戸建住宅を対象としたデマンドレスポンス実証の評価[PDF:867KB]

研究成果
Results of Research Activities
戸建住宅を対象としたデマンドレスポンス実証の評価
電力需給逼迫時の需要抑制を目指した新しい料金メニュー
Evaluations of the Demand Response Field Testing Based on the Residential Tariff
A new tariff aiming at restraining demand during power supply peak times
(経営戦略本部 需給・広域G)
(Corporate Planning & Strategy Division)
Making good use of an opportunity presented by the Toyota City LowCarbon Society Verification Project and by obtaining the support of 160
customers and their households living in detached houses, the field
testing of demand response (hereinafter, DR) was conducted over one
year to assess the effect on supply and demand at peak times. Insight
was obtained into any seasonal differences, attitudes of participants
concerning power saving, and the degree to which demand was
controlled at the implementation of DR.
「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」の
場を活用して、合計160世帯(一戸建)のお客さまの協
力を得て、需給逼迫時の対応を目的としたデマンドレ
スポンス(需要応答。以下、DR という。)実証を 1 年間
余り実施し、季節ごとの DR 実施時の需要抑制量や節
電行動に関して知見を得ることができた。
1
(2)DR実証用料金メニューの設計
背景と目的
お客さまが当社と契約されている電気料金メニューと
DRは、電力需給逼迫時の電力需要抑制方策のひとつ
は別に、DR実証用の「疑似的な電気料金メニュー」を設
として、特に東日本大震災以降関心が高まっている。
定した。具体的には、需給逼迫を想定した「DR発動日」
実際にDRを活用し、効果的に需要抑制するためには、
のピーク時間帯の電気料金を高く(50円から110円)し、
導入した際の価格インセンティブや季節ごとの需要抑制
その他の時間帯を低く設計した料金メニューである。こ
量やお客さまの受け入れやすさ等を見極める必要がある。
れにより、DRを発動する時間帯に節電や利用時間をシ
このため、平成25年1月から平成26年1月までの期間
フトすることで、通常の電気料金よりも割安価格となり、
で、愛知県豊田市周辺の戸建住宅160世帯を対象に、DR
実証に参加するお客さまは節電等のインセンティブを得
実証を行い、評価分析を実施した。
ることができる。
2
なお、疑似的な電気料金の水準は、年間のDR発動予定
回数を考慮し、通常の電気使用状況において、通常の電
実証の内容
気料金と総額が同じとなるよう「その他の時間帯」の価
格を設定した(第2図参照)。
(1)システム構成
実証にご協力頂く160世帯を対象に、使用電力量(30
分値)を伝送するデータ伝送装置をメーターに設置し、
【従量電灯のお客さま】
(イメージ)
110円
携帯電話網を活用して伝送した。
単価(円/kWh)
DR対象のご家庭(80世帯)に設置した専用のタブレ
100
ット型表示端末に、前日のお客さまの使用電力量(電力
80
需要データ)とともに、翌日の時間帯ごとの料金単価や、
DR発動(料金変動)のお知らせを提示(「見える化」)す
60
ることで、節電や電力消費のピークシフトなどを促すシ
40
。
ステムとした(第1図参照)
20
DR実証用のメニュー
契約の電気
料金単価
従量電灯
0
・電力需要データの分析
・DRの発動判断
6
9
50円
12
15 18
21 24時
第2図 DR実証用料金メニュー例
など
使用電力量
の伝送
3
80円
3
伝送データ
・過去の電力需要データ
・DR発動(料金変動)のお知らせ
実証の結果
(1)DRによる需要抑制効果
ピーク需要期である夏・冬に実施したDRの結果につ
など
いて紹介する。
タブレット型
