2.7.2 臨床薬理の概要
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結果により末梢血中の腫瘍細胞の存在も確認されていることから、リンパ腫の骨髄浸潤が骨髄への
顕著な取り込みの原因であると考えられた。
表 2.7.2-29
骨髄への著明な取り込みが認められた 2 例の臨床所見
症例番号
組織型
骨髄浸潤の有無
骨髄浸潤率
骨髄液中 CD20(%)
骨髄液中 SmIgκ/λ(%)
末梢血中白血球数(/mm3)
末梢血中腫瘍細胞(/mm3)
末梢血中 SmIgκ/λ(%)
脾腫の有無
脾臓への取り込み*
血清中 HAMA、HACA
直近の G-CSF 投与
AB*
ろ胞性リンパ腫
有
20%以下
69.9%
3.4% / 63.0%
9400
3150 (33.5%)
3.6% / 51.5%
無
+++
陰性
無
CQ*
ろ胞性リンパ腫
有
20%以上 25%未満
24.8%
56.2% / 1.5%
11500
不明
54.9% / 2.8%
有
++~+++
陰性
無
*
++:肝臓と同レベルの強い集積、+++:肝臓と比較して明らかに強い集積
90
Y-イブリツモマブ チウキセタンが投与された症例番号 AF*
は、投与前にリンパ腫の骨髄浸
潤(浸潤率 20%以下)が確認されており、投与後にグレード 4 の好中球数減少及びグレード 3 の血
小板数減少が発現し、G-CSF 投与及び血小板輸血が行われたが、血液毒性以外にグレード 3 以上の
は、投与後にグレー
有害事象の発現はなく、完全寛解(CR)に達している。一方、症例番号 AG*
ド 3 の好中球数減少及び血小板数減少が認められたが、G-CSF 投与及び血小板輸血を必要とせず回
復しており、グレード 3 以上の有害事象の発現もなかった。これらの症例は、骨シンチグラムにお
けるスーパースキャンに類似する画像ではなく、脾腫(治験医評価)への顕著な取り込みにより血
液プールからの迅速なクリアランスが認められたものであり、安全性上の問題が発生するとは考え
られない。実際、これらの症例における有害事象は、臨床的に十分管理可能であった。
2.7.2.4.2.3.4
生体内分布の読影判定(最新の米国添付文書における読影判定基準)
中央判定では、国内第Ⅱ相試験の治験実施計画書で定義した読影判定基準以外に、最新の米国添
付文書(2005 年 9 月付け)に定義されている読影判定基準(表 2.7.2-30)に基づく読影判定も行っ
た。
最新の米国添付文書における読影判定基準の国内第Ⅱ相試験における読影判定基準との主な相違
点は以下のとおりである。
①
異常な生体内分布の定義から血液プールからの迅速なクリアランスに関する記述を削除し、こ
れに代えて網内系への強い取り込みを示した場合を加え、「肝臓及び脾臓及び骨髄への強い局
在化」と定義した。
*:新薬承認情報提供時に置き換えた
2.7.2 臨床薬理の概要
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②
上記の変更により生体内分布の経時的変化の評価が不要となったため 111In-イブリツモマブ
チウキセタン投与 2~24 時間後のシンチグラムを省略し、48~72 時間後のシンチグラムのみに
て読影判定を行う(ただし、判定が不確定な場合には任意の追加撮像を行う)。
③ 異常な生体内分布の定義において、顕著な骨髄への取り込み(prominent bone marrow)に関し
て「長管骨及び肋骨の明瞭な描出」と特徴付けた。
表 2.7.2-30
シンチグラムの読影判定基準(最新の米国添付文書)
111
In-イブリツモマブ チウキセタン投与後の生体内分布は、111In-イブリツモマブ チウキセタン投与の 48~
72 時間後にガンマカメラにより撮像した全身像(前・後面プラナー像)を読影することにより評価する。読影評価のため
の撮像は、111In-イブリツモマブ チウキセタン投与の 48~72 時間後に一回必要とされる。評価の不確かさを解消する
ため、その他の測定点での任意の撮像が必要となることがある。全身像(前・後面プラナー像)は中エネルギーコリメー
ターにて広範囲視野のガンマカメラを用いる。
撮像方法:
マトリックス
エネルギーピーク
ウインドウ
スキャンスピード
:256 x 1024
:172、247keV
:15%
:111In-イブリツモマブ
以降の撮像
チウキセタン投与 48~72 時間後:10cm/min
:7~10cm/min
撮像時期
111
In-イブリツモマブ
チウキセタン投与の 48~72 時間後
正常な生体内分布(Expected biodistribution)
①血液プール領域(心臓、腹部、頚部、および四肢)における放射能は、わずかに確認される。
②正常な肝臓と脾臓における取り込みは比較的強いまたは強い(moderately high ~ high)。
③正常な腎臓、膀胱及び(腫瘍の浸潤のない)腸における取り込みは比較的 弱いまたは非常に弱い
(moderately low ~ very low)。
④経時的に変化する腸管内の一定しない領域への取り込みについては、消化管からの消失を確認するために二
回目の撮像が必要となる場合がある。
⑤腸壁における限局的な一定領域への取り込み(腸壁のリンパ集族への局在)。腫瘍への取り込みは軟部組織
では高集積域として描出され、正常臓器の腫瘍病変部では、高集積域として描出されることもあれば低集積
域として描出されることもある。111In-イブリツモマブ チウキセタン のイメージングによる腫瘍の描
出は、90Y-イブリツモマブ チウキセタン 投与実施の必要要件ではない。
異常な生体内分布(Altered biodistribution)
読影の結果、以下のいずれかの所見が認められた場合は、異常な生体内分布と評価する。:
①網内系への取り込みを示す肝臓、脾臓及び骨髄への強い局在化。
②以下のような、腫瘍の浸潤がみられない正常臓器への取り込みの増強:
• 肝臓よりも強い正常肺へのびまん性の取り込み。
• 後面像で、肝臓よりも強い腎臓への取り込み。
• 肝臓よりも強い正常腸の一定領域(経時的変化がみられない)への取り込み。
• 111In-イブリツモマブ チウキセタンの投与受けた患者の 0.5%未満に、長管骨及び肋骨の明
瞭な描出を特徴とする顕著な骨髄への取り込みが認められる。
読影の結果、異常な生体内分布が明らかになった場合、患者へ 90Y-イブリツモマブ
を行うべきではない。
チウキセタンの投与
2.7.2 臨床薬理の概要
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中央判定にて、111In-イブリツモマブ チウキセタンが投与された 45 例中 43 例が正常な生体内分
布と判定され、異常な生体内分布は 2 例(症例番号 AB* 及び CQ*
