J リーグにおける集客に関する基礎的研究 - Tokaigakuen University

J リーグにおける集客に関する基礎的研究
J リーグにおける集客に関する基礎的研究
満席率に着目して
A Fundamental Study on the Attraction of Spectators
in the J. League
- Focusing on the stadium occupancy rate -
出 口 順 子 *
Junko DEGUCHI
キーワード:満席率、ホームスタジアム、J リーグ
Key words:occupancy rate, home stadium, J-League
要約
本研究の目的は J リーグにおけるホームスタジアムでの満席率を算出すること、満席率を従
属変数として影響要因を検討するにあたっての課題を明らかにすることである。ホームスタジア
ムにおける満席率を算出したところ、J1 と J2 では満席率に有意差がみられること、平均入場者
数は多くはないが満席率の高いクラブ、逆に平均入場者数は多いが満席率の低いクラブが存在す
ることが分かった。満席率を従属変数とし影響要因を分析する上での課題として、1)ホームスタ
ジアムでの試合数の違いに注意すること、2)J1 と J2 の満席率の差を考慮すべきこと、3)多く
の入場者が見込まれた試合は分析対象外になっている場合があること、4)ホームスタジアム変更
に伴う収容人数の変更が満席率にみせかけの影響を及ぼしているケースがあることの 4 点が考え
られた。
Abstract
This study was intended to calculate the occupancy rates at the home stadiums of
soccer clubs in the J. League and to identify challenges in investigating influencing
factors using the occupancy rate as a dependent variable. The calculations of the
occupancy rates at the home stadiums revealed that there were significant differences
in the occupancy rates between J1 and J2 clubs,and that some clubs attracted fewer
spectators per game on average but the occupancy rates at their home stadiums were
relatively high while others attracted more spectators per game on average but the
*東海学園大学スポーツ健康科学部スポーツ健康化学科
東海学園大学研究紀要 第19号
occupancy rates at their home stadiums were relatively low.The following four points
were identified as possible challenges in analyzing influencing factors using the
occupancy rate as a dependent variable:1) to pay heed to variations among clubs in the
number of games held at the home stadium,2) to take into account the differences in
the occupancy rates between J1 and J2 clubs,3) to note that games expected to attract
many spectators may have been excluded from the analysis, and 4) to note that a
change in the stadium capacity following a reassignment of the home stadium may
cause an apparent effect on the occupancy rate.
1 はじめに
J リーグにおいては 2007 年から 2010 年にかけて年間総入場者数 1,100 万人を達成することを
目標とするイレブンミリオンプロジェクトが実施され、J リーグディビジョン 1(以下 J1)で 70
%、J リーグディビジョン 2(以下 J2)で 50%の満席率という目標が掲げられた。また 2007 年
から 2008 年に清水エスパルスにおいては「超満員作戦」と名付けられた、スタジアムを満席に
することに主眼を置いた取り組みがなされた。このように入場者数を増やすこと、スタジアム
を満席にすることの重要性は J リーグにおいて認識されているといえる。また福田(2009)は
