KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date ネコにおける重金属類摂取とその影響に関する研究( Digest_要約 ) 寺地, 智弘 Kyoto University (京都大学) 2014-03-24 URL http://hdl.handle.net/2433/188758 Right 学位規則第九第2項により要約公開 Type Thesis or Dissertation Textversion none Kyoto University ネコにおける重 金 属 類 摂 取 とその影 響 に関 する研 究 寺地 智弘 第 1 章 緒論 ペットフードでは、近 年 、安 全 性 の高 さが求 められている。大 型 海 産 魚 類 は、 ウェットタイプのキャットフードの原 料 として海 外 ではあまり利 用 されていないが、 日 本 では多 用 されている。しかし、大 型 海 産 魚 類 には Hg などの有 害 重 金 属 類 が高 濃 度 で蓄 積 する可 能 性 があり、大 型 海 産 魚 類 を主 原 料 とするウェット タイプのキャットフードを長 期 間 摂 取 したネコでは、重 金 属 類 を多 量 摂 取 する 危 険 性 があると考 えられる。そこで本 研 究 では、国 内 で市 販 されているキャット フード中 の重 金 属 類 濃 度 を調 査 するとともに、大 型 海 産 魚 類 を主 原 料 とする ウェットタイプのフードの常 食 による健 康 被 害 の可 能 性 について検 討 した。 第 2 章 ネコ用 フード中 重 金 属 類 濃 度 の検 討 第 1 節 ネコ用 フード中 Hg、As、Cd および Pb 濃 度 の検 討 30 ブランドのウェットタイプの市 販 ネコ用 フードと、40 ブランドのドライタイプ の市 販 ネコ用 フードおよび 5 ブランドの市 販 ヒト用 ツナ缶 詰 中 の重 金 属 類 (Hg、 As、Cd および Pb)濃 度 を ICP-MS を用 いて定 量 測 定 した。大 型 海 産 魚 類 を 主 原 料 とするウェットタイプのフードは、ビーフを主 原 料 とするウェットタイプのフ ードおよびドライタイプのフードと比 べ Hg および As 濃 度 が著 しく高 かった。ま た、Cd 濃 度 はウェットタイプのネコ用 フードの方 がヒト用 ツナ缶 詰 よりも有 意 に 高 い 値 を 示 し た 。 ウ ェ ッ ト タ イ プ の ネ コ 用 フ ー ド に つ い て 、 European Commission が定 めた重 金 属 類 濃 度 に 対 する基 準 値 と比 較 したところ、13 ブランドの総 合 栄 養 食 の内 、As、Hg に関 してそれぞれ 9 ブランドと 1 ブランド が基 準 値 を上 回 った。一 方 、17 ブランドの栄 養 補 完 食 では、As、Hg に関 して それぞれ 13 ブランドと 7 ブランドが基 準 値 を上 回 った。ペットフード安 全 法 に おける日 本 国 内 での重 金 属 類 基 準 値 を上 回 ったフードでは、Pb に関 しての み 1 ブランドあった。一 方 、ドライタイプのネコ用 フードでは、いずれの基 準 値 に ついても、すべてのフードで下 回 っていた。 第 2 節 ICP-MS 半 定 量 法 によるキャットフード中 有 害 金 属 類 の同 時 分 析 ICP-MS の半 定 量 測 定 モードを用 いて、20 ブランドの市 販 キャットフード(ド ライタイプのフード,10 ブランド:ウェットタイプのフード,10 ブランド)の有 害 金 属 類 の同 時 分 析 を試 みた。健 康 被 害 リスクがあるとされる元 素 の内 、Li、B、Al、 Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、As、Se、Rb、Sr、Mo、Ag、Cd、 Sn、Sb、Ba、W、Hg、Pb、Bi の 27 元 素 を対 象 に、添 加 回 収 率 、変 動 係 数 (CV)、また、定 量 測 定 値 との回 帰 を検 討 したところ、Li、Al、V、Mn、Co、Cu、 As、Se、Rb、Sr、Mo、Cd、Sn、Hg、Pb の 15 元 素 で、ドライタイプのフード、 ウェットタイプのフードともに、添 加 回 収 率 が 70%~120%、CV が 10%以 下 で あり、定 量 分 析 値 に 対 する高 度 な回 帰 が認 められた。