Hilbert 保型形式についての補足 (新版) 大下 達也 本稿は整数論サマースクールで配布したプリント『Hilbert 保型形式についての補足』 (旧版) を基に加筆 修正したものです.旧版や講演で十分に説明することが出来なかった項目や,誤解を招きやすい項目につい て,新たに注意書きを追加しました.新版で追加された項目には (追記) という印を付けております. また,群 Γ00 (f) の形や,q 展開の和の範囲等につきましては,誤りを訂正したために旧版,或いは講演の ものと異なっておりますのでご注意ください.不勉強や注意不足により,誤った内容を述べてしまいました ことを,この場をお借りしてお詫び申し上げます. 1 定義 L を総実代数体とし,L の無限素点全体のなす集合を Σ∞ (L) とおく.L/Q の共役差積 (different) を dL と書く.Hilbert 上半平面 HL を HL := z = (zv )v ∈ L ⊗Q C = ∏ v∈Σ∞ (L) C 任意の v ∈ Σ∞ (L) に対して,Im zv > 0 により定める.行列式が総正になる行列全体のなす GL2 (L ⊗Q R) の部分群を GL2 (L ⊗Q R)+ とおくと,一 次分数変換による GL2 (L ⊗Q R)+ の HL への作用 ( ) a b az + b GL2 (L ⊗Q R) × HL −→ HL ; ( , z) 7−→ A · z := cz + d c d ( ) a b が定まる.k を非負の偶数とする.このとき,行列 A := ∈ GL2 (L ⊗Q R)+ の関数 f : HL −→ C へ c d の右作用が (f |k A)(z) := NL⊗Q C/C (det A)k/2 NL⊗Q C/C (cz + d)−k f (A · z) + により定まる.L の {0} でない整イデアル f に対して,SL2 (L) の部分群 Γ00 (f) を ( ) 1 + f OL −1 Γ00 (f) := Γ00 (f; OL , dL ) := ∩ SL2 (L) f 1+f により定める. 定義 1.1 (C 係数の Hilbert 保型形式). k を非負の偶数として,f を L の {0} でない整イデアルとする.HL 上の正則関数 f : HL −→ C が以下の条件をすべて満たすとき,f は L 上の (均一な) 重さ k ,レベル Γ00 (f) の C 係数の Hilbert 保型形式であるという: • 任意の A ∈ Γ00 (f) に対して,f |k A = f が成立する.(これは,保型性と呼ばれる条件である.) • f は任意の尖点で正則である (後述,脚注 1 参照).尚,この条件は L ̸= Q の場合は自動的に成立する (Koecher 原理). L 上の重さ k ,レベル Γ00 (f) の C 係数の Hilbert 保型形式全体のなす空間を MkL (Γ00 (f); C) とおく. 1 注意 1.2 (追記). 本稿で「Hilbert 保型形式」と呼ばれているものは,[Kat78] §1.2 の意味での「dL -Hilbert modular form over C」を,[Kat78] §1.5 及び [DR80] §5 の記号の下で (a, b) = (OL , d−1 ) として定まる Hilbert モジュラー多様体の一意化写像 ( ) HL −→ M(dL , Γ00 (f))(C); τ 7−→ LOL ,d−1 (τ ), i(ε) L で引き戻したものである ([DR80] (5.7) Proposition 参照).一方,[CSSV12] の Kakde の稿や [Kak13] に於 ける「Hilbert modular form」という用語は, 「OL -Hilbert modular form over C」を (a, b) = (OL , OL ) とし て定まる一意化写像 HL −→ M(OL , Γ00 (f))(C) で引き戻したものを指し,本稿とは微妙に異なるので,これ らの文献を参照する場合は注意が必要である.本稿でこのように「少し異なった」Hilbert 保型形式の定義を 採用するのは,OL -Hilbert modular form よりも dL -Hilbert modular form の方が「対角制限」(後述 §5.1) に関して良い振る舞いをするからである. 注意 1.3 (追記). L の狭義類数が 1 でないとき,本稿で採用している Hilbert 保型形式の定義は,アデール を用いた定義 (例えば [高瀬 05] 定義 3.2.1) よりも「情報が少ない」ものである.