Untitled

少林寺拳法のトレーニング処方に関する研究
8
9
7
各種動作の定常状態の HR は以下のようにして決定した。すなわち,
呼吸循環系の機能が動作に適応したと考えられる 1
0
0秒以後のデータに関
し,データ数の最小を 1
5
0個にとり,さらに I個ずつデータ数を増加させ,
おのおのの区間で標準誤差をもとめた。このようにして求めた標準誤差の
最小区間,すなわち最もばらつきの少ない区間の HR の平均値を定常状
態の HRとした。
なお,組演武に関しては測定時聞が短いので,
4
0秒以後のデータに関し,
データの最少を 100~固にとり,上述の方法と同様にして定常状態の HR を
求めた。
各種動作の HR測定時の気温は 8~l1 OC であった。
2-2. HR-V02関係式及び VATの測定
xhau・
日を改め,被検者にモナーク社製自転車エルゴメータを用い, e
s
i
o
nt
e
s
t を実施した。回転数を 5
0rpm
OKP, 1~2
分の聞は 1
に設定し,負荷を O~l 分の聞は
KP, 2分以後は 1分毎に 0
.
5KP ずつ増加し,
a
l
l
o
u
tに至らせた。
マ
%02maxの測定は,ダグラスパック法により呼気を採気し,呼気ガス
A
e
r
o
b
i
cP
r
o
c
e
s
s
o
r3
9
1, 日本電気三栄製)により行った。
自動分析装置 C
そして,
HR-V
C
V
e
n
t
i
l
a
t
o
r
ya
n
a
e
r
o
b
i
ct
h
r
e
s
h
o
l
d,以
02関係式及び、 VAT
下 VAT と記す)を求めた。さらに,各種動作の定常状態の HR を HR
-V
axを求めた。
02関係式に代入し ,%V
o2m
8
4
) の折れ線回帰分析を Y02 と YEの関係に
なお, VATは福場ら(19
適用し算出した。
測定時の気温は 16~200C であった。
i
l
l
.結 果
1
. 各種動作における定常状態の HR
図 l~ 図 10 は,被検者 F.
K.の各種動作における 3分間(組演武 2分間)
の HRの変動と,定常状態の平均 HRを示したものである。
2
0周年記念論文集
898
IH
R
(
bpm)
,-~
160~
1
4
0
80
S
u
b
i
e
c
t
;F
.K
6
0
MeanHRo
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
3
5
.
7
4
0
2
0
1
0
0 1
2
0
1
4
0 1
6
0 1
8
0
町民
8
0
ρしでもF
6
0
4
0
m
2
0
Thw
。
図 l その場での突きの HRの変動
HR(bpm)
1
8
0
一
一
~-
.
.
.
.
.
.
・
ー .
ー
・
・
.
.
.
v
_
.
.
.
_
.
_
h
.~。
nUAUAU
氏u a A宮 内 4
S
u
b
i
e
c
t
;F
.
K
.
MeanHRo
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
5
86
目
1
4
0 1
6
0 1
8
0
2
0
1
0
0 1
山
8
0
九日
6
0
ρ J
4
0
2
0
mv
、
也
T
。
図 2 その場での蹴りの HRの変動
HR(bpm)
•
""
白
-炉
・伊
蝿,1
"
J
"
一
・
"
-
E
喝
ー
一 即吋...・“・・
"
・
・
. 輔
・
_
.
・
・
4
由 .
叫-
・
川
一
f
h
.
41
nunu
q4nu
l
l
i
.
1
4
0
80
6
0
S
u
b
i
e
c
t
;F
.K
目
MeanHRo
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
2
2.
4
40
2
0
。
2
0
4
0
6
0
8
0
2
0
1
0
0 1
Time
8
0 (
6
0 1
1
4
0 1
s
e
c
.
)
図 3 その場での上受けの HRの変動
巴
8
9
9
少林寺拳法のトレーニング処方に関する研究
AUAu
‘
nhvda
E
A
唱,‘
唱
1
2日
1
0
0
8
0
S
u
b
i
e
c
t
;F
.K
6
0
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
4
3
.
1
MeanHRo
4
0
2
0
。a
w
~
0
0
~
~
~
~
Time
(
s
e
c
.
