第 7 章 将来像の設定

第 7 章 将来像の設定
第7章
7-1
将来像の設定
目指す将来像の設定
「第 5 章 中津川市の将来都市構造の検討」では、社会資本整備費が縮小傾向にある中で、利
便性が高く、全ての市民が安全・安心に生活できる交通環境を確保しながら、持続可能な都市
を形成するために、
「多拠点ネットワークによる集約型都市構造」の形成を推進していくことを
位置づけた。
ここでは、
「多拠点ネットワークによる集約型都市構造」を基本として、中津川市総合計画(案)
に掲げる「かがやく人々
やすらげる自然
活気あふれる
中津川」の実現を支援するため、
関係者が共有すべき交通環境の将来像を定める。
中津川市総合計画(案)をはじめとした上位・関連計画には、将来の都市のイメージとして、
人口減少や少子高齢化が進展する状況下でも、誰もが安心して地域でいきいきと活動すること
ができる都市を形成することや、まちの活気を高めながら、中津川市の文化・歴史、自然の豊
かさ、産業を次世代へと継承していくことが位置づけられている。
こうした都市の将来のイメージの実現に向け、中津川市都市交通マスタープランでは、目指
す将来像を「誰もが安心して快適に移動でき、交流しつづけるまち
中津川」と設定する。
中津川市で暮らす人、活動する人、訪れる人の全ての人が、多様な手段でいつでも安心して
快適に移動できる交通環境の形成し、日常生活での人々の交流を支えるとともに、リニア開業
を契機として市外からの交流人口の拡大を目指す。
目指す将来像
誰もが安心して快適に移動でき、交流しつづけるまち 中津川
多拠点ネットワークによる集約型都市構造を基本として、人口減少や少子高齢化
が進展する状況下でも、誰もが安心して地域でいきいきと活動することができ、
また、まちの活気を高めながら、中津川市の文化・歴史、自然の豊かさ、産業を
次世代へと継承することができるよう、以下の交通環境の形成を目指す。
○中津川市で暮らす人、活動する人、訪れる人の全ての人が、多様な手段でい
つでも安心して快適に移動できる。
○日常生活での人々の繋がりを支えるとともに、リニア開業を契機として市外
からの交流人口の拡大に資する。
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第 7 章 将来像の設定
■目指す将来像の設定
●上位・関連計画からのキーワード
ひと・まち全般
暮らし
賑わい・活力
自然
・人々
・だれもが安心し ・活気あふれる
・自然
・ふるさとに誇り て地域でいきい ・地域の伝統芸能な ・美しい自然
と愛着
きと暮らす
どの文化
・やすらぐ自然
・さまざまな人や企
業・知識・技術や
情報などが集まる
都市計画区域
・人が中心となる ・快適で安全
・楽しく活気のある ・やすらぎとうるお
マスタープラン
都市空間
・住みたくなる暖 ・歴史
い
・出会い
かみ
・文化
・自然を大切にする
・ふれあい
・環境・景観
・交流
・人づくり
中津川市リニアの
・リニアのホーム ・暮らしの充実と ・観光の振興
・水と緑
まちづくりビジョン タウン
移住・定住の促 ・産業の振興
・訪ねてよし・住 進
んでよし
総合計画(案)
●まちづくりの基本的課題
・地区の実情に応じた効率的、効果的な交通環境整備の推進
・地区間の連携強化
・市街地の魅力向上と産業(観光・製造業等)の振興
・リニアのまちづくりの推進
●将来都市構造:多拠点ネットワークによる集約型都市構造
・持続可能な都市の形成
・歩いて暮らせる市街地
・多様な交通手段を用いた生活
目指す将来像
誰もが安心して快適に移動でき、交流しつづけるまち 中津川
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第 7 章 将来像の設定
7-2
基本方針の設定
(1) 基本方針の視点
多拠点ネットワークによる集約型都市構造を基本として「誰もが安心して快適に移動でき、
交流しつづけるまち
中津川」を実現するためには、交通施設やこれを取り巻く環境に求めら
れる基本的な機能を確保しながら、多くの人や企業・知識・技術・情報などが集まり、交流す
る機会を創出するための取組みを展開していく必要がある。
このため、以下の 5 つの視点から基本方針を定める。
誰もが安心して快適に移動でき、交流しつづけるまち 中津川
視点1:安全・安心
交通環境に求められる基本的な機能として、移動時の安全確保と、各地
区で安心して生活できる交通環境を形成することが必要である。
視点2:便利
交通環境に求められる基本的な機能として、骨格となる交通軸におい
て、速く・快適に移動できる「便利」な交通サービスを提供することが必
要である。
視点3:賑わい
