添付資料2 平成 27 年度戦略的研究開発領域課題(S-14)の公募方針 1.プロジェクト名: 気候変動の緩和策と適応策の統合的戦略研究 2.研究プロジェクトリーダー: 東京大学生産技術研究所教授 沖大幹 3.予算規模: 年間約3億円(課題当たり数百~数千万円程度) ※予算規模は、直接経費及び間接経費、税込み。なお、委託の消費税は、総額(直接経費+間接経費等)に掛かる。 4.研究期間: 5年間 (平成 27~31 年度) ※研究 3 年目に中間評価を行う。 5.プロジェクトの概要 (1)成果目標 最終目標:緩和策と適応策との統合的実施によって復元力に富み、持続可能な社会を構築しようと する施策を国内外で実施するにあたり、投入可能な経済的、人的、制度的資源が限られている条件 下で、緩和策、適応策にどのように取り組むことがもっとも効果的かつ効率的であるかに関する定 量的基礎資料を整備し、リスクマネジメントとしての気候変動対策の適切な計画立案に貢献する。 副次的目標: 緩和策、適応策としての生態系保全の定量的評価 主要セクターの定量的な気候変動被害関数の整備 アジアのメガシティにおける緩和策、適応策の統合実施に関する先進事例研究 応用一般均衡モデル等の社会経済モデルにおける緩和と適応の統合実施の最適政策オプションの 提示 主観的幸福度等の指標も用いた気候変動対策の費用便益分析手法の構築 次回の IPCC 評価報告書への日本からの貢献の増大、世界的研究の先導 次世代若手研究者の国際舞台での活躍支援 (2)研究概要 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書が公開され、第1作業部会の報告書では地 球の気候システムの温暖化は疑う余地がなく、人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要 因であった可能性が極めて高い(95%以上の可能性)とされ、地表面気温だけではなくむしろ主に海洋の水 温上昇としてその影響が現れていることが述べられている。 気候変動のメカニズム解明や、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の第2条に書かれた 「危険な人為的干渉とならない温室効果ガスの濃度水準」がどのくらいであるのか、さらには気候変動によ 1 ってどのような影響が生じるかに関する研究が鋭意進められているが、人類はそうした気候変動に対して常 に無策であるわけではなく、気候変動が生じても持続可能な開発が担保されるような対策、いわゆる適応 策の効果についても研究が進められている。 IPCCでも第4次報告書以来、第2作業部会の評価報告書では緩和策と適応策とは気候変動対策におけ る車の両輪である、と位置づけられているが、つい最近まで両者は別の文脈で取り扱われることが多く、日 本では適応策への取り組みが遅れていた。2013年になってようやく適応策に関する省庁横断的な取り組み が始まったところであり、両者の統合的な実施による効果的で効率的な気候変動対策の計画立案支援、な らびにカンクン合意に基づく発展途上国向けの気候変動適応計画の策定に関わる国際交渉に資する研 究開発が期待されている。 こうした研究開発の持続的な推進のために、国際的な論文を発表しているような一流の研究者に加えて 新進気鋭の若手研究者を含んだ研究体制を構築し、新規研究プロジェクトを遂行する。 6.プロジェクトの研究テーマ構成及びサブテーマ構成 本プロジェクトは、以下の5つのテーマ構成により、当該5テーマの下にサブテーマを設けて、 各テーマ及びサブテーマ研究者が一体的に研究を実施する。全体構成及びテーマ・サブテーマ間の 関係については、概要資料も参照のこと。 URL:http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/koubo/koubo_1.html 資料名:戦略プロジェクト補足資料 研究提案の公募は、テーマ1からテーマ5の【公募】サブテーマについて行う。サブテーマは、 原則として一つの研究機関で行う。 (留意事項) サブテーマのうち、各テーマの「 【総括】サブテーマ(1)」は、テーマリーダーが担当し、 テーマの総括を行うため公募は行わない。 テーマリーダーが担当する【総括】サブテーマ(1)は各テーマ全体の総括班として機能し、 サブテーマ間の研究調整・進捗管理を担当する。 研究提案は、 【総括】サブテーマ及びその他の【公募】サブテーマと研究内容が連携する ものであることが必要である。 各サブテーマのリーダーは、研究プロジェクトリーダー及びテーマリーダーの指示のもと で、他テーマ、サブテーマの研究者と緊密に連携し、一つの研究プロジェクトを構成する 研究活動として研究を実施する。 サブテーマリーダーは、応募したサブテーマの内容及びヒアリング等の審査過程での連 絡・対応について、総括的な責任を持つ。 研究提案を行う申請者は、研究提案の提出前にテーマリーダーに連絡をして提案内容(申 請書)についてテーマに相応しい内容かどうか確認することが出来る(公募〆切の1週間 前まで(厳守)) 。確認のあった提案内容(申請書)について、テーマリーダーはプロジェ クトリーダーと相談の上、申請者にコメントを回答する。テーマリーダーの連絡先は、環 境省地球環境局研究調査室([email protected])までメールにて問い合わせること。 2 各テーマ及び公募するサブテーマの構成 テーマ名 及び テーマリーダーの担当するサブテーマ 公募を行うサブテーマ テーマ1:全体の総括と統合的戦略評価 サブテーマ(1):多様な指標による気候変動対 策の統合的多面的な評価 サブテーマ(2):ライフサイクルアセスメントによる気 候変動影響評価 サブテーマ(3):主観的幸福度なども活用した気候変動 対策の費用便益分析 テーマ2:生態系保全による緩和策と適応策 の統合 サブテーマ(1):気候変動と気候変動対策の生 態系サービスへの影響評価 サブテーマ(2):陸域生態系の強靭化による緩和策、適 応策の統合評価 サブテーマ(3):緩和策と適応策に資する沿岸生態系機 能とサービスの評価 サブテーマ(4):緩和策と適応策に資する森林生態系機 能とサービスの評価 サブテーマ(5):沿岸生態系の緩和・適応策の経済評価 テーマ3:気候変動に対する地球規模の適応 策の費用便益分析 サブテーマ(1):気候変動適応策の総合的な費 用便益分析と水関連災害の適応策の費用便 益分析 サブテーマ(2):気候変動による穀物生産への影響評価 と適応策の費用便益分析 サブテーマ(3):気候変動による健康への影響評価と適 応策の費用便益分析 サブテーマ(4):気候変動に伴う沿岸地域の脆弱性評価 と適応策の費用便益分析 テーマ4:アジアのメガシティにおける緩和 を考慮した適応策の実施事例研究 サブテーマ(1):緩和・適応統合実施の基本シ ナリオを考慮した都市気候変動の予測 サブテーマ(2):リスク評価に基づいた緩和・適応統合 実施の基本シナリオの作成 サブテーマ(3):緩和・適応統合実施による都市水害減 災評価と費用便益分析 サブテーマ(4):緩和・適応統合実施による都市健康影 響評価と費用便益分析 テーマ5:気候変動に対する地球規模の緩和 策と適応策の統合的なモデル開発に関する 研究 サブテーマ(1):応用一般均衡モデルを用いた 気候変動緩和策・影響・適応策の経済評価 サブテーマ(2):全球物理影響評価モデルを一般均衡モ デルと連携させるための理論的・技術的基盤の確立 に関する研究 サブテーマ(3):計量経済モデルを用いた緩和策と適応 策の費用便益に関する研究 サブテーマ(4):気候変動に対する実効性ある緩和と適 応の実施に資する国際制度に関する研究 サブテーマ(5):気候変動に対する効果的な緩和と適応 の実施に資するガバナンスと資金メカニズムに関す る研究 3 (1)テーマ1:全体の総括と統合的戦略評価 テーマリーダー:沖大幹(東京大学生産技術研究所 教授) ① 成果目標 プロジェクト全体の総括と気候変動対策の統合的評価 ② 研究概要 人類が直面する様々なグローバルリスクの中でも特に重大である気候変動のリスクを的確に 捉え、限られた資金的・組織的・人的資源を有効に利用してそのリスクを最小限に抑え込んでい く総合的な戦略が必要である。