)
~
図 4 その場での上中 2連突きの HRの変動
HR(bpm)
m1m
mω
AE&IA1A
200~
-
酬
-~_.明町・._.
旬
盆
・
・
目但0
1
山川明初∞
A
噌
k
R
一白
巧
,z
a
市川
a
一
向
ea
t
c2
b
し
qMVd
ゐ
u
ヨ
QM
ロ
電ρL
fnu
R
G
内
-
AL
M
n
y
l司11111﹁t
4
0
2
0
。
2
0
4
0
6
0
8
0 1
0
0 1
2
0
1~
Time
1
6
0 1
8
0 (
s
e
c
.
)
図 5 移動しながらの突きの HRの変動
的削山
11111
2
0
0寸 HR(bpm)
ωm
∞
m凹 m山 川 叩 叩 山
。
S
u
b
i
e
c
t
;F
.
K
.
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
7
1
.
8
MeanHRo
2
0
4
0
6
0
8
0
1
0
0 1
2
0 1
4
0 1
6
0 1
8
0
図 6 移動しながらの蹴りの HRの変動
L
l
m
e
らe
c
.
)
20周 年 記 念 論 文 集
900
HR(
b
p
m
)
200~
1
8
0
l
﹄ ﹁212J
寸
Dm
1
6
0
i
唱
一
川
1
4
E
-
唱
nununununu
・ qL
nun6P04
S
u
b
j
e
c
t
;F
.K
7
6
.
6
MeanHRo
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
。
2
0
4
0
6
0
8
0 1
0
0 120ωmmZEj
図 7 移 動 し な が ら の 上 中 2連 突 き の HRの 変 動
?OOlHR(bpm)
1
8
0
-
・
・
. ・
・
・
.
.
.
.
1
6
0
1
4
0
1
2
0
1
0
0
8
0
S
u
b
j
e
c
t
;F
.
K
.
6
0
MeanHRo
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
71
.
5
4
0
2
0
。
2
0
4
0
6
0
8
0
ï2oE~~
(
s
e
c
.
)
1
0
0
図 8 組演武の HRの 変 動
200~
HR(bpm)
.
・
・
.
・
_
.
.
.
.
.
.
..
.
.
.
.
・・・・……・・ー…制餅・ー・・ 叩 ・ 一 一 一 一
ω
1
8
0
:
:
:
レ
コ
マ
:
1
2
0
内
札
~
~
dτ
仏
門
,
‘
ァ
、
。o
m
l
凶
tL2 U
e-a
t
q
u
w
笥“
AU
~
Qvve
r
ー
のU
0
0
0
・
t
Qu
R
@
H
n
egu
0
0
M
l l寸llJthi
τ1&
nU U
司 A U n u n U
AUnMUGuaqnru
。a
~
図 9 防具あり乱取りの HRの 変 動
~
~
Time
(
s
e
c
.
)
少林寺拳法のトレーニング処方に関する研究
901
n
v
m
)
h
υ
(
R
H
AU
AU
t吋
9u
1
8
0
-
←鮮明叩・
一
.
. . ー ・ .
1
6
0
1
4
0イ三二
1
2
0
1
0
0
S
u
b
j
e
c
t
;F
.K
1
8
0-
6
0イ
MeanHRo
fS
t
e
a
d
yS
t
a
t
e
;1
8
8
.
1
4
0
20
。
2
0
6
0
4
0
Time
8
0 1
0
0 1
2
0 1
4
0 1
6
0 1
8
0 2
0
0(~~~'.l
図1
0 防具なし乱取りの HR
の変動
各種動作ともに, 50"'100秒以後,定常状態になることがうかがえた。
2
.
HR一ψ 0 2 の関係
被検者 5名の HR -V
1
"
"図 15に示した。相関係数 rは
o
2 の関係を図 1
0.96""0.98の範囲にあり相闘が高く,
HRと Vo
2の間には直線関係が認め
られた。
・
.
2
0
0 HR陶 m
)
"
l
1
8
0
1
6
0
1
4
0
1
2
0
1
0
0
8
0
.
'
.
v
.
S
u
b
.
T
.
D
.
Y=51
.2
7
1
8
X+5
6
.
9
5
4
8
r=
.
9
6
7
6
0
1
6
0
o
0
.
5
O
1
0 2
0
1
.0
3
:
0
1
.5
2
.
0
2
.
