Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
新生仔ラットの低酸素虚血負荷におけるHemo
oxygenase-1蛋白mRNAの発現について
Author(s)
田口, 和裕
Citation
神戸大学医学部紀要=Medical journal of Kobe University,
60(1): 33-40
Issue date
1999-06
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00042528
Create Date: 2015-02-01
3
3
新生仔ラットの低酸素虚血負荷における Hemeo
x
y
g
e
n
a
s
e
-1
蛋白及び mRNAの発現について
田口和裕
:神戸大学大学院医学研究科小児科学
(但当:中村
肇教授)
連絡先:干 7
3
70
8
1
1
司
呉市西中央 2-3-28
呉共済病院小児科
旧日和裕
TEL:0823-222
1
1
1
FAX:0823-2ト1
5
9
7
“
(平成 1
1年 1月初日受付)
要
約
寄は,依然として脳性麻癖,精神発達遅滞,てんかん
1,九周産期の低酸素性虚血性
などの主要原因である ;
Hemeoxygenase (HO) はヘムを分解し1::::'リ
脳障害に対する適切な治癒法を考える上では.体の
ベルジン,一酸化炭素,鉄を生成する反応を触媒する
xygenase
防御機構の解明は不可欠である。 Heme o
酵素である。その l
sozymeの一つである HO-1は
,
(HO) はヘムを分解しピリベルジン,一酸化炭素,
通常の状態のラット脳では,限られた傾城の神経細胞
1こ
は
,
鉄奇生成する反応を触媒する静素である [3,九日 0
にわずかに存在するのみである。しかし,様々な刺激
ラットとヒトにおいて,それぞ、れ 2つの l
sozymeが
により日 0
1発現は強力に賦活される。我々は,新生
存在し,別々の議伝子からつくられる [5,
6
,
7
,
九
1の
仔ラットの低酸素虚血モデルの脳告用いて日 0
はHO-l,構成型は HO-2と呼ばれ,中瓶神経系におい
mRNAと掻自の発現壌を経時的に調べ, HO-l滋白
ては,神経細胞内に HO-2が広範に発現している O
が結穀側の大脳皮質,海馬,視床の 色部,外包におい
方. HO-1は限られた神経系細胞に発現しているに過
て,低酸素虚血負荷後 3時間から 3
6時間で増加してい
ぎないへしかし, HO-1発現は様々な刺激に反応し
ることを明らかにした。大脳では. HO-1譲白は結設
て強力に賦活され, 10,
ヘ
w
h
e
a
t shock p
r
o
t
e
i
n3
2
側の潟馬を含む部分において,最も多く発現しており,
(HSP3
2
) はHO-1と同一物質であることが確認され
低酸素虚血負荷後 1
2時間で最高値に漉した。日 0
1m
ている[lZ,
ヘ HOの触媒作用で生成されるピリルピン
RNA盈は負荷終了時には,
に増加し始めており,
は,細胞内の複雑な防御機構の中で抗駿化物質として
負荷終了後 3
し,以後減少した。
働くと考えられている[J九このことは,グルタチオン
HOl
日0
1 mRNA発
“
し,新生仔ラットの低酸
デルは,成獣ラットの虚血モデルよりも,
やアスコルピン酸などの,
…般的な抗酸化物質が低い
レベ jレにある新生児期の神経細胞にとっては重要なこ
