Kobe University Repository : Kernel Title 新生仔ラットの低酸素虚血負荷におけるHemo oxygenase-1蛋白mRNAの発現について Author(s) 田口, 和裕 Citation 神戸大学医学部紀要=Medical journal of Kobe University, 60(1): 33-40 Issue date 1999-06 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00042528 Create Date: 2015-02-01 3 3 新生仔ラットの低酸素虚血負荷における Hemeo x y g e n a s e -1 蛋白及び mRNAの発現について 田口和裕 :神戸大学大学院医学研究科小児科学 (但当:中村 肇教授) 連絡先:干 7 3 70 8 1 1 司 呉市西中央 2-3-28 呉共済病院小児科 旧日和裕 TEL:0823-222 1 1 1 FAX:0823-2ト1 5 9 7 “ (平成 1 1年 1月初日受付) 要 約 寄は,依然として脳性麻癖,精神発達遅滞,てんかん 1,九周産期の低酸素性虚血性 などの主要原因である ; Hemeoxygenase (HO) はヘムを分解し1::::'リ 脳障害に対する適切な治癒法を考える上では.体の ベルジン,一酸化炭素,鉄を生成する反応を触媒する xygenase 防御機構の解明は不可欠である。 Heme o 酵素である。その l sozymeの一つである HO-1は , (HO) はヘムを分解しピリベルジン,一酸化炭素, 通常の状態のラット脳では,限られた傾城の神経細胞 1こ は , 鉄奇生成する反応を触媒する静素である [3,九日 0 にわずかに存在するのみである。しかし,様々な刺激 ラットとヒトにおいて,それぞ、れ 2つの l sozymeが により日 0 1発現は強力に賦活される。我々は,新生 存在し,別々の議伝子からつくられる [5, 6 , 7 , 九 1の 仔ラットの低酸素虚血モデルの脳告用いて日 0 はHO-l,構成型は HO-2と呼ばれ,中瓶神経系におい mRNAと掻自の発現壌を経時的に調べ, HO-l滋白 ては,神経細胞内に HO-2が広範に発現している O が結穀側の大脳皮質,海馬,視床の 色部,外包におい 方. HO-1は限られた神経系細胞に発現しているに過 て,低酸素虚血負荷後 3時間から 3 6時間で増加してい ぎないへしかし, HO-1発現は様々な刺激に反応し ることを明らかにした。大脳では. HO-1譲白は結設 て強力に賦活され, 10, ヘ w h e a t shock p r o t e i n3 2 側の潟馬を含む部分において,最も多く発現しており, (HSP3 2 ) はHO-1と同一物質であることが確認され 低酸素虚血負荷後 1 2時間で最高値に漉した。日 0 1m ている[lZ, ヘ HOの触媒作用で生成されるピリルピン RNA盈は負荷終了時には, に増加し始めており, は,細胞内の複雑な防御機構の中で抗駿化物質として 負荷終了後 3 し,以後減少した。 働くと考えられている[J九このことは,グルタチオン HOl 日0 1 mRNA発 “ し,新生仔ラットの低酸 デルは,成獣ラットの虚血モデルよりも, やアスコルピン酸などの, …般的な抗酸化物質が低い レベ jレにある新生児期の神経細胞にとっては重要なこ とかもしれない[ヘ低般索虚血による障害発生は,活 HO-1発現が早期に誘導されると考えられた。これら 性酸素の増加と関連している[ヘ HO-lの作用により の結果から, HO-1による防御機構は,発途途上にあ 生成される抗酸化物質は,脳を酸化陣脅から防製する る新生仔脳においても低酸素戯曲負荷後の早期の段階 のに容与していると考えられる。新生児期において で機能し,周産期の低酸素性虚血性脳障害の予防に寄 1mRNAとHO-l蛋白が低酸業虚刷によりどの 日0 していると推測された。 ように誘導されるかを明らかにすることは重要である。 今回,我々は新生仔ラットの低酸議虚血モデル[17,則を 緒 嘗 用いて HO-1 mRNAとHO-1蛋白の発現監を経時的 l こ検討した。 問産期に低酸素・虚血によって引き起こされる脳陣 xygenase, l HSP-32,低酸素虚血,新生仔ラット,脳障害 キーワード:Hemeo ( 3 3 ) 3 4 法 方 Macintosh) を利用してフィルム上の HO-1蛋白 ( 3 2 kDa) のバンドの濃度を定量した。 4:ノザンプロッティング 1 新生仔低酸素虚血モデルラットの作成 脳組織から,全 RNAを酸性グアニジン・チシアネー 日齢 7の S prague-Dawl e yラットをエーテルにて evineの変法に基づ‘いて,左総頚動脈を結 麻酔し, L ト・フェノー jレ・クロロホルム法 (AGPC法)を用 索後切断した:ヘ皮膚を縫合し,母親のもとに 3時間 2 0 J。全 RNA(30μg/レーン)を, 2M いて抽出した : 戻し十分に回復させた後に, 8%酸素, 92%窒素を満 ホルムアミドを含んだ1.0%アガロースゲルにて電気 2時間の 泳動した後にナイロンメンブレン (Hybond-N+) に たしたプラスチック製の密閉容器中に入れ 低酸素負荷をかけた。