分散分析(1):完全無作為化デザイン,多重比較

分散分析 (1):完全無作為化デザイン,多重比較
1
実験計画法
統計的データ解析でとり扱われる研究には,実験研究と観察研究に大別される.実験研究と
は仮説を検証することを意図した研究であり,生物学での実験や医学での臨床試験がこれに該
当する.一方で,観察研究とは仮説を探索することを意図した研究であり,アンケート調査や
疫学調査などがこれに該当する.ここでとり扱う実験計画法とは,実験研究に主眼がおかれた
方法であり,実験の形式と統計的方法が密接に関係している.
実験研究を行うにあたり,R.A.Fisher は 3 原則 (Fisher の 3 原則),すなわち
1. 局所管理 (影響を調べる要因以外のすべての要因を可能な限り一定にする)
2. 反復 (実験ごとの偶然のバラツキ(誤差)の影響を除くために同条件で反復する)
3. 無作為化 (以上でも制御できない可能性のある要因の影響を除き,偏り (bias) を小さくす
るために割付を無作為化する)
を挙げている.これらは,統計学の方法というよりも,むしろ,実験自体に対する留意点であ
る.これらに留意しなければ,得られた観測値を成功に統計処理しても意味を持たないことを
Fisher は警告している.
実験研究では観測値 x には誤差が含まれてとられるものと考える.すなわち
(実際 (本当) の値) + (誤差) = (観測値)
である.誤差には「偶然誤差」,
「測定誤差」,
「日間誤差」,
「日内誤差」,
「気温差」など無数に存在
する.そのなかから,実験で行った処理の効果を抽出し,その影響が統計学的に意味があるも
のかを検証するのが実験研究の目標である.つまり,実験で行った処理方法 Aj (j = 1, 2, . . . , J)
に対して,上式は
(真値) + (Aj による効果) + (誤差) = (観測値)
となる.ここに,真値とは処理とは関係なく個体がもっている値を指す.このとき,実験で行
う処理を因子とよび,因子のカテゴリ (個々の処理)Aj を要因水準あるいは水準という.また,
その影響を要因効果あるいは効果と呼ぶ.また,要因効果を適切に捉えるには,誤差を可能な
限り小さくするように実験のデザインを考えなければならない.これが実験計画法である.ま
た,実験計画法に基づいて得られたデータを統計的に分析する方法が分散分析である.
2
実験計画の形式
いま,ある実験において因子 A の効果を検証するために,3 水準 A1 , A2 , A3 に分けて,それ
ぞれの処理を 3 回づつ行う実験を考える.1 日には,午前,午後,夕方の 3 回の処理しか行えな
いとする.したがって,実験には 3 日間を要する.このとき,各水準に処理を割り当てる形式
によって,3 種類の実験計画の方法 (完全無作為化法,完備乱塊法,ラテン方格法) が存在する.
2.1
完全無作為化法
完全無作為化法とは,その名前のとおり,9 回 (3 回/日 × 3 日間) の処理をランダムに決定す
る方法である.因みに,無作為に処理を割り当てることは Fisher の 3 原則の無作為化に繋がる.
例えば,
1 日目
2 日目
3 日目
午前 午後 夕方 午前 午後 夕方 午前 午後 夕方
A2
A3
A2
A1
A1
A3
A1
A2
A3
のような実験配置になる.
2.2
完備乱塊法
完全無作為化法では,処理以外の外的要因を考慮しない.しかしながら,例えば,作業の慣
れ,気温・湿度など日間の影響を考慮しなければならない場合には,1 日に同じ水準の処理を行
う完全無作為化法では日間の影響によって結果に偏りを生じさせるかもしれない.そうなると,
Fisher の 3 原則のなかの局所管理を満たさない惧れがある.この影響を排除するには,1 日の
なかで 3 水準の処理のそれぞれを行えばよい.この同じような実験環境をブロックといい,こ
のような実験計画の方法を完備乱塊法という.例えば,
1 日目
2 日目
3 日目
午前 午後 夕方 午前 午後 夕方 午前 午後 夕方
A2
A3
A1
A1
A3
A2
A1
A2
A3
のような実験配置になる.