とかもしれない[ヘ低般索虚血による障害発生は,活
HO-1発現が早期に誘導されると考えられた。これら
性酸素の増加と関連している[ヘ HO-lの作用により
の結果から, HO-1による防御機構は,発途途上にあ
生成される抗酸化物質は,脳を酸化陣脅から防製する
る新生仔脳においても低酸素戯曲負荷後の早期の段階
のに容与していると考えられる。新生児期において
で機能し,周産期の低酸素性虚血性脳障害の予防に寄
1mRNAとHO-l蛋白が低酸業虚刷によりどの
日0
していると推測された。
ように誘導されるかを明らかにすることは重要である。
今回,我々は新生仔ラットの低酸議虚血モデル[17,則を
緒 嘗
用いて HO-1 mRNAとHO-1蛋白の発現監を経時的
l
こ検討した。
問産期に低酸素・虚血によって引き起こされる脳陣
xygenase,
l HSP-32,低酸素虚血,新生仔ラット,脳障害
キーワード:Hemeo
(
3
3
)
3
4
法
方
Macintosh) を利用してフィルム上の HO-1蛋白 (
3
2
kDa) のバンドの濃度を定量した。
4:ノザンプロッティング
1 新生仔低酸素虚血モデルラットの作成
脳組織から,全 RNAを酸性グアニジン・チシアネー
日齢 7の S
prague-Dawl
e
yラットをエーテルにて
evineの変法に基づ‘いて,左総頚動脈を結
麻酔し, L
ト・フェノー jレ・クロロホルム法 (AGPC法)を用
索後切断した:ヘ皮膚を縫合し,母親のもとに 3時間
2
0
J。全 RNA(30μg/レーン)を, 2M
いて抽出した :
戻し十分に回復させた後に,
8%酸素, 92%窒素を満
ホルムアミドを含んだ1.0%アガロースゲルにて電気
2時間の
泳動した後にナイロンメンブレン (Hybond-N+) に
たしたプラスチック製の密閉容器中に入れ
低酸素負荷をかけた。ラットの体温は電熱のパットに
2
1
Jをもとに,
転写した。 Shibaharaらの報告 [
7
.
0Cから 3
7
.
5Cに保たれていた。低酸素負荷終
より 3
ら+1196までのヌクレオチドからなる,
了後, ラットは再び母親のもとに戻した。頚動脈結紫,
cDNAをRT-PCRを用いて作製した。ラット αーチュ
プリン cDNAフ。ロープを内部標準として使用した。
0
0
低酸素負荷のいずれをも行っていない日齢 7のラット
十3
6
6か
ラット HO-1
を対照として用いた。
これらのプローブを, ランダムプライミング法を用い
2:免疫組織化学
α_32PJdCTPでラベルした。メンブレンをハイ
て [
低酸素負荷終了後,仔ラットをエーテルで麻酔した
ブリダイゼーション溶液 (ExpressHyb;アメリカ
4
, O.lM/Lリ ン 酸 緩 衝 液
後 に , 左 心 耳 よ り pH7.
Clontech社製)とともに 6
8C, 3
0分間プレハイブリ
(PB) で調製した 4%パラホルムアルデヒド (PFA)
麦
, DNAプローブとともに 6
8C,
ダイゼーションした f
0
0
溶液を用いて潅流固定した。脳を取り出し, PFA固
1時間ハイブリダイゼーションを行なった。ハイブリ
定された脳を線条体,海馬前方,背側海馬,小脳のレ
ダイゼーションを行なったメンブレンは,室温下にて
ベルで、冠状に切断した。パラフィン包埋後に
6μm
2xSSC,0.05%SDS溶液で 1
0分間 2回
, 5
0C 0
.