ラットの体温は電熱のパットに 2 1 Jをもとに, 転写した。 Shibaharaらの報告 [ 7 . 0Cから 3 7 . 5Cに保たれていた。低酸素負荷終 より 3 ら+1196までのヌクレオチドからなる, 了後, ラットは再び母親のもとに戻した。頚動脈結紫, cDNAをRT-PCRを用いて作製した。ラット αーチュ プリン cDNAフ。ロープを内部標準として使用した。 0 0 低酸素負荷のいずれをも行っていない日齢 7のラット 十3 6 6か ラット HO-1 を対照として用いた。 これらのプローブを, ランダムプライミング法を用い 2:免疫組織化学 α_32PJdCTPでラベルした。メンブレンをハイ て [ 低酸素負荷終了後,仔ラットをエーテルで麻酔した ブリダイゼーション溶液 (ExpressHyb;アメリカ 4 , O.lM/Lリ ン 酸 緩 衝 液 後 に , 左 心 耳 よ り pH7. Clontech社製)とともに 6 8C, 3 0分間プレハイブリ (PB) で調製した 4%パラホルムアルデヒド (PFA) 麦 , DNAプローブとともに 6 8C, ダイゼーションした f 0 0 溶液を用いて潅流固定した。脳を取り出し, PFA固 1時間ハイブリダイゼーションを行なった。ハイブリ 定された脳を線条体,海馬前方,背側海馬,小脳のレ ダイゼーションを行なったメンブレンは,室温下にて ベルで、冠状に切断した。パラフィン包埋後に 6μm 2xSSC,0.05%SDS溶液で 1 0分間 2回 , 5 0C 0 . 1x 0 SSC,O.l%SDS溶液で 2 0 分間 2回 洗 浄 し た 。 メ ン ブ の冠状切片を作成しへマトキシリン・エオジン (HE) 染色を行った。脱パラフィン処理を行なった レンから出る放射線を X線フィルム (RXU:フジフィ 切片は, 1 .5%のヤギ血清を含んだリン酸緩衝食塩水 ルム社製)に感光させ現像した。現像したフィルムは (PBS) に浸した後に, 2 0 0倍希釈したウサギ抗ラッ ウエスタンプロッティングと同じ方法で定量した。 トHO-1ポリクローナル抗体(カナダ, S t r e s sGen社 結 製)にて 4Cで一晩インキュベートした。引き続き, 0 果 アビジンービオチン化した h orseradishperoxidase 統計で 2 1 0匹の新生仔ラットの左総頚動脈を結葉し を用いて酵素組織化学法 ( Vector 社製)を行なった。 3:ウエスタンプロッティング 切断した。そのうち, 5 9匹を免疫組織化学に使用し, 5 1匹をウエスタンブロッティングに, 8 0匹をノザンブ ウエスタンプロッティングの試料としては,低酸素 負荷終了後,所定の時間に各々 3匹以上の仔ラットを ロッティングに使用した。低酸素負荷中,ラットの皮 8倍量の 膚色は蒼白となり,ほとんどのラットがけいれんして (0.02% Tris-HC1, 0.04% EDTA,1% いた。全体のうち 2 0匹のラット 00.5%) が低酸素負 用いた。断頭後に,脳を取り出して分割し 緩衝液 TritonX-100,1m M PMSF) で懸濁した後に, 1 2, 0 0 0回転で、 2 0 分間遠心した。各々の操作は 4Cにて 荷中に死亡した。 免疫組織化学では,低酸素虚血負荷後 3時間で 0 H 行なった。上清を 12.5%SDS/ポリアクリルアミドゲ e u r o p i lが結紫側の大脳度膚,海馬,視 0 1陽性の n ルを用いて電気泳動を行ない, 転写メンブレン 床の一部に多数認められた。さらに,外包を含む白質 CImmobilon-P) に電気的に転写した。メンブレンは の一部においても HO-1の免疫染色が結索側で優位に 4%スキムミルクを含む PBSに浸漬した後に, 1 0, 0 0 0倍 認められた。海馬の各領域間においては HO-1の免疫 に希釈したウサギ抗ラット HO-1ポリクローナル抗体で 反応性に違いは認められなかった。大脳皮質では, インキュベー卜した。数回洗浄した後に, h o r s e r a d i s h 0 1免疫染色により外包に近い第 V層から第 V I層にお p e r o x i d a s eを結合したヤギ抗ウサギ IgG抗 体 ( 5, 0 0 0 いてより強い免疫染色性が認められた。逆に,非結索 倍希釈)でインキュベートした。抗原抗体複合体は 側では弱い HO-1発現が頼粒状に見られたのみであっ ECL化学蛍光システム(アメリカ, Amersham 社製) 6時間でも,結葉側で た(図 1)。低酸素負荷終了後3 H リコンビナントラット HO-1蛋白 はHO-1の免疫反応性が依然として優位に認められた。 (SterssGen社製)を対照として用いた。コンビュー HE染色においても,萎縮した核とエオジン好性の過 ターによる画像解析システム (NIHimage1 .5 5f o r 染色性の細胞質を持つ細胞が多数見られた。 HO-lの を用いて可視化し, ( 3 4 ) 3 5 撞は既に増加していて,負荷終了後 3時間で最高値 免疫反応性は,必ずしも細胞陣警の程度と相関しなかっ O-1議白は 3 2 た。