実際,アデール版の定義と の整合性を持たせるためには,Hilbert 保型形式の定義域を本稿のような HL ではなく, 「HL の狭義類数個の 直和」としておく必要がある.(本稿の Hilbert 保型形式は,アデール版の Hilbert 保型形式に適切な修正を 施して,それを狭義イデアル類 [OL ] に対応する成分に制限したものと見做すことが出来る.) 特に,本稿の Hilbert 保型形式の定義は,Hecke 作用素や L 関数の理論を扱うには不十分であるということには注意が必 要である.尚,Hilbert 保型形式の定義の上半平面版・アデール版の比較や,Hecke 作用素,L 関数の理論等 については,例えば [Sh78] §2 等を参照して頂きたい. 2 尖点に於ける q 展開 \ AL,f を L の有限アデール環とする.f を L の {0} でない整イデアルとして,Γ 00 (f) を SL2 (AL,f ) に於け る Γ00 (f) の閉包とするとき,強近似定理より, \ SL2 (AL,f ) = Γ 00 (f) · SL2 (L) が成立することに注意する.そこで,f ∈ MkL (Γ00 (f); C) に対して,行列 A = M1 M2 ∈ SL2 (AL,f ) (M1 ∈ \ Γ 00 (f), M2 ∈ SL2 (L)) を f |k A := f |k M2 により作用させることにする.(このとき,f |k A は行列 A の分解の仕方に依らず一意的に定まる.また,f |k A は Γ00 (f) ではなく,M2−1 Γ00 (f)M2 に関する保型性を持つことに注意する.) さて,以上の準備の下で,Hilbert 保型形式 f ∈ MkL (Γ00 (f); C) の q 展開について説明したい.保型性より (L = Q の場合は,更に正則性の仮定により),有限イデール α ∈ A× L,f に対して,Fourier 級数展開 ( ) ∑ α 0 Cα (µ; f )q µ f |k (z) = fcα (q) = Cα (0; f ) + −1 0 α 2 −1 + µ∈(a dL ) + が得られる1 .ここで,a := (α) は α から定まる L の分数イデアルであり,(a2 d−1 L ) は総正な元全体のなす µ µ 2 −1 + a2 d−1 L の部分集合であり,q := exp(trL⊗Q C/C (µz)) である.冪級数 fcα (q) ∈ C[[q | µ ∈ (a dL ) ]] を「α から定まる尖点2 cα 」に於ける f の q 展開という.特に α = 1 のとき,尖点 c1 に於ける f の q 展開を標準 q 展開という. 1 L = Q の場合は,保型性の仮定のみでは,f (q) は一般には q に関する負冪の項も許した Laurent 級数になることに注意する. cα 任意の尖点 c に於いて,Fourier 級数展開 fc (q) が整級数となるとき (すなわち,総正でも 0 でもない µ ∈ L に対して,Fourier 係数 が 0 になるとき), 「f は任意の尖点で正則である」ということにする. 2 本稿では, 「α によって定まる尖点 cα に於ける q 展開」の説明は行うが,(Hilbert モジュラー多様体の)「尖点」そのものの定義は 行わない.佐久川さんの講演で,モジュラー曲線 (L = Q の場合) の「尖点」が定義される予定である.尚,講演で扱わないため本稿 では説明しないが,一般には,有限イデールから定まらないような尖点もある.本稿の第 3 節で述べる結果は,有限イデールに対応し ない尖点についても成立する.(これらの結果については, 「有限イデールから定まっている」という尖点に関する仮定は全く本質的なも のではない.) 2 3 部分環係数の保型形式と q 展開原理 R を C の部分環とする. µ 定義 3.1. f ∈ MkL (Γ00 (f); C) とする.任意の有限イデール α ∈ A× | µ ∈ L,f に対して,fcα (q) ∈ R[[q + (a2 d−1 L ) ]] が成立するとき,f は R 係数の Hilbert 保型形式であるという.L 上の重さ k ,レベル Γ00 (f) の R 係数の Hilbert 保型形式全体のなす空間を MkL (Γ00 (f); R) とおく. 本稿では詳細に立ち入らないが,Hilbert 保型形式は「OL 乗法を持つ [L : Q] 次元の Abel 多様体3 +付加 構造 (Γ00 (f) レベル構造と dL 偏極)」のモジュライ空間 (Hilbert モジュラー多様体) M(dL , Γ00 (f)) の上のあ る直線束の大域切断であると解釈できる4 .