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礫で築造された水利堤体の内部間隙構造の推定
Estimation of Void Ratio within Hydraulic Gravel Embankment
森井 俊広(新潟大・農)
Toshihiro MORII, Niigata University
FAX: 025-262-6652
E-mail: [email protected]
A procedure to estimate a void ratio of a hydraulic rockfill embankment is presented. A transmissibility of the rockfill
embankment constructed with river gravel or crushed rock is well described by using a nonlinear head loss equation of
flow. Numerical parameter estimation is employed to determine the nonlinear parameters of the head loss equation of
flow by back-calculating a stage- discharge rate curve of flow through embankment. The nonlinear parameters of the
head loss equation of flow are found to have unique relationships with a hydraulic mean radius of voids. Because an
effect of the size, shape and roughness of rock particles on the hydraulic behavior of flow is well represented by the
hydraulic mean radius of voids, the voids within the embankment can be characterized through the nonlinear parameters
estimated by the back-calculation. Some possible applications of the procedure are commented.
2.流れの水頭損失特性とパラメータ推定
直径 10 cm,長さ 100 cm のアクリル製円筒にロック材を
充填し,室内1次元透水試験を行った。試験には,5∼25 mm
径の河川礫を用いた。Fig. 1 に試験結果の一例を示す。動
水こう配 i と流れの速さ V はマイルドな非線形性を示し,
この関係は,次の Forchheimer 式でうまく記述することが
できる。
 Aν
B 
i =  0  ⋅ V +  0  ⋅ V 2
g


 g 
(1)
ここで A0 と B0 は間隙の幾何構造のみに依存する係数,ν
は水の動粘性係数,ならびに g は重力加速度である。ロッ
クフィルを通る流れに及ぼす水温の影響は,νを通して知
ることができる。したがって,残る問題は,A0,B0 と強い
1.0
Hydraulic gradient i
1.はじめに
礫や砕石で代表されるロック材は,フィルダムの透水性
ゾーンをはじめ,仮締切り堤,透水型ダム,排水工,ある
いは礫間浄化工など多くの水利構造物に用いられている。
これらの構造物の水理設計を行うにあたり,構造物のもつ
通水性能を適正に評価する必要がある。ロックフィルのよ
うな粗粒材の集合体では,間隙を通る流れが乱流状態にな
るため,作用する動水こう配と流れの速さの関係,つまり
流れの水頭損失式は非線形性を示す。ロックフィル構造物
の外部水位とその時に生じる流量の観測値から,最小 2 乗
法により,この非線形水頭損失式を記述するパラメータを
推定できるようにした。パラメータは,大小粒子がつくり
出す構造物内部の間隙構造に支配され,間隙の水理学的平
均径とユニークな関係を持つ。したがって,推定したパラ
メータから,この関係を通して,堤体内部の平均的な間隙
構造を知ることができる。本文では,ロックフィルを通る
流れの水頭損失特性の記述モデルとパラメータの推定法を
紹介するとともに,室内試験結果に基づき,パラメータと
構造物内部の間隙構造との関係を示す。
D=5-10mm
10-15
20-25
15-20
0 .8
0 .6
0 .4
0 .2
D: Particle diameter
0 .0
0
2
4
6
8 10 12
Discharge velocity V, cm/s
Fig. 1 Typical results of one-dimensional permeability test of
rockfill.
関連をもつ間隙の幾何構造を表す指標を明らかにすること
である。本研究では,この指標として,次式で定義される
間隙の水理学的平均径(Hydraulic mean radius of voids)m
を導入した。
m=
e⋅d
6r
(2)
ここで d と r は,それぞれ,ロック材粒子の代表粒径と形
状係数,e はロックフィルの間隙比である。m は,ロック
材粒子の形状,粒径,および間隙の大きさと分布といった
間隙の幾何構造を包括して表現することができる 1)。
式(1)の 2 つのパラメータ A0 と B0 は,上記の 1 次元透水
試験では,試験結果を直接に回帰すれば算定することがで
きる。しかし,大きな粒径の礫では試験装置が大がかりに
なり非現実的となる。これに対処するため,外部水位を受
ける構造物に生じる流量の観測値と数値予測値との偏差平
q cal-q obs
Upstream water depth h u , cm
Fig. 2 Difference between calculation and observation to be
minimized.