テーマ 1 では、戦略課題全体の総括として、テーマ間の研究調 整、連携の促進、ならびに課題全体の進行管理の役割を担い、各テーマの成果を統合し、世界、 各国、日本、地方自治体、個人としてどのように緩和策と適応策のバランスをとりつつ気候変動 対策に取り組むのが効果的であり効率的であるかを様々な指標に照らして多面的に評価する(サ ブテーマ(1))。また、そうした統合的な評価にあたっては、テーマ 2 やテーマ 3 の知見を集約化 し、ライフサイクルアセスメント(LCA)の枠組みで人間健康や生物多様性といったエンドポイン トでも気候変動対策の効果を明らかにできるようにする(サブテーマ(2))。さらに、サブテーマ(2) とも連携しつつ主観的幸福度や障害調整生命年(DALY)などの指標も用いた気候変動の影響評価、 すなわち緩和策や適応策の費用便益分析手法を開発し、サブテーマ(1)の統合評価で利用可能と する(サブテーマ(3))。 プロジェクト全体を通して、主にグローバルを対象とし、緩和策と適応策のバランスは国や地 域のまとまりごとに評価する。利用可能な CMIP5 の気候変動シナリオのうち、主に RCP8.5 と RCP2.6 の利用を念頭に置いている。また、研究成果をすみやかに国際社会に発信すると共に気 候変動政策に生かせる形での取りまとめも行う。 ③ 【総括】サブテーマ(1):多様な指標による気候変動対策の統合的多面的な評価 イ) 被害額や投資額といった従来の経済的指標に加えて、主観的幸福度や生計資本といった指標 なども勘案して多面的に評価し、緩和策と適応策の効率的で効果的な実施策に関する知見を 得る。 ④ 【公募】サブテーマ 以下のサブテーマ(2)~(3)について研究提案を公募する。 【公募】サブテーマ(2):ライフサイクルアセスメントによる気候変動影響評価 イ) ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づき、人間健康や生態系サービスといったエンド ポイントに対する気候変動や緩和策の包括的な影響評価手法を構築するとともに、適応策 の効果の LCA への導入を支援し、副作用やトレードオフも含めた評価の枠組みを構築す る。 【公募】サブテーマ(3):主観的幸福度なども活用した気候変動対策の費用便益分析 イ) 障害調整生命年(DALY)や生物多様性、主観的幸福度など、従来の経済分析では用いられ ることの少なかった指標も活用した気候変動影響とその対策の統合的な費用便益分析に 関する環境経済的な手法を確立する。 4 (2)テーマ2:生態系保全による緩和策と適応策の統合 テーマリーダー:松田裕之(横浜国立大学環境情報研究院 教授) ① 成果目標 熱帯、温帯、寒帯における生態系保全による緩和策と適応策の統合的評価 ② 研究概要 生態系はそれ自体が炭素蓄積や気候調整などの機能を持つと同時に気候変動がもたらす気温 上昇、海面上昇、高波、山火事等の自然災害リスクの削減効果を持つ。そのため、生態系の保全 は、気候変動問題に対する緩和策と適応策の両者に有効になりえる。他方、人間活動による現世 代の経済利益と、生物多様性および生態系サービスの喪失がもたらす将来世代も含めた生態リス ク増大との間にはトレードオフが存在する。複数の政策シナリオによる今後の生態系サービス変 化の将来予測、全球的及び局所的な緩和策と適応策の両得及び得失相反の関係を明らかにし、統 合策への一助とする。 そのため、陸域生態系の強靭化または脆弱化がもたらす災害リスクへの影響を明らかにし(サ ブテーマ(2))、沿岸生態系の分布情報整備と緩和適応策に資する生態系サービスを評価し(サブテ ーマ(3))、森林生態系における生物種間相互作用と生態系サービスへのマクロスケールの影響予 測にもとづいた緩和策と適応策の統合評価を行い(サブテーマ(4))、これらを統合した気候変動と 気候変動対策の生態系サービスへの影響評価を明らかにする(サブテーマ(1))。 ③ 【総括】サブテーマ(1):気候変動と気候変動対策の生態系サービスへの影響評価 イ) 気候変動だけでなく、気候変動対策が生態系サービスに及ぼす影響を評価し、IPCC 第 5 次 評価報告書第 2 作業部会での mal-adaptation の具体例と回避策を提示する。Global Biodiversity Outlook 4 に対応した統合策に資する指標を抽出する。 ④ 【公募】サブテーマ 以下のサブテーマ(2)~(5)について研究提案を公募する。 【公募】サブテーマ(2):陸域生態系の強靭化による緩和策、適応策の統合評価 イ) 旱魃や山火事、熱波、洪水、病害虫など、自然要因と人為要因が関わる陸域生態系撹乱の 規模や頻度を統計的・時系列的に検証し、生態系の強靭化による災害リスクの緩和・適応 の策を検討する。 ロ) 生物多様性保全による生態系機能の安定化・強靭化の潜在性を実験的に評価することで、 極端現象時の影響緩和と気候変動適応の可能性を模索する。 【公募】サブテーマ(3):緩和策と適応策に資する沿岸生態系機能とサービスの評価 イ) マングローブ・サンゴ礁・藻場等の沿岸生態系分布情報を整備する。 ロ) 沿岸生態系における緩和策と適応策の評価に必要な生態系機能とサービス(炭素貯留機能、 地形形成機能等)を評価する。 【公募】サブテーマ(4):緩和策と適応策に資する森林生態系機能とサービスの評価 イ) 東アジアの熱帯、温帯、寒帯の森林における生態系保全の気候変動下における分布情報予 測モデルを開発する。 ロ) 日本及び東アジアにおいて、野生動物の食害など生物種間相互作用を考慮した気候変動の 森林生態系サービスへの影響を予測する。 【公募】サブテーマ(5):沿岸生態系の緩和・適応策の経済評価 5 イ) ブルーカーボン等がもたらす緩和効果やマングローブなどの防災機能の有効性評価を含 めた沿岸生態系における緩和適応策の経済評価を行う。 (3)テーマ3:気候変動に対する地球規模の適応策の費用便益分析 テーマリーダー:平林由希子(東京大学大学院工学系研究科 准教授) ① 成果目標 世界全体の気候変動による影響と、適応費用便益の提示 ② 研究概要 地球規模の気候変動適応策の効果と費用便益に焦点をあてた研究を担当する。その際には、適 応をふまえた防災のあり方の検討を含む、防災と適応策との相乗効果の検討も行う。本テーマで は、(1)水関連災害、(2)穀物生産に関する影響、(3)保健・健康・衛生に関する影響、(4)沿岸災害 という 4 つの主要な領域を対象に、地球規模の気候変動影響と、実施可能と想定される適応策 の費用便益の検討を行う。本テーマでは、テーマ 4 から得られる気候変動適応策の地域的知見 も参照し、地球規模の適応策実施の技術的経済的検討と課題等の整理を行うとともに、テーマ 5 の緩和策と適応策の統合的モデルの構築に必要な知見をテーマ 2 と共に提供する。 ③ 【総括】サブテーマ(1):気候変動適応策の総合的な費用便益分析と水関連災害の適応策の費用 便益分析 イ) 主要な気候変動影響に関する適応費用便益を整理・統合する。 ロ) 水関連災害に対する気候変動の地球規模での影響評価と、適応策の費用便益を推計する。 ハ) 世界の主要河川を対象に、気候変動に伴って増大する洪水による被害を推定するとともに、 複数の適応策オプションに対する定量的な被害関数・適応関数を検討し、適応策とその費用 対効果について評価する。 ④ 【公募】サブテーマ 以下のサブテーマ(2)~(4)について研究提案を公募する。 【公募】サブテーマ(2):気候変動による穀物生産への影響評価と適応策の費用便益分析 イ) 我が国や世界の主要な穀物生産国について、気候変動の穀物生産への影響と経済的な被害 を定量化し、灌漑設備の導入や品種改良などの適応策におけるコストと経済損失を見積も る。 ロ) 地域の差異を考慮しつつ、地球規模の穀物生産に対する気候変動の影響を評価し、適応策 の費用便益を推計する。 【公募】サブテーマ(3):気候変動による健康への影響評価と適応策の費用便益分析 イ) 熱中症など気候変動による健康影響評価を行い、適応策の費用便益を推計する。 