また、B、Ti、Fe、Zn、 Sb、Ba の 6 元 素 は、添 加 回 収 率 が 70%以 下 あるいは 120%以 上 であったも のの、定 量 分 析 値 に対 する高 度 な回 帰 が認 められた。Cr、Ni、Ge の 3 元 素 は、定 量 性 は低 い、あるいはキャットフードからはほとんど検 出 されなかったが、 National Research Council の定 める、げっ歯 類 における最 大 耐 容 量 を添 加 したところ、添 加 回 収 率 は 82~120%であり、検 出 可 能 であった。ICP-MS を用 いた半 定 量 分 析 は、多 様 な有 害 金 属 類 によるペットフード汚 染 を防 止 す る上 で有 効 なスクリーニング手 法 となりうる可 能 性 が示 された。 第 3 章 ネコにおいてフード中 Hg 濃 度 が被 毛 中 Hg 濃 度 に及 ぼす影 響 ICP-MS の定 量 モードによるネコ被 毛 中 Hg 濃 度 測 定 を検 討 した。認 証 標 準 物 質 であるヒト頭 髪 を用 いた結 果 、日 内 CV は 1.9%、日 間 CV は 3.0%、 回 収 率 は 103%であり、測 定 下 限 は 0.088 mg/kg であった。ネコ 5 頭 の頭 部 、 頚 部 、背 部 、腹 部 および尾 部 の被 毛 中 Hg 濃 度 を測 定 した結 果 、Hg 濃 度 は 背 部 が全 体 の平 均 値 に最 も近 い値 であった。ついで、20 頭 のネコにウェットタ イプのフード(乾 物 当 たり Hg 含 量 1.73 mg/kg)あるいは、ドライタイプのフード (乾 物 当 たり Hg 含 量 0.04 mg/kg)を 28 週 間 給 与 し、背 部 の被 毛 中 Hg 濃 度 を測 定 した。ウェットタイプのフードを給 与 されたネコの被 毛 中 Hg 濃 度 はド ライタイプのフードを給 与 されたネコより有 意 に高 い値 を示 した。ウェットタイプ のフ ー ドを給 与 さ れ てい たネコ につい て、 給 与 フ ー ドをドライタイプ のフ ー ドに 変 更 し、被 毛 中 Hg 濃 度 の経 時 変 化 を検 討 した結 果 、被 毛 中 Hg 濃 度 の半 減 期 は 6.4 ± 1.6 ヶ月 であった。本 章 の結 果 、簡 便 かつ高 感 度 にネコ被 毛 中 Hg 濃 度 の分 析 が可 能 であること、ならびに、ネコの被 毛 中 Hg 濃 度 は Hg の 長 期 間 にわたる摂 取 を反 映 することが示 された。 第 4 章 各 種 疾 病 ネコにおける被 毛 中 重 金 属 類 濃 度 の検 討 第 1 節 各 種 疾 病 ネコにおける被 毛 中 Hg 濃 度 の検 討 動 物 病 院 に来 院 した健 常 ネコと疾 病 ネコの被 毛 中 Hg 濃 度 を測 定 した。健 常 ネコの被 毛 中 Hg 濃 度 から暫 定 参 照 値 上 限 を算 出 し、各 種 疾 病 のネコに おける被 毛 中 Hg 濃 度 との比 較 を行 った。本 節 のデータは、現 在 論 文 として 投 稿 中 であり、公 表 できる範 囲 は限 られているが、ネコにおける口 内 炎 の一 部 が Hg 多 量 摂 取 と関 連 する可 能 性 が本 章 の結 果 により示 された。 第 2 節 :各 種 疾 病 ネコにおける被 毛 中 Mn、Cu、Zn、Mo、Cd および Pb 濃 度 の検 討 ネコにおける被 毛 中 Mn、Cu、Zn、Mo、Cd および Pb 濃 度 と各 種 疾 病 の関 係 について、第 1 節 同 様 に検 討 を行 った。本 節 のデータも公 表 できる範 囲 は 限 られているが、ネコにおける貧 血 の一 部 が Pb 多 量 摂 取 と関 連 する可 能 性 が本 節 の結 果 により示 された。
© Copyright 2024 ExpyDoc