この幾何的な解釈を通して,C の部分環とは限らない任意の可換 環 R に対して,自然に「R 係数の Hilbert 保型形式」という概念を定義することが出来る.(モジュライ解釈 を通じて,尖点に於ける q 展開も定義できる.) また,この幾何的な視点の有用性の 1 つとして,Hilbert モ ジュラー多様体の既約性から q 展開原理と呼ばれる次の重要な事実を導くことが出来るということが挙げら れる. 事実 3.2 (q 展開原理). R を C の部分環とし,α ∈ A× L,f を任意の元とする.このとき,尖点 cα に於ける q 展開をとる写像 + MkL (Γ00 (f); R) −→ R[[q µ | µ ∈ (a2 d−1 L ) ]]; f 7−→ fcα は単射である. R′ を R を含むような C の部分環とする.このとき,事実 3.2 の「R′ /R (Abel 群) 係数版」にあたる主張 も成立する.これらの事実から,次の系が得られる: 系 3.3 (q 展開原理の系). f ∈ MkL (Γ00 (f); C) とする.R を C の部分環とし,α ∈ A× L,f を任意の元とする. + L このとき,もし fcα (q) ∈ R[[q µ | µ ∈ (a2 d−1 L ) ]] であれば,f ∈ Mk (Γ00 (f); R) である.(すなわち,f が R 係数の保型形式であるかどうかを判定するためには,勝手にとった 1 つの尖点に関する q 展開が R 係数にな るかどうかを見れば十分である.) 4 p 進 Hibert 保型形式の q 展開原理 O を p 進完備な可換環とする.このとき,Hilbert 保型形式の p に沿った “formal 版”の概念として,(O 係 数の) p 進 Hilbert 保型形式と呼ばれる概念がある5 .ここでは詳細は述べないが,p 進 Hilbert 保型形式は, 以下のような性質を持つ: (p0) O 係数の p 進保型形式全体のなす空間 V (Γ00 (f); O) には O 代数の構造が入る. (p1) p 進 Hilbert 保型形式についても, 「尖点に於ける q 展開」(O 代数の準同型) + V (Γ00 (f); O) −→ O[[q µ | µ ∈ (a2 d−1 L ) ]] があり,通常の Hilbert 保型形式と同様な q 展開原理が成立する.(これもやはり,モジュライ空間の 既約性から従う事実である.) 3 このような Abel 多様体は Hilbert-Blumenthal Abel 多様体と呼ばれている. = Q の場合 (すなわち,楕円保型形式の場合) に限って,佐久川さんの講 演で解説される予定である.L が一般の総実代数体の場合については,[Kat78] §1.9,[DR80] pp. 263–267,[山上 05] 等を参照して 頂きたい. 5 O 係数の p 進 Hilbert 保型形式は「Γ (p∞ f) レベル構造付きの d 偏極 Hilbert-Blumenthal Abel 多様体」のモジュライ空間 00 L になるような,Spf O 上の形式スキームの構造層の大域切断として定義される. 4 以下,本節と次節で紹介する事実の詳細については,L 3 (p2) 標準的な O 代数の準同型 ∞ ⊕ MkL (Γ00 (f); O) −→ V (Γ00 (f); O) k=0 が存在する.この写像は標準 q 展開を保つ. 注意 4.1. p 進 Hilbert 保型形式には,重さという概念がない.通常の保型形式の空間の中では,異なる重さ を持つ Hilbert 保型形式の和をとることが出来ないが,p 進 Hilbert 保型形式の空間では,異なる重さを持つ Hilbert 保型形式から来るような p 進 Hilbert 保型形式の間の和も考えることが出来る. これらの性質から,非可換岩澤理論の証明で重要な役割を果たす次の系が示される. 系 4.2 (p 進 Hilbert 保型形式の q 展開原理の系). K/Qp を有限次拡大とし,O を K の整数環,π を O の 素元とする.(体の同型 Qp ≃ C を固定して,K を C の部分体と見做すことにする.) Hilbert 保型形式 f ∈ MkL (Γ00 (f); K) の標準 q 展開 ∑ fc1 = C1 (0; f ) + C1 (µ; f )q µ + µ∈(d−1 L ) + n を考える.ある整数 n が存在して, 任意の µ ∈ (d−1 L ) について,C1 (µ; f ) ∈ π O が成立すると仮定する.こ のとき,任意の元 α = (αv )v ∈ A× L,f に対して, NL⊗Q Qp /Qp ((αv )v|p )−k · Cα (0; f ) − C1 (0; f ) ∈ π n O が成立する.