5
02
3βV
(
l/
m
i
n
)
4
0 5
0 6日 7
0 8
0 9
0 1
a
o%V02max
図1
1 HR-V
S
u
b
j
.T
.D
.
)
02 の関係 C
2
0周年記念論文集
9
0
2
∞f
I
R(bpm)
2
,.
/
.
"
-
1
8
0
.
.
‘
.
/
.
1
6
0
e〆'.
1
4
0
1
2
0
.
.
・. ・
・4 ・
1
0
0
.
.
.
S
u
b
:
F
.K
.
Y=3
4
.
3
8
5
6
X+
7
8
.
7
7
5
8
0
r=
.
9
6
4
7
7
6
0
005l-O
O U
l
z
0
l5 Z B . 1 5 3 - D 3 5 4 0 t r
叫
30405060 均
O
!
m
i
n
)
8
0 9
0 1
0
0 %V
max
0
2
図 12 H R-Y02の関係 (
S
u
b
j
.F
.K.)
2
0
0
1HR(bpm)
1
8
0
1
6
0
1
4
0
.
.
d
z
・
;
プ
1
2
0
S
u
b
:
N
.
A
.
1
0
0
Y=40.8994X+
8
2
.
1
6
1
9
r=
.
9
6
6
0
0
8
8
0
6
0
o
~ー守
0
.
5
「寸7一
五
l
.
0
2~5
1
.5
{ ー
3
.
0
V02
O
!
血)
9
0 1
0
0 %V
max
0
2
3
0 4
0 5
0 6
0
図1
3 H R- Y
S
u
b
j
. N.A
.
)
0
2の関係 (
m
)
1
-
﹁11111
nUAU
nU00
9
“
p
b
(
R
r1
E
1
6
0
1
4
0
y.
・.
"
〆
・.
1
2
0
.
.
.
/
.
"
〆
.
1
0
0
Y=37.0269X+
6
3
.
9
3
6
2
r=
.
9
8
4
3
5
8
0
。
S
u
b
:
S
.
K
.
6
0
0
.
5
1
.
0
1
.5
2
.
0
2
.
5
3
β
2
0 3
0 4
0 5
0 6
0 均的
0
2
3.54
.
0 V
O
!
皿n
)
9
0 1
0
0%V02ma;'
図1
4 H R- Y02の関係 (
S
u
b
j
.S
.K.)
少林寺拳法のトレーニング処方に関する研究
初
9
0
3
OlHR(bpm)
1
8
0
1
6
0
1
4
0
1
2
0
S
u
b
;
S
.
O
1
0
0
y=4
3
.
0
6
4
4
X+91
.8
6
1
9
r=
.
9
7
2
7
0
3
8
0
6
0
00.51.0152D2530t702
(1/凹)
1
0
0%V
m司X
0
2
λ
ム
ム
ム
」
ム
ム
図1
5 HR-Yo2の関係 (
S
u
b
j
.S
.
O
.
)
3
. 各種動作における HR及び推定された%丸2max
表 2は 5人の被検者の各種動作における HR及び推定された%I/
0
2max
を示したものである。 % V
0
2maxは,各種動作の定常状態の平均 HRを各
被検者の HR- V
0
2関係式に代入して求めたものである。
各種動作の %I/
0
2maxを五人の被検者の平均値で、みると以下のようにな
る
。
2max:46.3
その場の動作では上受け(%I/
0
2max:38.3%),突き(%マ0
%),蹴り(%I/
/
1
頂
0
2max:59.3%) 上中 2連突き (%V
0
2max:60.0%) の
に強度が強くなっている。
2max:
移動しながらの動作では突き(%I/
0
2max:80.8%),蹴り(%マ0
81
.4%),上中 2連突き(%マ0
2 max:86.9%) と各動作ともに平均8
1
8
7
%の強度を示し,動作の違いによる強度の差はほとんどなかった。
組演武の%I/
0
2maxは86.4%で,移動しながらの上中 2連突きと同程度
の強度と言える。
乱取りは,防具あり,防具なしとも%I/
0
2maxは96%となりほぼ最大に
近い運動強度を示した。
2
0周年記念論文集
9
0
4
表 2 少林寺拳法の各種動作における HR及び推定された%If
o
2max
その場で
S
u
b
j
.