2.3
ラテン方格法
完備乱塊法では,日間による影響を排除できるものの,日内による影響は考慮されていない.
先ほどの例では,水準 A1 が午前 (1 日目,3 日目),水準 A3 が午後に 2 回 (1 日目,2 日目) 行わ
れているが,実験の繰り返しによる疲れなどの影響が出ないとは限らない.この日内による影
響までを考慮し,すべてを満遍なく割り当てることで偏りをなくすデザインをラテン方格法と
いう.ラテン方格法では,
「日間」のブロックと「日内」のブロックの二つ (以上) を考慮した実
験計画である.例えば,
1 日目
2 日目
3 日目
午前 午後 夕方 午前 午後 夕方 午前 午後 夕方
A1
A2
A3
A2
A3
A1
A3
A1
A2
である.
3
3.1
完全無作為化法のデータ解析:一元配置の分散分析
完全無作為化法での観測値の形式
完全無作為化法では,処理に対する水準 A1 , A2 , . . . , AJ に対する評価が行われる.このとき,
水準 Aj の処理を行った i 番目の個体から得られる観測値は次のように取られていると考える:
xij = µ + αj +eij = µj + eij
| {z }
(1)
µj
ここに,µ は個体および処理に関係なく得られる潜在的な値,αj は水準 Aj によって得られる
効果,eij は説明できない誤差を表している.このように得られると (考えられている) 観測値は
次のようなデータ形式をとる:
反復
因子の水準
···
Aj
· · · X1j
· · · X2j
..
.
···
···
···
AJ
X1J
X2J
..
.
···
XiJ
..
.
1
2
..
.
A1
X11
X21
..
.
A2
X12
X22
..
.
i
..
.
Xi1
..
.
Xi2
..
.
nJ
合計
総計
Xn1 1
T1
Xn2 2 · · · Xnj j · · · XnJ J
T2
···
Tj
···
TJ
T = T1 + T2 + · · · + TJ
···
Xij
..
.
ここで nj は水準 Aj での反復回数を表している.すなわち,標本サイズは N =
3.2
∑J
j=1
nj である.
仮説の設定と分散分析表の作成
一元配置の分散分析表では,式 (1) で提示された水準 Aj によって得られる効果 αj が違うこ
とを統計学的に明らかにすることが目標である.したがって,仮説は
帰無仮説 H0 : α1 = α2 = · · · = αJ ⇔ µ1 = µ2 = · · · = µJ
対立仮説 H1 : H0 でない.
である.上記の仮説を検証するには,これまでと同様に仮説検定を用いるが,分散分析では分
散分析表を利用しながら検定統計量が計算される.分散分析表は
要因
A(因子)
E(誤差)
全体
平方和
SSA
SSE
SS
自由度
νA = J − 1
νE = N − J
ν =N −1
平均平方和
VA = SSA /νA
VE = SSE /νE
F値
F0 = VA /VE
で与えられる.分散分析表を作成するには平方和 SSA , SSE , SS を計算しなければならない.SS
は総平方和と呼ばれ,観測値の総平均値からのバラツキを表している.SSA は群間 (水準間) 平
方和と呼ばれ,各水準の平均値の総平均からのバラツキを表している.さらに,SE は郡内平方
和 (誤差平方和) と呼ばれ,観測値の説明できない誤差のバラツキを表している.それぞれの平
方和は
( J nj
)
nj
J ∑
∑
∑∑
2
2
SS =
(xij − x¯) =
xij − N x¯2
j=1 i=1
SSA =
J
∑
(
nj · (¯
xj − x¯)2 =
j=1
SSE =
j=1 i=1
J
∑
nj x¯2j
)
− N x¯2
j=1
(
nj
J ∑
∑
(xij − x¯j )2 =
j=1 i=1
nj
J ∑
∑
)
x2ij
(
−
j=1 i=1
J
∑
)
nj x¯2j
j=1
で計算できる.また,上式からわかるように,SS = SSA + SSE が成り立つ.これを変動分解
という.ここに
nj
nj
J
1 ∑∑
T
1 ∑
Tj
¯
x=
xij = , x¯j =
xij =
N j=1 i=1
N
nj i=1
nj
である.このとき,F 値 F0 は帰無仮説 H0 のもとで自由度 (νA , νE ) の F 分布に従う.