人口減少・少子高齢化が進む中で人々の交流を促進するためには、市民や
市外からの来訪者が出かけたくなるような「賑わい」づくりに資する交通
環境の形成が必要である。
視点4:活力
多くの企業・知識・技術・情報などの集積(交流)を促進するため、既
存の製造業や、これから立地する中部車両基地関連企業の「活力」を拡大
できるような交通サービスを提供する必要がある。
視点5:自然
これまで市民の生活を支え、市民や市外からの来訪者の交流機会を創出
してきた中津川市の「自然」を、今後も継承していくことができる交通環
境を形成する必要がある。
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第 7 章 将来像の設定
(2) 基本方針の設定
5 つの視点別に、中津川市の特徴や今後の課題等を踏まえながら、以下のとおり基本方針を設
定する。
基本方針Ⅰ:全ての人の安全・安心な生活を支える交通環境の形成
<安全・安心>
市内には、重大事故の発生箇所や、通学路や駅周辺道路等での歩道未設置区間など、
安全性が十分確保されていない交通空間が分布している。リニア開業に伴う交通量の
増加により、安全性が低下することが懸念される。
また、安心できる生活環境を支えるためには、自動車が使えなくても市内の主要な
都市施設へ移動できる交通サービスが必要であるが、市内には公共交通空白地域が分
布し、中津川駅以外の駅がバリアフリー化されていないなど対応が十分に進んでいな
い状況である。
さらに、リニア岐阜県駅への緊急輸送経路が確保されていない状況にあるとともに、
すれ違いが困難な地区内道路が多く分布するなど、災害時・緊急時等の安全が十分確
保されていない状況がある。
こうした問題に対応し、中津川市で暮らす人、活動する人、訪れる人の全ての人が
安心して生活できるよう、安全な交通ネットワークで全ての人をつなぐことができる
交通環境の形成を図る。
基本方針Ⅱ:利便性の高い交通軸・交通空間の形成
<便利>
リニア岐阜県駅を中心とした、鉄道、バス、自動車の広域幹線軸の速達性や利便性
が、現状の交通ネットワークで十分確保されていない状況である。また、市内の移動
についても、市街地内や幹線軸でピーク時に混雑が発生し速達性が低下している状況
や、地域の拠点となる駅やバス停において、乗継ぎ利便性が十分確保されていないな
どの問題が見られる。
全ての人が快適に移動できるよう、リニア岐阜県駅を中心とした広域幹線軸や都市
拠点をはじめとした各拠点間を連絡する幹線軸と、交通結節点の利便性の向上を図る。
基本方針Ⅲ:賑わいを創出する交通環境の形成
<賑わい>
中津川市では、山口地区の馬籠宿や都市拠点周辺の中山道など、全国的にも著名な
観光施設が立地しているが、観光入込客数は減少している状況である。また、小売業
の年間商品販売額が低下し、中津川市の顔となる都市拠点が低密度化傾向にあるなど、
日常生活においてもまちの賑わいが低下している状況が見受けられる。
少子高齢化が進む中で、市外からの多くの来訪者が集まるとともに、日常生活でも
より多くの市民がまちに出かけ、交流が促進されるよう、これまで多くの人々の係わ
りの中で受け継がれてきた中津川市の文化・歴史、自然の豊かさ等を活用した、賑わ
いの創出に資する交通環境の形成を図る。
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第 7 章 将来像の設定
基本方針Ⅳ:円滑な産業活動を支える交通環境の形成
<活力>
中津川市の産業は、中津川インターチェンジから名古屋市内へ 1 時間で行き来でき
る交通利便性といった強みをもとに、製造業を中心としてこれまで発展してきた。近
年、製造品出荷額等や従業員数が、減少傾向からの回復基調にある。
既存の製造業や、これから立地する中部車両基地関連企業の「活力」を拡大できる
よう、各産業拠点等を発着する物流交通が、円滑かつ安全に市内の幹線軸や広域幹線
軸を経由し、名古屋市等の大規模市場へ移動できる交通環境を形成する。
基本方針Ⅴ:美しい自然にやさしい交通環境の形成
<自然>
中津川市は、中央アルプス南端に位置する恵那山山系など豊かな自然に囲まれてい
る。今後も地域でいきいきと暮らすためには、こうした豊かな自然を継承していく必
要がある。一方で、近年は、環境負荷の大きい手段である自動車への依存傾向が高ま
り、自動車中心のライフスタイルが定着してきている。
中津川市を囲む豊かな自然環境が保全され、後世に伝えることができるよう、可能
な限り環境負荷の少ない交通手段の利用を促進する。
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