Dynamics of the Yb to Er energy transfer in LiNbO3

応用物理学特別演習
平成 26 年 10 月 14 日
極限量子光学研究室
佐野将大
Dynamics of the Yb3+ to Er3+ energy transfer in LiNbO3
、
E.Cantelar, F.Cusso
、
Departmento de Fisica de Materiales,C-Ⅳ, Universidad Autonoma de Madrid,
Applied Physics B 69, 29-33 (1999)
【はじめに】 短波長固体レーザー,高密度データ光保存,カラーディスプレイなどへの応用
を目指して,希土類イオンでのアップコンバージョン(UC)を利用した波長変換の研究が精力的に
行われてきた [1].特に安価な市販の近赤外・赤外ダイオードレーザーで励起可能な Er3+は UC 発
光の理想的な候補である.そこでは Er3+での高効率な UC 発光を得るために,赤外増感剤として
Yb がホスト材料に Er と共添加(codoping)されている.本研究では LiNbO3 に Er3+ (0.5 mol.%)と
Yb3+ (0.1, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0 mol.%)を共添加した試料でのエネルギー移動特性を明らかにする
ことを目的としている.
【 実 験 お よ び 結 果 】 Er3+ や Yb3+ の 電 子 配 置 は キ セ ノ ン 原 子 の 電 子 配 置 [Xe]
(=1s22s22p63s23p63d104s24p64d105s25p6)を用いて,それぞれ[Xe]4f11, [Xe]4f13 と書け,完全充填の
5s25p6 電子殻により 4f 軌道電子への外場の影響が遮断される.このためホスト材料に影響を受け
ない離散的なエネルギー準位を有する(図 1). Czochralski 法で作製した Er3+/Yb3+共添加 LiNbO3
結晶を室温において 920 nm でのナノ秒パルス (10 ns, MOPO)で光励起した.発光は分光器
(f=500)を通過後,InGaAs フォトダイオード (1.5, 1.0 m 発光用)または光電子増倍管 (可視発光
用)で検出し,デジタルオシロスコープでその時間変化を記録した.時間分解能は,赤外・近赤外
域で~30 s, 可視域で 10 ns である.図 1 に示す交差緩和によるエネルギー移動 (係数 C25, C52 [2] ,
C26),非発光緩和(図中下向き波線),およ
び発光緩和(図中下向き矢印)を考慮した
モデルを仮定し,測定された図中の 3 つの
発光(1060 nm (Yb3+), 1530 nm, 550 nm
(Er3+))の時間変化をレート方程式による
計算結果でフィッティングすることによ
り,そのエネルギー移動ダイナミクスを調
査した.異なる Yb3+濃度の試料で観測さ
れた 3 つの発光の時間変化を同じモデル
で解析することにより,UC エネルギー移
動係数 C26 を 4.8×10-16 cm3/s と求めている.
また Yb3+添加による LiNbO3:Er3+系への増
感効果は 4I13/2 (Er3+)準位の寿命には影響を
与えない一方,2F5/2 (Yb3+)および 4S3/2 (Er3+)
図 1.LiNbO3:Er3+/Yb3+のエネルギー準位とエネ
準位の寿命には著しい Yb3+濃度依存性が
ルギー移動.
あることが実験と計算の双方から判明し
た.
[1] K. Zheng et al., Opt. Lett. 35, 2442 (2010).
[2] E. Cantelar et al., J. Phys.: Condens. Matter 10, 8893 (1998).
