ZE25A-7 DNA を電荷輸送材料として利用した光・エネルギー変換 システム (兵庫県立大・院工) 高田忠雄,山名一成 (京大・エネ研) 森井 孝 ナノスケールで機能性色素が組織化された構造体は、効率的かつ方向性を持った電荷輸送を可能に することから、光応答デバイスや分子エレクトロニクスへの応用が期待されている。その中で、化学 修飾や組織化によって機能性色素の集積・配列を可能とする DNA は、優れた分子材料として有望視さ れている。本研究では、DNA 構造を基に、機能性有機色素として広く用いられているペリレンジイミ ド(PDI)を組織化させた PDI/DNA 複合体を作製し、高速時間分解過渡吸収法を用いて光誘起電子移動 ダイナミクスを調べるとともに、PDI/DNA 複合体を修飾した電極の光電応答特性について検討を行っ た。 塩基部を持たない dS を用いて DNA 内部に疎水空間を導入し、 PDI 分子の組織化を行った。PDI の吸収スペクトル、CD スペクト ル変化から、dS/dS が一つの場合、PDI は単量体で結合し、dS/dS を連続して導入するとその数に応じて PDI が空間内で組織化する ことが分かった[1]。 次に、PDI/DNA 複合体における光誘起電子移動反応について調 べた(Fig.1)。PDI 励起によって、数 ps で PDI・−に帰属される吸収 が 720 nm に観測され、隣接 A との間で電荷分離が起こることが 分かった(PDI・−-A・+)。その後、再結合が 100 ps 以内で起こり、わ ずかに残る長寿命成分(> 1 ns)はホールが G まで移動した PDI・− -G・+の電荷分離状態と考えられる(Fig.2)。 PDI 同士がスタックした(PDI/dS)2 では、1 ns 以上の長寿命成分が観測され、600 nm 付近に新たに吸 収が観測された(Fig.1b,c)。これは PDI 間の自己酸化還元反応によって生じた PDI・-/PDI・+によるものと 推測された。(PDI/dS)3 においても同様の電子移動プロセスが観測された。 さらに、(PDI/dS)n を修飾した電極の光電応答を調べた。PDI 励起により生じる光電流は、(PDI/dS)n の n の増加に伴い、18, 63, 145 nA/cm2 と大きく増加した。光電変換効率の向上は、PDI 数に基づく光吸収 効率の増加と PDI 間の電子移動によって生じる長い寿命成分(長寿命電荷分離)に起因すると考えら れる。 0.05 Time / ps 4 10 20 40 100 200 500 PDI•– 0.00 (b) Time / ps 4 10 20 40 100 200 500 0.10 0.05 (PDI/dS)2 650 700 750 Wavelength / nm 0.10 0.08 PDI•– 0.06 0.04 (PDI/dS)2 0.02 0.00 0.00 600 (c) A720 A 0.10 PDI/dS A (a) PDI/dS -0.02 600 650 700 750 Wavelength / nm 0 200 400 600 800 1000 Time / ps (PDI/dS)2 after the Fig. 1. Transient absorption spectra of (a) PDI/dS and (b) fs-pulse excitation at 540 nm. (c) Time profile monitored at 720 nm. − 26 − ZE25A-7 e– E h+ e– PDI h+ h+ h+ h PDI •– •+ A A A A •+ G Fig. 2. Charge separation and migration process in PDI/DNA complex. 以上、ペリレンジイミド−DNA 複合体により効率の良い光電変換システムが構築できることを明らか にした。 References [1] Takada, T. Otsuka, Y. Nakamura, M. Yamana, K. Chem. Eur. J. 2012, 18, 9300. − 27 −
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