突き
移動しながら
上
中2
連
突き
蹴り ドニ受け
突き
蹴り
防具あり 防具なし
上
中2
連
阻演武
突き
乱
取
り 乱
取
り
日V
a
x6
6
.
5 9
9
.
9 9
8
.
0
2
.
6 6
5
.
9 5
0
.1 81
.1 7
8
.
6 9
0
.
7 9
4
.
4 8
0
2m
T
.
D
.
H
R(
b
p
m
)(
1
4
0
.
2
)(
1
7
6
.
2
)(
1
36
.1
)(
18
3
.
2
)(
1
8
0
.7
)
1
2
0
.
3
)(
1
5
9
.
4
)(
1
5
6
.
2
)(
.6
)(
16
6
.
2
)(
1
71
F
.K
.
明V
砿
0
2m
9
.1 5
7
.
6 8
5
.
0 8
7
.
3 9
7
.
9
51
.0 7
1
.5 3
3
.
3 8
7
.
6 8
3
.1 9
H
R(
b
p
m
)(
1
3
5
.
7
)(
15
8
.
6
)(
12
2
.
4
)(
1
4
3
.1
)(
1
7
3
.
7
)(
.5
)(
18
7
.
4
)(
1
8
8
.1
)
1
71
1
7
1
.8
)(
1
7
6
.
6
)(
V
a
x3
9
.
5 2
8
.
5 4
7
.
2 8
8
.
8 4
2
.
6 7
4
.
8 8
5
.
41
0
2
.
91
0
2
.
8
7
.
2 9
0
2m
N
.
A
.日
H
R(
b
p
m
)(
12
1
.9
)(
1
32
.
8
)(
1
1
1
.3
)(
13
0
.
5
)(
16
6
.
7
)(
1
5
8
.
7
)
(
1
7
9
.
8
)(
18
7
.
5
)(
18
7
.
4
)
(
1
7
1
.
4
)
%
Vm
a
x4
5
.
1
2
.
9 7
3
.
0 3
4
.
0 6
6
.
9 8
9
.
6 8
8
.
4 9
5
.
4 91
1
.8 9
.8 9
S
.K
. 02
1
0
7
.
7
)(
1
50
.
0
)(
1
79
.
2
)(
1
8
6
.
3
)
H
R(
b
p
m
)(
1
5
7
.
9
)(
1
7
7
.7
)(
1
8
6
.
7
)(
1
8
2
.
0
)(
1
l9
.1
)(
18
2
.
0
)(
S
.
o
.
同V
低
0
2m
3
6
.1 3
6
.
5 3
9
.7 4
7
.
0 6
8
.
3 6
9
.
9 7
0
.
0 7
5
.
1 8
8
.7 8
5
.
3
1
41
.5
)(
1
6
3
.
9
)(
1
81
H
R(
b
p
m
)(
1
3
0
.
0
)(
1
3
0
.
4
)(
1
3
3
.
8
)(
16
5
.
6
)(
16
5
.
7
)(
.9
)
1
8
5
.
5
)(
1
7
1
.
1
)(
四
九
m依 4
6
.
3 5
9
.
3 3
8
.
3 6
0
.
0 8
0
.
8 81
.4 8
6
.
9 8
6
.
49
6
.
1 9
5
.
8
Mean
1
75
H
R(
b
p
m
)(
1
28
.
6
)(
14
4
.
0
)(
1
4
4
.
9
)(
1
6
7
.
9
)(
.
3
)(
1
7
4
.1
1
19
.1
)(
16
9
.1
)(
)(
18
4
.
9
)
18
5
.1
)(
S
.
D
.
%
V
a
x9
.
2
0 7
.
9
4 9
.
1
1 7
.
5
91
4
.
1
17
.1
61
2
.
9
07
.
0
5 5
.
2
0 5
.
8
1
0
2m
H
R(
b
p
m
)(
6
.
9
8
)(
1
2
.1
)(
9
.
1
6
)(
9
.
5
8
)(
7
.
9
5
)(
6
.
4
5
)(
6
.
91
)(
5
.
8
8
)(
)(
3
.
0
0
)
2
.
