P2-036

⼩型衛星PolariS搭載
ガンマ線バースト広視野偏光計の開発
中森健之、坂野光成、⽚桐惇、加藤晃紀、岸川達哉、⽊村沙也⾹、郡司修⼀(⼭形⼤理)、
⽶徳⼤輔(⾦沢⼤理)、三原建弘(理研)、他 PolariSワーキンググループ
Abstract X線・ガンマ線による偏光観測は、放射機構や磁場の構造などを知るための強⼒なプローブであるにもかかわらず、技術的な困難さから未だ開拓が進んでいな
い ⾼エネルギー天⽂学のフロンティアである。我々は⼩型衛星PolariS搭載を⽬指して、ガンマ線バースト観測⽤のX線・ガンマ線偏光計を開発している。この偏光計は
コンプトン散乱の異⽅性を利⽤した広視野偏光検出器であり、散乱体であるプラスチックシンチレータアレイと吸収体であるGAGGシンチレータアレイによって50--400
keVのエネルギー帯域をカバーする。また信号の読み出しにはそれぞれマルチアノード光電⼦増倍管とアバランシェフォトダイオードを採⽤している。本講演では、我々
が現在進めているマルチアノード光電⼦増倍管に関する要素試験と、シミュレーションによる検出器サイズの最適化について報告する。
Introduction
検出器構成と開発のポイント
コンプトン散乱の異⽅性を利⽤した検出器である。
散乱
散乱硬X線の⽅向は偏光⽅向に対して垂直になりや
線 ⽅向 偏光⽅向 対
垂直
すい。プラスチックシンチレータ(散乱体)でコン
プトン散乱させ、周囲を取り囲む無機シンチレータ
(吸収体)によって散乱X線を吸収する。シンチ
レータをピクセル化することにより、散乱⽅向を知
ることができる。シンチレータの読み出しにはマル
チ ア ノ ー ド 光 電 ⼦ 増 倍 管 (MAPMT) と ア バ ラ ン
シェ・フォトダイオード(APD)を⽤いる。
ガンマ線バースト(GRB)は宇宙論的な遠⽅で起こる宇宙
最⼤の爆発現象であり、prompt emissionの発⽣機構につ
いては決定的な結論が得られていない。特に硬X線の偏光を
測定することによってモデルに対して⾮常に強い制限を与
えることができる。
GRB100826A
GRB偏光計
4隅に4台
RHESSI[1] とINTEGRAL[2] によるGRBからの硬X線偏光の検
出報告には議論があったが、ソーラーセイル実証機イカロス
に搭載されたGAP検出器が3σを超える有意度で偏光を検出
(左上図[3])した他、合計3例のGRBに対して偏光検出結果
を報告した。
GRBの偏光度から輻射モデルを特定するためには、100例程
度まで偏光検出数を増やし GRBの個性が⾒えなくなるよう
度まで偏光検出数を増やし、GRBの個性が⾒えなくなるよう
にして統計的に判断する必要がある。我々は⼩型衛星
PolariS[4] に搭載するGRB⽤硬X線偏光計を開発している。
GAPより⾼い感度を持つ検出器を4台、それぞれ別の⽅向を
向けることによって広い視
重量
電⼒
⾯積
野を確保する計画である(
GAP 3.8kg
5W
140cm2
左下図)。
新型 〜6kg
〜15W 300cm2
耐震改良型
MAPMTの評価
耐震化を施したウルトラバイアル
カリ光電⾯のMAPMTを採⽤予定
である(右図)。通常MAPMTに
は個体差があり、平均的なゲイン
やピクセル間のゲインの均⼀性は
保障されていない。今回ピクセル
間のゲインの最⼤最⼩⽐が2倍以
下という条件で10台のMAPMTを
購⼊した。
26.2mm
26.2mm
R11265‐200‐M16
すべてのチャンネルに対して、光電⾯からの熱雑⾳によ
る1 p.e.を測定し、各MAPMTの平均ゲインやピクセル
のゲインのばらつきを調べた。全160チャンネルのゲイ
ン分布を下左図、各PMT内でのゲインの最⼤最⼩⽐を下
右図に⽰す。要求値を⼗分に満⾜する1.4倍程度に収
まっていることがわかった。
全chのゲイン
各MAPMT内のゲインの最⼤最⼩⽐
Modulation Factor
100%偏光に対する
検出器レスポンス
MF 
Cmax  Cmin
Cmax  Cmin
MF
〜30%
検出効率
15%@100keV
〜45%
>25%@100keV
55Fe
耐震化性能を確認するため、⼭形県⼯業
技術センター置賜試験場において正弦波
のスイープ試験(x, y, z⽅向)、およびパ
イロ衝撃試験(左図)を⾏った。典型的
な打ち上げ振動プロファイルを元にした。
振動試験後のMAPMTの性能変化について
現在評価を進めている。
シンチレータの
形状最適化
放射化実験による
放射化実験
よる
吸収体の選定
吸収体の候補となる無機シンチレータは衛星軌道上での
放射化によるバックグラウンド(BG)が最も少ないもの
を選ぶ必要がある。我々はCsI(Tl)、GAGG、GSOを候補
として挙げ、放射線医学研究所HIMACで150 MeVプロト