4
4.1
水準 Aj の母平均 µj に対する推測
水準 Aj での母平均 µj の区間推定
水準 Aj での母平均 µj の 100(1 − α)%信頼区間は,t 検定と同様の流れで構成される.これは,
一元配置の分散分析は,t 検定の多標本への拡張と捕らえることができるためである.
いま,水準 Aj の母平均 µj の点推定値を
nj
Tj
1 ∑
xij =
x¯j =
nj i=1
nj
とするとき,100(1 − α)%信頼区間は
[
√
x¯j − tνE (α/2) VE /nj ,
]
√
x¯j + tνE (α/2) VE /nj
である.ここに,tνE (α/2) は自由度 νE の t 分布における上側 α/2 パーセント点である.
4.2
水準 Aj と Al での母平均の差 µj − µl の区間推定
水準 Aj と Al での母平均の差 µj − µl の点推定値を x
¯j − x¯l とするとき,100(1 − α)%信頼区
間は,
[
]
√
√
(¯
xj − x¯l ) − tνE (α/2) VE · (1/nj + 1/nl ), (¯
xj − x¯l ) + tνE (α/2) VE · (1/nj + 1/nl )
である.ここに,tνE (α/2) は自由度 νE の t 分布における上側 α/2 パーセント点である
4.3
水準 Aj での母平均 µj における対比較
一元配置の分散分析において,有意な結果が得られた (対立仮説が支持された) 場合,どの群
間で違いがあるかに興味が沸く.例えば,3 水準での一元配置の分散分析で有意な結果だった
としても
1:µ1 =
̸ µ2 , µ1 ̸= µ3 , µ2 ̸= µ3
4:µ1 = µ2 , µ1 =
̸ µ3 , µ2 =
̸ µ3
7:µ1 ̸= µ2 , µ1 = µ3 , µ2 = µ3
2:µ1 =
̸ µ2 , µ1 ̸= µ3 , µ2 = µ3
5:µ1 = µ2 , µ1 = µ3 , µ2 =
̸ µ3
3:µ1 =
̸ µ2 , µ1 = µ3 , µ2 ̸= µ3
6:µ1 = µ2 , µ1 =
̸ µ3 , µ2 = µ3
の 7 パターンの状況が考えられるためである.しかしながら,t 検定を用いて良い訳ではない.
それは,仮説検定では,検定を行うすべての帰無仮説で有意水準 α を満たさなければならない
ためである.例えば,3 水準の対比較では A1 vs A2 , A1 vs A3 , A2 vs A3 の 3 回の検定を行うこ
とになるが,これらすべてで有意水準 α を満たさなければならない.一方で,すべての帰無仮
説が正しい確率は,独立事象における積事象の確率から (1 − α)3 であり,最低 1 個の対比較で
有意になる確率はすべての帰無仮説が正しい確率の余事象の確率になるので 1 − (1 − α)3 とな
る.例えば,α = 0.05 とすれば,(1 − (1 − α)2 ) とすれば,いずれかが有意になる確率は 0.142
になる.つまり,1 回の検定での有意水準 α が上昇する.わかりやすく例えると,α = 0.05 と
は帰無仮説が正しいとしても 20 回に 1 回は「有意である」と誤った判断をするので,たくさん
の対比較を t 検定で行えば,それだけ誤った判断をする可能性が増大するのである.これを補
正する方法が多重比較である.