(ここで,Cα (0; f ) は尖点 cα に於ける f の q 展開 fcα の定数項である.) 説明. ここで,系 4.2 がどのように導かれるかについて,簡単に説明しておこう.(p2) の準同型によって f から定まる p 進 Hilbert 保型形式を fˆ とおく.このとき,F := π −n (fˆ − C1 (0; f )) は p 進 Hilbert 保型形式で ある (注意 4.1 参照).対応 f 7−→ fˆ は標準 q 展開を保つので (p2),特に F の標準 q 展開の係数は全て O に 属する.従って,p 進 Hilbert 保型形式の q 展開原理 (p1) より,F は O 係数の Hilbert 保型形式であること が分かる.F の尖点 cα に於ける q 展開の定数項を見ると,系が従う6 . q 展開に関するいくつかの補足 5 5.1 対角制限 L′ /L を総実代数体の有限次拡大とし,d := [L′ : L] とおく.このとき,包含写像 L ,→ L′ から誘導される 埋め込み HL ,→ HL′ によって引き戻すことで,対角制限写像 ′ L RL′ /L : MkL (Γ00 (f); C) −→ Mdk (Γ00 (f); C); f 7−→ RL′ /L (f ) := f |HL が定まる.一般の可換環 R を係数環に持つ保型形式についても,モジュライ解釈を使って対角制限写像 ′ L RL′ /L : MkL (Γ00 (f); R) −→ Mdk (Γ00 (f); R) を定義することが出来る.対角制限の q 展開について,次の公式が成立する (確認は容易). ′ × ∗ 命題 5.1. f ′ ∈ MkL (Γ00 (f); C) を任意の元とする.α ∈ A× L,f を任意の元とし,AL′ ,f に於ける α の像を α + と書くことにする.このとき,任意の µ ∈ ((α)2 d−1 L ) ∪ {0} に対して, ∑ Cα∗ (ν; f ′ ) Cα (µ, RL′ /L (f ′ )) = ν NL⊗Q Qp /Qp ((αv )v|p )−k が現れるのは,通常の Hilbert 保型形式と p 進 Hilbert 保型形 式とでは,α ̸= 1 に対応する尖点での「q 展開」の方法が微妙に異なるからである (結果として,定数倍だけずれる). 6 系の主張に,一見すると「余計な」因子 4 + が成立する.ここで,右辺の和の ν は ((α)2 d−1 L′ ) の元であって,trL′ /L (ν) = µ を満たすもの全体を走る. 特に, Cα (0, RL′ /L (f ′ )) = Cα∗ (0; f ′ ) が成立する. 5.2 Hecke の Up 作用素 + L を総実代数体とし,f を L の {0} でない整イデアルとする.β ∈ OL を f ⊆ (β) を満たすような元とす る.このとき,Hecke Uβ 作用素 ( ) 1 0 L L Uβ : Mk (Γ00 (f); C) −→ Mk (Γ00 (f); C); f 7−→ f |k Up := f |k Γ00 (f) Γ00 (f) 0 β が定まる.ここで,f ∈ MkL (Γ00 (f); C) に対して,両側剰余類 ( ) ⨿ 1 0 Γ00 (f) Γ00 (f) = Γ00 (f)Ai 0 β i の作用は ( 1 0 f |k Γ00 (f) 0 β ) Γ00 (f) := ∑ f |k Ai i により定まる (Ai 達の取り方に依らない).一般の可換環 R を係数環に持つ保型形式についても,モジュラ イ解釈を使って Hecke Uβ 作用素が定まる.Uβ 作用素と標準 q 展開の関係については,以下の公式が知られ ている. 命題 5.2. 任意の f ∈ MkL (Γ00 (f); C) に対して, (f |k Uβ )c1 = C1 (0; f ) + ∑ C1 (µβ; f )q µ + µ∈(d−1 L ) が成り立つ. 5.3 Hilbert Eisenstein 級数 (追記) L を総実代数体,f を L の {0} でない整イデアルとし,f∞ を割り切る F の素点全体の集合を Σ(f) とおく. 導手 f の L の射類体を Lf と書き, ArtLf /L : A× L −→ Gf := Gal(Lf /L) を大域類体論の相互写像から誘導される準同型写像とする. 記号.本稿では,以下の記号を採用する. (1) L の各有限素点 v に対して,L の有限素点 v における完備化を Lv と書き,その整数環 OLv の素元 πv を それぞれ固定する.