ウエスタンプロッティングでは, H (対照の 3 . 6 倍)に達した。その後,発現麗は次第に減 kDaの一本のバンドとして認識され,低酸素・虚血負 少したが,負荷終了後 2 4時間でも依然対照レベルの 2 荷により H O-1蛋自の発現誘導が認められた。 HO-1蛋 倍を示した(図 5A,5 B )0 HO-l議白と HO-1 mRN 自発現監は結主主側の海馬のほとんどを含む Aの発現の時間的経過は基本的に一致していた。小脳 No3の部分において最も多く認められた(図 2A)o 低酸素虚血負荷終了直後では, H O-1議白の発現議は 対照とほぼ同じであった。負荷終了後 1 2時間では, H 0 1議白発現議は,最高傭(対照レベルの 2 . 8 倍)に達 1蛋白の発現量はしだいに減少し, した。その後,日 0 負荷終了後 2 4時間では対照とほぼ同じレベルにまで減 少した(図 3A,3 B )。ノザンブロッティングでは日 0 1mRNAは , 1 .8 k bのバンドとして認識された。 皮質では低酸素虚血負荷後だけでなく負荷前でも H ラット αーチュプリン cDNAプロープを内閣性の定 されることがポされた口成獣ラットの虚血モデルでは, O-1 mRNAの発現震は H 麗的対照として用いた。 H 2 0分間の一過性前脳虚血により新皮質,海馬,視床に O 1 mRNAの おける神経細胞とグリア様細胞内の H 発現は幸子明に増加すると報告されている。日 0 1m 0 1蛋白と HO-lmRNAの発現議は多かった(デー タは示さず)。 考 察 この研究により,新生仔ラットの低酸素虚血モデル において,急速に H O-1 mRNAとHO-1資自が誘導 0 1蛍白と同様に No3の部分において最も多かった ( 図4 )。低酸素鹿血負荷終了直後に,日0 1 mRNA 図 1;低酸索負荷終了後 1 2時間のラットの脳の HO-1蛋自の分布を示す。方法に記載した通りに海馬前万背側のレ ベルでの冠状断切片を作成し免疫組織化学を行なった。結穀側の大脳皮質,海馬,視床の一部において, H 0 1陽性の n e u r o p i lが優位に認められる。 さらに,結主主側の外包の部分においても日 0 1の免疫染色性は優 位であった。非結紫側では弱い H O-1発現が頼粒状に認められた。 A . 非結殺側の大脳皮質の弱拡大像。 日結紫側の大脳皮質の弱拡大像。 C . 非結設側の大脳皮質の強 D . 結殺側の大脳皮質の強拡大像。 拡大像。 スケールは AとBは500μm,CとDは50μmを示す。 ( 3 5 ) 3 6 4 'J 宅 ,a e 司制調﹄ • l i g a 凶o n h y p o x i a r ncontrol 。 ob 6h 1 2 h 2 4 h 4 8 b ・ 7dI y s A f t e rHI 図 3A ;HO-1蛋白発現の時間的経過を示す。仔ラッ トの左頚動脈を結葉した後に,低酸素 (8% 酸素, 92% 窒素)負荷をかけた。低酸素負荷 図 2A; 日齢 7のラットに低酸素虚血負荷を加え,低 2時間のラットの脳における 酸素負荷終了後 1 終了後 o 時間 HO-1蛋白の発現をウエスタンプロッティン 4 8時間 7日に脳を取り出し,大脳組織全体 グにて検討した。大脳全体を,図 2Bのよう を 6つの部分に切り分けた。 N03の部分を, に 6つの部分に切り分けた。これらの大脳組 等量の蛋白試料 (80μg) に調製し, それを 織 (N0 1' "N0 6 ) と小脳皮質 (N07) を,等 SDS-PAGEとウサギ抗ラット HO-1抗体を 量の蛋白試料 (80μg) に調製し,それを S 用いて分析した。リコンビナントラット HO- 6時間, 1 2時間, 2 4時間, DS-PAGEとウサギ抗ラット HO-1抗体を用 1 蛋白を数量的対照として用いた。低酸素虚 いて分析した。 Lane1,3 ,5;結紫側 (No1, 血負荷を加えない対照仔ラットについても同 3,5 ) 0 Lane2,4,6;非結紫側 (N02,4,6 )。 様に検討した。 rHO-1p r o t .;リコンビナン Lane7;小脳皮質。同じ実験を 3回行ない同 トラット HO-1蛋白。 様の結果を得た。 B;棒グラフは,同じ実験を 3回行い,コンピュー B;大脳組織全体を,図のように 6つの部分に切 ターを用いた画像解析システムにて数量化し 1' "N0 6 ) り分けた。これらの大脳組織 (N0 たデータを示したものである。数量化したデー と小脳皮質 (N07) をウエスタンブ、ロッティ タを日齢 7の対照との比率で示した。 ングとノザンブロッティングに使用した。 HI;低酸素虚血負荷。 RNAの量は閉塞部位の再開通後 ロ 1 2時閣で最高値に達 しい,以後減少する.Q[臼ω22 側の大脳皮質,海馬,線条体において, HO-1発現は 血により大脳皮質,海馬の神経細胞とアストロサイト 2時間から 2 4時間で誘導され, 低酸素虚血負荷終了後 1 の両方において HO-1蛋白が著明に誘導され HO-1蛋白 負荷終了後 7日まで持続すると報告している凶。