21
その場での蹴り,上中 2連突きにおいてとくに S.D.が高くなった。
l V . 考 察
過去に少林寺拳法における運動強度に関する研究はほとんど見あたらな
い。しかしながら,少林寺拳法の突き,蹴り等と比較的類似した動作であ
ると考えられる空手においては,先行研究がいくつか報告されている。本
研究と同一条件,すなわち 2秒に一回の割合で 3分間,同じ頻度で行った
空手の突き,蹴り,及び試合に関する報告は次の通りである。
1
9
8
6
)によると空手の突き,蹴り,試合の運動強度はそれぞれ,
池田ら (
%V
o2 max の 54.5~ , 77.9~ , 81.6~ であったと報告されている。これは,
本研究のその場での突き (%V
ax:46.3~) ,蹴り (%Vo 2 max:59.3~) ,
o2 m
防具なし乱取り (%V
ax:95.8~) に相当するものである O 空手と少林
o2m
寺拳法の突き,蹴りに関しては強度にやや違いが見られるものの,どちら
も突きよりも蹴りの方が強度が強いと言える。防具なし乱取りに関しては,
少林寺拳法のトレーニング処方に関する研究
9
0
5
被検者の技量の差,突き蹴りを出す回数の差によって強度が変わってくる
と考えられるが,少林寺拳法と空手では強度にかなりの差が見られる。こ
れは,少林寺拳法と空手の技術の違い,攻防のパターンの違いによるもの
と思われる。
その場での蹴り,上中 2連突きにおいて特に S
.
D
.が高くなった。この
傾向は技術の個人差によるものと考えられ,技術の差が運動強度に影響を
与える事が示唆される。
その場での突き,蹴り,上中 2連突きの運動強度は, %V&max:46~60
%とぱらつきが見られる。しかしながら,移動しながらの突き,蹴り,上
中 2連突きでは % V
0
2 max:81~87% とほとんどその差が見られず,一様
に運動強度が高くなってくる。これは,福永ら (
1
9
7
8
)がテニス,サッカー,
バレーボールの基本運動において行った研究結果とよく一致する。その場
運動の時は基本動作が保持できる最大限の頻度で返球しても, %V02max:
30~40% が発揮されているにすぎないが,左右に移動しながら返球した時
には % V
る
。
0
2max:80%以上の能力が要求されたと報告して L、
また,浅見たち (
1
9
6
8
) は,サッカーにおけるサイドキックやへッデ、イ
ングの練習では,
1分間の早いステップやジャンプを負荷としても, HR
は1
6
0前後にしか上昇しないが,これを走りながら行えば, 1
8
0以上に上昇
することを報告している。
これらのことからも,運動強度を高めようとするならば,重心の移動を
伴う動作を多くする事が有効であると示唆される。
組演武は, 1 分 30秒 ~2 分内でお互いが自由に技をかけあうものである O
少林寺拳法の大会では組演武が主な審査の対象となり
2人一組で評価さ
れる。組演武の運動強度は平均 % V
0
2 max:86.4%となり,スピードと共
にかなりの全身持久性が必要とされることを示すものであろう。
防具あり乱取りは, 1
0オンスのグローブ,胴,ヘッドギア,金的カパー
をつけて寸止めなしで行うものであるが,その運動強度は平均 % V0
2
max:96.1%であった。また,防具なし,寸止めで行う乱取りは平均 % V
0
2
2
0周年記念論文集
9
0
6
max:95.8%であり,両者の強度の差はほとんどないと言えよう。
乱取りは,防具あり,防具なし共にほぼ最大に近い運動強度であり,強
靭な基礎体力が必要とされることがうかがえる。
V
.総 括
大学少林寺拳法部員 5名を被検者とし,少林寺拳法における各種動作の
2関係式を求め,
H Rとマo2maxを測定した。また,各被検者の H R-V
o
それらの回帰方程式から少林寺拳法における各種動作の運動強度を推定し
た。その主な結果は次の通りである。
(
1
) その場での動作では上受け,突き,蹴り,上中 2連突きの順にそれ
ぞれ平均
2m
%V
ax:38.3%,0
/
0
マ
。2max:46.3%,%V
ax:59.3%,
o
2m
o