ここでは,反復数が同じ (nj = nl = n) とする.そして,一元配置の分散分析において有意
だったとき,水準 Aj ,Al での母平均 µj ,µl に対する対比較の仮説は
H0 : µj = µl
H1 : µj ̸= µl
であり (一般に両側対立仮説のみを用いる),このときの検定統計量は
|¯
xj − x¯l |
t0,jl = √
2VE /n
で与えられる.ここに x
¯j = Tj /n, x¯l = Tl /n である.検定統計量 t0,jl は帰無仮説 H0 のもとで,
自由度 νE の t 分布に従う.
練習問題
問 1: ある化学薬品が収率に及ぼす影響を調べるために,化学薬品の量を 10g,12g,14g,16g の 4
水準とし,各水準で 4 回の実験を行った.その結果を下の表に示す.以下の問いに答えな
さい.
10g 12g
6
8
5
7
5
6
5
7
14g 16g
6
5
6
4
7
5
7
5
1-1: 一元配置の分散分析を用いて化学薬品の量によって収率に違いが認められるかを検討し
なさい.なお,有意水準 α = 0.05 とする.
1-2: 各水準 Aj (j = 1, 2, 3, 4) における母平均 µj の点推定値および 95%信頼区間を計算しな
さい.
1-3: 対比較を検定し,その結果を考察しなさい.なお,有意水準 α = 0.05 とする.
問 2: 食餌の摂取量と発育の程度の関係を調べるために,4 種類の食餌を 24 匹のネズミに無作
為に割り付けたところ,12 週間後の成長を示すパラメータが下表のように得られた.水
準 A2 については,2 匹, A4 にあたっては 1 匹のデータは得られていない.以下の問いに
答えなさい.
A1
205
206
164
190
194
203
A2
201
221
197
185
A3
248
265
197
220
212
281
A4
202
276
237
254
230
2-1: 一元配置の分散分析を用いて食餌によって成長に違いが認められるかを検討しなさい.な
お,有意水準 α = 0.05 とする.
2-2: 各水準 Aj (j = 1, 2, 3, 4) における母平均 µj の点推定値および 95%信頼区間を計算しな
さい.
2-3: 各水準 Aj (j = 1, 2, 3, 4) のすべての組み合わせにおける母平均の差 µj − µl の点推定値お
よび 95%信頼区間を計算しなさい.
回答
1-1:先ず,仮説を設定する:
帰無仮説 H0 : 化学薬品の量によって収率に違いがない.
対立仮説 H1 : 化学薬品の量によって収率に違いがある.
分散分析表を作成するために,幾つかの事前計算を行う.いま,10g, 12g, 14g, 16g の水準をそ
¯ および,各水準の平均値 x¯j (j = 1, 2, 3, 4) は
れぞれ A1 , A2 , A3 , A4 とする.そして,総平均値 x
x¯ = 5.875,
x¯1 = 5.250,
x¯2 = 7.000,
x¯3 = 6.500,
x¯4 = 4.750
である.また,それぞれの 2 乗値は
x¯2 = 34.516,
x¯21 = 27.563,
x¯22 = 49.000,
x¯23 = 42.250,
x¯24 = 22.563
である.さらに,観測値の 2 乗値は
10g 12g
36 64
25 49
25 36
25 49
であり,その合計値は
nj
J ∑
∑
14g 16g
36 25
36 16
49 25
49 25
x2ij = 570
j=1 i=1
となる.さらに,
J
∑
nj x¯2j = 4 · 27.563 + 4 · 49.000 + 4 · 42.250 + 4 · 22.563 = 565.504
j=1
である.これらを用いて平方和を計算すると
( J nj
)
∑∑
2
SS =
xij − N x¯2 = 570 − 16 · 34.516 = 17.744
(
SSA =
(
SSE =
j=1 i=1
J
∑
)
nj x¯2j
j=1
nj
J ∑
∑
− N x¯2 = 565.504 − 16 · 34.516 = 13.288
)
x2ij
−
j=1 i=1
( J
∑
)
nj x¯2j
= 570 − 565.504 = 4.496
j=1
である.したがって,分散分析表は
要因
A(因子)
E(誤差)
全体
平方和
13.288
4.496
17.744
自由度
3
12
15
平均平方和
4.429
0.375
F値
11.811
である.F 値 F0 は帰無仮説のもとで,自由度 (3,12) の F 分布に従う.F 分布表より F3,12 (0.05) =
3.490 であり,F0 > F3,12 (0.05) であることから,帰無仮説が棄却され対立仮説が支持される (有
意である).したがって,化学薬品の量によって収率に違いがあることが認められた.