この 2時間で最高値に達し,以 の量は閉塞部位の再開通後 1 ・1 蛋白の時間的経過をウ 違いは, Bergeronらが HO らは,我々と同じ新生仔モデルを用いた実験で,結紫 ヘ 後減少する [23J。今回の新生仔ラット低酸素虚血モデル エスタンプロッティングで示さずに,免疫組織化学の に お い て も , 低 酸 素 虚 血 負 荷 終 了 後 3時 間 で 結果より HO-1発現が低酸素虚血負荷終了後 7日まで HO-1 mRNA量は最高値を示し,負荷終了後 1 2時間 持続していると結論づけたためと考えられる。我々の でHO-1蛋白量の最高値を示した。一方, Bergeron 実験では,低酸素虚血負荷終了直後でも HO-1 mRN ( 3 6 ) 3 7 図 4 日齢 7のラットに低酸素虚血負荷を加え,低酸 素負荷終了後 3時 間 の ラ ッ ト の 脳 に お け る HO-1 mRNAの発現をノザンプロッティング 6つの 4 ' a 8E . , ・ にて調べた。大脳全体を,図 2Bの様に 部分に切り分けた。これらの大脳組織 (No1-- No6) と小脳皮質 (No7)を本文に記載してい - 均a t l 岨・h ypo 由 図偶凪旬』 るように,等量の全 RNA試 料 (30μg) に調 。 製し,それをラット HO-1 cDNAプロープを ob 3b 6b Ub 1 4 b A f t e rHI 用いたノザンハイブリダイゼーションにて分析 した。ラット αーチュプリン cDNAプロープ 図 5A ;HO-1mRNA 発現の時間的経過を示す。仔 を内因性対照として用いた。 Lane1,3 ,5;結 ラットの左頚動脈を結葉した後に,低酸素 紫側 (No1,3,5 )0 Lane2,4,6:非結紫側 (8%酸素, 92%窒素)負荷をかけた。低酸 素負荷終了後, 0時間, 3時間, 6時間, 1 2 時間, 2 4時間に脳を取り出し,大脳組織全体 を 6つの部分に切り分けた。 No3の部分を等 (No2,4 ,6 ) 0 Lane7;小脳皮質 o 同じ実験を 5回行い同様の結果を得た。 A量は増加していて,日 0 1mRNAの誘導は 2時間 量の全 RNA試 料 (30μg) に調製し,それ の低酸素負荷中に既に始まっていることが示唆された。 を,ラット HO-1 cDNAプロープを用いた 新生仔ラット低酸素虚血モデルでは, HO-1蛋白発現 ノザンハイブリダイゼーションにて分析した。 が転写的に調節されていて,成獣ラット虚血モデルに ラット αーチュプリン cDNAプロープを内 比して早期に HO-1蛋白が誘導されることが,今回の 因性対照として用いた。低酸素虚血負荷を加 研究から明らかとなった。 えない仔ラットについても同様に検討した。 B 棒グラフは,同じ実験を 3回行い,コンピュー 最近の研究により, HO-1 mRNAとHO-1蛋白が Alzheimer 病患者の大脳皮質,脳血管で増加してい ターを用いた画像解析システムにて数量化し ることが明らかとなった [25,26)。成獣ラットの一過性の たデータを示したものである。数量化したデー e r i f o c a l are 全脳虚血モデルでは,閉塞側の海 馬の p タを日齢 7の対照との比率で示した。 d HI;低酸素虚血負荷。 aのアストロサイトとミクログリアで HO-1発現が誘 導される [27)が,今回の結果では HO-1の免疫反応性と 細胞障害の聞の関連は明らかとはならなかった。これ とが,今回の研究により明らかとなった(データは示 までの本モデルを使用した研究 [17,18)でも指摘されてき さず)。この免疫反応性は,結葉側と非結費量側の両方 たが,今回使用した新生仔ラット低酸素虚血モデルで で認められた。今回使用したラットモデルでは椎骨動 は,神経細胞の障害の範囲に個体差が認められ,細胞 脈は結葉しなかったことより,小脳皮質では, HO-1 障害と HO-1発現との関連性を確認することは難しい 発現は常に起こっていて,低酸素虚血負荷によって誘 と考えられた。 導されたものではないと推測された。 発達に伴う HO-1蛋白発現量の変化については,仔 小脳皮質では,低酸素虚血負荷後だけでなく負荷前 でも HO-1mRNAとHO-1蛋白の発現量は多く, Pur ラット脳のグリア様細胞,神経細胞,内皮細胞で, k i n j e * 田胞において HO-1蛋白が優位に発現しているこ 円0 1蛋白が発現し,生後 7日目で発現量は最大値を ( 3 7 ) 3 8 Chem.2 6 3:3 3 4 8 3 3 5 3,1 9 8 8 . [ 6J McCoubrey,W. K. J r ., Ewing,J .F ., Maines,M.D . : Humanhemeoxygenase2 c h a r a c t e r i z a t i o nande x p r e s s i o no fa f u l l l e n g t hcDNAande v i d e n c es u g g e s t i n g t h a tt h etwoHO-2t r a n s c r i p t smayd i f f e r by c h o i c e o f polyadenylation s i g n al . とると報告されている。