測地線方程式

測地線方程式
アフィン空間での直線の定義をします。また、下の方にここで使っている ds や p についての補足が書いてあるの
で、知らない人は先にそこを見るか、数学の「ベクトル」か「曲線について」を見てください。
q をパラメータとする曲線を xi (q) で与え、ei (q) を曲線に対する任意の接ベクトルとします (接ベクトルの定義
は「数学の準備」で与えていますが、分かりづらいので曲線上のある点での進行方向を向いてるベクトル、接線
とでも思えばいいです)。まず、直線の与え方を一般化します。ある曲線に沿って接ベクトルを動かしたとき、そ
の接ベクトルの移動が平行になっているなら、その曲線を直線と定義できます (ユークリッド空間の直線の接ベク
トルは定数なので、常に平行)。そして、この一般化された直線 (曲線) が測地腺 (geodesic) と呼ばれます。
そうすると、アフィン空間での接ベクトル ei (q) の曲線上の移動は、「アフィン接続係数と平行移動」で見たよ
うに
dei
dxj k
− Γijk
e =0
dq
dq
これは曲線でのベクトルの移動の式です。ek は接ベクトルなので
(1)
dxk
として問題なく (ようは傾きです)、さらに
dq
一般化させるために適当な関数 λ(q) をかけて
ei = λ(q)
dxi
dq
これを (1) に入れれば
d
dxi
dxj dxk
(λ(q)
) − λ(q)Γijk
=0
dq
dq
dq dq
さらに変形させたいので、λ(q) をかけて、新しい変数として
d dxi
(λ
)
dq dq
dλ dxi
d2 xi
λ
+ λ2 2
dq dq
dq
i
dp dλ dx
dp d2 xi
λ( )2
+ λ2 ( )2 2
dq dp dp
dq dp
d2 xi
dp2
d2 xi
dxj dxk
− Γijk
2
dp
dp dp
λ
dp(q)
1
=
となる p(q) を定義します。そうすると
dq
λ(q)
dxj dxk
dq dq
dxj dxk
= λ2 Γijk
dq dq
dp
dxj dxk
= λ2 ( )2 Γijk
dq
dp dp
j
k
dx dx
= Γijk
dp dp
=
=
λ2 Γijk
(
d
dp d
=
)
dq
dq dp
0
この形を normal form と呼び、これがアフィン空間での測地線の定義を与え、アフィン空間での直線になります。
この式は 2 階の常微分方程式なので初期値として x(0), dx(0)/dp の二つを与えてしまえば、あとは勝手に測地線
は決定されます。というわけで適当な点を決めてそこの接線とその移動を与えることで、測地線は書けることに
なります。曲線のパラメータ p は任意ですが、これから他のパラメータに変換しようとしたとき、どんな場合で
も測地腺方程式の形が変わらないというわけではないです。これは最後に触れます。
1
アフィン空間での話をしてきましたが、ここでベクトルの移動則として平行移動のものを使いリーマン空間に
適用させます。接ベクトル自体の定義は変わらなく、接ベクトルを曲線 xi に沿って動かします。このとき、平行
移動ではベクトルの長さは変わらないことから、接ベクトルの長さが定数になるようにします。この接ベクトル
は単位接ベクトルと呼ばれるもので与えられます (もしくはそれの定数倍)。曲線のパラメータを s とし、単位接
ベクトルは dxi /ds で与えられるとして、内積は
gik
dxi dxk
=1
ds ds
となるとします。単位ベクトルなので内積を 1 にしています。今は単位接ベクトルとしていますが、これに比例す
るベクトルでも構いません。曲線 xi (s) を弧長 (曲線の長さ)s で微分したものは単位接ベクトルになるという性質
があるので (「曲線について」参照)、s は単位接ベクトルが移動する曲線の弧長となります。
このように、接ベクトルの動かし方自体はアフィン空間と同じなので、単純にクリストッフェル記号によって
置き換えて、曲線のパラメータを弧長 s にすればリーマン空間になります。リーマン空間でのクリストッフェル記
号として Γijk も使いますが、上での話と区別するために { } の形を使うことにして
d2 xi
+
ds2
{
i
}
jk
dxj dxk
=0
ds ds
これがリーマン空間での測地線の方程式になります。そもそも軌道における接ベクトルを平行移動することで出
来る線を測地線と定義しているということからも、この形になることは予想できます。