また,有限素点 v に対応する OL の素イデアルを pw と書く.f と互いに素7 な OL の ∏ 任意の分数イデアル a = v pav v に対して,有限イデール x(a) = (πvav )v ∈ A× L,f が定まり,元 σa := ArtLf /L (x(a)) ∈ Gf が定まる.ここで,元 σa ∈ Gf は素元 πv たちの取り方に依らないことに注意する.尚,本稿では L の 各有限素点 v に対して,σpv ∈ Gf が算術的 Frobenius 元になるように類体論の相互写像を定めている. 7 本稿では,L の分数イデアル a = あるということにする. ∏ v v pa v が Σ(f) に属する任意の有限素点 v に対して av = 0 を満たすとき,a は f と互いに素で 5 (2) L の任意の実素点 v に対して,イデール x(v) = (x(v)w )w ∈ A× L を −1 (w = v) x(v)w := 1 (w ̸= v) により定め, σv := ArtLf /L (x(v)) ∈ Gf とおく. 定義–定理 5.3 (Gf 上の関数の L 関数). ε : Gf −→ C を任意の関数として,Dirichlet 級数 ∑ ε(σa )N a−s LΣ(f) (s, ε) := a を考える.ここで,和の a は f と互いに素な L の整イデアル全体を走るものとする.このとき,Dirichlet 級 数 LΣ(f) (s, ε) は領域 {s ∈ C | Re(s) > 1} で広義一様収束し,更に s ̸= 1 で正則な C 上の有理型関数に解析 接続される.また,任意の正の整数 k ∈ Z≥1 に対して, LΣ(f) (1 − k, ε) ∈ Q(ε) := Q(ε(Gf )) が成立する (Klingen–Siegel の定理). 定義–定理 5.4 (Hilbert Eisenstein 級数). k ∈ Z≥1 を任意の正の整数とし,ε : Gf −→ C を任意の実素点 v に対して ε(σv ) = (−1)k が成立するような任意の関数とする.このとき,Gk,ε ∈ MkL (Γ00 (f), Q(ε)) であっ て,任意の有限イデール α ∈ A× L,f に対して, 2−[L:Q] · LΣ(f) (1 − k, ε) Cα (µ, Gk,ε ) := N ak · ∑ ε(ArtLf /L (α) · σµb−1 )N (µb−1 ) (µ = 0) + (µ ∈ (a2 d−1 L ) ) b を満たすものが存在する.ここで,a は有限イデール α から定まる L の分数イデアルであり,和の b は Σ(f ) と互いに素であり,µOL ⊆ b ⊆ a2 d−1 L を満たすような L の分数イデアル全体を走る. 参考文献 [CSSV12] J. H. Coates, P. Schneider, R. Sujatha and O. Venjakob edt., Noncommutative Iwasawa Main Conjectures over Totally Real Fields, Springer Verlag (2012). [DR80] P. Deligne and K. Ribet, Values of abelian L-functions at negative integers over totally real fields, Invent. Math., 59, 227–286 (1980). [Kak13] M. R. Kakde, The main conjecture of Iwasawa theory for totally real fields, Invent. Math. 193 (3), 539–626 (2013). [Kat78] N. M. Katz, p-Adic L-Functions for CM Fields, Invent. Math., 49, 199–297 (1978). [Sh78] G. Shimura, The special values of the zeta functions associated with Hilbert modular forms, Duke Math. J., 45 (3), 637–679 (1978). [高瀬 05] 高瀬幸一, Hilbert 保型形式入門, 2005 年度 (第 13 回) 整数論サマースクール『Hilbert 保型形式 入門』報告集,1–60. [山上 05] 山上敦士, Katz’s p-adic modular forms, 2005 年度 (第 13 回) 整数論サマースクール『Hilbert 保型形式入門』報告集,245–280. 6
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