、4.4%)と結論された。こ
れら 2 例は、いずれも中央判定委員全員が当該読影判定基準において異常な生体内分布と判定して
おり、国内第Ⅱ相試験における読影判定基準を用いた判定においても異常な生体内分布と結論され
た症例(症例番号 AB*
:中央判定委員全員及び治験医が異常な生体内分布と判定、症例番号
*
:中央判定委員 2 名及び治験医が異常な生体内分布と判定)であった。以下に、中央判定に
CQ
より異常な生体内分布と判定された所見を示す。
症例番号 AB*:
長管骨及び肋骨の明瞭な描出もあり、顕著な骨髄への取り込みが認められる(骨シンチグラムに
おけるスーパースキャンに類似した画像)。
症例番号 CQ*:
四肢の末梢までにいたる骨領域全体へのびまん性の取り込みがあり、長管骨及び肋骨の描出は明
瞭である。骨シンチグラムにおけるスーパースキャンに類似した比較的強い骨髄への取り込みが認
められる。
2.7.2.4.2.3.5
異常な生体内分布及び読影判定基準
国内第Ⅱ相試験の読影判定基準を用いた中央判定に以下の判定不一致及び問題点が認められた。
1)「スキャン1のイメージングにおいて肝臓、脾臓及び/または骨髄への取り込みが著明にみら
れ、血液プールからの 111In-イブリツモマブ チウキセタンの迅速なクリアランスが認められ
る」との記載について、“迅速なクリアランス”の解釈に不一致がみられた(症例番号
AF* 、AG*
)。また、脾腫の有無などによって血液プールからのクリアランスに個体差が
あることが予想され、スキャン 1 を 111In-イブリツモマブ チウキセタン投与後の早期に行っ
た場合やスキャン 1 と 2 のシンチグラム撮像の間隔があいた場合など、患者によっては血液
プールからの迅速なクリアランスの判定が困難な場合があると考えられた。また、血液プール
からの迅速なクリアランスは二次的な現象を表現したものであり、本質的には網内系への強い
局在性がある場合に異常な生体内分布と判断されるべきであると考えられた。これらの問題点
は、最新の米国添付文書の読影判定基準にて解決される。
2)「骨髄への取り込みが著明である」との記載について、リンパ腫の骨髄浸潤などにより限局性
の強い取り込みがみられた場合の解釈に不一致がみられた(症例番号 CR*
、CV*
)。
111
90
In-イブリツモマブ チウキセタンを用いたシンチグラフィによる Y-イブリツモマブ チ
ウキセタン生体内分布の事前予測は、骨髄への著明な取り込みにより強い骨髄抑制が予想され
る患者への 90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与を中止し、また、肺・腎臓・腸管などの放
射線に感受性に高い重要な臓器における潜在的なリスクを回避するために行われるものである。
この観点から限局性の骨髄への取り込みは十分許容されるものであると考えられ、当該基準の
記載をより明確化する必要性が考えられた。これらの問題点は、最新の米国添付文書の読影判
定基準にて部分的に解決される。
3) 「骨髄への取り込みが著明である」との記載について、四肢の末梢までにいたる広範囲のびま
ん性の取り込みがあるものの、肝臓・脾臓ほどの強い取り込みが認められない場合の解釈に不
)。111In-イブリツモマブ チウキセタンを用いたシンチグ
一致がみられた(症例番号 CQ*
90
ラフィによる Y-イブリツモマブ チウキセタンの生体内分布予測の実施意義を勘案すると、
*:新薬承認情報提供時に置き換えた
2.7.2 臨床薬理の概要
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90
Y-イブリツモマブ チウキセタンの投与は避けるべきものと考えられ、当該基準の記載をよ
り明確化する必要性が考えられた。これらの問題点は、最新の米国添付文書の読影判定基準に
て部分的に解決される。
以上のことから、本邦において今後用いるべき読影判定基準は、最新の米国添付文書における読
影判定基準をもとに検討することが適当であると判断された。
ただし、最新の米国添付文書における読影判定基準を用いた中央判定に以下の判定不一致及び問
題点が認められた。
1)「網内系への取り込みを示す肝臓、脾臓及び骨髄への強い局在化」との記載について、“強い
)。1 名の中央判定委員が異常
局在化”の判定に不一致がみられた(症例番号 AF* 、CR*
な生体内分布と評価した。しかし、これら 3 臓器全てへの強い局在化は断定的でなく、本基準
による異常な生体内分布には該当しないものと判断された。
2)「長管骨及び肋骨の明瞭な描出を特徴とする顕著な骨髄への取り込み」との記載について、判
定の不一致などはみられなかったが、リンパ腫の骨髄浸潤などにより限局性の強い取り込みが
みられた場合の解釈について齟齬を未然に防ぐため、当該基準の記載をより明確化する必要性
があると考えられた。
3)「腫瘍の浸潤がみられない正常臓器への取り込みの増強:長管骨及び肋骨の明瞭な描出を特徴とする顕
著な骨髄への取り込み」との記載について、判定の不一致などはみられなかったが、骨髄へのリンパ腫
浸潤のある場合においても、骨シンチグラムにおけるスーパースキャンに類似した像を呈する場合には、
90
Y-イブリツモマブ チウキセタン投与は行うべきではなく、解釈の齟齬を未然に防ぐため当
該基準ぼ記載を修正する必要があると考えられた。
以上のことを踏まえ、本邦における読影判定基準は表 2.7.2-31に示すように改訂することが適当
と判断した。
本基準を用いた中央判定において異常な生体内分布と結論された症例は、国内第Ⅱ相試験におけ
る読影判定基準を用いた中央判定において異常な生体内分布と結論された 4 例のうちの 2 例(症例
、AG*
)は異常な生体内分布で
番号 AB* 、CQ* )のみであり、他の 2 例(症例番号 AF*
はないと結論された。これらの症例は脾腫(治験医評価)を有しており、著明な脾臓への取り込み
により血液プールからの迅速なクリアランスを示したものであり、骨髄への集積は強くなく、腫瘍
の描出も認められた。111In-イブリツモマブ チウキセタンを用いたシンチグラフィによる 90Y-イブ
リツモマブ チウキセタンの生体内分布予測は、骨髄への著明な取り込みにより強い骨髄抑制が予
想される患者への 90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与を中止し、また、肺・腎臓・腸管などの
放射線に感受性が高い重要な臓器における潜在的なリスクを回避するために行われるものである。
この観点からすれば、これら 2 例(症例番号 AF* 、AG*
)の 90Y-イブリツモマブ チウキセタ
ン投与は可能であると考えられる。したがって、国内第Ⅱ相試験における真の異常な生体内分布を
