数学科の竹本です.今回は 2 次試験レベルとのことですが,(1) はいったん xy 平面上で考えると以 前にあつかった円を表す複素数を用いれば大丈夫です.問題は (2) ですが, “すべての an”というフレー ズを見て数学的帰納法を思いつけば合格点でしょう.あとは絶対値の計算になります.まずは問題の 確認から. 数学第 5 問(III) 複素数 an (n = 1,2,……) を次のように定める. an 2 an - 3 ただし,i は虚数単位である.このとき以下の問いに答えよ. a1 = 1 + i, an + 1 = (1) 複素数平面上の 3 点 0,a1,a2 を通る円の方程式を求めよ. (2) すべての an は (1) で求めた円上にあることを示せ. (1) の解答 漸化式より a2 = 1+i 1+i (1 + i)(- 1 - 2i) 1 3 a1 = = = = - i 1 - 4i2 5 5 2a1 - 3 2(1 + i) - 3 - 1 + 2i となるので,xy 平面上で 3 点 O(0,0),A(1,1), B ª 51 , - 53 º を通る円の方程式を考える. 求める円の方程式を x2 + y2 + ax + by + c = 0 とおくと O,A,B を通る条件は ⎧c=0 ⎪⎪ 1 3 2 ⎨ a - b +c = - - a = -2 , b = 0 , c = 0 5 5 ⎪5 ⎪⎩ a + b + c = - 2 であるから,求める円の方程式は x2 + y2 - 2x = 0 - (x - 1)2 + y2 = 1 である.これを複素数平面上で考えると,円上の任意の点 P(z) は点 C(1) からの距離が 1 である点の軌 跡であるから CP = 1 - z - 1 = 1 である. まあ,この辺は無難にこなしましょう♪ (2) の解答 (2) が問題です. “すべての an”が (1) で求めた円に乗っかっていることを証明しなくてはなりません. もちろん,数学的帰納法を用いればよいのですが,しっかりと理解していないと途中で詰むと思います. すべての an が 上にあることを帰納法で示す. (i) n = 1 のとき a1 - 1 = (1 + i) - 1 = i = 1 であるから a1 は z - 1 = 1 上にあるので成り立つ. (ii) n = k のとき ak が z - 1 = 1 上にある,つまり ak - 1 = 1 であると仮定すると,n = k + 1 のとき ak+1 が z - 1 = 1 上にある,つまり ak + 1 - 1 = 1 が成り立つことを示せばよい. 漸化式より ak + 1 = ak - 2ak ak + 1 - 3ak + 1 = ak 2ak - 3 - ak (2ak + 1 -1) = 3ak + 1 - ak = ª a -1 3ak + 1 2ak + 1 k+ 1 π 1 2 º となるので ak - 1 = 1 に代入して 3ak + 1 ak + 1 + 1 -1 = 1 =1 2ak + 1 - 1 2ak + 1 - 1 ak + 1 + 1 - 2ak + 1 - 1 =1 - ak + 1 + 1 = 2ak + 1 - 1 両辺を 2 乗して 2 ak + 1 + 1 = 2ak + 1 - 1 2 - (ak + 1 + 1)(ak + 1 + 1) = (2ak + 1 - 1)((2ak + 1 - 1) - (ak + 1 + 1)(ak + 1 + 1) = (2ak + 1 - 1)(2ak + 1 - 1) - ak + 1 ak + 1 - ak + 1 - ak + 1 = 0 - (ak + 1 - 1)(ak + 1 - 1) = 1 - (ak + 1 - 1)(ak + 1 - 1) = 1 2 - ak + 1 - 1 = 1 となる.よって ak + 1 - 1 = 1 となるので n = k + 1 のときも成り立つ. 以上より示せた. (2) の解説 ak を代入し 2ak - 3 なかったのがミソです.これを ak + 1 - 1 に代入しても仮定を用いて 1 になることを示せません . だから さて,うまく絶対値を計算しましたよね? n = k + 1 のところを示すのに ak + 1 = ak を ak+1 を用いて表し,逆に仮定の式に代入したわけです.発想の転換ですね.そこで用いたものが 2 z = zz です.特に軌跡の問題ではよく用います.絶対値をみつけたら 2 乗して中身と中身の共役複素数の積 にすることはぜひ覚えておいてください. (2) の別解 さて,数学的帰納法を用いて証明しましたが,数列の得意な人ならば一般項が出せそうだと思いま せんでしたか?一般的に an + 1 = ran pan + q の形の漸化式は すべての n に対して an ≠ 0 であるならば,両辺の逆数をとり, bn = 1 とおくことに an よって,有名漸化式に帰着させることができます.(わかる人はそのままでやってください) また,an ≠ 0 を示すには 数学的帰納法 or 背理法(無限降下法) を用いればよいでしょう.入試前ということで,帰納法による証明ではなく無限降下法を用いて証明 したいと思います.まず,背理法の一種ですので「すべての n で an ≠ 0」の否定を考えましょう. もちろん「ある n で a n = 0」ですよね?たまに採点をしていると下線部を間違えている人がいますの で気をつけて下さい.無限降下法を用いるときは漸化式を用いて番号を下げることを考えます.つまり, 「ある n で an = 0」となるときにその前の番号は・・・を繰り返すのですが,もちろん最後は初項にな ります.たいていの問題は初項に反しますので覚えておくといいと思います.以下解答です. ある n で an = 0 であると仮定すると,漸化式より an = an - 1 - an - 1 = 0 (n ≥ 2) 2 an - 1 - 3 となるので,これを繰り返し用いると an = an-1 = ………… = a1 = 0 となるが,a1 = 1 + i ≠ 0 より矛盾.ゆえにすべての n で an ≠ 0 である.よって元の漸化式の両辺の 逆数をとると 1 an + 1 = 2 an - 3 an = -3∑ 1 +2 an となるので,漸化式を変形して ª 1 1 1 1 - = -3 an + 1 2 an 2 º ª 1 1 1 1 - = - (- 3) n - 1 1+i 2 an 2 - 1 1 (- 3) n - 1 i = an 2 2 - an = となる. º - 2 1 - (- 3) n - 1 i ゆえに an - 1 = = 2 -1 1 - (- 3) n - 1 i 1 + (- 3) n - 1 i 1 - (- 3) n - 1 i = 1 + 9n- 1 1 + 9n- 1 =1 であるから an は円 z - 1 = 1 上にあることが示せた. ∼おわりに∼ さて,今回は絶対値の 2 乗の計算,数学的帰納法,無限降下法,漸化式など色々紹介しましたが, 今回の解法としてベストなものはどれか・・・というと全部大事だと思います.数学だけに限らず, 1 つの物事に対して多角的な視点をもつことはとても重要なことだと思います.高 3 のみなさんは受験 も大詰めのことと思われますが,もし入試会場で行き詰まったときは一度別の手を考える余裕をもっ てください.そして,多くの問題は今までみなさんが目にしたり,今までの授業で教わったことであ ると思います.今までの成果が実を結び,見事合格できることを心より願っております. (数学科 竹本)
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