一方,成獣ラット脳において は,通常の状態では非常に低いレベルでしか HO-1は 発現していないことが明らかとなっている [28]。今回の 結果では,非結紫側で認められた弱い HO-1の免疫反 応性は,生後 7日目で構成的に発現している HO-1に よるものと考えられる。ウエスタンプロッティングで, HO-1発現量が結紫側と非結紫側で違いがあることか Arch. Biochem. B i o p h y s . 2 9 5 ら,低酸素虚血負荷で,結紫側に HO-1蛋白が優位に 1 9 9 2 . [ 7J Shibahara,S .,Yoshizawa,M.,Suzuki, 誘導されたと推測された。 HO-1誘導の生物学的意義については,依然議論さ H.,Takeda,K.,Meguro,K.,Endo,K . : F u n c t i o n a la n a l y s i so f cDNAs f o r two t y p e so f human heme oxygenase and e v i d e n c ef o rt h e i rs e p a r a t er e g u l a t i o n .J . Biochem.(Tokyo) 1 1 3:2 1 4 2 1 8,1 9 9 3 . [8J Sun,Y.,Rotenberg,M.0 .,Maines,M.D . : Developmental e x p r e s s i o n o f heme oxygenase isozymes i nr a tb r a i n . Two HO-2mRNAa r ed e t e c t e d .J .Biol .Chem. れる余地が残されている。これまでも述べてきたよう に , ビリルピンは酸化ストレスに対する防御機構とし て働いている可能性が強い。シナプス網が未だ完全に 形成していない新生児期では,低酸素虚血負荷で誘導 された HO-1が,様々な酸化ストレスに対する防禦に 貢献していると推測された。 これらの結果から, HO-1の酸化ストレスに対する 防御機構は,脆弱な周産期の脳においても低酸素虚血 負荷後の早期の段階から機能しており,脳障害予防に 9 9 0 . 2 6 5:8 2 1 2 8 2 1 7,1 [9J Ewing,J .F .,Weber, C . M., Maines, 寄与している可能性が示唆された。 謝 辞 M.D.: B i l i v e r d i n r e d u c t a s e i s h e a t r e s i s t a n tandc o e x p r e s s e dw i t hc o n s t i t u t i v e andh e a ts h o c kformso fheme oxygenase この研究は文部省科学研究助成(第0 9 4 7 0 2 4 1号)の i nb r a i n .J . Neurochem. 6 1 1 0 1 5 1 0 2 3, 1 9 9 3 . 援助を受けたものである。 文 1 3 2 0, 口O J Maines,M.D . : Newdevelopmentsi nt h e 献 [ 1J Larroche, J . C . : Development o f t h e c e n t r a l nervous system,Developmental pathology o ft h e n e o n a t e, c h a p . 1 9, Excerpta Media, Amsterdam-London NewYork,p 3 5 5 4 4 5,1 9 7 7 . r e g u l a t i o n o f heme metabolism and t h e i ri m p l i c a t i o n s .C r i t .R e v .Toxicol .1 2:2 9 1 3 1 4,1 9 8 4 . [ l 1J Maines,M.D . : Heme oxygenase: f u n c t i o n,m u l t i p l i c i t y,r e g u l a t o r y mechanisms, andc l i n i c a la p p l i c a t i o n s . FASEBJ . 2: . J . : Neurologyo ft h e newborn, [2J Volpe,J Sanders,P h i l a d e l p h i a,p 2 0 9 2 3 5,1 9 8 7 . 口2 J Keyse,S .,T y r e l l,R.M.:Hemeoxygenase 也 9 8 8 . 