3Dプリンターの発明経緯とその後の苦戦 (1) 発明想到までの経緯 (2

ESD21 オープンファーラム
2014.05.28
3Dプリンターの発明経緯とその後の苦戦
(1) 発明想到までの経緯
(2) 理解してもらう努力の不足
(3) 特許に関する4失策
快友国際特許事務所
弁理士 小玉秀男
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光造形法の初期の発展過程 (着想段階)
小玉
1977年 名古屋市工業研究所入所 企画課配属 展示会等を見学
3D-CADのオペレートを体験
半導体加工技術、ホトレジスト技術を知る
1980年2月 版下作成技術を見る。→光造形法のコンセプトが誕生
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光造形法の契機となった版下作成装置
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光造形法の誕生過程
課題の認識:3D-CADのオペレート体験⇒3Dプリンタが必要だ
持続
問題意識
の持続
好奇心
楽観
契機
• 研究ノートを見直す
• アップデートする
• 雑多な知識
• 半導体加工技術
• 問題は解決できるという思い
• 見聞きしたことを反芻する
• 版下作成技術⇒
• 感光性樹脂で最終製品造形。
• 硬化厚みを制御可能。
新規な組合せ:光造形法
チャンスは誰にでも
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光造形法の初期の発展過程 (検証段階)
小玉
1977年 名古屋市工業研究所入所
3D-CADのオペレート体験
半導体加工技術、ホトレジスト技術を知る
1980年2月 版下作成技術を見る。→光造形法のコンセプトが誕生
4月 特許出願(弁理士に依頼せず、個人で、見よう見まねで出願)
第1回実験(マスク)
10月 第1論文投稿
12月 第2回実験(ファイバ)
1981年2月 第2論文投稿
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特許出願に用いた図面
①は容器、③は液状の感光性樹脂、④は工作台、⑤は露光装置
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第1回実験装置
マスクフィルム
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第2回実験装置
マスクレス
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XYZプロッターの初期の発展過程 (公表段階)
小玉
1977年 名古屋市工業研究所入所
3D-CADのオペレート体験
半導体加工技術、ホトレジスト技術を知る
1980年2月 版下作成技術を見る。→光造形法のコンセプトが誕生
4月 特許出願 → ④81年11月に出願公開
第1回実験(マスク)
10月 第1論文投稿 → ③81年4月に発表
12月 第2回実験(ファイバ)
81年1月 ①名古屋市工業研究所で、工作機械メーカー等に発表
2月 第2論文投稿 → ⑤81年11月に発表
4月 ②電子通信学会で発表
F社
8月 F社が来所して実験を見学される
3M
1982年8月 論文発表
丸谷
1984年5月 特許出願
一連の発表に対する反応がなく、
研究所内での評価も低く、
研究能力に自信をなくす。
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(技術の評価と実用化)
■名古屋市工業研究所、工作機械メーカ、F社、3M、丸谷
→いずれもチャンスを逃す
【評価する側の問題点】
・洞察力
【評価される側の問題点】
・気恥ずかしさ、誇大妄想
報告者への洞察
・論文を書くだけでは無責任
技術内容への洞察
・絵に描いた餅ではわかってもらえない
・周辺技術動向
・みせなければわからない
・わかってもらう努力不足
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実用化と普及
• 1990年代のビジネス
→ 「評価されない」時代
→ 「幻影期と幻滅期の繰り返し」時代
→ 今は 「幻影期or普及期」
・普及前に事業撤退した多くの関係者
・事業対象の選定の困難性
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特許に関する4失策
1. 外国へ特許出願しなかった
→外国企業から実施料を得ることができなかった。
2. 原理を共通する派生技術の出願もれ
→後発他社に権利化され、その後の実施が制約された。
3. 日本出願に「審査請求」しなかった後悔
→実用化の勘所特許の乱立と係争。
→製品開発速度のスローダウン。
4.
弁理士に出願を依頼しなかった。
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実験ノートに埋もれ、後発他社が権利化した技術
・光造形法はなぜ装置化できるか?