1x
0
SSC,O.l%SDS溶液で 2
0
分間 2回 洗 浄 し た 。 メ ン ブ
の冠状切片を作成しへマトキシリン・エオジン
(HE) 染色を行った。脱パラフィン処理を行なった
レンから出る放射線を X線フィルム (RXU:フジフィ
切片は, 1
.5%のヤギ血清を含んだリン酸緩衝食塩水
ルム社製)に感光させ現像した。現像したフィルムは
(PBS) に浸した後に, 2
0
0倍希釈したウサギ抗ラッ
ウエスタンプロッティングと同じ方法で定量した。
トHO-1ポリクローナル抗体(カナダ, S
t
r
e
s
sGen社
結
製)にて 4Cで一晩インキュベートした。引き続き,
0
果
アビジンービオチン化した h
orseradishperoxidase
統計で 2
1
0匹の新生仔ラットの左総頚動脈を結葉し
を用いて酵素組織化学法 (
Vector
社製)を行なった。
3:ウエスタンプロッティング
切断した。そのうち, 5
9匹を免疫組織化学に使用し,
5
1匹をウエスタンブロッティングに, 8
0匹をノザンブ
ウエスタンプロッティングの試料としては,低酸素
負荷終了後,所定の時間に各々 3匹以上の仔ラットを
ロッティングに使用した。低酸素負荷中,ラットの皮
8倍量の
膚色は蒼白となり,ほとんどのラットがけいれんして
(0.02% Tris-HC1, 0.04% EDTA,1%
いた。全体のうち 2
0匹のラット 00.5%) が低酸素負
用いた。断頭後に,脳を取り出して分割し
緩衝液
TritonX-100,1m M PMSF) で懸濁した後に,
1
2,
0
0
0回転で、 2
0
分間遠心した。各々の操作は 4Cにて
荷中に死亡した。
免疫組織化学では,低酸素虚血負荷後 3時間で
0
H
行なった。上清を 12.5%SDS/ポリアクリルアミドゲ
e
u
r
o
p
i
lが結紫側の大脳度膚,海馬,視
0
1陽性の n
ルを用いて電気泳動を行ない,
転写メンブレン
床の一部に多数認められた。さらに,外包を含む白質
CImmobilon-P) に電気的に転写した。メンブレンは
の一部においても HO-1の免疫染色が結索側で優位に
4%スキムミルクを含む PBSに浸漬した後に, 1
0,
0
0
0倍
認められた。海馬の各領域間においては HO-1の免疫
に希釈したウサギ抗ラット HO-1ポリクローナル抗体で
反応性に違いは認められなかった。大脳皮質では,
インキュベー卜した。数回洗浄した後に, h
o
r
s
e
r
a
d
i
s
h
0
1免疫染色により外包に近い第 V層から第 V
I層にお
p
e
r
o
x
i
d
a
s
eを結合したヤギ抗ウサギ IgG抗 体 (
5,
0
0
0
いてより強い免疫染色性が認められた。逆に,非結索
倍希釈)でインキュベートした。抗原抗体複合体は
側では弱い HO-1発現が頼粒状に見られたのみであっ
ECL化学蛍光システム(アメリカ, Amersham
社製)
6時間でも,結葉側で
た(図 1)。低酸素負荷終了後3
H
リコンビナントラット HO-1蛋白
はHO-1の免疫反応性が依然として優位に認められた。
(SterssGen社製)を対照として用いた。コンビュー
HE染色においても,萎縮した核とエオジン好性の過
ターによる画像解析システム (NIHimage1
.5
5f
o
r
染色性の細胞質を持つ細胞が多数見られた。 HO-lの
を用いて可視化し,
(
3
4
)
3
5
撞は既に増加していて,負荷終了後 3時間で最高値
免疫反応性は,必ずしも細胞陣警の程度と相関しなかっ
O-1議白は 3
2
た。ウエスタンプロッティングでは, H
(対照の 3
.
6
倍)に達した。その後,発現麗は次第に減
kDaの一本のバンドとして認識され,低酸素・虚血負
少したが,負荷終了後 2
4時間でも依然対照レベルの 2
荷により H
O-1蛋自の発現誘導が認められた。 HO-1蛋
倍を示した(図 5A,5
B
)0 HO-l議白と HO-1 mRN
自発現監は結主主側の海馬のほとんどを含む
Aの発現の時間的経過は基本的に一致していた。小脳
No3の部分において最も多く認められた(図 2A)o
低酸素虚血負荷終了直後では, H
O-1議白の発現議は
対照とほぼ同じであった。負荷終了後 1
2時間では, H
0
1議白発現議は,最高傭(対照レベルの 2
.