1-2:分散分析表より VE = 0.375 であり,反復数はすべて等しく n = n1 = n2 = n3 = n4 = 4 で
ある.そのため,信頼幅はすべての水準で同一である.また,自由度 νE = 12 の t 分布の上側
0.05/2 パーセント点は t12 (0.05/2) = 2.179 なので信頼幅は
√
√
tνE (α/2) VE /n = 2.179 · 0.375/4 = 0.667
となる.各水準の母平均値 µj (j = 1, 2, 3, 4) の点推定値 x
¯j が
x¯1 = 5.250,
x¯2 = 7.000,
x¯3 = 6.500,
x¯4 = 4.750
なので,95%信頼区間は「点推定値 ± 信頼幅」なので
水 準 A1
A2
A3
A4
下側信頼限界値
4.583
6.333
5.833
4.083
上側信頼限界値
5.917
7.667
7.167
5.417
である.
1-3:先ず,仮説は
H0 : 水準 Aj の母平均µj と水準 Al の母平均µl は等しい.
H1 : 水準 Aj の母平均µj と水準 Al の母平均µl は等しくない.
分散分析表より VE = 0.375 であり,反復数はすべて等しく n = n1 = n2 = n3 = n4 = 4 である.
したがって,すべての対での検定統計量は,それぞれ
A1 vs A2
A1 vs A3
A1 vs A4
A2 vs A3
A2 vs A4
A3 vs A4
|¯
x1 − x¯2 |
t0,12 = √
2VE /n
|¯
x1 − x¯3 |
t0,13 = √
2VE /n
|¯
x1 − x¯4 |
t0,14 = √
2VE /n
|¯
x2 − x¯3 |
t0,23 = √
2VE /n
|¯
x2 − x¯4 |
t0,24 = √
2VE /n
|¯
x3 − x¯4 |
t0,34 = √
2VE /n
|5.25 − 7.00|
=√
2 · 0.375/4
|5.25 − 6.50|
=√
2 · 0.375/4
|5.25 − 4.75|
=√
2 · 0.375/4
|7.00 − 6.50|
=√
2 · 0.375/4
|7.00 − 4.75|
=√
2 · 0.375/4
|6.50 − 4.75|
=√
2 · 0.375/4
= 4.041
= 2.887
= 1.155
= 5.155
= 5.196
= 4.041
である,これらの検定統計量は,自由度 νE = 12 の t 分布に従うので,その棄却限界値は t 分
布表より t12 (0.05/2) = 2.179 なので,
(A1 vs A2 ), (A1 vs A3 ), (A2 vs A3 ), (A2 vs A4 ), (A3 vs A4 )
で有意だった.
2-1:先ず,仮説を設定する:
帰無仮説 H0 : 食餌によって成長に違いがない.
対立仮説 H1 : 食餌によって成長に違いがある.