示した症例は 45 例中 2 例(4.4%)であると判断した。
*:新薬承認情報提供時に置き換えた
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表 2.7.2-31
シンチグラムの読影判定基準(改訂案)
111
In-イブリツモマブ チウキセタン投与後の生体内分布は、111In-イブリツモマブ チウキセタン投与の 48~
72 時間後にガンマカメラにより撮像した全身像(前・後面プラナー像)を読影することにより評価する。評価が不確定の
場合は、一日以上の間隔をあけて追加撮像を行う。
推奨される撮像方法:
マトリックス
エネルギーピーク
ウインドウ
スキャンスピード
:256 x 1024
:172、247keV
:15%
:111In-イブリツモマブ
以降の撮像
チウキセタン投与 48~72 時間後:10cm/min
:7~10cm/min
生体内分布
通常、111In-イブリツモマブ チウキセタン投与 48~72 時間後における生体内分布の読影所見は以下のとおりであ
る。
①血液プール領域(心臓、腹部、頚部、および四肢)における放射能が認められる。
②肝臓と脾臓に取り込みが認められる。
③腎臓、膀胱及び腸管における取り込みは比較的弱い。
④腸管壁に限局的な取り込みがみられる場合がある(腸壁のリンパ集族への局在)。
⑤経時的に変化する腸管内への取り込みについて確認するために追加撮像が必要な場合がある。
⑥111In-イブリツモマブ チウキセタン のイメージングによる腫瘍の描出は、90Y-イブリツモマブ チウキセ
タン投与実施の必要要件ではない。
異常な生体内分布(Altered biodistribution)
読影の結果、以下のいずれかの所見が認められた場合は、異常な生体内分布とみなす。
異常な生体内分布が明らかになった場合、90Y-イブリツモマブ チウキセタンの投与は行うべきでない。
①顕著な骨髄へのびまん性の取り込みが認められる(長管骨及び肋骨の明瞭な描出を特徴とする骨シンチグラムにお
けるスーパースキャンに類似した画像)。
②網内系への取り込みを示す肝臓、脾臓及び骨髄への強い局在化。
③以下のような、腫瘍の浸潤がみられない正常臓器への取り込みの増強:
• 肝臓よりも強い正常肺へのびまん性の取り込み。
• 後面像で、肝臓よりも強い腎臓への取り込み。
• 肝臓よりも強い正常腸管への取り込み(経時的変化がみられないもの)。
2.7.2.4.2.3.6
111
In-イブリツモマブ
チウキセタンの投与量の適切性
国内第Ⅱ相試験の中央判定(45 例)では、国内第Ⅱ相試験及び最新の米国添付文書における読影
判定基準を用いて、111In-イブリツモマブ チウキセタン 129.5MBq(3.5mCi)投与にて得られたシ
ンチグラムが読影判定を行うために適当であるかについて判定した。その結果、いずれの読影判定
基準を用いた場合においても、全例(45 例)について全委員が 111In-イブリツモマブ チウキセタ
ン 129.5MBq(3.5mCi)投与にて得られたシンチグラムが読影判定を行うために適当であったと判定
した。
2.7.2.4.2.4
日本人における生体内分布及び線量評価の結論
日本人における生体内分布及び線量評価結果を検討した結果、異常な生体内分布を示した症例を
除いた場合、以下の結論が得られた。
2.7.2 臨床薬理の概要
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•
90
•
90
•
許容線量の範囲では、観察された血液毒性は管理可能な範囲である。
•
リツキシマブ前処置用量 250mg/m2 は日本人においても妥当である。
Y-/111In-イブリツモマブ チウキセタンは主に血液プール、肝臓、脾臓に分布し、その生体
内分布および吸収線量は日本人と欧米人でほぼ同じである。
Y-イブリツモマブ チウキセタンによる治療で受ける吸収線量は許容線量(正常臓器で
2,000cGy、赤色骨髄で 300cGy)未満である。
111
In-イブリツモマブ チウキセタンによるシンチグラフィにおいて異常な生体内分布が観察され
ることがあり、この場合、90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与時に許容線量を超える可能性が
ある。しかし、111In-イブリツモマブ チウキセタンによるシンチグラフィを実施することにより、
このような異常な生体内分布を示す患者を適切に除外し、90Y-イブリツモマブ チウキセタンを安
全に投与することができる。
2.7.2.4.3
米国臨床試験の要約
参照項目:5.3.5.3.1.3
2.7.2.4.3.1
概要
90
Y-イブリツモマブ チウキセタン投与前に、111In-イブリツモマブ チウキセタンを用いた線量
評価が 6 治験 205 例を対象に各施設において実施された(試験番号 106-01、-02、-03、-04、05、-06)。線量評価により検討した症例はいずれも、 90Y-イブリツモマブ チウキセタンを投与
するための計画書基準に合致しており、主要臓器及び赤色骨髄の吸収線量はそれぞれ正常臓器の許
容線量である 2,000cGy 及び 300cGy に達しなかった。
しかし、線量評価の手技が施設ごとに異なることから、FDA の指摘に従い、全データを同一条件
及び同一手技にて再解析するため、独立中央方式による線量評価を実施した。線量評価は
核医学部の協力の下、
の
において実施された。治験実施施設及び中央で
の線量評価は、試験番号 106-03、106-04 及び 106-05 の治験実施計画書において必須要件とされて
いた。試験番号 106-06 では、治験実施施設での線量評価のみを必須要件としていたが、90Y-イブリ
ツモマブ チウキセタンの線量評価データ量を増やすため、試験終了後に中央での線量評価を実施
した。
なお、線量評価は MIRD 法に従い、MIRDOSE3.1 コンピュータソフトウェアを用いて吸収線量を算
出した。
中央線量評価は、205 例中 179 例を対象に実施した。以下に、90Y-イブリツモマブ チウキセタン
の投与量別に該当症例数を示す。
• 試験番号 106-03:7.4MBq/kg (0.2mCi/kg、 N=4)
• 試験番号 106-03 及び 106-05:11.1MBq/kg (0.3mCi/kg、 N=46)
2.7.2 臨床薬理の概要
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• 試験番号 106-03,106-04 及び 106-06:14.8MBq/kg (0.4mCi/kg、 N=129)
26 例は以下の理由により中央線量評価から除外された。
•
