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Title
Development of the Rich Bio-source in Asian Traditional
Fermented Foods: Proteolytic Properties and Genomic
Characteristics of Bacillus subtilis and Bacillus amyloliquefaciens
Species( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
HAN, XUJUN
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第602号
Issue Date
2013-03-13
Type
博士論文
Version
none
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/47985
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏
名(本(国)籍)
学
位
の
学
位
記
種
番
学位授与年月
(中華人民共和国)
HANXUJUN
博士(農学)
類
号
農博甲第602号
日
平成25年3月13日
学位授与の要件
学位規則第3条第1項該当
研究科及び専攻
連合農学研究科
生物資源科学専攻
研究指導を受けた大学
岐阜大学
学
DevelopmentoftheRichBio・SOurCeinAsian
位 論 文 題
目
TraditionalFermentedFoods:Proteolytic
PropertiesandGenomicCharacteristicsof
戯曲βg打方丘Z由and励d血ββ励ねぴe虚血e刀β
Species
(アジアの伝統的発酵食品における豊富なバイオ
ソースの開発:励血払gβぴぁ地株と励d〟ぴβ
月旦画ねびe虚血β株のタンパク質分解特性と
遺伝的特徴)
審
査
委
員
会
論
文
主査
岐阜大学
教
授
金
丸
義
敬
副査
岐阜大学
教
授
長
野
宏
子
副査
静岡大学
教
授
小
川
直
人
副査
岐阜大学
教
授
鈴
木
副査
静岡大学
准教授
徳
山
の
内
容
の
要
徹
真
治
旨
何世紀もの間、発酵食品は有益な微生物を用いて伝統的に作られ、独特の食文化はそ
の土地の環境と伝統的な食品製造に依存しており、これらは独特の微生物が育つ特殊な寮境
の中で受け継がれてきた。且∫ロ加血は、伝統食に含まれている主な微生物の1つとして報告
されており、B.subtjhを食品産業に使うことは、米国食品医薬品局の
GRAS(genera11y
regardedas
saf6)等によう推奨されている。B.subtjソおは多くの菌体外酵素をその周囲に産生
する。これらの酵素は食料基質を小さな単位に消化し、食感や味を良くするのみならず、食物
の機能も向上させる。発酵食品中のβ.∫エ止血は多くの菌体外酵素を産生し、その生化学的
特徴が報告されてきた。私たちがアジアの国々から採取したβ.∫〃蝕Z由は、高いタンパク質分
解活性を示した。しかし、それらのβ.∫〃加ノ肋の菌株はタンパク質基質に対して異なるタンパク
質分解能を示し、その中には高い活性を示す数種類の菌体外プロテアーゼを産生した。この
研究は、大豆のアレルギータンパク常に対する且∫び如瓜ゞの異なるタンパク質分解活性を評価
し、健康食晶を開発するのに有用であることを目的としている。発酵食品から分離した
β.
∫〟如丑kは多くのプロテアーゼを産生し、そゐ高い活性を有する菌体外プロテアーゼは、幅広い
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食品産業に使用できることが期待できる。さらに、これらの株の生化学的機能をよりよく開発や
利用するために、遺伝子全体をゲノムシークエンシングにより同定し、高いプロテアーゼ活性
AprE遺伝子をB.subtlbの種内で解読し、比較して解析した。
本研究は、第1に大豆タンパク質の主なアレルギー源である7Sと11S分画を用いて、アジ
アの発酵食品から単離したB.subtlHs株(SPl、SP2、SB3、SB4、SB5、M2-4、JK、CN2、FS2)
のタンパク質プロテアーゼ活性を測定した。この
9種類の
B.subtl肋を使って、gelatin
zymographyと、大豆タンパク質7S、11Sグロブリン分画の消化に基づいてプロテアーゼ活性の
違いを比較した。それぞれの且
∫〟如上脆は多種類プロテアーゼ酵素を産生し、それぞれのβ.
