事業名 :漁場環境・生物多様性保全総合対策事業 Ⅰ. 赤潮・貧酸素水塊漁業被害防止対策事業 課題名 : 6.赤潮・貝毒防除基盤技術開発 3)新奇有害プランクトンの増殖に及ぼす各種栄養塩の解明 担当機関: (国)高知大学 農学部農学科 (山口晴生) 1.全体計画 1)目 的 赤潮発生は、多様な プランクトン 種のなかで、特定種が必須栄養塩を獲得し選択的に 増殖することに起因する。その発生機構解明のため、有害種の栄養塩(特にチッソ・ リン)の利用特性を把握し、増殖・優占にかかる栄養塩類の関与を解明する。 2)試験等の方法 培養実験により有害 プランクトン が利用可能なチッソ・リンを把握し、現場調査により 沿岸海水中の植物 プランクトン の消長に及ぼす栄養塩の役割を明らかにする。 2. 平成 20 年度事業計画及び成果の要約 1)目 的 富栄養化した沿岸海水中には無機態チッソ・リンよりも有機態のそれらが高濃度で 溶存しており、有害 プランクトン が直接利用していることが想定されている。当年度は培 養実験により有害種の有機態リン分解・摂取能を明らかにし、有機態リン分解に関わ る酵素 アルカリフォスファターゼ(AP)産生を確かめ、増殖に係る有機態リンの関与を検討する。 2)試験等の方法 (1) 試験には K. mikimotoi ax-2 無菌クローンを 4 種の培地で培養し、期間中に細胞 密度、溶存無機熊・有機熊リン濃度、AP 活性を経時的に測定し、関連を調べた。 (2) 7~12 月, 浦ノ内湾で採取した 2m 層海水に、蛍光基質 ELF-97 を添加して培養 した。染色された細胞を検出し、これを AP 活性発現細胞として割合を算出した。 3)成果の要約 (1) 培養試験の結果、有機リン添加培養区(2 区)と非添加区で、K. mikimotoi の AP 活性が検出された。それは培養 12 日経過後であり、水中の無機態リンが欠乏した時 からであった。K. mikimotoi は水中の無機リン欠乏に伴い、有機態リンをリン源と して増殖に利用していることが判った。 (2) 7 月 16 日浦ノ内湾の試水から、ELF で染色された K. mikimotoi 細胞を検出し、 わが国沿岸水より有害 プランクトン が AP 活性を発現していることを初めて明らかにし た。さらに同日採取した K. mikimotoi の全細胞が ELF で染色されていたが、その 後は 8 月 5 日まで本藻の標識細胞は検出されなかった。沿岸海水中の K. mikimotoi の AP 活性は大きく変動し、本藻の増殖に及ぼす度合いも変わるものと推察された。 3. 平成 21 年度の事業計画 前年度の成果を確認しつつ、当初課題を遂行するため継続して試験を継続実施する。
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