ロ) 気候変動による健康影響被害の広域に適用可能な指標を作成し、適応策の効果の定量的評 価手法を開発する。 【公募】サブテーマ(4):気候変動に伴う沿岸地域の脆弱性評価と適応策の費用便益分析 イ) 海面水位上昇や高波・高潮災害など気候変動による沿岸地域の脆弱性評価を行い、適応策 の費用便益を推計する。 ロ) 防潮林など既存の津波対策設備の、気候変動に伴う海面水位上昇や高波・高潮災害への co-benefit 的な減災効果について評価する。 6 (4)テーマ4:アジアのメガシティにおける緩和を考慮した適応策の実施事例研究 テーマリーダー:神田学(東京工業大学国際開発工学専攻 教授) ① 成果目標 アジアの大都市における緩和と適応の統合事例研究の実施と、水災害・健康影響の総合評 価 ② 研究概要 IPCC 第 5 次評価報告書において気候変動の多くの世界的リスクが都市域に集中していること が指摘されている。そこで本テーマは、発展著しくマルチストレスに曝されるアジアのメガシテ ィ(インドネシア・ジャカルタを想定)において緩和を考慮した適応策の事例研究を実施し、プロ ジェクト全体の中のグローバルな評価における地域検証研究としての役割を担う。サブテーマ (1)では、グローバルに入手可能な都市データを使用した汎用的マルチスケーリング手法によっ て、全球から都市・街区・人間スケールまでの都市気候変動予測(豪雨・暑熱)を都市計画シナリ オ別に行う。サブテーマ(2)では、水災害・健康影響の視点から、都市計画に関する複数の基本 シナリオを作成し、土地利用・インフラ・人工排熱予測を行う。サブテーマ(3)では、サブテー マ(1)の豪雨変動予測結果に基づき、水災害に関する費用分析評価を行う。テーマ 4 では、サブ テーマ(1)の暑熱環境予測結果に基づき、健康影響に関する費用分析評価を行う。 ③ 【総括】 サブテーマ(1):緩和・適応統合実施の基本シナリオを考慮した都市気候変動の予測 イ) 基本シナリオに基づいて、物理的ダウンスケーリングによる全球スケールから都市・街区・ 人間スケールまでの暑熱環境変動予測を行う。 ロ) 基本シナリオに基づいて、物理的ダウンスケーリングとフィードバックパラメタリゼーショ ン(微細な街区構造を都市スケールの気象予測に反映させるアップスケーリング手法)を併用 した都市豪雨変動予測を行う。 ④ 【公募】サブテーマ 以下のサブテーマ(2)~(4)について研究提案を公募する。 【公募】サブテーマ(2):リスク評価に基づいた緩和・適応統合実施の基本シナリオの作成 イ) 気候変動シナリオに対応したリスク(ハザード、脆弱性)評価に基づき、水災害・健康影響を考 慮した気候変動に対する緩和・適応統合実施策のための土地利用に関する 21 世紀半ばから末 にむけた統合実施シナリオを作成する。 ロ) 現状維持(BAU)シナリオと、上記で設定された統合実施シナリオのそれぞれに対応する都市 (集中型・分散型)・社会(人口、エネルギー消費形態)・インフラの時空間分布を算定し、二種 類の基本シナリオ(BAU、統合実施)を策定する。 【公募】サブテーマ(3):緩和・適応統合実施による都市水害減災評価と費用便益分析 イ) 基本シナリオ毎の豪雨変動予測結果を入力として、水文解析・水文統計手法により都市スケー ル・街区スケールにおける水災害リスクと適応策の効果を算定する。 ロ) 上記の統合実施策のための費用と算定された減災効果を勘案して、費用便益分析による評 価を行う。 【公募】サブテーマ(4):緩和・適応統合実施による都市健康影響評価と費用便益分析 イ) 基本シナリオ毎の暑熱環境変動予測結果を入力として、建物エネルギーモデルと温熱生理 7 モデルを併用し、睡眠障害・熱中症などの健康影響と適応策の効果を算定する。 ロ) 上記の統合実施策のための費用と算定された健康影響を勘案して、費用便益分析による評 価を行う。 (5)テーマ5:気候変動に対する地球規模の緩和策と適応策の統合的なモデル開発に関 する研究 テーマリーダー:肱岡靖明(国立環境研究所社会環境システム研究センター 室長) ① 成果目標 世界全体の緩和策と適応策の効果的な統合実施の定量的評価 ② 研究概要 IPCC 第 5 次評価報告書では、緩和策と適応策の統合的かつ定量的な評価の実施の必要性が示 されている。