前投与にイブリツモマブ又は B1 抗体を用いた初期臨床試験の症例(試験番号 106-01 及び 10602、N=18)
•
リツキシマブ 2 用量の用量検討のため線量評価を 2 回実施したが、90Y-イブリツモマブ
キセタンを投与しなかった症例(試験番号 106-03、N=6)
•
中央線量評価のため治験実施施設から移管中、線量評価データが紛失または損傷した症例(試
験番号 106-03 及び 106-06、N=2)
チウ
以上、179 例の投与量および撮像条件を表 2.7.2-32に示す。
表 2.7.2-32
米国臨床試験における投与量およびシンチグラムの撮像条件
111
In-イブリツモマブ チウキセ
タンの投与量(MBq)
90
Y-イブリツモマブ チウキセタ
ンの投与量(MBq/kg)
撮像時期
(投与日:1 日)
撮像条件
2.7.2.4.3.2
試験番号
106-03
185
試験番号
106-04
185
試験番号
106-05
185
7.4, 11.1,
14.8
11.1
14.8
直後
直後
直後
2 時間後
----4-6 時間後
4-6 時間後
4-6 時間後
2 日目
2 日目
2 日目
3 日目
----4 日目
4 日目
4 日目
5 または 6 日目
----7 日目
7 日目
7 日目
以下に示した条件で、全身前・後面像を同時撮像した。
コリメータ:中エネルギー
マトリックス:256x1024
エネルギーピーク:172 及び 247keV
ウインドウ:15%
スキャンスピード(参考):10cm/分
試験番号
106-06
185
14.8
直後
--4-6 時間後
2 日目
--4 日目
--7 日目
患者背景
線量評価の対象となった 179 例の患者背景を表 2.7.2-33、表 2.7.2-34に示す。年齢の中央値は
58.9 歳(24.0~85.0 歳)、男性 102 例(57.0%)、白人 171 例(95.5%)であった。組織学的分類
(IWF)では、小リンパ球性リンパ腫 8.4%、ろ胞性 NHL77.7%及び組織学的進展例 5.6%であった。
登録時の臨床病期はおおむね III 期または IV 期(89.4%)であり、投与前の WHO performance
status(以下 PS)は 176 例(98.3%)が PS=0 ないし PS=1 であり、2 例(1.1%)が PS=2 であった。
87 例(48.6%) には投与前に骨髄浸潤が認められた。
2.7.2 臨床薬理の概要
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Nihon Schering K.K.
病巣の最大径が 10cm 以上である症例は 17 例(9.5%)であり、最大径が 7cm 以上 10cm 未満の症
例は 35 例(19.6%)、最大径が 5cm 以上 7cm 未満の症例は 43 例(24.0%)、最大径が 5cm 未満の
症例は 84 例(46.9%)であった。また、23 例(12.8%)には投与前に脾腫が認められた。リツキシ
マブを含む過去の治療回数は中央値で 2.0(1.0~9.0)回であった。
表 2.7.2-33
年齢
年齢区分
性別
人種
体重
米国臨床試験における中央線量評価対象者の患者背景
例数
平均
標準偏差
中央値
範囲
65 歳未満
65 歳以上 75 歳未満
75 歳以上
女性
男性
Asian
Hispanic
Caucasian
African-American
例数
平均
標準偏差
中央値
範囲
179
58.9
12.3
59.0
24.0-85.0
116(64.8%)
44(24.6%)
19(10.6%)
77(43.0%)
102(57.0%)
3( 1.7%)
2( 1.1%)
171(95.5%)
3( 1.7%)
179
78.8
77.7
77.0
45.0-159.0
2.7.2 臨床薬理の概要
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表 2.7.2-34
米国臨床試験における中央線量評価対象者の病態分類
病態
臨床病期
病理組織型
骨髄浸潤
脾腫の有無
節外病巣数
肝腫の有無
病巣の最大長径
WHO performance status
原疾患に対する前治療の回
数
2.7.2.4.3.3
I/Ⅱ
Ⅲ/Ⅳ
不明
小リンパ球性
濾胞性
組織学的進展例
その他
有
無
有
無
0, 1
≧2
有
無
<5cm
5-<7cm
7-<10cm
≧10cm
0, 1
2
≧2
中央値:2.0、範囲:1.0-9.0
例数(%)
15( 8.4)
160(89.4)
4( 2.2)
15( 8.4)
139(77.7)
10( 5.6)
15( 8.4)
87(48.6)
92(51.4)
23(12.8)
156(87.2)
150(83.3)
29(16.2)
4( 2.2)
175(97.8)
84(46.9)
43(24.0)
35(19.6)
17( 9.5)
176(98.3)
2( 1.1)
1( 0.6)
線量評価の成績(N = 179)
179 例について、肺、肝臓、脾臓、腎臓及び赤色骨髄を関心領域(ROI;Regions of Interest)
を設定した。肝臓及び脾臓の吸収放射線量は、
にて規定した補正係数を用いて質量補
正した(試験番号 106-04、106-05 及び 106-06 では全例の脾臓及び肝臓の吸収放射線量を質量補正
したが、試験番号 106-03 では、吸収放射線量が 1,500cGy 以上の症例及び脾腫または肝腫大を認め
る患者についてのみ肝臓及び脾臓の吸収放射線量を質量補正した)。
179 例の 90Y 吸収線量の中央値(範囲)は、脾臓 742cGy(24~2,448cGy)、肝臓 450cGy(64~
1,856cGy)、肺 211cGy(41~527cGy)、仙骨由来k)赤色骨髄 97cGy(6~257cGy)、血液由来l)赤
色骨髄 62cGy(7~221cGy)、全身 57cGy(23~80cGy)、及び腎臓 23cGy(0~76cGy)であった。
、AI*
)で脾臓の吸収線量が正常臓器の許容
179 例中 2 例(症例番号 AH*
線量 2,000cGy を超えたが(各々2,448cGy 及び 2,280cGy)、前者は胃 MALT リンパ腫と脾臓とのオー
k)仙骨の骨髄に設定した関心領域を基に推定した赤色骨髄の吸収線量(以下、仙骨由来と表記)
l)血液中放射能より推定した赤色骨髄の吸収線量(以下、血液由来と表記)
*:新薬承認情報提供時に置き換えた
2.7.2 臨床薬理の概要
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54 of
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Nihon Schering K.K.