subtlHsの間で活性は大きく異なった。B.subtlHsSB4はzymographygelにおいて最も加水分
解のバンドを示し、β.∫〟加点ダJKは、結果より独特のプロテアーゼ酵素を産生した。7S、11Sグ
ロブリンは分解され、遊離アミノ酸含量は全てのβ.甜如〟よ株の間で大きく異なっていた。且
subtlHsSB3とSB5によって消化された7Sと11Sグロブリンは高濃度のFAAを示した。さらに、
Bd30K等は、低
7Sと11Sグロブリンに含まれるアレルゲンタンパク質GlymBd28KやGlym
減されていた。発酵食品由来のβ.∫〟加血の菌株によって異なっていたが、且∫〟加血の産生
する多くのプロテアーゼ酵素は、大豆タンパク質に対する高いタンパク質分解活性があり、健
康食晶を開発するのに有用な結果であった。
第2に、菌体外プロテアーゼであるAprEに主に焦点を当てる。これまでに、β.∫リム助か
ら多くの菌体外プロテアーゼが同定・解析されており、AprEは主な菌体外プロテアーゼの1つ
であると考えられている。AprEは幅広いpHで活性を持ち、熱や酸化剤に対して安定である。
jねcjJ血∫属の遺伝子から得られたAprEプロテアーゼは、精製・解析され、それらのいくつかは
工業利用またはバイオテクノロジーの分野で開発されている。発酵食品由来の且∫〃加血から
分離したAprEの配列は、タイプカルチャー(168株)等のAprEタンパク質配列やアラインメント
に基づいて構造解析をした。その結果、タイプカルチャー(168株)のAprEの配列は分離した
SB3、CN2とは類似しており、JK株とSB4株との一致は少なかった。B.subtjhの多様性につ
いてより、深く理解するために伝統的発酵食品から分離した4種類のβ.∫〃如瓜なからaprE遺
伝子をクローニングし、基準株(タイプカルチャー)B.subtjHs168と比較した。5株(SB3、SB4、
JK、CN2,168)のAprE酵素の遺伝子を大腸菌BL2卜CodonPlus(DE3)一RIPLに導入した。発
現したAprE酵素は、gelatinzymographyの結果から活性を有しており、また、全てのリコンビナ
ント酵素はSD■s-PAGEとウエスタンプロット法により検出できた。クローニングした4株AprEの
酵素活性は、全ての菌株でB.subtlb168に比べ高い活性を示した。CN2株のAprEの活性
が最も高く、タイプカルチャー168株の4倍の活性を示した。活性は、比較的高濃度のNaCl
濃度でも見られた。異なるpHや温度条件は、これらのタンパク質で同じような効果が見られた。
これらの結果は、且∫〃ム肋CN2は幅広い食品産業に利用できる可能性を示したものである。
これらの
且
∫〟ム肋株を健康食晶または他の応用の開発へと利用するために、これらの
β.∫〟加血株の特徴をより深く理解しなけらばならない。遺伝子型β∴川魚山地168は1997年に
全長が解読され、ゲノムシークエンステクノロジーが急速に発達し、この数年の間に何千ものゲ
ノムが発表された。ゲノムシークエンシングはこれらの微生物解析を行う重要なツールを提供し
ている。発酵食品から分離したB.sub肋8株(SB3、SB4、M2,4、JK、CN2、FS2,DB,SR)のド
ラフトゲノムの解読された配列は、IlluminaGenomeAnalyzer
assembler
Velvet)やデータベース(MicrobialGenome
Ⅱにより、ソフトウェアー(deDOVO
Annotation
Pipeline(MiGAP;
http://www.migap.org/)サーバー)により、B.subtl肋168とGC含量、コンテイグの数、タンパク
質をコードしている配列の全長、tRNAを比較した。その結果、6株のゲノムは168株と類似して
おり、JK株とSB4株の2つは、占.amyJoJ/queJbcjensのクラスターに属し、B.am〆00壇ueJbclbDS
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の可能性を示している。JK株のコンテイグは82であり、3723CDSと76tRNA等の解析からタ
イプカルチャーβ.∂皿〆0〟押eノおcノeノブ∫FZB4と90%以上の相同があった。
審
査
結
果
の
要
旨
紀元前から、地域の環境による生産される食品を、地域の方法により伝統的な発酵食品を
作り、食文化も育んできた。これら地域の独自的な保存方法によるため、地域に即した微生物が
受け継がれてきた。その中でもβ∂血∫山地は、主要な微生物の1つとして研究・利用されて
いる。且∫〟占血は、多種類の菌体外酵素を産生し、発酵食品の機能性も向上させている。
HAN(韓)氏の研究の対象は、束南アジア地域の発酵食品から分離し、多種類の高い菌対