¯ および,各水準 Aj (j =
分散分析表を作成するために,幾つかの事前計算を行う.総平均値 x
1, 2, 3, 4) の平均値 x¯j は
x¯ = 218.48,
x¯1 = 193.67,
x¯2 = 201.00,
x¯3 = 237.17,
x¯4 = 239.80
である.また,それぞれの 2 乗値は
x¯2 = 47731.85,
x¯22 = 40401.00,
x¯21 = 37506.78,
x¯23 = 56248.03,
x¯24 = 57504.04
である.さらに,観測値の 2 乗値は
A1
42025
42436
26896
36100
37636
41209
であり,その合計値は
A2
40401
48841
38809
34225
nj
J ∑
∑
A3
A4
61504 40804
70225 76176
38809 56169
48400 64516
44944 52900
78961
x2ij = 1021986
j=1 i=1
となる.さらに,
J
∑
nj x¯2j = 6 · 37506.78 + 4 · 40401.00 + 6 · 56248.03 + 5 · 57504.04 = 1011653
j=1
である.これらを用いて平方和を計算すると
( J nj
)
∑∑
SS =
x2ij − N x¯2 = 1021986 − 21 · 47731.85 = 19617.15
j=1 i=1
SSA =
( J
∑
)
nj x¯2j
j=1
SSE =
( J nj
∑∑
− N x¯2 = 1011653 − 21 · 47731.85 = 9284.15
)
x2ij
−
j=1 i=1
である.したがって,分散分析表は
( J
∑
j=1
)
nj x¯2j
= 1021986 − 1011653 = 10333.00
要因
A(因子)
E(誤差)
全体
平方和
9284.15
10333
19617.15
自由度
3
17
20
平均平方和
3094.720
607.820
F値
5.092
である.F 値 F0 は帰無仮説のもとで,自由度 (3,17) の F 分布に従う.F 分布表より F3,17 (0.05) =
3.197 であり,F0 > F3,12 (0.05) であることから,帰無仮説が棄却され対立仮説が支持される (有
意である).したがって,食餌によって成長に違いがあることが認められた.
1-2:誤差分散 (誤差の平均平方和)VE = 607.820 および.自由度 νE = 17 のt分布における上
側 α/2 パーセント点 t17 (0.05/2) = 2.110 を用いる.このとき,本データでは標本サイズが異な
るため,信頼区間の区間幅が異なる.ここでは,水準毎に点推定値および 95%信頼区間を計算
する:
・A1 の場合
A1 での点推定値は先ほどの問題より,x
¯1 = 193.67 であり,n1 = 6 である.したがって
√
√
下側信頼限界 : x
¯1 − tνE (α/2) VE /n1 = 193.67 − 2.110 · 607.820/6 = 172.433
√
√
上側信頼限界 : x
¯1 + tνE (α/2) VE /n1 = 193.67 + 2.110 · 607.820/6 = 214.907
である.
・A2 の場合
A2 での点推定値は先ほどの問題より,x
¯2 = 201.00 であり,n2 = 4 である.したがって
√
√
下側信頼限界 : x
¯2 − tνE (α/2) VE /n2 = 201.00 − 2.110 · 607.820/4 = 174.99
√
√
上側信頼限界 : x
¯2 + tνE (α/2) VE /n2 = 201.00 + 2.110 · 607.820/4 = 227.01
である.
・A3 の場合
A3 での点推定値は先ほどの問題より,x
¯3 = 237.17 であり,n3 = 6 である.したがって
√
√
下側信頼限界 : x
¯3 − tνE (α/2) VE /n3 = 237.17 − 2.110 · 607.820/6 = 215.933
√
√
上側信頼限界 : x
¯3 + tνE (α/2) VE /n3 = 237.17 + 2.110 · 607.820/6 = 258.407
である.
・A4 の場合
A4 での点推定値は先ほどの問題より,x
¯4 = 239.80 であり,n4 = 5 である.したがって
√
√
下側信頼限界 : x
¯4 − tνE (α/2) VE /n4 = 239.80 − 2.110 · 607.820/5 = 216.536
√
√
上側信頼限界 : x
¯4 + tνE (α/2) VE /n4 = 239.80 + 2.110 · 607.820/5 = 263.064
である.