バーラップが吸収線量評価に影響したと考えられ、後者は脾臓の腫大を呈しており病的状態による
影響と考えられた。
2.7.2.4.3.4
線量評価の成績:関心領域 10 カ所(N = 15)
全臓器及び全身の 111In 及び 90Y の吸収放射線量(cGy)及び吸収放射線量当量(mGy/MBq)をより
詳細に推定するため、試験番号 106-04 の症例(14.8MBq/kg)から無作為に抽出した 15 例(男性 10
例、女性 5 例)について線量評価を実施した。
先に示した 179 例の 90Y-イブリツモマブ チウキセタンの線量評価の成績は、関心領域を肺、肝
臓、脾臓、腎臓及び仙骨由来赤色骨髄の 5 つの臓器について設定したが、今回の解析では、さらに
心臓、小腸、上部大腸、下部大腸及び精巣の 5 つの臓器を追加した。
その結果、吸収線量の中央値(範囲)は、脾臓 1054cGy(215~2,100cGy)、下部大腸壁 545cGy
(366~935cGy)、肝臓 520cGy(310~957cGy)、上部大腸壁 392cGy(216~760cGy)心臓壁 292cGy
(177~367cGy)、肺 220cGy(92~347cGy)、精巣 173cGy(76.5~515cGy)、仙骨由来赤色骨髄
144cGy(68.5~189cGy)、小腸 156cGy(85.4~236cGy)であった(図 2.7.2-7)。脾臓の吸収線量
の最大値がわずかに正常臓器の許容線量 2,000cGy を超えているが、吸収線量のバリエーションが大
きく、脾臓におけるリンパ腫の浸潤などの病的状態が影響しているものと考えられた。
90
Y-イブリツモマブ
図 2.7.2-7
チウキセタン投与後の吸収線量(中央値)(15 例)
1480
腫瘍1
1054
脾臓2
545
下部大腸壁2
肝臓2
520
上部大腸壁2
392
292
心臓壁2
220
肺2
173
精巣2
小腸2
156
赤色骨髄3
144
膀胱壁4
78.4
0
500
1000
cGy
1500
2000
1: 38例57腫瘍の値(2.7.2.4.3.5 参照),
2: 関心領域を設定した臓器
3: 仙骨を関心領域とした, 4: 全身を関心領域として設定(残予法)
また、この 15 例から得られた 111In-イブリツモマブ チウキセタン及び 90Y-イブリツモマブ
ウキセタンの単位投与放射能量あたりの吸収線量(mGy/MBq)を表 2.7.2-35に示す。
チ
2.7.2 臨床薬理の概要
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Nihon Schering K.K.
90
Y-イブリツモマブ チウキセタンまたは 111In-イブリツモマブ
投与したときの吸収線量(15 例)
表 2.7.2-35
チウキセタンを
(mGy/MBq)
90
Y-イブリツモマブ
臓器
副腎
3
脳3
胸部
3
胆嚢壁 3
下部大腸壁
1
チウキセタン
111
In-イブリツモマブ チウキセタン
中央値
範囲
中央値
範囲
0.3
0.2 - 0.5
0.2
0.2 - 0.3
0.3
0.2 - 0.5
0.1
0.0 - 0.1
0.3
0.2 - 0.5
0.1
0.1 - 0.1
0.3
0.2 - 0.5
0.3
0.2 - 0.4
4.7
3.1 - 8.2
0.4
0.2 - 0.6
小腸 1
1.4
0.8 - 2.1
0.2
0.2 - 0.3
3
胃
0.3
0.2 - 0.5
0.2
0.1 - 0.2
上部大腸壁 1
3.6
2.0 - 6.7
0.3
0.2 - 0.6
心臓壁 1
2.9
1.5 - 3.2
0.4
0.2 - 0.5
1
0.1
0.0 - 0.3
0.2
0.1 - 0.2
肝臓 1
4.8
2.9 - 8.1
0.7
0.4 - 1.1
1
2.0
1.2 - 3.4
0.2
0.2 - 0.4
筋肉 3
0.3
0.2 - 0.5
0.1
0.1 - 0.1
腎臓
肺
卵巣
3†
膵臓 3
赤色骨髄 2
骨表面
2
0.4
0.3 - 0.5
0.2
0.2 - 0.2
0.3
0.2 - 0.5
0.2
0.2 - 0.3
1.3
0.6 - 1.8
0.2
0.1 - 0.2
0.9
0.5 - 1.2
0.2
0.1 - 0.2
皮膚 3
0.3
0.2 - 0.5
0.1
0.0 - 0.1
1
脾臓
9.4
1.8 - 20
0.9
0.2 - 1.8
精巣 1*
1.5
1.0 - 4.3
0.1
0.1 - 0.3
胸腺 3
0.3
0.2 - 0.5
0.1
0.1 - 0.2
甲状腺 3
0.3
0.2 - 0.5
0.1
0.0 - 0.1
膀胱壁 3
0.9
0.7 - 1.3
0.2
0.1 - 0.2
0.4
0.3 - 0.5
0.2
0.1 - 0.2
0.5
0.4 - 0.7
0.1
0.1 - 0.2
子宮
3†
全身 3
1
関心領域を設定した臓器
仙骨を関心領域とした
3
全身を関心領域として設定(残予法)
*N = 10、†N = 5
2
2.7.2.4.3.5
腫瘍の吸収線量評価
38 例(57 腫瘍)において腫瘍の推定吸収放射線量を求めた(試験番号 106-03、106-04)。腫瘍
の 90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与時の総吸収放射線量の中央値(範囲)は 1,480cGy(61~
24,274cGy)であった(表 2.7.2-36)。なお、単位投与放射能当たりの腫瘍の吸収線量は 16mGy/MBq
(0.8~210mGy/MBq)であった。
2.7.2 臨床薬理の概要
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表 2.7.2-36
90
cGy
mGy/MBq
2.7.2.4.3.6
2.7.2.4.3.6.1
Y-イブリツモマブ
チウキセタン投与時の腫瘍吸収線量
投与量(MBq/kg)
7.4
11.1
14.8
合計
7.4
11.1
14.8
合計
腫瘍数
1
5
51
57
1
5
51
57
中央値
1434
2178
1468
1480
22.4
24.7
14.3
16.2
最小値
1434
586
61
61
22.4
6.9
0.8
0.8
最大値
1434
6710
24274
24274
22.4
82.4
210.2
210.2
線量評価に関する相関解析
血液毒性との線量評価及び薬物動態の相関解析