そして、微小な弧長 ds は微小距離のことなので、弧長の ds は腺素の ds と同じです。これは
gik
dxi dxk
= const
ds ds
であるので、gik dxi dxk = Cds2 とできることからも分かります。なので、例えば、ミンコフスキー空間では
ds2 = (dx0 )2 − (dx1 )2 − (dx2 )2 − (dx3 )2
となります。また、線素と固有時間 τ との関係は
(cdτ )2 = ds2
dτ =
ds
c
のようになっています。これは特殊相対論のように慣性系のみなら τ =
線方程式は固有時間を使って
d2 xi
+
d2 τ
{
i
}
jk
s
としても問題ありません。なので測地
c
dxj dxk
=0
dτ dτ
のように書くこともでき、大抵の場合 s は τ と何も考えずに置き換えて平気です。
・別の導き方
2
測地線は最短距離と解釈できるので、変分問題 (最小作用の原理) からも求められます。二つの点 P1 , P2 があっ
たとして、この二つを結ぶ曲線の長さ (弧長) は
∫
P2
s=
ds
P1
と書くことができます。ds は線素で
ds =
√
gik dxi dxk
ここで曲線のパラメータ p を導入すると
∫
P2
ds
dp =
dp
s=
P1
∫
P2
(gik
P1
dxi dxk 1
) 2 dp
dp dp
(2)
となります (下の補足参照)。このとき、ルート部分が定数になるように選ぶなら、s に比例したものになります
√
(ds と dp が比例)。例えば、ルート部分が時間依存しない K となっているなら、s = Kp となります。
P1 と P2 を結ぶ曲線が最短になるためには、積分の変分が 0 になればいいので
∫
P2
δ
(gik
P1
dxi dxk 1
) 2 dp = 0
dp dp
という式になります (解析力学の最小作用の原理と同じです)。この式は曲線のパラメータの変換に対して変わり
ません (ルート部分から dp′ /dp、外の dp から (dp/dp′ )dp′ )。解析力学と同じ話から、オイラー・ラグランジュ方
程式が
d ∂L
∂L
− i =0
dp ∂ x˙ i
∂x
(L = (gik
dxi dxk 1
dxi
) 2 , x˙ i =
)
dp dp
dp
と出てきます。微分は、計量が xi に依存しているとして
1
1
1
1
∂L
∂
1
1
=
(gik x˙ i x˙ k ) 2 = (gik x˙ i x˙ k )− 2 gjk x˙ j + (gik x˙ i x˙ k )− 2 gij x˙ j = (gik x˙ i x˙ k )− 2 gjk x˙ j
∂ x˙ j
∂ x˙ j
2
2
1
1 ∂gik
∂L
∂
1
=
(gik x˙ i x˙ k ) 2 = (gik x˙ i x˙ k )− 2
x˙ i x˙ k
∂xj
∂xj
2
∂xj
このとき、線素 ds が
1
ds = (gik dxi dxk ) 2 = (gik
1
1
dxi dxk
dxi dxk 1
(dp)2 ) 2 = (gik
) 2 dp = (gik x˙ i x˙ k ) 2 dp
dp dp
dp dp
となっているのを使うことで
3
(gik x˙ i x˙ k )− 2 gja x˙ a = gja
1
dp dxa
dxa
= gja
ds dp
ds
1 ∂gab
1
1 ∂gab dp dxa dxb
1 ∂gab dxa dxb
(gik x˙ i x˙ k )− 2
x˙ a x˙ b =
=
j
j
2
∂x
2 ∂x ds dp dp
2 ∂xj ds dp
そして、
ds d
d
=
dp
dp ds
から、オイラー・ラグランジュ方程式は
0=
ds d
1 ∂gab dxa dxb
dxa
(gja
)−
dp ds
ds
2 ∂xj ds dp
=
d
dxa
1 ∂gab dxa dp dxb
(gja
)−
ds
ds
2 ∂xj ds ds dp
=
d
dxa
1 ∂gab dxa dxb
(gja
)−
ds
ds
2 ∂xj ds ds
= gja
d2 xa
∂gja dxb dxa
1 ∂gab dxa dxb
+
−
2
b
ds
∂x ds ds
2 ∂xj ds ds
= g ij gja
=
d2 xa
∂gja dxb dxa
1 ∂gab dxa dxb
+ g ij
− g ij
2
b
ds
∂x ds ds
2
∂xj ds ds
d2 xi
1
dxa dxb
+ g ij (2gja|b − gab|j )
2
ds
2
ds ds