2-3:誤差分散 (誤差の平均平方和)VE = 607.820 および.自由度 νE = 17 のt分布における上
側 α/2 パーセント点 t17 (0.05/2) = 2.110 を用いる.このとき,本データでは標本サイズが異な
るため,信頼区間の区間幅が異なる.ここでは,水準毎に点推定値および 95%信頼区間を計算
する:
・A1 vs A2 の場合
µ1 − µ2 の点推定値は x¯1 − x¯2 = 193.67 − 201.00 = −7.33 であり,n1 = 6, n2 = 4 である.した
がって
√
下側信頼限界 : (¯
x1 − x¯2 ) − tνE (α/2) VE · (1/n1 + 1/n2 )
√
= −7.33 − 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/4) = −40.91
√
上側信頼限界 : (¯
x1 − x¯2 ) + tνE (α/2) VE · (1/n1 + 1/n2 )
√
= −7.33 + 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/4) = 26.25
である.
・A1 vs A3 の場合
µ1 − µ3 の点推定値は x¯1 − x¯3 = 193.67 − 237.17 = −43.50 であり,n1 = 6, n3 = 6 である.し
たがって
√
下側信頼限界 : (¯
x1 − x¯3 ) − tνE (α/2) VE · (1/n1 + 1/n3 )
√
= −43.50 − 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/6) = −73.53
√
上側信頼限界 : (¯
x1 − x¯3 ) + tνE (α/2) VE · (1/n1 + 1/n3 )
√
= −43.50 + 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/6) = −13.47
である.
・A1 vs A4 の場合
µ1 − µ4 の点推定値は x¯1 − x¯4 = 193.67 − 239.80 = −46.13 であり,n1 = 6, n4 = 5 である.し
たがって
√
下側信頼限界 : (¯
x1 − x¯4 ) − tνE (α/2) VE · (1/n1 + 1/n4 )
√
= −46.13 − 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/5) = −77.63
√
上側信頼限界 : (¯
x1 − x¯4 ) + tνE (α/2) VE · (1/n1 + 1/n4 )
√
= −46.13 + 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/5) = −14.63
である.
・A2 vs A3 の場合
µ2 − µ3 の点推定値は x¯2 − x¯3 = 201.00 − 237.17 = −36.17 であり,n2 = 4, n3 = 6 である.し
たがって
√
下側信頼限界 : (¯
x2 − x¯3 ) − tνE (α/2) VE · (1/n2 + 1/n3 )
√
= −36.17 − 2.110 · 607.820 · (1/4 + 1/6) = −69.75
√
上側信頼限界 : (¯
x2 − x¯3 ) + tνE (α/2) VE · (1/n2 + 1/n3 )
√
= −36.17 + 2.110 · 607.820 · (1/4 + 1/6) = −2.59
である.
・A2 vs A4 の場合
µ2 − µ4 の点推定値は x¯2 − x¯4 = 201.00 − 239.80 = −38.80 であり,n2 = 4, n4 = 5 である.し
たがって
√
下側信頼限界 : (¯
x2 − x¯4 ) − tνE (α/2) VE · (1/n2 + 1/n4 )
√
= −38.80 − 2.110 · 607.820 · (1/4 + 1/5) = −73.70
√
上側信頼限界 : (¯
x2 − x¯4 ) + tνE (α/2) VE · (1/n2 + 1/n4 )
√
= −38.80 + 2.110 · 607.820 · (1/4 + 1/5) = −3.90
である.
・A3 vs A4 の場合
µ3 − µ4 の点推定値は x¯3 − x¯4 = 237.17 − 239.80 = −2.63 であり,n3 = 6, n4 = 5 である.した
がって
√
下側信頼限界 : (¯
x3 − x¯4 ) − tνE (α/2) VE · (1/n3 + 1/n4 )
√
= −2.63 − 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/5) = −34.13
√
上側信頼限界 : (¯
x3 − x¯4 ) + tνE (α/2) VE · (1/n3 + 1/n4 )
√
= −2.63 + 2.110 · 607.820 · (1/6 + 1/5) = 28.87
である.
95%信頼区間が 0(母平均の差が 0 である) を含まなかった (つまり有意) のは,
(A1 vs A3 ), (A1 vs A4 ), (A2 vs A3 ), (A2 vs A4 )
である.