血液毒性は、赤色骨髄への放射線照射が原因の一つと考えられるため、赤色骨髄または全身の吸
収放射線量との間に相関のみられる可能性が考えられる。したがって、これらの線量評価パラメー
タまたは薬物動態パラメータと、本療法による血液毒性との間の相関性を検討するため、種々の解
析を行った。
赤色骨髄の吸収線量算出にはさまざまな誤差源がある。骨髄は身体全体に分布するため、全身や
肝臓及び脾臓などの主要臓器と同じ方法で吸収線量を把握することは困難である。また、リンパ腫
の骨髄浸潤を認める患者では、標識したイブリツモマブ チウキセタンが骨髄を標的とすることが
考えられる。このため、 90Y-イブリツモマブ チウキセタンの臨床試験では、血液中放射能濃度
(血液由来)又は仙骨の赤色骨髄に設定した関心領域(仙骨由来)を基にした 2 つの方法により赤
色骨髄の吸収線量を推定した。
赤色骨髄及び全身の吸収線量を線量評価パラメータに、血中/血漿中の実効半減期及び AUC を 90Y
の薬物動態パラメータとした。好中球数及び血小板数は血液及び骨髄への放射線照射により著明に
影響を受けるため、その数と最低値及び回復に要する日数を血液毒性の評価パラメータとした。
2.7.2.4.3.6.2
線量評価パラメータと血液検査値の最低値
赤色骨髄の吸収線量は、血液中放射能濃度から推定した吸収線量(血液由来)よりも仙骨の骨髄
に関心領域を設定して推定した値で高値を示した(表 2.7.2-37)。リンパ腫の骨髄浸潤を認める患
者では 90Y-イブリツモマブ チウキセタンが骨髄を標的とする可能性が考えられるため、仙骨由来
の骨髄での吸収線量が高いことは合理的であり、仙骨由来の吸収線量は安全性を評価する上でより
実際的な指標であると考えられた。
いずれの方法で推定した赤色骨髄の吸収線量においても、好中球数または血小板数の最低値(ま
たはそのグレード)との間に有意な相関性は認められなかった。また、全身の吸収線量と好中球数
または血小板数の最低値(グレード)との間にも有意な相関は認められなかった。以上のデータの
要約を表 2.7.2-37、図 2.7.2-8、図 2.7.2-9及び図 2.7.2-10に示す。
2.7.2 臨床薬理の概要
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Nihon Schering K.K.
表 2.7.2-37
吸収線量 (cGy) と血液パラメータの最低値のグレードとの相関
赤色骨髄の吸収線量:中央値
(cGy)
最低値のグレード
全身の吸収線量:
中央値
血液由来
仙骨由来
(cGy)
0–2
62
99
57
3
64
88
58
4
58
107
58
p = 0.482
p = 0.108
p = 0.958
0–2
62
92
56
3
65
96
58
4
49
106
54
p = 0.066
p = 0.398
p = 0.382
好中球数
血小板数
p: Kruskal-Wallis test
図 2.7.2-8
好中球数最低値と赤色骨髄吸収放射線量
57 of
68
2.7.2 臨床薬理の概要
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Nihon Schering K.K.
図 2.7.2-9
図 2.7.2-10
血小板数最低値と赤色骨髄の吸収放射線量
好中球数及び血小板数最低値と全身の吸収放射線量
58 of
68
2.7.2 臨床薬理の概要
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59 of
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2.7.2.4.3.6.3
線量評価パラメータと血液検査値の回復
赤色骨髄(血液又は仙骨由来)の吸収線量並びに全身の吸収線量と好中球数減少又は血小板数減
少の回復に要する期間(日数)との間には、いずれについても明確な相関は認められなかった(表
2.7.2-38及び図 2.7.2-11)。
表 2.7.2-38
吸収放射線量(cGy)と血液検査値の回復に要する期間(日数)
赤色骨髄の吸収線量 (cGy)
回復期間(日)
血液由来
仙骨由来
全身の吸収線量 (cGy)
1– 14
63
91
57
15 – 28
62
109
58
> 28
46
85
55
p = 0.694
p = 0.090
p = 0.354
0†
83
150
60
1 – 14
63
93
59
15 – 28
64
112
58
> 28
44
98
46
好中球数
血小板数
p = 0.607
p = 0.227
p = 0.040
3
3
3
*回復を、 好中球数 ≥ 1.0 x 10 cells/mm 、血小板数 ≥ 50 x 10 plt/mm .と定義した。
†
同日に 2 回測定した。
p: Kruskal-Wallis test
3
2.7.2 臨床薬理の概要
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図 2.7.2-11
吸収放射線量と好中球数(左)及び血小板数(右)の回復に要する期間(日数)
68
2.7.2 臨床薬理の概要
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61 of
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2.7.2.4.3.6.4
薬物動態パラメータと血液検査値の最低値
血液検査値の最低値(好中球数及び血小板数)または最低値グレードと全血中濃度より求めた薬
物動態パラメータ(90Y の実効半減期または AUC)との間に統計的に有意な相関は認められなかった
(表 2.7.2-39及び図 2.7.2-12)。
表 2.7.2-39
90
Y の実効半減期*及び AUC と血液検査値の最低値グレード
最低値のグレード
例数
実効半減期の中央値
(時間)
AUC の中央値
(時間)
好中球数
0–2
3
4
63
40
42
27
29
27
p = 0.050
25
24
24
p = 0.898
血小板数
0–2
3
4
53
81
11
27
27
27
p = 0.547
26
24
20
p = 0.594
*全血、
p:Kruskal-Wallis test
2.7.2 臨床薬理の概要
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Nihon Schering K.K.