8
倍)に達
1蛋白の発現量はしだいに減少し,
した。その後,日 0
負荷終了後 2
4時間では対照とほぼ同じレベルにまで減
少した(図 3A,3
B
)。ノザンブロッティングでは日
0
1mRNAは
, 1
.8
k
bのバンドとして認識された。
皮質では低酸素虚血負荷後だけでなく負荷前でも H
ラット αーチュプリン cDNAプロープを内閣性の定
されることがポされた口成獣ラットの虚血モデルでは,
O-1 mRNAの発現震は H
麗的対照として用いた。 H
2
0分間の一過性前脳虚血により新皮質,海馬,視床に
O
1 mRNAの
おける神経細胞とグリア様細胞内の H
発現は幸子明に増加すると報告されている。日 0
1m
0
1蛋白と HO-lmRNAの発現議は多かった(デー
タは示さず)。
考
察
この研究により,新生仔ラットの低酸素虚血モデル
において,急速に H
O-1 mRNAとHO-1資自が誘導
0
1蛍白と同様に No3の部分において最も多かった
(
図4
)。低酸素鹿血負荷終了直後に,日0
1 mRNA
図 1;低酸索負荷終了後 1
2時間のラットの脳の HO-1蛋自の分布を示す。方法に記載した通りに海馬前万背側のレ
ベルでの冠状断切片を作成し免疫組織化学を行なった。結穀側の大脳皮質,海馬,視床の一部において, H
0
1陽性の n
e
u
r
o
p
i
lが優位に認められる。 さらに,結主主側の外包の部分においても日 0
1の免疫染色性は優
位であった。非結紫側では弱い H
O-1発現が頼粒状に認められた。
A
. 非結殺側の大脳皮質の弱拡大像。 日結紫側の大脳皮質の弱拡大像。
C
. 非結設側の大脳皮質の強
D
. 結殺側の大脳皮質の強拡大像。
拡大像。
スケールは AとBは500μm,CとDは50μmを示す。
(
3
5
)
3
6
4
'J
宅
,a
e 司制調﹄
•
l
i
g
a
凶o
n
h
y
p
o
x
i
a
r
ncontrol
。
ob
6h
1
2
h
2
4
h
4
8
b
・
7dI
y
s
A
f
t
e
rHI
図 3A ;HO-1蛋白発現の時間的経過を示す。仔ラッ
トの左頚動脈を結葉した後に,低酸素 (8%
酸素, 92%
窒素)負荷をかけた。低酸素負荷
図 2A; 日齢 7のラットに低酸素虚血負荷を加え,低
2時間のラットの脳における
酸素負荷終了後 1
終了後
o
時間
HO-1蛋白の発現をウエスタンプロッティン
4
8時間
7日に脳を取り出し,大脳組織全体
グにて検討した。大脳全体を,図 2Bのよう
を 6つの部分に切り分けた。 N03の部分を,
に 6つの部分に切り分けた。これらの大脳組
等量の蛋白試料 (80μg) に調製し, それを
織 (N0
1'
"N0
6
) と小脳皮質 (N07) を,等
SDS-PAGEとウサギ抗ラット HO-1抗体を
量の蛋白試料 (80μg) に調製し,それを S
用いて分析した。リコンビナントラット HO-
6時間, 1
2時間, 2
4時間,
DS-PAGEとウサギ抗ラット HO-1抗体を用
1
蛋白を数量的対照として用いた。低酸素虚
いて分析した。 Lane1,3
,5;結紫側 (No1,
血負荷を加えない対照仔ラットについても同
3,5
)
0 Lane2,4,6;非結紫側 (N02,4,6
)。
様に検討した。 rHO-1p
r
o
t
.;リコンビナン
Lane7;小脳皮質。同じ実験を 3回行ない同
トラット HO-1蛋白。
様の結果を得た。
B;棒グラフは,同じ実験を 3回行い,コンピュー
B;大脳組織全体を,図のように 6つの部分に切
ターを用いた画像解析システムにて数量化し
1'
"N0
6
)
り分けた。これらの大脳組織 (N0
たデータを示したものである。数量化したデー
と小脳皮質 (N07) をウエスタンブ、ロッティ
タを日齢 7の対照との比率で示した。
ングとノザンブロッティングに使用した。
HI;低酸素虚血負荷。
RNAの量は閉塞部位の再開通後 ロ
1
2時閣で最高値に達
しい,以後減少する.Q[臼ω22
側の大脳皮質,海馬,線条体において, HO-1発現は
血により大脳皮質,海馬の神経細胞とアストロサイト
2時間から 2
4時間で誘導され,
低酸素虚血負荷終了後 1
の両方において HO-1蛋白が著明に誘導され HO-1蛋白