応用物理学特別演習
平成 26 年 10 月 14 日
量子機能工学研究室 今出悠太
Loss-free and active optical negative-index metamatelials
Shumin Xiao1, Vladimir P. Drachev1, Alexander V. Kildishev1, Xingjie Ni1,
Uday K. Chettiar1,2, Hsiao-Kuan Yuan1,2, and Vladimir M. Shalaev1
1
Birck Nanotechnology Center and School of Electrical and Computer Engineering,
Purdue University, Indiana, USA
2
Department of Electrical and Systems Engineering, University of Pennsylvania,
Pennsylvania, USA
Nature 466, 735-738 (2010)
光(電磁波)に対する物質の持つ反射や透過、吸収といった応答は誘電率 ε と透磁率 μ か
らなるパラメータである屈折率 N で表される。一般的に、THz 以上の周波数領域において物
質は磁気応答を示さないため、μ は 1 とおかれる。しかし、1999 年に Pendry らによって電磁
波の波長よりも十分に小さい金属製の分割リング共振器構造が磁気応答を示すこと、つまり
μ が 1 ではない、場合によっては負の値すら取りうることが分かった。さらに誘電率制御の
ための金属ワイア構造と分割リング構造を組み合わせた構造では、ε と μ が同時に負になり、
その屈折率が負になることが実験的に検証された。今日では負の誘電率かつ負の透磁率の他
にも、ε と μ が一般的な物質ではありえない値をとる物質は様々な奇妙な性質を持つことが判
明している。これらのような奇妙な性質を持つ物質のことを Metamaterial といい、特に負の
屈折率を持つものを Negative-index metamaterial (NIM)という。
現在、NIM 内部でのエネルギー損失による性能の低さは応用研究や工業的応用における問
題点の一つである。NIM の性能は Figure of merit (FOM)※1 で表され、可視光域では従来 FOM
が 4 程度であった。本論文のグループは、利得媒質として Epoxy 樹脂にドープした蛍光塗料
(Rh800)を用い、それを 2 枚の銀メッシュで挟み込んだ Fishnet 型 NIM を作成した。蛍光塗料
の吸収波長にあたるパルス光を用いて反転分布を生じさせることで、誘導放出の波長域に相
当する入射光に対してエネルギー損失の補償が行われ、従来にない高性能な NIM になること
を実験とシミュレーションで示した。
波長 737 nm の光に対して外部刺激がない場合では FOM
が 1、屈折率が-0.66 であったのに対してパルス光による外部刺激を受けた場合では FOM が
26、屈折率が-1.017 となった。図 1 は一般的な Fishnet 構造の走査型電子顕微鏡によるイメ
ージ、図 2 は外部刺激がある場合とない場合の FOM の波長依存性を示すグラフである。
図 1、一般的な Fishnet 構造の走査型電子
顕微鏡イメージ。深さ方向に同様のメッ
シュ構造が 2 枚並んでいる
※1、FOM = -Re[N] / | Im[N] | N は複素屈折率。
[参考: V. M. Shalaev, Nat. Photonics 1, 41, 2007]
Wave length [nm]
図 2、FOM の波長依存性。青の実
線が外部刺激のある場合、赤の点
線はない場合のグラフ。
応用物理学特別演習
平成 26 年 10 月 14 日
結晶物理工学研究室
内野達基
Fine structure of phase of ε‐family
in Al73.8Pd11.9Co14.3
Ivona Černičková , Peter Švec , Shinichi Watanabe , Lubomír Čaplovič ,
Marek Mihalkovič ,Vladimír Kolesár , Pavol Priputen , Jozef Bednarčík ,
Dušan Janičkovič , Jozef Janovec
Journal of Alloys and Compounds 609 (2014) 73–79
1984 年,結晶でもアモルファスでもない物質として準結晶が発見された.準結晶は原子配
列に準周期性を持ち,回折パターンに結晶では許されない回転対称性を示すなどの特徴を持
つ.近似結晶は準結晶と局所的に原子配列の類似した結晶である.近似結晶の原子配列には,
近似度が黄金比
に近づくにつれ 1 周期内の配列が準周期配列に近づくとい
う性質がある.正 10 角形準結晶の近似結晶相として知られる ε 相は,現在までに構造解析さ
れた報告例はない.ε 相はいくつかの Al 系合金で形成されることが確認されており,単位胞
の大きさにより ε6 ,ε16 ,ε22 ,ε28 相などに分類される.Al-Pd-Mn 系 ε 相において 2 種類
のクラスター(PMI,LBPP クラスター)や 3 種類のタイリング(5 角形,6 角形,バナナ型
9 角形のタイル)による構造モデルが提案されている.構造の複雑な Al 系合金はその特有の
物性から近年研究が盛んに行われており,この合金の一つである ε 相の構造の研究は物性の
研究に有益であると言える.
本研究の目的は Al-Pd-Co 系において ε 相の存在が確認されている組成 Al73.8Pd11.9Co14.3 の
as-cast と as-annealed (700 ℃,2000 h) のサンプルを作り,それぞれのサンプルの ε 相の
構造の特徴を調べることである.
実験の結果,as-cast のサンプルは組成的に不均質であり,内部に ε6,ε16,ε28 相のタイル
を含むことがわかった.対して as-annealed のサンプルは組成の均質な ε16 相のみを含んでい
ることがわかった.また,Al-Pd-Co 系 ε16 相の構造モデルが PMI クラスターと LBPP クラス
ターによって解釈できる
ことを実験的に示した
(図 1).さらに,ε16 相が
バナナ型 9 角形と 5 角形
のタイルのみでタイリン
グできることを確認した
(図 1)
.また,温度変化
に対する安定性を調べた
ところ,ε16 相が最低でも
400 ℃以上で安定である
ことがわかった.
図 1 提案されている Al-Pd-Co 系 ε16 相のクラスター配
列とタイリング,およびそれらを実験的に示した結果