図 2.7.2-12
好中球数(上)及び血小板数(下)の最低値と 90Y の全血中推定半減期及び全血 AUC
2.7.2 臨床薬理の概要
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63 of
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2.7.2.4.3.6.5
薬物動態パラメータと血液検査値の回復に要する期間
血中 90Y の実効半減期または AUC と好中球数または血小板数の回復に要する期間(日数)との間
に相関は認められなかった(図 2.7.2-13)。血漿中 90Y についても同様の結果であった。
図 2.7.2-13
2.7.2.4.4
吸収放射線量と好中球数(左)及び血小板数(右)の回復に要する期間(日数)
考察
日本人における 90Y-イブリツモマブ チウキセタンの生体内分布及び吸収線量は欧米人のそれと
ほぼ同じであった。また、日本人で実施した線量評価は 10 例のみであるが、ヒトにおける放射線の
確定的影響では明確な人種差は報告されていないことから(ICRP60、1990 年勧告)、日本人におけ
る被曝の影響を考察するために米国臨床試験で得られたデータを利用することができると考えられ
る。
2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2.4.4.1
線量評価と血液毒性の相関
米国臨床試験において、赤色骨髄の吸収線量、全身の吸収線量又は放射能の薬物動態パラメータ
と血液毒性との相関は認められなかった。これにはいくつかの要因が考えられるが、その主な原因
としてこのようなパラメータを推測する際、骨髄予備能の患者間のばらつきをうまく反映できてい
ないことが考えられる。今回の対象母集団では、多くの場合、過去の化学療法、外部放射線照射療
法、リンパ腫の骨髄浸潤に起因する骨髄障害により骨髄予備能の低下がみられる。本療法の海外臨
床試験では、対象症例の 49%にリンパ腫細胞の骨髄浸潤が認められている。しかし、血液由来赤色
骨髄の線量評価は放射性医薬品の血中濃度に基づいており、骨髄内のリンパ腫細胞を標的とするこ
とによる造血細胞への二次的な放射線照射が考慮されていない。また、仙骨由来による赤色骨髄の
線量評価については、仙骨の関心領域と重複または隣接しているリンパ腫性アデノパシーとを区別
することが困難であるため、適切に算出することができていない可能性が考えられる。このように
骨髄または全身の吸収線量あるいは薬物動態パラメータから血液毒性を予測することはできず、
90
Y-イブリツモマブ チウキセタンの投与前に 111In-イブリツモマブ チウキセタンによる線量評価
あるいは薬物動態を実施する意義はないと考えられた。
2.7.2.4.4.2
線量評価と腫瘍量との相関解析
米国臨床試験において、腫瘍量と線量評価パラメータまたは薬物動態パラメータとの関係を検討
した。腫瘍容積を定量するのは困難であることから、腫瘍量の代用変数として以下の 4 つの指標を
用いた。
1. 二方向測定した個々のリンパ腫の長径と短径を乗じて総和したもの(二方向積和)
2. 最大腫瘍の最大径
3. 脾腫の有無
4. リンパ腫の骨髄浸潤
腫瘍量に関する 4 つの代用変数を用いた 54 パターンの相関解析のうち、21 パターンの解析にお
いて、腫瘍量に関する 4 つの代用変数と薬物動態パラメータまたは線量評価パラメータとの間にい
ずれも有意な相関が認められた。最も明確な相関性が示されたのは、二方向積和、脾腫及び骨髄浸
潤であり、腫瘍量の大きい症例ほど実効半減期及び AUC が有意に低かった。
Berinstein ら18)は、キメラ型抗 CD20 抗体リツキシマブの臨床試験においてリツキシマブの血清
中濃度と腫瘍量との間に統計的に有意な逆相関がみられることを指摘している。このことから、リ
ツキシマブと同じく CD20 抗原に親和性のある 90Y-イブリツモマブ チウキセタンについても、リツ
キシマブと同様にその実効半減期は腫瘍量に依存して短くなると考えられる。
2.7.2.4.4.3
放射線照射に関連する非血液毒性
米国臨床試験で肝機能検査値の軽度異常が数例に認められたが、その大半はリンパ腫、ウイルス
性肝炎、ジルベール症候群など他の原因によるものであった。また、このような症例における肝臓
の吸収放射線量は全対象症例と同程度であった。90Y-イブリツモマブ チウキセタンによる肺毒性
及び腎毒性は認められなかった。以上を含めて、血液毒性以外で放射線照射との関連が疑われる有
害事象は認められなかった。
2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2.4.5
111
In-イブリツモマブ
チウキセタンの生体内分布の読影判定の必要性
米国の線量評価の結果は本剤の投与プロセスを考える上で非常に重要である。被曝の制限を受け
る臓器における吸収線量と毒性が相関していない場合、線量評価の有用性は低くなる。本剤の日本
と米国の試験から得られた結果を考察すると、以下のことが示唆される:
1) 111In-イブリツモマブ チウキセタン投与後のシンチグラムが正常な生体内分布を示す場合、90Yイブリツモマブ チウキセタン投与時の正常臓器及び赤色骨髄の吸収線量は危険域に達しない。
2) 吸収線量が許容線量の範囲内である場合、赤色骨髄の吸収線量は用量制限因子である血液毒性と
相関せず、その予測にならない。
3) 90Y-イブリツモマブ
のではない。
チウキセタンの薬物動態は腫瘍量に依存するものの変動の程度は大きなも
したがって、被曝に対する安全性を考慮する場合、本療法のプロセスから線量評価を省略するこ
とに問題はないと考えられる。国内第 I 相試験で認められた異常な生体内分布の 1 例(症例番号
)の骨髄の吸収線量は許容線量よりわずかに超えたが、このような症例は 111In-イブリツモ
AA*
マブ チウキセタンによるシンチグラフィにて 90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与前に十分検
出できると考えられた。本症例の血液中 111In-放射能及び 90Y-放射能、血清中リツキシマブ濃度並び
に t1/2 はいずれも他の症例に比して低く、111In-イブリツモマブ チウキセタンによるシンチグラ
フィにて骨シンチグラムにおけるスーパースキャンに類似した著明な骨髄への取り込みが認められ
た。これらの生体内分布の所見と符合して、本症例は強い骨髄抑制による遷延する重症な血液毒性
を示すとともに重篤な副作用を発現した。
)に骨シンチグラムにおける
また、国内第Ⅱ相試験においては、2 例(症例番号 AB* 、CQ*