2 5 5 72 5 6 8,1 .,Schmid,R . : [3J Tenhunen,R.,Marver,H.S The enzymatic c o n v e r s i o no f heme t o i s t h e major 32-KDa s t r e s s p r o t e i n b i l i r u b i nbymicrosomalheme o x y g e n a s e . e r o x i d e and UVAr a d i a t i o n,hydrogen p .Acad.S c i .USA.6 1:7 4 8 7 5 5, P r o c .Natl 1 9 6 8 . . Acad.S c i . sodiuma r s e n i t e .P r o c .Natl USA.8 6:9 9 1 0 3,1 9 8 6 . .,Schmid,R . : [4J Tenhunen,R.,Marver,H.S Microsomalhemeo x y g e n a s e .C h a r a c t e r i z a t i o no ft h eenzyme.J .Biol . Chem.2 4 4: 6 3 8 8 6 3 9 4,1 9 6 9 . [ 5J C r u s e,, . IM aines,M . D . :E v i d e n c es u g g e s t i n gt h a tt h etwoformso fhemeoxygenase a r ep r o d u c t so fd i f f e r e n tg e n e s .J .Biol . i n d u c e di n human s k i nf i b r o b l a s t s by 口3 J Shibahara,S .,Muller,R. H.,Taguchi, H . :T r a n s c r i p t i o n a lc o n t r o lo ft h er a t hemeoxygenasebyh e a ts h o c k .J .Biol . Chem. 2 6 2:1 2 8 8 9 1 2 8 9 2,1 9 8 7 . 口4 J S t o c k e r,R . :I n du c t i o no f haem o x y g e n a s e a sad e f e n c ea g a i n s to x i d a t i v es t r e s s .F r e e R a d i c .R e s .Commun. 9:1 0 1 1 1 2,1 9 9 0 . ( 3 8 ) 3 9 [ 15 J Rap,S .P .,Lai,J .C .,H e r t s,L .,Cooper, b r a i n .J .C e r e b .B l o o d .Flow.Metab.1 7 : 6 4 7 6 5 8,1 9 9 7 . A .J . : Glutathione i sp r e s e n ti nh i g h c o n c e n t r a t i o n si nc u l t u r e da s t r o c y t e sb u t [ 2 5 J Premkumar,D.R.,Smith,M.A.,Richey, n o ti nc u l t u r e d n e u r o n s . Brain R e s . P .L .,P e t e r s e n,R. B ., C a s t e l l a n i,R., 9 8 9 . 4 9 3 : 3 9 8 4 0 1,1 Kutty,R. K.,Wiggert,B .,Perry,G., Kalaria, R.N.: l n du c t i o n o f heme [ l6 J S i e s j , りB .K.,Agardh,C .D.,Bengtsson, F . : Free r a d i c a l s and b r a i n damage. C e r e b r o v a s c . Brain Metab. R e v . 1 1 6 5 2 1 1,1 9 8 9 . [ l8 J Towfighi,J .,Yager,J .Y.,Housman,C ., o x y g e n a s e 1 mRNA and p r o t e i n i n n e o c o r t e x and c e r e b r a l v e s s e l s i n .Neurochem. 6 5 : Alzheimer'sd i s e a s e .J 1 3 9 9 1 4 0 2,1 9 9 5 . [ 2 6 J S c h i p p e r,H.M.,C i s s e,8 .,Stopa,日 . G . : Expression o f heme o x y g e n a s e 1i nt h e s e n e s c e n tandA l z h e i m e r d i s e a s e db r a i n . Ann.Neurol .3 7 7 5 8 ω 7 6 8, 1 9 9 5 Vannucci, R .C . : Neuropathology o f remoteh y p o x i c i s c h e m i cdamage i nt h e [ 2 7 J Koistinaho,J .,M i e t t i n e n,8 .,Keinanen, R ., V a r t i a i n e n, N., Roivainen, R ., immaturer at . ActaNeuropathol .8 1:5 7 85 8 7,1 9 91 . L a i t i n e n,J .T . : Longterm i n d u c t i o no f haem o x y g e n a s e l (HSP3 2 )i na s t r o c y t e s [ 1 9 J L e v i n e,8 . :A n o x i c i s c h e m i ce n c e p h a l o p a t h y andmicrogliaf o l l o w i n gt r a n s i e n tf o c a l 幽 [ 17 J R i c e,J .