表面・界面触媒反応へのチャレンジ

表面・界面触媒反応へのチャレンジ
東大院新領域
佐々木岳彦
固体表面の吸着・反応過程や触媒反応には計算化学による解析が重要となっている。我々は、
TiO2(110)表面上の水酸基とギ酸の相互作用について計算を行った。水酸基2個から水分子が生成
して脱離し、欠陥サイトが生成し、ギ酸イオンと水酸基の反応によりギ酸イオンの分解が進行し、
一酸化炭素と吸着水酸基に変化することを見出した。この時に生成する欠陥サイトは STM 観測
で確認された[1]。また、窒素内包型 Re10 クラスター触媒(Re10/ZSM-5)が、アンモニア存在下
で分子状酸素によりベンゼンを直接フェノールに転換する選択酸化触媒作用に高い転化率
(9.8%)と極めて高い選択性(94%)を示すことを見出されているが、DFT 計算により酸素分
子の活性化及びフェノール合成過程を調べ、酸素分子の解離を伴う反応機構を提案している
[2]。さらに、Pt クラスターについてもアンモニア存在下でのベンゼンと酸素からのフェノ
ール生成が報告され、反応プロファイルの計算化学研究も行っている[3]。
以上のアプローチでは、実験的に得られている構造・振動分光データ、化学的知識と直観
に基づいたモデル選択を行っている。その観点からは、予備知識を必要とせず、網羅的に化
学構造と反応経路をもとめられる GRRM[4-6]を基にした表面・界面反応の研究が待ち望まれ
る。現在、GRRM に基づく表面・界面反応への取り組みを行っている。なお、表面における吸
着系に関しては、GRRM を用いた解析が Si(100)上の酸素吸着系に関して報告されている[7]。
Cu(100)表面および Cu クラスターを対象として、GRRM11 プログラムから Gaussian09
による計算を制御した。吸着系の外側の原子を固定する Frozen Atoms オプションを用いて、
Cu(100)上の一酸化炭素の分子状吸着状態と解離吸着状態について、構造最適化を行った。
DFT 汎関数は pbe1pbe、基底関数は dgdzvp を使用し
た。Cu(100)表面モデルとしては、3層(13 原子、12
原子、13 原子)で、合計38原子をとり、そのうち、
中心部の第1層の5原子と第2層の4原子、および吸
着分子・原子位置を最適化し、その周囲の29Cu 原子
図1
Cu(100)上の CO の分子状(左)
および解離(右)吸着種
は位置を固定した。図に示すように、atop サイトに吸
着した分子状 CO と、酸素原子、炭素原子が4fold ホロ
ーサイトに吸着した解離吸着状態が求まった。また、吸
着状態から解離状態への遷移状態も求めることができた。なお、当日は、ソルビトールの高
温水による脱水環化反応に関する GRRM を用いた研究についても紹介する。
[1] Y. Morikawa, I. Takahashi, M. Aizawa, Y. Namai, T. Sasaki, and Y. Iwasawa, J. Phys. Chem. B 108, 14446-14451 (2004).
[2] T. Sasaki, M. Tada and Y. Iwasawa, Topics Catal., 52, 880-887 (2009).
[3] L. Wang, S. Yamamoto, S. Malwadkar, S. Nagamatsu, T. Sasaki, K. Hayashizaki, M. Tada, and Y. Iwasawa, ChemCatChem
Communications,(2013),5,2203-2206.
[4] K. Ohno, S. Maeda, Chem. Phys. Lett. 384 (2004) 277.
[5] S. Maeda, K. Ohno, J. Phys. Chem. A 109 (2005) 5742.
[6] K. Ohno, S. Maeda, J. Phys. Chem. A 110 (2006) 8933.
[7] S. Ohno, K. Shudo, M. Tanaka, S. Maeda, K. Ohno, J. Phys. Chem.C 114 (2010) 15671.