(gja|b =
∂gja
)
∂xb
第二項の添え字をいじると
1 ij
dxa dxb
1
dxa dxb
g (gja|b + gja|b − gab|j )
= g ij (gja|b + gjb|a − gab|j )
2
ds ds
2
ds ds
となり、これはクリストッフェル記号
{
i
ab
}
=
1 ij
g (gja|b + gjb|a − gab|j )
2
によって
d2 xi
1
+
2
ds
2
{
i
ab
}
dxa dxb
=0
ds ds
線素 ds は弧長と同じなので、最初の測地線方程式と同じです。よって、P1 と P2 を結ぶ曲線が最短になる曲線
xi (s) は測地線方程式に従います。
実際の計算においては、こんなルートのついてるやつを扱うのは面倒なだけなので、もっと単純な形が使えな
いか考えます (ただし、ルートがいる形ではパラメータの変換で式の形が変わらない利点がある)。なので、変分
の形は関数 F によって
4
∫
P2
δ
F (T )dp = 0
P1
として、ルートの形に限定せずに見ていきます。このときの T は解析力学からの予想として
T =
1 dxi dxk
gik
2
dp dp
という形をしているとします (これのルートが前の話)。1/2 はただの係数みたいなものです。F (T ) とする前ので
もそうなんですが、この変分問題は座標系の性質とは無関係になっているために一般相対論について考えていく
のに適したものになっています。
計量 gik は座標に依存しているので、T の変数は xi と dxi /dp だとできて
∫
P2
F (T (xi ,
δ
P1
dxi
))dp = 0
dp
そうすると、オイラー・ラグランジュ方程式
d ∂F
∂F
(
)=
dp ∂ x˙ i
∂xi
(x˙ i =
dxi
)
dp
が作れます。ドットがついているのは p での微分です。オイラー・ラグランジュ方程式に T =
れば、左辺は
d ∂F
(
) =
dp ∂ x˙ i
=
=
d ∂F dT
(
)
dp ∂T dx˙ i
d ( ′1
dx˙ j
dx˙ k )
F gjk ( i x˙ k + x˙ j i )
dp
2
dx˙
dx˙
d
(F ′ gik x˙ k )
dp
(F ′ =
1
gik x˙ i x˙ k を代入す
2
∂F
)
∂T
右辺は
1 ∂glk l k
∂F
= F′
x˙ x˙
i
∂x
2 ∂xl
となります。
これを解くために、曲線 xi (p) のパラメータ p を、その曲線の弧長 s に選びます。そうすると、xi (s) を s で微
分すれば、上で言ったように単位接ベクトルになります。なので、曲線のパラメータ p を s と選ぶなら、変分問
題での T は
T =
1 dxi dxj
1 dxi dxj
1
1 i j
x˙ x˙ =
=
=
2
2 dp dp
2 ds ds
2
という定数になります。つまり、変分問題によって導かれる曲線に沿って F (T ) と F ′ (T ) は定数になります。よっ
て、F, F ′ はこの曲線に沿って定数でなければいけないので、F, F ′ は s で微分すれば 0 になります。このため、オ
イラー・ラグランジュ方程式は
5
F′
d
1 ∂glk l k
x˙ x˙
(gik x˙ k ) = F ′
ds
2 ∂xl
p を s に選んでいます (ドットも s 微分)。左辺は
d
dxk
d2 xk
∂gik dxl dxk
(gik
) = gik 2 +
ds
ds
ds
∂xl ds ds
となるので、オイラー・ラグランジュ方程式として
gik
1 ∂glk dxl dxk
∂gik dxl dxk
d2 xk
−
=0
+
2
l
ds
∂x ds ds
2 ∂xl ds ds
これは
gik
gik
gik
d2 xk
∂gik
1 ∂glk dxl dxk
+
(
−
)
=0
ds2
∂xl
2 ∂xl ds ds
d2 xk
1 ∂gik
∂glk dxl dxk
+ (2 l −
)
=
2
ds
2 ∂x
∂xl ds ds
d2 x k
1 ∂gik
∂gil
∂glk dxl dxk
+
(
+
−
)
=
ds2
2 ∂xl
∂xk
∂xl ds ds
となるので、これに g ik をかけます
d2 xi
1
∂gik
∂gil
∂glk dxl dxk
+ g ik ( l +
−
)
=0
2
k
ds
2
∂x
∂x
∂xl ds ds
クリストッフェル記号を使えば
d2 xi
+
ds2
{
i
lk
}