%V
ax:60.0%と強度が強くなった。
o2m
V
(
2
) 移動しながらの動作では,各動作共平均0/0 o
18
7
%の強度
2max8
となり,動作の違いによる強度の差はほとんどなかった。
(
3
) 組演武は平均
%V
o
2 max:86.4%となり,移動しながらの上中 2連
突きとほぼ同程度の運動強度を示した。
(
4
) 乱取りは防具あり,防具なし共に平均
%V
ax:96%とほぼ最大
o2 m
に近い運動強度を示した。
[文献]
(
1
) 宗道臣:少林寺拳法教範,社団法人日本少林寺拳法連盟,
1
9
7
9。
(
2
) 丹羽昇ほか:剣道のかかり稽古時の呼吸循環機能の変動,体育学研究, 1
5
(
2
),
8
1
8
5,1
9
7
1。
(
3
) 老月敏彦ほか:心拍数と歩行・走行スピードからみた運動強度,体育の科学,
2
6
(
9
):6
8
0
6
8
6,1
9
7
6。
(
4
) 加賀谷烈彦,山本和雄:軟式テニスの運動強度,体育科学, 5
:117-122,1
9
7
7。
(
5) 山岡誠ーほか.ジャズ体操の運動強度,体育科学, 6
:1
8,1
9
7
8。
(
6
) 加賀谷淳子,岡田真理子:呼吸循環系からみたバレーボール・パスの運動強度,
3
5
3,1
9
7
80
体育科学, 6:4
(
7
) 加賀谷烈彦,山本和雄:卓球・パトミントンの運動強度,体育科学, 7:
8
0
8
5,
少林寺拳法のトレーニング処方に関する研究
9
0
7
1
9
7
90
(
8
) 漆原誠ほか
高校女子パトミントン選手の心拍変動を中心にしたゲームおよび
5
(
1
1
), :851-857, 1
9
8
50
練習の分析 T 体育の科学, 3
(
9
) 朝比奈一男:作業強度の生理的基準について,体力科学, 20:1
9
0
1
9
4,1
9
7
1。
(
1
0
) 猪飼道夫,山地啓司:心拍数からみた運動強度一一運動処方の研究資料として
(9
)
:589-593,1
9
7
10
一一,体育の科学, 21
(
1
1
) 吉 福 康 郎 : 種 々 の 格 闘 技 の 衝 撃 力 一 ー そ の 逆 突 き の 場 合 一 一 , Jpn,,
J
S
p
o
r
t
sS
c
i
.,
3:4
8
5
4
9
,
1 1
9
8
4。
(
1
2
) 吉福康郎:種々の格闘技の衝撃力一一順突き,回し蹴り,連撃の場合一一,
Jpn,
,
J SportsS
c
i
.,5:572-577,1
9
8
6
0
(
1
3
) 吉福康郎:格闘技の衝撃力について, Jpn,J,S
p
o
r
t
sS
c
i
.,4:2
5
2
2
5
8,1
9
8
7。
(
1
4
) 吉福康郎:少林寺拳法一流拳士の衝撃力, Jpn,
J,S
p
o
r
t
sS
c
i
.,6:4
6
8
4
7
6,
1
9
8
70
(
1
5
) 広田彰,米倉公司:心拍数からみたハンドボール試合の運動強度,新体育, 4
8
(
2
):1
5
4
1
5
7,1
9
7
80
(
1
6
) 今井創ほか:各種運動時の心拍数からみた運動強度,新体育, 5
0
(1
):7
2-78,
1
9
8
0。
(
1
7
) 福場良之,磨井祥夫,菊地邦雄,笹原英夫:換気性 a
n
a
e
r
o
b
i
ct
h
r
e
s
h
o
l
d決定
方法開発の試み,体力科学, 3
3
(
5
)
:2
1
3
2
1
6, 1
9
8
4。
1
(
司真野高ーほか:空手道基本動作の運動強度に関する研究一一主としてエネル
5年度日本体育協会スポーツ医・科学研究報告, 1:
ギ一代謝率の側面から一一, 5
9
8
0。
7
7
9
0, 1
(
1
9
) 池田守利ほか:空手道の各種動作における運動強度,体力科学, 3
5
(
6
)
:2
9
9,
1
9
8
60
(
ω
) 福永哲夫,湯浅景元
全身持久性トレーニング手段としてのテニス,サッカー,
バレーボール基本運動の強度,体育科学,6:9
0-95,1
9
7
80
(
2
1
) 浅見俊雄ほか:サッカーの練習時における心拍数の変動について,体育学研究,
1
2:1
2
9, 1
9
6
8。