NFL、ドイツ・ブンデスリーガのバイエルン・レバークーゼンの事例を挙げ、満員のスタジア
ムが醸し出す雰囲気がスポーツビジネスにおいては重要で、収入の源泉になることを示唆してい
る 1。満席であろうがなかろうが入場者数が多い方が短期的には収益があがるかもしれない。し
かし満員のスタジアムに価値があり、それが長期的な収益につながっていくと考えられるのであ
る。
入場者数への影響要因を明らかにする研究は観戦需要研究と呼ばれ、平田(2009)2、河合
(2008)3、畔蒜(2012)4、鈴木(2012)5 が J リーグへの適応を試みており、従属変数に「入場者
数」を用いて分析が行われている。しかし入場者数を用いた場合、スタジアムの収容人数の違い
による影響を受ける。つまりスタジアムの収容人数が少ないスタジアムを使用しているクラブは
どんなに満席にしてもスタジアムの収容人数が多いクラブには及ばない。入場者数だけをみた場
合、空席があり集客に関して改善する余地があるにも関わらず成功しているようにみえてしまっ
たり、逆に集客率が高く成功しているにも関わらず、入場者数が他のクラブに比して劣るため改
善の余地があるようにみえてしまったりする。
以上より満員のスタジアムには付加価値がありプロスポーツビジネスにおいて収入源となる重
要な要素であると考えられること、スタジアムの収容人数の違いを超えて分析できることから満
席率は有用な変数であると考える。満席率を用いた研究には福田(2009)の研究があるが、用い
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ているスタジアムの収容人数が実際とは異なるという点で問題があり、分析対象期間も 2002 年
から 2007 年に留まっている。また全試合を対象としているが、J リーグがホームタウン制を導
入し、地域密着を戦略としていることを重視すればホームスタジアムでの試合のみで満席率を算
出すべきなのではないか。以上を踏まえ本研究では、J2 が新設された 1999 年から 2012 年の、
ホームスタジアムで行われた試合を対象に満席率を算出すること、また満席率を従属変数とする
ことの課題を明らかにすることを目的とする。本研究は今後満席率を用いた観戦需要研究を行う
ための基礎となる研究である。
2 研究方法
(1)研究対象
J2 が新設された 1999 年から 2012 年の 14 年間継続して J1 または J2 に所属していた 26 クラ
ブを調査対象とした。クラブ名は 14 年の間に変更になっているクラブもあることから 2012 年時
点での名称を用いることとした。
(2)分析手法
ホームスタジアムでの満席率を算出するにあたり、以下の点が課題として考えられた。登録さ
れたホームスタジアムが年によって異なり、また収容人数も年によって異なるクラブがあること。
ホームゲームでありながらホームスタジアム開催でない試合が存在すること。ホームスタジアム
での開催率がクラブによって異なること。これらの課題を克服するため、①ホームスタジアムお
よび収容人数の把握、②ホームゲームにおけるホームスタジアム使用状況の把握とホームスタジ
アム開催率の算出を、満席率算出の前段階として行うこととした。その上で③各クラブのホーム
スタジアムでの満席率を求める。
データは J リーグ公式記録集(1999 ~ 2013)6 及び J リーグ公式ホームページ 7 に記載されて
いるデータを用いた。
①ホームスタジアム及び収容人数の把握
ホームスタジアムは 2002 年 IFA ワールドカップ日韓共催に向けたスタジアムの新設等によっ
て変更になったり、1 クラブが 2 つのスタジアムをホームスタジアムとして登録したりしている
場合もある。また名古屋のようにホームスタジアム以外の特定のスタジアムを平均で約 3 割使用
しているのにもかかわらず、長年ホームスタジアムとして登録されていなかったというケースも
存在する。ここではホームスタジアムをその年にホームスタジアムとして登録されていたスタジ
アムとする。ホームスタジアムの収容人数もその年によって異なる。スタジアムの改修によって
変更になったり、座席レイアウトによって変更になったりしている。よってホームスタジアムの
東海学園大学研究紀要 第19号
満席率を算出するにあたり年毎のホームスタジアムの収容人数を調べ用いることとした。なおホー
ムスタジアム名はネーミングライツ等により 14 年の間に変更になっているスタジアムもあった
ため、クラブ名と同様 2012 年時点での名称を用いることとした。
②ホームゲームにおけるホームスタジアム開催率
J リーグのホームゲームはホームスタジアムで開催されることが多いが、県内の他スタジアム
や県外で開催されることもある。J リーグがホームタウン制を取り、地域に密着したスポーツク
ラブを標榜していること、「スポーツ・スタジアムは多くの人々に多くの点でトポフィリア(場
所愛)の源泉となっている 8」ことから、継続的な集客やクラブ経営を考えた場合、ホームスタ
ジアムでの入場者数を増やすことが重要だと考える。そこでホームゲームのうちホームスタジア
ムで開催された試合を抽出し、分析の対象とすることとした。クラブ毎にホームスタジアムでの