dxl dxk
=0
ds ds
となって同じ結果を得ます。オイラー・ラグランジュ方程式を使っている時点でわかりきっていることなんです
が、測地線というのは停留曲線になっています。というわけで、ルートがあろうとなかろうと、測地線方程式は出
てくるので、実際の計算においてはルートを外して行います (例えば「運動方程式と測地線方程式」参照)。
測地腺方程式の形を変えないパラメータのことをアフィンパラメータと呼びます (s はアフィンパラメータ)。ア
フィンパラメータ p を任意の a, b を使った変換 p′ = ap + b を行った後もアフィンパラメータとして存在します。
このことは簡単に確かめられます。アフィンパラメータ p による微分を新しい p′ を使って
dxi dp′
dxi
= ′
dp
dp dp
d dxi dp′
dp′ d dxi
dxi d2 p′
dp′ 2 d2 xi
dxi d2 p′
d2 xi
=
=
+
=
(
)
+
dp2
dp dp′ dp
dp dp dp′
dp′ dp2
dp dp′2
dp′ dp2
このように書き直すと、測地線方程式が (p を s として)
6
dxi d2 p′
dp′ 2 d2 xi
(
)
+
+
ds dp′2
dp′ ds2
{
}
i
lk
d2 xi
+
dp′2
{
dxl dxk dp′ 2
(
) =0
dp′ dp′ ds
i
lk
}
dxl dxk
dp′ −2 d2 p′ dxi
)
=
−
(
dp′ dp′
ds
ds2 dp′
このとき右辺が 0 になれば測地線方程式と同じ形になります。このとき、右辺が 0 になるためには
d2 p′
=0
ds2
となっていればいいです (一般的に dxi /dp′ ̸= 0)。この条件は p′ が p′ = as + b を満たしていれば成立することが
分かります。よって、アフィンパラメータの線形変換によって新しいアフィンパラメータを作ることができます。
この条件に従わないような変換は測地腺方程式の形を変えます。実際にパラメータとして x0 = ct を使ってみま
す。その場合では上での p′ を x0 として、x0 微分を「·」で表せば
{
i
x
¨ +
i
lk
}
x˙ l x˙ k = −(
dx0 −2 d2 x0 i
)
x˙
ds
ds2
(3)
i = 0 とすれば
{
0
x
¨ +
0
lk
{
0
}
x˙ l x˙ k = − (
dx0 −2 d2 x0 0
)
x˙
ds
ds2
x˙ l x˙ k = − (
dx0 −2 d2 x0
)
ds
ds2
}
lk
(x˙ 0 = 1 , x
¨0 = 0)
なので、これを (3) に入れることで、x0 微分による測地線方程式は
{
i
x
¨ +
i
x
¨ +
(
{
i
lk
}
{
−
0
lk
i
lk
}
}
{
l k
x˙ x˙ =
0
lk
}
x˙ l x˙ k x˙ i
)
x˙ i x˙ l x˙ k = 0
となります。
・補足
s について軽く補足しておきます (数学の「ベクトル」や「曲線について」で、もう少し詳しく説明していま
す)。3 次元で考えたほうが想像しやすいので 3 次元で考えます。曲線 ξ(p) は
ξ(p) = (x(p), y(p), z(p))
7
という式によってかかれます。右辺は、x 成分は x(p) という関数によって動くということを表しています。曲線
での微小な長さ ds は直線だと考えていいので
ds2
ds
= dx2 + dy 2 + dz 2
√
=
dx2 + dy 2 + dz 2
√
dx
dy
dz
= dp ( )2 + ( )2 + ( )2
dp
dp
dp
で与えられます。微小距離を足し合わせれば曲線になるので、区間 P1 と P2 を結ぶ曲線の長さ s は
∫
P2
√
s=
(
P1
dx 2
dy
dz
) + ( )2 + ( )2 dp
dp
dp
dp
だということになり、これが弧長です (P1 , P2 を結ぶ曲線の形は ξ(p) で指定される)。これは上で出てきた
∫
P2
s=
(gik
P1
dxi dxk 1
) 2 dp
dp dp
これを3次元ユークリッド空間だとして計算したのと同じ式です。このときに、P1 と P2 を結ぶ曲線が最短にな
るものを選ぶのが変分問題です。
任意のパラメーター p から弧長 s に書き換えるためには、s(p) の式から p(s) の式を求めて曲線の式に入れなお
せば対応がとれます。この二つの関係は
dξ
ds
=
dp
dp
となっています。
8