表示端末
DR発動時間は、系統全体の需要が高まる時間帯とし
て、夏季:13時~ 16時、冬季:9時~ 12時を対象とし、
DR発動回数は、各季節10回から16回程度実施した。
第1図 システム構成
技術開発ニュース No.151 / 2014-8
5
研究成果
Results of Research Activities
(2)アンケート調査結果
また、H25夏季以降には、3時間帯別電灯を対象とし、
料金変動を伴わないDR(節電の要請のみ)も実施した。
実証に参加したお客さまへ、節電行動等に関するアン
需要抑制の効果は、DRの対象世帯(80世帯)と比較用
ケート調査も実施した。その一部を紹介する。
の世帯(80世帯)を比較することで試算した。
DR実証への関心の度合いを確認するため、実証中に
この結果、太陽光非設置のお客さま(約50軒)のピー
おける表示端末の確認状況について調査した。
ク需要期(夏、冬)のDR効果は、1世帯1時間当たり約
10 ~ 15%程度と試算された。また、実証開始から時間
の経過とともに、DR効果が低減する傾向が見受けられ
る(第3図参照)。
ベース電力量(系
太陽光設置のお客さま(約30軒)は、
統電力からみた平均使用電力量)が小さく、DR効果はほ
とんど得られなかった。ただし、今回の実証では、DRに
その結果、実証の経過に伴い、DR表示端末の確認頻度
が減少しており、DR実証に対する関心が薄れていく傾
向が見受けられる(第5図参照)。
4%
H24年度冬
76%
H25年度夏
よる太陽光の余剰電力量増加は評価していない。
アンケート結果から、太陽光設置のお客さまは、日頃
54%
H25年度冬
から太陽光発電からの売電を意識した節電に取組まれて
おり、追加の節電余地が少ないものと推定される。
18%
49%
また、夏季、冬季の太陽光非設置のデータを活用し、ピ
40%
週に1~2日確認した
ーク時電力料金単価に対するDR効果の変化について、
24%
5%
21%
18%
0%
20%
ほぼ毎日確認した
1%
19%
12%
60%
80%
週に3~4日確認した
100%
ほとんど確認していない
第5図 実証参加者のDR実証に対する関心の変化
重回帰式を用いて統計的に分析した結果、料金変動を伴
わないDR(節電要請のみ)であっても、一定量のDR効果
次に、電力料金単価による節電行動について調査した。
が得られ、ピーク時の電力料金単価とDR効果には、わず
その結果、夏、冬ともに、ピーク時電力料金単価に応じて
。
かながら相関がみられた(第4図参照)
節電行動を変えた割合は1/3程度であり、夏に比べ、冬で
は、DRを発動しても節電を実施しなかった割合が増加
(Wh)
800
1世帯1時間当りの平均電力量
700
ベース電力量(平均使用電力量)
している(第6図参照)。
DR 効果(平均削減電力量)
XX %:削減率(DR効果/ベース電力量)
H25年度夏
H25年度夏
【ピーク時間帯】
600
500
H25年度冬
H25年度冬
【ピーク時間帯】
400
300
200
15 %
36%
18%
11 %
10 %
20%
40%
60%
80%
100%
ピーク時電力料金単価によって節電内容あるいは節電実施の判断を変えた
ピーク時電力料金単価によらず節電を実施しなかった
第6図 ピーク時電力料金単価に対する節電行動
H24年度 冬
(Wh)
H25年度 夏
H25年度 冬
4
まとめ
本実証では、特定地域、新興住宅地などの特徴はある
ものの、季節ごとのDR実施時の需要抑制量や節電行動
ピーク時電力料金単価
ピーク時電力量料金単価
料金変動無し
料金変動無し
50 円/kWh
80 円/kWh
110 円/kWh
▲11
%)
▲11%
▲12 %
▲12%
▲14 %
▲14%
16 %
▲16%
に関して知見を得られた。
今後の課題としては、本実証で実施した電気料金ベース
500
平均電力量(1時間値)
45%
0%
第3図 ピーク需要期における1世帯1時間あたりの
DR効果(太陽光非設置)
400
9%
ピーク時電力料金単価によらず同じ節電を実施した
0
600
31%
9時~12時
100
-100
60%
13時~16時
のDRは、時間経過とともにお客さまの関心が薄れていく
可能性や、異常高気温時等に期待される需要抑制量が得ら
デマンドレスポンスによる削減効果
300
れない可能性など、実効性についての評価が挙げられる。
200
DRのより適切な評価とDRの効果的な適用方法につい
100
て検討するため、本実証結果に加え、異なる条件下や多
0
数の実証参加者で実施された国内外のDR実証事例等の
調査・分析を進めていく。
第4図 ピーク電力料金単価によるDR効果の変化(太陽光非設置)
執筆者/山田琢寛
技術開発ニュース No.151 / 2014-8
6