この情報は、平成 26 年 2 月 18 日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証す
るものではありません。詳しくは上記スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
<無登録格付に関する説明書(フィッチ・レーティングス)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③
格付対象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務
等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、
これらの規制・監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」と称します。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社 (金融庁長官(格付)第7号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.fitchratings.co.jp)の「規制関連」セクションにある「格付
方針等の概要」に掲載されております。
○信用格付の前提、意義及び限界について
フィッチの格付は、所定の格付基準・手法に基づく意見です。格付はそれ自体が事実を表すものではなく、正確又は不正確であ
ると表現し得ません。信用格付は、信用リスク以外のリスクを直接の対象とはせず、格付対象証券の市場価格の妥当性又は市場流
動性について意見を述べるものではありません。格付はリスクの相対的評価であるため、同一カテゴリーの格付が付与されたとして
も、リスクの微妙な差異は必ずしも十分に反映されない場合もあります。信用格付はデフォルトする蓋然性の相対的序列に関する意
見であり、特定のデフォルト確率を予測する指標ではありません。
フィッチは、格付の付与・維持において、発行体等信頼に足ると判断する情報源から入手する事実情報に依拠しており、所定の
格付方法に則り、かかる情報に関する調査及び当該証券について又は当該法域において利用できる場合は独立した情報源による
検証を、合理的な範囲で行いますが、格付に関して依拠する全情報又はその使用結果に対する正確性、完全性、適時性が保証さ
れるものではありません。ある情報が虚偽又は不当表示を含むことが判明した場合、当該情報に関連した格付は適切でない場合が
あります。また、格付は、現時点の事実の検証にもかかわらず、格付付与又は据置時に予想されない将来の事象や状況に影響され
ることがあります。
信用格付の前提、意義及び限界の詳細にわたる説明については、フィッチの日本語ウェブサイト上の「格付及びその他の形態の
意見に関する定義」をご参照ください。
この情報は、平成 26 年 2 月 18 日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証す
るものではありません。詳しくは上記フィッチのホームページをご覧ください。
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2014 年 11 月 13 日(木) 投資情報室
Weekly Outlook No.180
本調査レポートについて
【免責事項】
本調査レポートは証券その他の投資対象の売買の勧誘ではなく、SMBC日興証券株式会社(以下「弊社」といいます)が情報の提供を目的に作
成したものです。本調査レポートは、弊社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成していますが、これらの情報が完全、
正確であるとの保証はいたしかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本調査レポートに記載する価格、数値等は、過去
の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。かかる価格、数値等は予告なしに変更することがありますの
で、予めご了承くださいますようお願いいたします。本調査レポートは将来の結果をお約束するものでもありませんし、本調査レポートにある情
報をいかなる目的で使用される場合におきましても、お客様の判断と責任において使用されるものであり、本調査レポートにある情報の使用に
よる結果について、弊社及び弊社の関連会社が責任を負うものではありません。本調査レポートは、本調査レポートを受領される特定のお客様
の財務状況、ニーズ又は投資目的を考慮して作成されているものではありません。本調査レポートはお客様に対して税金・法律・投資上のアドバ
イスを提供する目的で作成されたものではありません。投資に関する最終決定は、契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、お客
様向け資料等をよくお読みになり、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。
弊社及び弊社の関連会社のリサーチ部門以外の部門が本調査レポートで推奨されている投資や見解と整合しない又は矛盾するコメントを顧客
又は自己勘定部門に対して行う場合があります。弊社及び弊社の関連会社はかかるコメントを参考に投資決定を行うことがあります。弊社並び
に弊社の関連会社及びこれらの役職員は、本調査レポートで言及されている証券、その派生商品又は本調査レポートの対象会社の別の証券の
売買を行う可能性があります。
本調査レポートは、弊社又は弊社の関連会社から配布しています。本調査レポートに含まれる情報は、提供されましたお客様限りでご使用くださ
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れ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。本調査レポートに関するお問い合わせは、弊社の営業担当者までお願いい
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る日本国内の金融商品取引所に上場する株式(売買単位未満株式を除く)の場合は約定代金に対して最大 1.2420%(ただし、最低手数料 5,400
円)の委託手数料をお支払いいただきます。債券を募集、売出し等又は相対取引により購入される場合は、購入対価のみをお支払いいただきま
す(購入対価に別途、経過利息をお支払いいただく場合があります)。また、外貨建ての商品の場合、円貨と外貨を交換、または異なる外貨間で
交換する際には外国為替市場の動向に応じて弊社が決定した為替レートによるものとします。上記手数料等のうち、消費税が課せられるものに
ついては、消費税分を含む料率又は金額を記載しております。
[リスク等について]
各商品等には株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状
況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、または元本を超過する損失
を生ずるおそれ(元本超過損リスク)があります。なお、信用取引またはデリバディブ取引等(以下「デリバディブ取引等」といいます)を行う場合
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いいます)を上回る場合があるとともに、対象となる有価証券の価格または指標等の変動により損失の額がお客様の差入れた委託保証金等を
上回るおそれ(元本超過損リスク)があります。また、店頭デリバティブ取引については、弊社が表示する金融商品の売付けの価格と買付けの価
格に差がある場合があります。資産担保証券については、利金、配当または償還金等の額が、一定の資産の状況の変化によって影響を受ける
場合があります。これによって、中途売却、償還時点において、損失を被ることがあります。
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