スーパースキャンに類似した著明な骨髄への取り込みが認められている。また、Conti P ら 19 は
2002 年 3 月から 2003 年 3 月までの間に米国で本療法を実施した 953 例の調査の結果、16 例
(1.7%)がシンチグラフィに結果により 90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与が中止され、これ
らの症例のうち確実に異常な生体内分布と判断される症例は 6 例(0.6%)、このうち 4 例
(0.4%)が骨髄への著明な取り込みによるものであったと報告している。 111In-イブリツモマブ
チウキセタンによるシンチグラフィによる生体内分布予測は、骨髄への著明な取り込みにより強い
骨髄抑制が予想される患者への 90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与を中止し、また、肺・腎
臓・腸管などの放射線感受性が比較的高い重要な臓器における潜在的なリスクを回避するため必要
である。
著明な骨髄への取り込みは、リンパ腫による骨髄への浸潤、直近の造血成長因子投与による骨髄
活性の増加、HAMA 及び HACA が出現している患者での網内系への取り込みの増加などにより起こる
可能性が考えられる。国内臨床試験において著明な骨髄への取り込みが見られた 3 例はいずれもリ
ンパ腫の骨髄浸潤が顕著であったためであると考えられた。一方、Conti P らは、骨髄への著明な
取り込みによる異常な生体内分布を示した症例として 4 例を報告しているが、これらの骨髄への取
り込みが原疾患に関連している可能性をあげながらも、1 例は骨髄浸潤が陰性(2 例は骨髄浸潤率
25%未満、1 例は不明)であり、明確な原因の特定にはいたっていない。なお、国内臨床試験にお
いて HAMA 陽性例が 2 例みられたが、いずれも異常な生体内分布はみられなかった。
著明な腎臓への取り込みは、Conti P ら19)が 1 例報告している他に、米国選択基準不適合例対象
試験(試験番号 106-98)にて 1 例が報告されている。この症例は両側性水腎症を有していたことが
原因として考えられたが、Conti P らが報告した 1 例については、腎機能障害もなく原因不明で
*:新薬承認情報提供時に置き換えた
2.7.2 臨床薬理の概要
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あった。また、Conti P らは、111In-イブリツモマブ チウキセタンの不適切な標識調製が原因であ
る著明な腎臓への取り込みが 6 例にみられたことを報告している。国内臨床試験では著明な腎臓へ
の取り込みがみられた症例はなかった。
著明なびまん性の肺への取り込みは、Conti P ら19)が肺炎を合併していた 1 例にみとめられたこ
とを報告している。国内臨床試験では類似の症例はみられなかった。
著明な腸管への取り込みに関しては国内外とも報告事例がない。隣接する腫瘍からの放射能によ
る臓器の障害は必ずしも発現しないが、放射線感受性の高い臓器に隣接した腫瘍に強い取り込みの
ある患者では、90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与に際して十分注意するべきである。
以上のように、「異常な生体内分布」を特異的にかつ確実に予測する予見因子はない。したがっ
て、111In-イブリツモマブ チウキセタンを用いたシンチグラフィによる生体内分布予測は、患者の
安全性を確保するために必要であると判断した。これを受けて、米国添付文書及び国内第Ⅱ相試験
結果を中央読影判定委員会において検討し、90Y-イブリツモマブ チウキセタン投与の適切性を確
認するためには、表 2.7.2-40に示す読影判定基準が適当であると判断した。また、本基準による読
影判定は 111In-イブリツモマブ チウキセタン 129.5MBq(3.5mCi)投与により得られたシンチグラ
ムにて適切に行えることから、111In-イブリツモマブ チウキセタンの用量は 129.5MBq(3.5mCi)
が適当と判断した。
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表 2.7.2-40
シンチグラムの読影判定基準
111
In-イブリツモマブ チウキセタン投与後の生体内分布は、111In-イブリツモマブ チウキセタン投与の 48~
72 時間後にガンマカメラにより撮像した全身像(前・後面プラナー像)を読影することにより評価する。評価が不確定の
場合は、一日以上の間隔をあけて追加撮像を行う。
推奨される撮像方法:
マトリックス
エネルギーピーク
ウインドウ
スキャンスピード
:256 x 1024
:172、247keV
:15%
:111In-イブリツモマブ
以降の撮像
チウキセタン投与 48~72 時間後:10cm/min
:7~10cm/min
生体内分布
通常、111In-イブリツモマブ チウキセタン投与 48~72 時間後における生体内分布の読影所見は以下のとおりであ
る。
①血液プール領域(心臓、腹部、頚部、および四肢)における放射能が認められる。
②肝臓と脾臓に取り込みが認められる。
③腎臓、膀胱及び腸管における取り込みは比較的弱い。
④腸管壁に限局的な取り込みがみられる場合がある(腸壁のリンパ集族への局在)。
⑤経時的に変化する腸管内への取り込みについて確認するために追加撮像が必要な場合がある。
⑥111In-イブリツモマブ チウキセタン のイメージングによる腫瘍の描出は、90Y-イブリツモマブ チウキセ
タン投与実施の必要要件ではない。
異常な生体内分布(Altered biodistribution)
読影の結果、以下のいずれかの所見が認められた場合は、異常な生体内分布とみなす。
異常な生体内分布が明らかになった場合、90Y-イブリツモマブ チウキセタンの投与は行うべきでない。
①顕著な骨髄へのびまん性の取り込みが認められる(長管骨及び肋骨の明瞭な描出を特徴とする骨シンチグラムにお
けるスーパースキャンに類似した画像)。
②網内系への取り込みを示す肝臓、脾臓及び骨髄への強い局在化。
③以下のような、腫瘍の浸潤がみられない正常臓器への取り込みの増強:
• 肝臓よりも強い正常肺へのびまん性の取り込み。
• 後面像で、肝臓よりも強い腎臓への取り込み。
• 肝臓よりも強い正常腸管への取り込み(経時的変化がみられないもの)。
2.7.2.5
付録
記載なし。
2.7.2 臨床薬理の概要
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