試合開催数にばらつきが見られたため、ホームスタジアムでの試合数を数え、ホームゲーム数で
除してホームスタジアム開催率を算出した。
③ホームスタジアムにおける満席率
ホームスタジアムでの満席率は入場者数をホームスタジアムの収容人数で除し算出した。
3 結果
①ホームスタジアム及び収容人数の把握
ホームスタジアムと収容人数の推移を表 1 に示す。26 クラブ中、仙台、浦和、川崎 F、湘南、
新潟、広島、福岡、鳥栖の 8 クラブにおいては収容人数に変更はなく、残り 18 クラブで変更が
みられた。また調査対象期間中に 2 つのスタジアムを同時にホームスタジアムに登録したことが
あるクラブは札幌、浦和、千葉、横浜 FM、新潟、名古屋、C 大阪、大分の 8 クラブであった。
37 スタジアムの調査対象期間中における平均収容人数は 29,351 人であった。
②ホームゲームにおけるホームスタジアム開催率
ホームゲームにおけるホームスタジアムでの開催数とその開催率を表 2 に示す。1999 年から
2012 年までの 26 クラブの平均開催率は 88.8%であり、増加傾向にある。次にクラブ別にみてみ
ると、最もスタジアム開催率が高かったのは湘南で 99.5%、次いで福岡の 99.1%となっている。
逆に最もスタジアム開催率が低かったのは名古屋の 71.4%で、次いで大宮の 73.3%であった。
詳細にみていくと、2009 年の仙台は 1 月から 6 月にかけて改修工事が行われたためホームスタ
ジアム開催率が低くなっている。鹿島は 1999 年から 2000 年にかけて FIFA ワールドカップ
2002 に向けて改修工事を行ったため、ホームスタジアム開催率が低くなっている。浦和は 2001
年から 2004 年にかけてホームスタジアム登録ではない埼玉スタジアム 2002 の試合が多かったた
め、ホームスタジアム開催率が低くなっている。大宮においては 2005 年に J1 に昇格し、NACK5
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スタジアム大宮が J1 リーグの基準を満たさなかったため開催率が低くなっている。また 2006
年から 2007 年 10 月まではスタジアムの改修を行ったため、それぞれ 0%、11.8% となっている。
2000 年の F 東京は、味の素スタジアムをホームスタジアムとして登録していたが、同スタジア
ムが建設中だったため使用出来ず 0% となっている。新潟は 2001 年から 2003 年にかけてホーム
スタジアム登録ではなかった東北電力ビッグスワンスタジアムでの試合が多く、ホームスタジア
ム開催率は低くなっている。同様に名古屋も 2011 年まで豊田スタジアムのホームスタジアム登
録はなかったが豊田スタジアムでの試合開催が一定の割合であり、ホームスタジアム開催率が低
くなっている。2002 年の C 大阪は FIFA ワールドカップ 2002 の影響によりホームスタジアム開
催率が低くなっている。以上のようにホームスタジアム開催率の低さの要因はスタジアム建設・
改修と意図的なホームスタジアム以外のスタジアム利用に大別される。開催率が低かった大宮は
前者の理由、名古屋は後者の理由といえる。
③ホームスタジアムにおける満席率
年間入場者数、試合数、平均入場者数、満席率の推移を表 3 に示す。年間入場者数はホームス
タジアムで開催された試合における年間入場者数を指し、ホームスタジアムで開催された試合数
がクラブによって異なること、また J1 と J2 では行われた試合数が異なることから単純に比較
できないため、平均入場者数を算出した。つまり平均入場者数とはホームスタジアムで開催され
た試合における 1 試合あたりの入場者数である。1999 年から 2012 年までにおける 26 クラブの年
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間入場者数の平均は 210,816 人、平均入場者数の平均は 13,518 人、満席率の平均は 48.7%であっ
た。また対象期間中の満席率の平均が最も高かったのは浦和の 76.4%で、次いで仙台 74.4%
、磐田 73.8%であった。逆に最も低かったのは東京 V 22.6%で、次いで広島 25.6%、鳥栖 26.0
%であった。満席率上位 3 クラブはスタジアムの 4 分の 3 が埋まっているのに対し、下位 3 クラ
ブは 4 分の 3 が空いていることになる。いずれにしても J リーグのクラブ経営においては継続
してスタジアムに足を運んでもらう努力をしていかなければいけない段階にあることが明らかに
なった。
J1 のクラブ数は 1999 年から 2004 年までが 16 クラブ、2005 年から 2012 年までが 18 クラブ
である。また J2 のクラブ数は 1999 年が 10 クラブ、2000 年が 11 クラブ、2001 年から 2005 年
までが 12 クラブ、2006 年から 2007 年が 13 クラブ、2008 年が 15 クラブ、2009 年が 18 クラブ、