・下層を基準にして上層を造形して一体化する点がポイント
・光造形法の実験をしながら、そのポイントから考えた同種技術
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想像したXYZプロッター
ファイバ+集光レンズ+焦点で硬化
→3dキャンバスと3dペンシル
積層造形でもない。
光造形でもない。
→XYZプロッターと命名。
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未実証技術を後発他社が特許化することを
阻止する方策 → 特許出願の活用
特許出願書類に求められる技術情報
→ 第3者が明細書の記載に基づいて実施できるだけの
技術情報が記載されているか?
→ 記載されていれば、技術思想は完成しており、現に記載
されていると判断する。 実験・実証の有無は問わない。
→ 未実証で論文発表になじまない技術は、実施例を思考し、
特許出願し、少なくとも後発他社の権利化を阻止する方
法を検討する。予測可能性が高い技術分野では、思考す
ることで技術思想を完成することができる。
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XYZプロッターの発展過程:日本出願のみなし取下げ段階
小玉
1977年 名古屋市工業研究所入所
3D-CADのオペレート体験
半導体加工技術、ホトレジスト技術を知る
1980年2月 版下作成技術を見る。→光造形法のコンセプトが誕生
4月 特許出願
第1回実験(マスク)
10月 第1論文投稿(派生技術の開示モレ、出願モレ)
12月 第2回実験(ファイバ)
1981年1月 名古屋市工業研究所で工作機械メーカー等に発表
2月 第2論文投稿
4月 学会発表
F社
8月 F社が来所して実験を見学される
3M
1982年8月 論文発表
丸谷
1984年5月 特許出願
3D
8月 3Dシステムズが特許出願
1987年4月
審査請求日限
研究能力に自信
をなくし、弁理士
の道へ
1985年1月→
弁理士登録
1986年4月~
1987年7月
米国で特許実務
研修。
1987年9月:
先行技術調査を
受任。
期間徒過を認識。
弁理士に出願を
依頼していれば
???
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基本特許不在→実用化特許の乱立と係争
日本側
・実用化技術の開発遅れ
・社内弁理士の不存在
無効審判の掛け合い
侵害訴訟の連発
→開発速度の低下
米国側
・実用化技術の開発先行
・社内弁理士が活躍
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XYZプロッターの発展過程 (評価:誰かは見てくれている)
小玉
1977年 名古屋市工業研究所入所
3D-CADのオペレート体験
半導体加工技術、ホトレジスト技術を知る
1980年2月 版下作成技術を見る。→光造形法のコンセプトが誕生
4月 特許出願
第1回実験(マスク)
10月 第1論文投稿(派生技術の開示モレ、出願モレ)
12月 第2回実験(ファイバ)
1981年1月 名古屋市工業研究所で工作機械メーカー等に発表
2月 第2論文投稿
4月 学会発表
F社
8月
1984年8月
1984年11月
1995年5月
F社が来所して実験を見学される
3Dシステムが特許出願
F社が特許出願
英国でランク賞を受賞
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ご配慮いただきたい事項
・ 審査請求を忘れた弁理士ではなく、
研究への未練を断ち切って弁理士業務に
専念した弁理士です。
・ 経験に学び、今度は失敗しない(はずの)
弁理士です。
・ 機会があればご活用ください。
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• 参考文献
• 特開昭56-144478号公報
• 小玉秀男:「3次元情報の表示法としての立体形状自動作成
法」、電子通信学会論文誌、Vol. J64-C No.4, pp. 237-241,
1981
• Hideo Kodama: 「Automatic method for fabricating a threedimensional plastic model with photo-hardening polymer」,
Review of Scientific Instruments, Vol. 52, No. 11, pp 17701773 November 1981.
• 小玉秀男:「感光性樹脂を利用した立体模型の自動作成装
置について(XYZプロッター試案)」,昭和56年度電子通信学
会総合全国大会予稿集、5-149ページ
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ご清聴ありがとうございました
特許業務法人 快友国際特許事務所
KAI-U PATENT LAW FIRM
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