日, Vannucci,R.C .,B r i e r l e y,J 陪 B . : The i n f l u e n c e o f immaturity on h y p o x i c i s h e m i cb r a i n damage i nt h e r at . Ann. Neurol . 9:1 3 1 1 4 1,1 9 81 . 聞 向 蜘 i nr a t s . Am.J .Patho1 .3 6:1 1 7,1 9 6 0 . 印刷 . E u r .J . b r a i n ischaemia i nt h e r at Chomczynski,P .,S a c c h i,N . :S i n g l e s t叩 N e u r o s c i . 8:2 2 6 5 2 2 7 2,1 9 9 6 . method o f RNA i s o l a t i o n by a c i d h l o r o f o r m guadinium t h i o c y a n a t e p h e n o lc e x t r a c t i o n . Anal .Biochem. 1 6 2 :1 5 61 5 9, 1 9 8 7 . [ 21 ] Shibahara,8 .,M u l l e r,日 M.,Taguchi, H .,Yoshida,T . : Cloningande x p r e s s i o n o [cDNAf o rr a themeoxygenase. P r o c . Natl . Acad. S c i . USA. 8 2 7 8 6 5 7 8 6 9, 呼 町 [ 2 8 J Bergeron,M.,F e r r i e r o,D .M.,Sharp,F . fheme R . : Developmental o x y g e n a s e 1 (HSP32) i nr a tb r a i n an immunocytochemical s t u d y .D e v . Brain R e s .1 0 5 :1 8 1 1 9 4,1 9 9 8 . 1 9 8 5 . [ 2 2 J Takeda,A.,Onodera,H.,Sugimoto,A ., I toyama,Y.,Kogure,K.,Shibahara,8 . : I n c r e a s e de x p r e s s i o no fhemeoxygenase mRNAi nr a tb r a i nf o l l o w i n gt r a n s i e n t f o e b r a i ni s c h e m i a . Brain R e s .6 6 6:1 2 0 ω 1 2 4,1 9 9 4 . [ 2 3 J Takeda,A.,Kimpara,T .,Onodera,H ., Itoyama,Y.,Shibahara,8 .,Kogure,K . : Regionald i f f e r e n c ei ni n d u c t i o no fheme o x y g e n a s e 1 p r o t e i n f o l l o w i n g r a t t r a n s i e n tf o r e b r a i ni s c h e m i a .N e u r o s c i . L e t t .2 0 5:1 6 9 1 7 2,1 9 9 6 . [ 2 4 J Bergeron,M.,F e r r i e r o,D.M.,Vreman, H .J .,S t e v e n s o n,D. K.,Sharp,F .R . : Hypoxia-ischemia, b u t n o t hypoxia a l o n e,i n d u c e st h ee x p r e s s i o no f heme oxygenasか 1 (HSP32) i n newborn r a t ( 3 9 ) 。 