IP/IT/EC Tokyo Newsletter July 2014 Volume 3 Issue 2 グローバル知的財産・情報通信 ニューズレター 特許 目次 特許 • アメリカ合衆国 著作権 • 欧州連合 知的財産権の行使 • タイ データ保護 • 欧州連合 【アメリカ合衆国】米国最高裁、ソフトウェア及びコンピュータ関連 発明の特許性について、より高度な基準を設定 2014 年 6 月 19 日、米国最高裁は、Alice Corp. v. CLS Bank Int’l 事件に おいて、ソフトウェア及びコンピュータ関連発明の特許性の水準を全 員一致で引き上げた。 本件では、電磁的記録の作成、複数の取引の監視及び指示の同時発行 を行うために、コンピューターの使用を必要とする方法についてのク レームが問題となった。媒介決済を対象とした特許において、当該ク レームは、コンピューター自体が媒介であることを要した。裁判所は、 当該クレームは、単に「リスクを最小化するために、義務の同時交換 を促進する中立的な媒介を活用する」ものであり、特許性のない「抽 象的なアイデア」を表したものであると判示した。 特許に関する最高裁の決定がどのように実践されるか、包括的な結論 を導くには時期尚早であるが、本件は、現代の米国経済において極め て重要な部分を占める多くのソフトウェアの発明性について、問題を 提起するものである。訴訟に関しては、地方裁判所の手続と、米国特 許商標庁の手続(ビジネス方法特許審査、登録後審査等)の両方にお いて、特許の有効性を争う機会が大きく開かれたといえる。 最初のページに戻る 著作権 【欧州連合】インターネット閲覧技術について判示(Meltwater 事 件) 2014 年 6 月 5 日、欧州司法裁判所は、Meltwater 事件(C-360/13)につ いて判決を下した。本件は、長年(5 年間)にわたる、Newspaper Licensing Agency(NLA)、Meltwater 及び Public Relations Consultants Association(PRCA)の間における、一時的複製に関する紛争である。 本件では、一時的複製のサービスを受ける者が、どのようなライセン スを受けなければならないかという点が問題となった。 今回、欧州司法裁判所は、インターネット閲覧時に作成される画面上 及びキャッシュ上の複製物は、情報社会に関する指令第 5(1)条におけ る一時的複製にあたるため、ウェブサイトの発行者の承認なくして作 成することができると判示した。 本件は、欧州司法裁判所の回答に基づく最終的な決定を確認するため、 英国最高裁に差し戻される予定である。 本決定は、インターネットを通じてサービスを提供している事業者や、 インターネットを閲覧する事業者・消費者に対し、自身やそのユー ザーが単にインターネット上で資料を読んだり見たりするだけであれ ば、著作権を侵害しないという安心感を与えるものである。しかし、 単にコンテンツを読むのではなく、コンテンツをダウンロードしたり、 印刷したり、第三者に転送したり、独自に不正利用することによって 経済的な利益を得たりした場合、著作権を侵害する可能性がある。 最初のページに戻る 知的財産権の行使 【タイ】IP&IT 裁判所、侵害者に厳罰 中央知的財産国際貿易裁判所(IP&IT 裁判所)は、昨今、タイ商標法 の常習違反者に対して、1 年 3 か月の懲役判決を宣告した。これまで、 商標権侵害は他の犯罪に比して重大ではないと考えられており、執行 猶予とするのが実務慣行であったため、本件は、かかる慣行を批判し てきた知的財産権者の間で大きな注目を集めた。 本件の被告人は、様々な有名化粧品会社の商標を付した口紅、マスカ ラ、アイシャドウ、香水、ファンデーション、頬紅及びブラシのセッ ト等の模倣品を扱ったとして、二度逮捕された。 被告人は、IP&IT 裁判所の判決を不服として最高裁へ上告した。最高 裁が原審の判断を維持すれば、タイにおける侵害事犯の重大性の認識 について、特筆すべき変化を示すことになるであろう。 最初のページに戻る データ保護 【欧州連合】欧州司法裁判所、データ保持指令の無効を宣言 多くの EU 加盟国において議論の的となってきたデータ保持指令が、 2014 年 4 月 8 日、欧州司法裁判所の判決によって無効とされた。 本指令の目的は、電気通信会社によって作成又は処理される特定の データの保持について、加盟国の法制度を調和させることであった。 本指令の下では、組織的犯罪やテロ活動のような重大犯罪の抑止、調 査、発見、訴追のためにデータを利用できるように、公衆電気通信事 業又は公衆通信ネットワークを提供する者は、通信データ及び位置 データに加え、ユーザーを識別するために必要な一定の関連データを 保持する義務を負っていた。 本指令は、通信の内容や電気通信ネットワークを使用して閲覧された 情報の保持を許容するものではない。しかし、欧州司法裁判所は、 ユーザーが、欧州連合基本権憲章第 11 条が保障する表現の自由を行使 するために、本指令の対象となっている電気通信手段を使用するにあ たって、問題となっているデータの保持により、萎縮効果が生じるお それがあるというのは、「あり得ないことではない」と判示した。 2 グローバル知的財産・情報通信ニューズレター Volume 3 Issue 2│ July 2014 www.bakermckenzie.co.jp 本ニューズレターに関する お問い合わせ先 高瀬 健作 パートナー Tel 03 6271 9752 [email protected] ベーカー&マッケンジー法律事務所 (外国法共同事業) 〒106-0032 東京都港区六本木 1-9-10 アークヒルズ仙石山森タワー28F Tel 03 6271 9900 Fax 03 5549 7720 www.bakermckenzie.co.jp 裁判所は、本指令は、欧州連合条約第 5 条に定める比例原則に違反す ると判示した。すなわち、データの保持は、指令が「追求する目的を 達成するのに適切」であると考えられるものの、指令によって確立さ れた保持の方法は、その立法目的を達成するのに「必要不可欠」とは みなされないとしたものである。特に、本指令は、全ての者及び全て の電気通信手段を対象としていること、データに対する管轄当局のア クセスやその後のデータの使用を制限するための客観的な基準が欠如 していること、最低 6 か月間の強制的なデータ保持期間が定められて いること等から、立法目的に対して過剰であると判断された。 本判決は、アイルランドの高等裁判所及びオーストリア憲法裁判所の 要請に応じて下されたものである。他の EU 加盟国では、国内裁判所 において、国内手続法に則って争われるまで、本指令を実施する国内 法の有効性は存続する。欧州委員会が、他の指令によって欧州のデー タ保持規則を調和させるか、「規則」による立法を選択するか、現在 は不明である。 最初のページに戻る ©2014 Baker & McKenzie. ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)は、スイス法上の組織体であるベーカー&マッケンジー インターナショナルのメンバーファームです。専門的知識に基づく サービスを提供する組織体において共通して使用されている用語例に従い、「パートナー」とは、法律事務所におけるパートナーである者またはこれと同等の者を指します。同じく、「オフィス」とは、か かるいずれかの法律事務所のオフィスを指します。 3 グローバル知的財産・情報通信ニューズレター Volume 3 Issue 2│ July 2014
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