廃車シュレッダー処理で発生するMg、Al展伸材、 Al鋳造材スクラップの

アリーナ(ARENNA)ソータによる廃携帯電話製品の選別
ARENNA:Appearance Recognition with Neural Network Analysis
(独)産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門 ○古屋仲茂樹・小林賢一郎・大木達也
研究目的
廃電気・電子機器等に含まれるレアメタルを再資源化するには、中間処
理(解体・破砕・物理選別)段階でレアメタルを含む電子部品等を分離して、
従来の非鉄製錬とは異なる化学的精製プロセスで処理する必要がある。
電子基板に実装されている部品を表面破砕等により基板から取り外して、
大きさや比重の違いを利用してTaコンデンサを分離・濃縮するとTaの精
製・再資源化が可能となる1)。携帯電話1台あたりのTaコンデンサの使用
数は機種・製造年によって大きく異なることから 2) 、回収した廃製品から
Taコンデンサを多く含有する機種だけを選別して、Taコンデンサの回収
に特化した中間処理工程へ供給することが合理的である。
本研究では1999~2009年にかけて発売された携帯電話を対象にして、
電子基板上のTaコンデンサの使用数を調査するとともに、筆者が開発し
たレーザー3D計測+重量検知によるスクラップ選別法(アリーナ)3、4)によ
るTaコンデンサ含有量の違いに応じた製品選別を検討した。
図1 試料とした廃携帯電話の一部
コンベヤ上を移動する物体の重量とレー
ザー3D計測器を使った測定によって得
られる14種類の形状パラメータを用いた
独自の演算処理によって、物体の種別
を自動識別して選別するシステム
特長
安価、高速、塗装・汚れの影響なし
試料及び実験方法
廃携帯電話の回収業者から入手した携帯電話機(電池を取り外したも
の)191機種を試料とした。図1にその一部の写真を示す。各機種の発売
年に基づいて手作業で分別し、各発売年から抽出した49機種を解体し
て部品構成を調査した。さらに、2004年以前に発売された機種(「携帯
A」と表記)から59機種、2005年以降に発売された機種(「携帯B」と表
記)から68機種を抽出して、図2の写真のアリーナソータを使って本選別
法に必要なデータベース(基本DB)とニューラルネットワークを用いた識
別アルゴリズムを作成した。その後、基本DBに未登録の携帯電話64機
種を含む全191機種を対象にして「携帯A」と「携帯B」のソーティング試
験を実施した。
図2 アリーナソータ試作2号機
表1 携帯電話に使用されているTaコンデンサ個数
調査した機種数
(製造メーカ数)
[台]
最大
最小
平均
1999
3 (2)
26
17
22.0
2000
3 (3)
21
6
13.3
2001
5 (4)
15
13
14.0
2002
4 (4)
21
11
15.0
2003
7 (7)
25
8
15.9
2004
8 (3)
19
4
12.1
2005
9 (6)
6
3
3.6
2006
5 (4)
4
2
2.8
2007
5 (3)
7
2
2.6
発売年
実験結果及び考察
100
参考文献
1)大木達也、小林幹男、特開2010-214352号公報
2)湯本徹也、白鳥寿一、Journal of MMIJ, 125, pp.75-80 (2009)
3)S. Koyanaka and K. Kobayashi., Res., Conservation & Recycling, 55, pp.515-523 (2011)
4)古屋仲茂樹、小林賢一郎、特許5263776号、特許5311376号
X6:最大高
80
積算頻度[%]
積算頻度 [%]
X1:重量/体積
80
60
40
60
40
携帯A
20
携帯A
20
携帯B
携帯B
0
0
0.5
0.7
0.9 1.1 1.3
X1 [g/cm3]
1.5
1
1.7
1.5
2
2.5
3
X6 [cm]
3.5
4
100
100
X10:面積/(縦長・横長)
X3:面積
積算頻度 [%]
80
60
40
携帯A
20
80
60
40
携帯A
20
携帯B
携帯B
0
0
30
40
50
0.4
60
0.6
0.8
1
X10 [-]
X3 [cm2]
図3 3D形状パラメータの積算頻度分布の例
結論
レーザ3D計測器と重量計を併用したスクラップ選別法(アリーナ)に
よって、Taコンデンサを多く含む携帯電話を90%以上の精度で自動選
別できる。選別した製品をそれぞれ別系統の中間処理工程に供給する
ことで、Taコンデンサの回収が効率化される。今後さらに大量処理や他
製品への適用性について検討を進める。
1台当たりのTaコンデンサ数 [個]
100
積算頻度 [%]
表1に、解体した49機種の電子基板に搭載されていたTaコンデンサの
個数を発売年別に示す。「携帯B」については、1台あたり平均で3.6個
以下しかなく、「携帯A」と比較して1/3以下に急減していることがわかる。
図3は、廃携帯電話191機種について、アリーナソータ上での姿勢を
変えながら各8回測定して得られた、見掛け密度(X1)、面積(X 3)、最大
高(X 6)、面積/(縦長・横長)(X 10)の積算頻度分布(個数基準)を示し
ている。「携帯B」は「携帯A」と比較して、見掛け密度と面積は大きく、高
さ(厚さ)は薄くなる傾向があることが分る。面積/(縦長・横長)のグラフ
で分布に顕著な違いが見られるのは、「携帯A」にストレート状の機種が
多く存在したことによる。
表2に、廃携帯電話191機種について姿勢を変えながら各4回アリー
ナソータへ供給した際に、「携帯A」、「携帯B」として正しく選別された割
合(成功率)を示す。基本DBを使った初回の試験ではトータルで86.8%
(663/764)の成功率を示した。正しく選別できなかった個体のデータを
基本DBに追加してニューラルネットワークを再設定した後に行った2回
目の試験(DB修正1回)では88.2%の成功率を示した。この作業を繰り
返して3回目の試験(DB修正2回)を実施したところ成功率は89.5%、4
回目(DB修正3回)の試験で成功率は92.0%に上昇した。携帯電話1台
当たりの処理時間は1秒程度であり、手選別と比較すると格段に効率
的な選別が可能である。
携帯B(2005年以降に発売)
携帯A(2004年以前に発売)
表2 ソーティング試験結果
【個数基準 選別成功率(%)】
基本DB
携帯A
(59機種)
基本DB未登録
携帯A(31機種)
携帯B
(68機種)
基本DB未登録
携帯B(33機種)
84.3
85.5
92.6
80.3
DB修正1回
91.5
86.3
91.9
76.5
DB修正2回
89.4
87.9
92.6
84.8
DB修正3回
91.5
92.7
93.0
90.2
計
(191機種)
86.8
(663/764)
88.2
(674/764)
89.5
(684/764)
92.0
(703/764)
連絡先 e-mail: [email protected]