4 0 T r a n s i e n ti n d u c t i o no fhemeo x y g e n a s e luponh y p o x i c i s c h e m i c b r a i ndamagei nt h enewbornr a t KazuhiroTaguchi D e p a r t m e n to fP e d i a t r i c s,KobeU n i v e r s i t yS c h o o lo fM e d i c i n e . ABSTRACT Hemeo x y g e n a s e (HO) i sar a t e ω l i m i t i n genzymei nheme c a t a b o l i s mt h a tc l e a v e s heme t o formb i l i v e r d i n,c a r b o nmonoxideandi r o n . Thought h eHO-l i s o z y m ei sl o c a l i z e di ns e l e c t e d h ee x p r e s s i o n n e u r o np o p u l a t i o n sande x p r e s s e da tab a s a ll e v e li nt h enormalr o d e n tb r a i n,t o fHO-1 i ss t r o n g l ya c t i v a t e dr e s p o n s et ov a r i o u ss t u m u l i . We i n v e s t i g a t e dt h eq u a n t i t a t i v e c h a n g e si nHO-1 mRNAandp r o t e i no v e rt i m ei n ar a t model o fp e r i n a t a lh y p o x i c i s h e m i c )b r a i n damage and f o u n di n c r e a s e d HO-1 p r o t e i nl e v e l si nt h ei p s i l a t e r a ls i d eo ft h e (HI c e r e b r a lc o r t e x,t h ehippocampus, ap a r to ft h ethalamusandt h ee x t e r n a lc a p s u l e from 3 3 6 t h e amount o f HO-1 p r o t e i n was t h eh i g h e s t on t h e h r sa f t e r HI i n s u l t .I nt h ec e r e b r u m, l i g a t e ds i d ei nt h ep a r tt h a tc o n t a i n e dmosto ft h eh i p p o c a m p u s .Theamounto fHO-1p r o t e i n i n c r e a s e dt o a maximum a t1 2h r sf o l l o w i n g HI i n s u l t . The l e v e lo f HO-l mRNA was r e a c h e d a maximum a t 3h r sf o l l o w i n g HI i n s u l t and t h e n i n c r e a s e d by t h ee n do f HI, d e c r e a s e d .Thet i m ec o u r s eo ft h eHO-1p r o t e i ni n d u c t i o nwase s s e n t i a l l yc o n s i s t e n tw i t ht h a t o fHO-lmRNA.I nt h enewbornh y p o x i c i s c h e m i cr a tmodel,HO-le x p r e s s i o ni si n d u c e da tan e a r l i e rs t a g ecomparedt ot h a ti nt h ea d u l ti s c h e m i cr a tmodel .T h e s ed a t as u g g e s tt h a tt h e HO-l d e f e n s emechanism a g a i n s to x i d a t i v es t r e s sb e g i n st o work a tt h ee a r l ys t a g e so f HI h i smechanismmayc o n t r i b u t et op r o t e c ta g a i n s t i n s u l ti nt h ev u l n e r a b l ep e r i n a t a lb r a i n,andt b r a i n damage r e s u l t i n g from a c o m b i n a t i o no fh y p o x i a and i s c h e m i ad u r i n gt h ep e r i n a t a l p e r i o d . ( 4 0 )
© Copyright 2024 ExpyDoc