負荷終了後 7日まで持続すると報告している凶。この
2時間で最高値に達し,以
の量は閉塞部位の再開通後 1
・1
蛋白の時間的経過をウ
違いは, Bergeronらが HO
らは,我々と同じ新生仔モデルを用いた実験で,結紫
ヘ
後減少する [23J。今回の新生仔ラット低酸素虚血モデル
エスタンプロッティングで示さずに,免疫組織化学の
に お い て も , 低 酸 素 虚 血 負 荷 終 了 後 3時 間 で
結果より HO-1発現が低酸素虚血負荷終了後 7日まで
HO-1 mRNA量は最高値を示し,負荷終了後 1
2時間
持続していると結論づけたためと考えられる。我々の
でHO-1蛋白量の最高値を示した。一方, Bergeron
実験では,低酸素虚血負荷終了直後でも HO-1 mRN
(
3
6
)
3
7
図 4 日齢 7のラットに低酸素虚血負荷を加え,低酸
素負荷終了後 3時 間 の ラ ッ ト の 脳 に お け る
HO-1 mRNAの発現をノザンプロッティング
6つの
4
'
a
8E
.
,
・
にて調べた。大脳全体を,図 2Bの様に
部分に切り分けた。これらの大脳組織 (No1--
No6) と小脳皮質 (No7)を本文に記載してい
- 均a
t
l
岨・h
ypo
由
図偶凪旬』
るように,等量の全 RNA試 料 (30μg) に調
。
製し,それをラット HO-1 cDNAプロープを
ob
3b
6b
Ub
1
4
b
A
f
t
e
rHI
用いたノザンハイブリダイゼーションにて分析
した。ラット αーチュプリン cDNAプロープ
図 5A ;HO-1mRNA
発現の時間的経過を示す。仔
を内因性対照として用いた。 Lane1,3
,5;結
ラットの左頚動脈を結葉した後に,低酸素
紫側 (No1,3,5
)0 Lane2,4,6:非結紫側
(8%酸素, 92%窒素)負荷をかけた。低酸
素負荷終了後, 0時間, 3時間, 6時間, 1
2
時間, 2
4時間に脳を取り出し,大脳組織全体
を 6つの部分に切り分けた。 No3の部分を等
(No2,4
,6
)
0 Lane7;小脳皮質 o 同じ実験を
5回行い同様の結果を得た。
A量は増加していて,日 0
1mRNAの誘導は 2時間
量の全 RNA試 料 (30μg) に調製し,それ
の低酸素負荷中に既に始まっていることが示唆された。
を,ラット HO-1 cDNAプロープを用いた
新生仔ラット低酸素虚血モデルでは, HO-1蛋白発現
ノザンハイブリダイゼーションにて分析した。
が転写的に調節されていて,成獣ラット虚血モデルに
ラット αーチュプリン cDNAプロープを内
比して早期に HO-1蛋白が誘導されることが,今回の
因性対照として用いた。低酸素虚血負荷を加
研究から明らかとなった。
えない仔ラットについても同様に検討した。
B 棒グラフは,同じ実験を 3回行い,コンピュー
最近の研究により, HO-1 mRNAとHO-1蛋白が
Alzheimer
病患者の大脳皮質,脳血管で増加してい
ターを用いた画像解析システムにて数量化し
ることが明らかとなった [25,26)。成獣ラットの一過性の
たデータを示したものである。数量化したデー
e
r
i
f
o
c
a
l are
全脳虚血モデルでは,閉塞側の海 馬の p
タを日齢 7の対照との比率で示した。
d
HI;低酸素虚血負荷。
aのアストロサイトとミクログリアで HO-1発現が誘
導される [27)が,今回の結果では HO-1の免疫反応性と
細胞障害の聞の関連は明らかとはならなかった。これ
とが,今回の研究により明らかとなった(データは示
までの本モデルを使用した研究 [17,18)でも指摘されてき
さず)。この免疫反応性は,結葉側と非結費量側の両方
たが,今回使用した新生仔ラット低酸素虚血モデルで
で認められた。今回使用したラットモデルでは椎骨動
は,神経細胞の障害の範囲に個体差が認められ,細胞
脈は結葉しなかったことより,小脳皮質では, HO-1
障害と HO-1発現との関連性を確認することは難しい
発現は常に起こっていて,低酸素虚血負荷によって誘
と考えられた。
導されたものではないと推測された。
発達に伴う HO-1蛋白発現量の変化については,仔
小脳皮質では,低酸素虚血負荷後だけでなく負荷前