外プロテアーゼ活性を産生する励c此β∫び古仏としている。同種の且∫血と血の菌株は、基質
にたいして異なるタンパク質分解能を示すものであった。本研究は、発酵食品由来のβ∴見通〟旗
が産生する、特に、菌対外プロテアーゼ活性の高い酵素を、大豆タンパク質に作用させ、そのタ
ンパク質分解活性能を評価した。さらに、これら歯株をもちいた機能性食品等を開発するため
に、遺伝子全体をゲノムシークエンシングにより同定し、高いプロテアーゼ活性AprE遺伝子を
且∫〃∂昆おの種内で解読し、比較して解析した。これらのことより、且j血池肋が産生する多種類
のプロテアーゼの作用を明らかにすることにより幅広い食品産業に使用できることが可能性を示
したものである。
本研究は、第1に大豆タンパク質の主なアレルギー源である7Sと11S画分に、アジアの発
酵食品から単離したE
subtjhk(SPl、SP2、SB3、SB4、SB5、M2-4、JK、CN2、FS2)9株のプロテ
アーゼ酵素作用させた結果、それぞれの且∫止血間で活性は大きく異なった。且∫〟加血SB3
とSB5株は他の株に比べ、7Sと11Sグロブリンへの分解能が大きく、高い遊離アミノ酸(FAA)含
量を示した。また、アレルゲンタンパク質GlymBd28KやGbTmBd30K等への作用は、菌株に
より異なる同様の結果であった。E
subtjHg9株の産生する酵素をgelatin zymographyにより検
討した結果、β∴乱止〟臆は多種類プロテアーゼ酵素を産生し、β.∫止血の間においても活性は
大きく異なっていた。β.subtzhSB4はzymographygelにおいて最も多くの加水分解のバンドを
示し、且subtjXsJKは、他と異なる活性バンドを示した。これらの結果は、同種(species)であっ
ても産生するプロテアーゼ酵素は異なること、また、大豆タンパク質に対する高いタンパク質分
解活性があり、食品開発するのに有用な結果であることを示した。
第2に、β.封適正始から多くの菌体外プロテアーゼが同定・解析されており、AprEは主な
菌体外プロテアーゼの1つであると考えられている。発酵食品由来の且∫ロ出血から分離した
AprEの配列は、タイプカルチャー(168株)等のAprEタンパク質配列やアラインメントに基づい
て構造解析をした。その結果、タイプカルチャー(168株)のAprEの配列は分離したSB3、CN2
とは類似しており、JK株とSB4株との一致は少なかった。且∫止血始の多様性について、より深く
理解するために伝統的発酵食品から分離した4種類の且∫〟ム血おからaprE遺伝子をクローニ
ングし、基準株(タイプカルチャー)β.∫血と血168と比較した。活性は、NaClに対する耐塩性も
残っており、またpHや温度条件は、これらのタンパク質で同じような効果が見られた。クローニン
グした4株AprEの酵素活性は、全ての菌株でタイプカルチャーEsubtjXs168に比べ高い活性
を示し、CN2株のAprEの活性が最も高く4倍の活性を示し、活性部位との比較も行っている。
食品応用の開発へ利用するために、発酵食品から分離した食由来のβ.∫〟ム血8株のドラ
フトゲノムをタイプカ/レチャーβ∴川風摘お168比較結果、6株のゲノムは168株と類似しており、JK
株とSB4株の2つは、βa御舟句〟e應血∫のクラスターに属し、且丘卿血0物ue彪c血フ∫の可能性
-65-
を示している。JK株のコンテイグは82であり、3723CDSと76tRNA等の解析からタイプカルチ
ャーβ.∂御免J殆びe應cゐ刀∫FZB4と90%以上の相同があった。さらなる解析を期待している。
これらの結果は、以下の二つの論文として投稿し、受理されている。
1)HANX,NAGANOH,PHROMRAKSAP,TSUJIM,SH7MOYAMADAM,SHIROK,SUZUKI
T,KHAMBOONRUANGC.HydrolysisofSoybean7SandllSGlobulinsUsingBacjh
∫び出血k.βbod肋ce∂乃d乃d〃0毎y励∫ea化九18(5):651∼657,2012.
2)HANX,SHIWAY,ITOM,SUZUKIT,YOSHIKAWAH,NAKAGAWAT,NAGANOH.
MolecularCloningandSequenceAnalysisofanExtracellularProteasefromFourBac肋s
subtノ放Strains.Bjbsc!盲/]Ce,Bjbtecカnoノog)うaJ7dβわchcml:gtly(inpress)
以上について、審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学科の学位論文として
十分価値あるものと認めた。
ー66一