そこで本テーマでは、世界全体の温室効果ガス排出量と整合的な緩和策、影響・適 応策費用推計を担当する。サブテーマ(1)では、テーマ 2 と 3 から提供される地球規模の気候変 動適応策の効果と費用便益に関する情報を利用して、世界全体における温室効果ガスの削減費用、 影響被害額、適応策費用を整合的に推計するための応用一般均衡モデルを開発する。サブテーマ (2)は、テーマ 2 と 3 で開発される全球物理影響評価モデルを一般均衡モデルとどのように連携 させるかについての理論的・技術的基盤の確立に関する研究を実施する。サブテーマ(3)は、応 用一般均衡モデルに組み込まれている理論やパラメータの妥当性を検討・支援するための計量経 済モデルを開発する。サブテーマ(4)は、国際制度の視点から応用一般均衡モデルを用いた緩和 策と適応策の統合評価実施に用いるシナリオ設定(政策仮定)の妥当性について検討を行う。サブ テーマ(5)は、ガバナンスと資金メカニズムの視点から応用一般均衡モデルを用いた緩和策と適 応策の統合評価実施に用いるシナリオ設定(政策仮定)の妥当性について検討を行う。 ③ 【総括】サブテーマ(1):応用一般均衡モデルを用いた気候変動緩和策・影響・適応策の経済評価 イ) 各テーマから提供される温暖化影響による被害および適応策に掛かる費用の情報と合わせ て、世界全体の温室効果ガス排出量と整合的な緩和策、影響・適応策費用を推計する。 ロ) 従来よりも地域・部門解像度の高い影響、適応策の解析が可能な一般均衡型統合評価モデル を開発する。 ハ) アジアは特に解像度を上げて解析を行い、各国の気候政策立案に対して緩和、適応策両面か ら貢献する。 ④ 【公募】サブテーマ 以下のサブテーマ(2)~(5)について研究提案を公募する。 【公募】サブテーマ(2):全球物理影響評価モデルを一般均衡モデルと連携させるための理論的・ 技術的基盤の確立に関する研究 イ) 一般均衡モデルの出力を全球物理影響評価モデルで活用するための理論的・技術的基盤を確立 し、水需要推計の社会経済シナリオとの整合性を高めるとともに、貿易の水逼迫緩和にもたら す効果を推定する。 ロ) 全球物理影響評価モデルの出力を一般均衡モデルで活用するための理論的・技術的基盤を 確立し、一般均衡モデルの資源制約の精度を向上し、部門別の経済活動への影響の詳細な 分析を行う。 8 【公募】サブテーマ(3):計量経済モデルを用いた緩和策と適応策の費用便益に関する研究 イ) 緩和策と適応策の効果を定量的に評価するための計量経済モデルを構築する。 ロ) 目標達成に必要な緩和策や適応策の制度設計の在り方について検討する。 ハ) また、上記の制度設計に関連して、いくつかの政策を対象に、計量経済モデルを用いた有 効性の検証を実施する。 【公募】サブテーマ(4):気候変動に対する実効性ある緩和と適応の実施に資する国際制度に関 する研究 イ) 2020 年以降の気候変動対処のための国際枠組みに関する合意及びその詳細ルール化の交渉過 程を分析する。 ロ) 主要国における適応計画(あるいは適応の開発計画への主流化)に関する比較分析を行い、適応 計画の策定・実施プロセスにおける課題を抽出する。 【公募】サブテーマ(5):気候変動に対する効果的な緩和と適応の実施に資するガバナンスと資 金メカニズムに関する研究 イ) 持続可能な開発(持続可能な開発目標)の中で、緩和と適応との統合の可能性を分析し、さらに それを推進するためのガバナンスや資金メカニズムの課題を明らかにする。 ロ) 特にアジア地域の緩和と適応の統合に関連するガバナンスや資金メカニズムを分析する。持続 可能な開発、緩和、適応の統合による効果が高いと考えられる森林分野などを事例に用いて、 コベネフィットの可能性を検討する。 9
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