でも HO-1mRNAとHO-1蛋白の発現量は多く, Pur
ラット脳のグリア様細胞,神経細胞,内皮細胞で,
k
i
n
j
e
*
田胞において HO-1蛋白が優位に発現しているこ
円0
1蛋白が発現し,生後 7日目で発現量は最大値を
(
3
7
)
3
8
Chem.2
6
3:3
3
4
8
3
3
5
3,1
9
8
8
.
[
6J McCoubrey,W. K. J
r
., Ewing,J
.F
.,
Maines,M.D
.
: Humanhemeoxygenase2 c
h
a
r
a
c
t
e
r
i
z
a
t
i
o
nande
x
p
r
e
s
s
i
o
no
fa
f
u
l
l
l
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n
g
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hcDNAande
v
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c
es
u
g
g
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s
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g
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h
a
tt
h
etwoHO-2t
r
a
n
s
c
r
i
p
t
smayd
i
f
f
e
r
by c
h
o
i
c
e o
f polyadenylation s
i
g
n
al
.
とると報告されている。一方,成獣ラット脳において
は,通常の状態では非常に低いレベルでしか HO-1は
発現していないことが明らかとなっている [28]。今回の
結果では,非結紫側で認められた弱い HO-1の免疫反
応性は,生後 7日目で構成的に発現している HO-1に
よるものと考えられる。ウエスタンプロッティングで,
HO-1発現量が結紫側と非結紫側で違いがあることか
Arch. Biochem. B
i
o
p
h
y
s
. 2
9
5
ら,低酸素虚血負荷で,結紫側に HO-1蛋白が優位に
1
9
9
2
.
[
7J Shibahara,S
.,Yoshizawa,M.,Suzuki,
誘導されたと推測された。
HO-1誘導の生物学的意義については,依然議論さ
H.,Takeda,K.,Meguro,K.,Endo,K
.
:
F
u
n
c
t
i
o
n
a
la
n
a
l
y
s
i
so
f cDNAs f
o
r two
t
y
p
e
so
f human heme oxygenase and
e
v
i
d
e
n
c
ef
o
rt
h
e
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rs
e
p
a
r
a
t
er
e
g
u
l
a
t
i
o
n
.J
.
Biochem.(Tokyo) 1
1
3:2
1
4
2
1
8,1
9
9
3
.
[8J Sun,Y.,Rotenberg,M.0
.,Maines,M.D
.
:
Developmental e
x
p
r
e
s
s
i
o
n o
f heme
oxygenase isozymes i
nr
a
tb
r
a
i
n
. Two
HO-2mRNAa
r
ed
e
t
e
c
t
e
d
.J
.Biol
.Chem.
れる余地が残されている。これまでも述べてきたよう
に
, ビリルピンは酸化ストレスに対する防御機構とし
て働いている可能性が強い。シナプス網が未だ完全に
形成していない新生児期では,低酸素虚血負荷で誘導
された HO-1が,様々な酸化ストレスに対する防禦に
貢献していると推測された。
これらの結果から, HO-1の酸化ストレスに対する
防御機構は,脆弱な周産期の脳においても低酸素虚血
負荷後の早期の段階から機能しており,脳障害予防に
9
9
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