ンビームを各シンチレータに10kradを⽬標に照射した。
ビームライン最下流に設置され
て
ている2次元位置有感型イオン
る 次元位置有感型イオン
チェンバのデータを元にビーム
の形状を再構成し(左図)、
Geant4 各結 晶の ドー ズ量 をよ
り正確に⾒積った。以下では
ドーズ量で規格化して結晶間の
⽐較を⾏った。
結晶のサイズ
鉛ブロック
結晶
プリアンプ
⾼さ
厚み
PMT
MCA
上図のセットアップで241Amのスペクトルを取得するこ
とにより、発光量の評価とエネルギーキャリブレーショ
ンを⾏った。ビーム照射前と⽐較して有意な光量の低下
はいづれの結晶でも認められなかった。偏光計を組み上
げた際に問題となる、30̶400 keVのエネルギーデポ
ジットを起こすカウントレートを内在BGとして計上した。
衛星搭載上の重量の制限の
下で、検出効率を最⼤にす
るシンチレータの⾼さ及び
吸収体の厚みをGeant4を
⽤いて調べた。ここでは検
出器1ユニットを⽤いて評
価した。4ユニットで1台
の偏光計となる。
の偏光計となる
14.5×14.5 mm2のプラスチックシン
チレータを6×6に並べ、MAPMTとの
接合部にテーパ加⼯を加えた。同じ幅
を持つGAGGを6つずつ周囲に並べた。
単⾊の硬X線を全⾯に対して垂直に⼊
射し、以下の条件を満たすイベントの
割合を求め、検出効率とした。
裏
評価測定セットアップ
整形アンプ
次に、10台の中で最もゲインが⼩さいチャンネルの性
能を調べた。 5.5x5.5x40 mm3のプラスチックシンチ
レータに5.9 keVのX線を照射して得られたスペクトル
を、ガウシアン+ポアソン分布でフィットし、信号の検
出効率をエネルギー閾値の関数として求めた(下図)。
その結果、50%の検出効率を要求すると1.5 keV程度
まで閾値を下げられることがわかった。またこのときの
1p.e.ノイズレートは室温で143 Hzであった。
検出器への要請は、GRBからの偏光X線を3-4年の
ミッション期間中に100例程度捉えることである。
X線のエネルギーが低いほど⼊射粒⼦数は多いが
X線のエネルギーが低いほど⼊射粒⼦数は多いが、
散乱体でのエネルギーデポジットが⼩さい。した
がって、散乱体のエネルギー閾値低下は感度向上に
直結する。また、衛星軌道上では吸収体シンチレー
タの放射化によるバックグラウンドが問題であり、
GAPの場合ではGRBの信号を卓越するほど⾼いレー
トであった。放射化バックグラウンドの影響が⼩さ
い素材を選ぶ必要がある。
イベント選択条件(1)2本以下のプラスチックシンチ
レータでエネルギーデポジットが発⽣する。ここでは実
験で求めた検出効率も考慮した。(2)ただ1本だけ
GAGGシンチレータで30keV以上のエネルギーデポジッ
トが発⽣する。(3)⼊射エネルギーを全吸収する。
検出効率のエネルギー依存性を下図に⽰す。吸収体の厚
みよりもシンチレータの⻑さを伸ばすことが効果的であ
る。このことから、X線が散乱する確率を上げることが
検 出 効 率 に 対 し て⽀ 配 的 で あ る と 考え ら れ る 。 ま た
GAP[5]よりも⾼い検出効率でより広いエネルギー領域を
カバーできることも分かった。今後は実験で評価した
GAGGのエネルギー閾値を反映させ、最適解を決定し、
デザインを確定する予定である
デザインを確定する予定である。
⻑さ
上左図はGAGGのBGスペクトルの時間変化である。時
間経過と共に放射化で発⽣したピークと連続成分の減少
が明らかにわかる。上右図にBGレートの時間変化を⽰
す。1⽇より⻑いタイムスケールではGAGGが最もBG
レートが低いことが分かった。
得られたデータから、
1krad/yr と し て 軌 道 上
でのBGレートを計算し
た(左図)。ミッション
を通じてBGが最も低い
GAGGを吸収体として採
⽤することに決めた。
2014年宇宙科学シンポジウム@宇宙科学研究所
厚み
70mm ● 5mm
65mm ■ 6mm
60mm ▲ 7mm
▼ 8mm
GAP
References
[1]Coburn, W. & Boggs, S. E. (2003), Nature, 423, 415
[2]Goetz, D. et al. (2009), ApJL, 695, L208
[3]Yonetoku, D. et al. (2011), ApJL, 743, L30
[4]Hayashida, K. et al. (2012), SPIE, 8443, 9
[5]Yonetoku, D. et al. (2011), PASJ, 63, 625
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