計測システム研究会 2014年11月20日 マルチアノードMCPと 軟X線偏光スイッチングによる 深さ分解XMCD測定システムの開発 雨宮 健太 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 メンバー 雨宮健太(代表:IMSS KEK) 岸本俊二(IMSS KEK) 酒巻真粧子(IMSS KEK) 小菅 隆(IMSS KEK) 濁川和幸(IMSS→ACCL KEK) 田中真伸(IPNS KEK) 内田智久(IPNS KEK) 斉藤正俊(IPNS KEK) 池野正弘(IPNS KEK) 仲吉一男(IPNS KEK) なぜ偏光スイッチングか ~X線磁気円二色性(XMCD)~ 右回り円偏光と左回り円偏光の スペクトルの差を取る ⇒ 試料の磁気モーメントの情報 0.03 3 ML Fe / Cu(100) Fe L-edge XMCD 0.025 微量元素,わずかな磁気モーメントを 何とかして観測したい!! 0.02 0.015 通常のDC的な測定では~1%がやっと ⇒ 偏光スイッチング+ロックイン検出 0.01 0.005 (DC) 0.01 Detection Limit 0 -0.005 -0.01 700 710 720 730 740 750 1E-3 10 Hz 1E-4 50 Hz 1E-5 1E-6 0.01 3桁の 改善 0.1 1 10 Frequency (Hz) 100 1000 なぜマルチアノードか ~深さ分解XMCD法~ 表面 X線 円偏光X線 試料 e- 電子増幅器 (MCP) qd eAuger 電子 蛍光スクリーン eXMCD スペクトル CCDカメラ e- 表面敏感 様々な出射角で電子収量XMCDを測定 ⇒ 様々な検出深度を持つスペクトル群 全ての検出深度に対応する スペクトルを一度に測定 偏光スイッチングに対応した角度分解電子検出器の開発 X線 マルチアノード型のMCPで,電気的に信号処理 角度の範囲と分解能: 0-15°を1°刻み程度 電子増幅器 (MCP) 試料 qd エネルギー分解能: 現在は阻止電場のみ(例えば500 V) 数10 eVでもあれば嬉しい(S/Bが向上) カウントレート: 1チャンネルあたり最大108 CPS程度 蛍光スクリーン 偏光スイッチング時: ~10 Hzのスイッチングに対応する必要 ⇒ 10 Hzより十分に速い取り込みが望ましい (~1kHz) CCDカメラ 従来の方法(蛍光スクリーン+CCDカメラ)のメリット,デメリット データを自由に処理できる(回転,スライス数) 検出効率では損している(スクリーンをアノードとして電気的に測定した方がS/Nは良い) 線形性,ダイナミックレンジに対する不安 スイッチングへの対応は少し厄介(それぞれの角度に対してlock-in的に処理したい) エネルギー分解能はない マルチアノードMCP検出器の導入 30チャンネル同時に>1 kHzでデータ取得 Ch1 → 30 浜松ホトニクス社製MCP検出器 配線中… 最後の一本 SHV端子(4 pin X 8 = 32 pin) 阻止電場用グリッド取付け MCPからの信号 6 mV/div 10 nsec/div データ処理 •MCPのシグナル →アナログ処理(増幅、時間幅調整) →閾値を設定してデジタル化 →時間ごとのカウント数として出力 •30(32)チャンネル同時測定 初期の測定結果(偏光スイッチングへの追随) Polarization switching 10 Hz Hz LL22 peak peak Intensity Intensity (counts/ms) (counts/ms) 4000 4000 I0, CH5, CH10, CH15, CH15, CH20 CH20 3000 3000 2000 2000 1000 1000 ID2 00 00 ID1 500 100 1000 200 1500 300 Time Time (ms) (ms) 2000 400 2500 500 初期の測定結果(XAS) Time-averaged X-ray absorption spectra Intensity (arb. units) 6 CH5 CH10 CH15 CH20 5 4 3 2 1 840 表面敏感 850 860 870 880 Photon Energy (eV) 890 900 初期の測定結果(XMCD) それぞれのチャンネル,それぞれのエネルギーに対して, 時間変化のデータを数値的にlock-in処理して10 Hz成分を抽出 XMCD (lock-in) 1000 CH5 CH10 CH15 CH20 Intensity (arb. units) 500 0 -500 -1000 -1500 -2000 840 850 860 870 880 Photon Energy (eV) 890 900 問題点 5k I0 CH5 CH10 CH15 CH20 4k 3k 2k 1k 5k Intensity (counts/ms) Intensity (counts/ms) Polarization switching 10 Hz L3 peak 0 CH10/I0 CH15/I0 CH0 CH10 CH15 CH20 4k 3k 2k 1k CH20/I0 CH0/I0 8 8 6 6 Intensity Intensity I0 0 CH5/I0 4 2 0 Polarization switching 10 Hz L2 peak CH10/I0 CH15/I0 CH20/I0 4 2 0 100 200 300 Time (ms) 400 500 0 0 100 200 300 400 500 Time (ms) I0(光強度)で割り算した時に割り切れていない ← MCPのオフセット? シグナルが大きすぎてカウントしきれない (意図的に<107 CPSに抑えている) 新しいアナログ基板の導入 より多くのカウント数に対応できるもの 新しいアナログ基板を用いた測定結果 1 kHzでの連続測定に成功? ※I0は電流値をV-Fコンバータを 介してCH31に入れている カウント数が思いのほか少ない (シグナルが小さい?) ところが… 時々暴れてみたり… Referenceシグナル(偏光の状態を示 す電圧シグナルをV-Fを介してCH32 に入れている)に追随してみたり… ※この時,光強度は一定 さらに新しいアナログ基板(VOLUME2012搭載)の導入 2013年11月 チャンネル間の独立性が向上 6000 5000 Beam Threshold, Gain 調整後(17-32 Ch) on off 4000 3000 2000 1000 0 6000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 Channel number 5000 Beam 4000 ON 3000 OFF Threshold初期値 Gain x20 2000 1000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 Channel number しかし気になる点が… 予想されるシグナルから設定したThreshold, Gainの初期値だと カウントゼロ 適切に調整した後のカウント値が数千cpsしかない(以前は数百万) カウントが来ないチャンネルが結構ある (オシロでみてもシグナルなし) ⇒ MCP自身が劣化しているのでは? 電子銃を使ったオフラインテスト等で酷使しすぎたか… 原因判明 30 MCP交換を決断して取り外して みたところ,マルチアノード基板が あちこち割れていた… 26 22 18 2420 28 チャンネルによるシグナルの有無 とそれなりに対応 19 17 6000 5000 Beam on off 4000 3000 2000 1000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 Channel number 大改造を断行 MCP更新 配線はピン方式 SHV端子フランジ軽量化 阻止電場用グリッド更新 ※従来のものはチェンバー 内壁に当たる… 阻止電場用グリッド SHV端子(4 pin X 8 = 32 pin) 2014年11月 テスト測定 Channel 16 300 Beam off Beam on 250 Count 200 150 100 50 0 0 200 400 600 Time (ms) 800 1000 0 50 Time (ms) 1msごとの連続測定が行えることを確認 ビームがない状態で,100 Hzのスパイク状のノイズが見られる 100 まとめ マルチアノード(30チャンネル)MCP,1 kHz取り込み 偏光スイッチングと組み合わせて深さ分解XMCD測定を目指す 紆余曲折を経てスタートに戻ってきた 今後,より強いシグナルで実際に深さ分解XMCD測定を行う さらに,放射光パルスと同期させた時間分解実験も視野に Channel 16 300 Beam off Beam on 250 Count 200 150 100 50 0 0 200 400 600 Time (ms) 800 1000
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