方和(Fig. 2)を最小にすることにより,パラメータを推定
できるようにした 2)。数値予測には,ダルシー流れを仮想
した非線形浸透流 FEM を用いた。パラメータを更新し最
適な値を確定するために,遺伝的アルゴリズムを用いた。
遺伝子が次世代に生き残れる適合度は,上記の偏差平方和
の逆数とした。
3.パラメータ A0,B0 と間隙構造との関係
幅 20cm および 50cm の室内水路を利用して,高さ 30∼
40cm 程度の小規模なロックフィル堤体に対する通水試験
を実施した。1 次元透水試験と同じ 5∼25mm に加え,粒径
25∼75mm の河川礫を用いた。上流側水位 hu を 5∼6 段階
にかえて,水路単位幅あたりの通水流量 q を測定した。そ
して,前節で紹介したパラメータ推定法を用いて,この hu
∼q 関係をもっとも適切に表す A0,B0 を求めた。
これによって得られた係数 A0,B0 と m の関係をまとめ
ると,Fig. 3 のようになる。ただし,1 次元透水試験による
A0,B0 は,Fig. 1 に例示した i∼V 関係を,式(1)で直接に回
帰して求めている。係数 A0,B0 と m の間にユニークな関
数関係があることがわかる。Fig. 3 の妥当性は,Fig. 4 およ
び Fig. 5 によって確認することができる。Fig. 4 は,室内水
路試験で測定した流量を,非線形浸透流 FEM による計算
値と比較したものである。Fig. 5 では,矩形断面状の堤体
で測定した自由水面と全水頭分布を,FEM 計算値と比較し
ている。いずれも,FEM 計算値は測定値に良好に対応して
おり,Fig. 3 に示す A0,B0∼m 関係が実務的な記述精度を
もつことを確認できる。
Fig. 3 より,m を介して,ロックフィル構造物の通水性
能を適正に評価することが可能となる。また,逆に,観測
を通して得られる通水性能 hu∼q 関係にパラメータ推定法
を適用して A0,B0 を求め,これらを Fig. 3 の関係に当ては
めれば,構造物の現状の間隙構造 m を知ることができる。
このような構造物の内部間隙構造の推定法は,透水性の礫
ダム,あるいは礫間浄化工の目詰まり,土砂堆積地盤の水
理特性調査などに適用できると考える。
4.まとめ
礫で築造された水利堤体の内部間隙構造の推定法を提
示した。粗粒材料からなる水利構造物の通水性能は,非線
形な水頭損失式で記述される。堤体の外部水位とその時に
生じる流量の観測値から,水頭損失式を記述するパラメー
タを推定することを可能にした。このパラメータは,大小
粒子がつくり出す堤体内部の間隙構造に支配され,間隙の
水理学的平均径とユニークな関係を持つ。したがって,推
定したパラメータから,この関係を通して,堤体内部の平
均的な間隙構造を知ることができる。
3000
2000
(a) Coefficient A 0
1000
0
0.0
0.1
0.2
0.3
Hydraulic mean radius of void m, cm
0.4
30
20
(b) Coefficient B0
10
0
0.0
0.1
0.2
0.3
Hydraulic mean radius of void m, cm
0.4
Fig. 3 Unique relationships of A0 and B0 with m.
q, cm3/s/cm, calculated by FEM
Observed (q obs )
Calculated (q cal)
Coefficient A0 , cm-2
q
Determined from 1D tests,1
Estimated from small flume tests, 2
Estimated from large flume tests, 3
Regressed from 1, 2 and 3
4000
Coefficient B0 , cm-1
Discharge per unit width
q, cm3/s/cm
hu
5000
1000
Large flume tests
Small flume tests
100
10
1
1
10
100
1000
q, cm3/s/cm, observed
Fig. 4 Comparison of flow discharge through laboratory
embankments between observation and FEM
calculation.
Test D(1+3)-V-60
D=20-25mm
H=25
hu=27.4cm
0
10
D=10-15
22.5
20
20
15
30
40
3.6cm
10
50
60
Horizontal distance x, cm
Observed
Calculated by FEM
H: Total head above base of water flume in cm
Fig. 5 Comparison of flow hydraulics measured within the
laboratory embankment with the FEM calculation
using the estimated non-linear coefficients.
参考文献
1) Martins, M.: Principles of rockfill hydraulics, in Advances
in Rockfill Structures edited by Maranha das Neves, E.,
Kluwer Academic Publishers, Netherlands, 523-570, 1990.
2) 森井俊広:ロックフィルを通る非線形流れのパラメー
タ推定,農業土木学会論文集,218,89-95, 2002.