森林土壌における放射性 Cs 分布と溶出

森林土壌における放射性 Cs 分布と溶出
09042040
村松研究室
長谷川諒輔
【序論】
福島第一原発事故により多量の放射性物質が環境中に放出された。放射性 Cs は放出量
も多く半減期も長いため放射線被曝の観点で挙動を知る必要がある。福島県は 70 %が森
林地帯でここでの分布と動きを知るのは重要である。本実験では森林地帯での放射性 Cs
の挙動に着目した。落ち葉に含まれる放射性 Cs は土壌にどのように移行するかについて
不明な点が多い。筆者は森林土壌内での放射性 Cs の分布を調べ、その動きをみるため抽
出実験を行った。
【実験方法】
郡山市内の福島林業センターの林内にてリター(落ち葉)、腐植層、土壌を深さごとに
採取し放射性 Cs 濃度を Ge 半導体検出器で測定した。それらの試料をシュウ酸(1M)、
酢酸アンモニウム(1M)、塩酸(1M)などの溶媒を用い振とう機で振とうさせた後、濾過
にてサンプルと抽出溶媒を分離した。抽出溶媒の放射性 Cs 量から溶出量を求めた。
【結果考察】
放射性 Cs の森林における深度分布は、事故が起こった2011年度は放射性 Cs の多
くがリター層に含まれていた。図1に2013年6月における森林内の土壌中における深
度分布を示す。2年後では多くがリター層から土壌上層に移行していた。そこで森林土壌
での溶出を調べるために抽出実験を行った。
各溶媒での放射性 Cs の抽出率について図2に示す。図2よりリターではシュウ酸によ
る抽出率が最大であり、土壌では酢酸アンモニウムによる抽出率が最大となりそれぞれ異
なる傾向を示した。また、土壌では深部に行くほど抽出率が高くなることがわかった。
環境に放出された放射性 Cs は粒子状とイオン状が考えられる。粒子状のものは土壌中
に浸透しにくいため土壌表層に留まっている。これらは塩酸(1M)にも溶けにくかった。
イオン状のものは雨などに溶け出し下層まで移行しやすいため抽出率が高くなったと考
えられる。
常緑樹林 (2013年)
常緑樹林(2013年)
塩酸
落葉層
腐植層
2~4
シュウ酸
深度cm
0~2
4~6
6~10
酢酸アンモニ
ウム
10~15
15~20
20~
0%
10%
20%
30%
40%
落葉層
腐植層
0~2cm
2~4cm
4~6cm
落葉層
腐植層
0~2cm
2~4cm
4~6cm
落葉層
腐植層
0~2cm
2~4cm
4~6cm
50%
0
5
10
15
20
25
抽出率 %
図1
常緑樹林での放射性 Cs の深度分布
図2
常緑樹林での各溶媒に対する抽出率