2010 年が 19 クラブ、2011 年が 20 クラブ、2012 年が 22 クラブである。14 シーズン通して J1
であったクラブは鹿島、横浜 FM、清水、磐田、名古屋、G 大阪の 6 クラブで、14 シーズンす
べて J2 であったクラブはなかった。J1 と J2 を経験しているクラブの満席率をみてみると、20
クラブ中 18 クラブにおいて J1 での満席率の平均の方が J2 の満席率の平均より高く、J2 の満
席率の平均の方が高かったクラブは浦和と千葉であった。ただし浦和の J2 は 1 シーズン(2000
年)のみのデータである。クラブが J1 だった場合と J2 だった場合で差があるかどうかを検討
するために、20 クラブの満席率の平均について t 検定を行った。その結果、J1 の満席率の平均
は J2 の満席率の平均に比べて有意に高い(t(19)= 7.30,p <.001)ということが明らかとなっ
た。これは J1 の場合、J2 に比べてより面白い試合が期待できることから入場者数が増える、ア
ウェイクラブのサポーターが多く来場することにより入場者数が増える等がその要因として考え
られる。
対象期間における満席率の平均、1 試合あたりの入場者数の平均、1 試合あたりの入場者数の
順位、年間入場者数の平均、年間入場者数の順位を表 4 に示す。満席率の平均が高いクラブ順に
並べてある。また 1 試合あたりの入場者数の平均と満席率の平均の散布図を図 1 に示す。浦和が
満席率の平均、年間入場者数の平均において 1 位であり、収容人数の多いスタジアムに多くの観
戦者が訪れているといえる。仙台、磐田、清水は 1 試合あたりの入場者数は 7 位、14 位、8 位と
多い方ではないが、満席率の平均では 2 位、3 位、4 位となっており、スタジアムを多くの観戦
者で埋めるという観点からは 26 クラブの中で成功しているクラブだといえる。近隣に収容人数
の多いスタジアムが存在し、試合でも使用されていることから、戦略的に収容人数の少ないスタ
ジアムを使用していると推察できる。F 東京、横浜 FM は 1 試合あたりの入場者数の平均が 3
位、4 位と多いが、満席率は 14 位、19 位となっており、収容人数の多いスタジアムをホームス
タジアムにしていることがその要因として考えられる。収容人数が多い分入場者数を増やす余地
はあるが、仮に入場者数が現状のままだとするとスタジアムの半分以上が空席のままとなってし
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まう。横浜 FM はホームスタジアムに日産スタジアムとニッパツ三ツ沢球技場の 2 つを登録し
ており、ニッパツ三ツ沢球技場の割合を増やすことで満席率を高めることができると考える。1
試合あたりの入場者数の平均は少ないが満席率の平均が高いクラブが存在すること、逆に 1 試合
当たりの入場者数の平均は多いが満席率の平均が少ないクラブが存在するという J クラブの特
徴は先行研究(福田、2009)と分析の仕方は異なるが同様の結果であった。
4 考察
ホームスタジアムでの満席率算出の過程より満席率をデータとして扱う際の注意点が以下のよ
うに示唆された。
第 1 にホームスタジアムでの試合数はクラブにより開きがあることが明らかとなった。近年で
はホームスタジアムでの開催率が上がってきているものの、過去には施設建設・改修中でホーム
スタジアムに登録されていたスタジアムがまったく使えなかったクラブもあったり、また名古屋
や東京 V のように一定の割合でホームスタジアム以外のスタジアムを使用していたクラブもあっ
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たりしたため、今回の満席率を使用する際には注意が必要である。
第 2 に J1 と J2 における満席率の差が挙げられる。J1 の満席率は J2 の満席率に比べて有意
に高かったことからそれぞれのクラブが年度ごとにどちらのディビジョンに属していたかを踏ま
えておく必要がある。J1、J2 というカテゴリーは満席率の影響要因とも考えられるが、前述の
イレブンミリオンプロジェクトでも J1 と J2 の目標が異なっていること、J1 から J2 に降格し
た際ホームスタジアムを収容人数に配慮して変更したクラブはなかったことからも注意すべき事
柄だと考える。
第 3 に収容人数を超える入場者数が見込まれる場合には試合会場がホームスタジアム以外の収
容人数が大きいスタジアムに変更されることがあり、その場合には分析の対象外の試合となって
いることに注意が必要である。例えば静岡ダービーである清水対磐田の試合ではエコパスタジア
ムが使用されたり、対戦相手が浦和の場合に近隣のより収容人数の多いスタジアムが使用された
りしていた。J リーグのクラブにとってもこのことはホームタウンやホームスタジアムに対する
意識に関わってくることであり、慎重に考えられるべき事柄ではないだろうか。
第 4 に 1999 年から 2012 年の間にホームスタジアムを変更し、収容人数が変更になったクラブ
が存在する。満席率はクラブ間の収容人数の違いを超えて分析できるというメリットがあるが、
同じクラブ内で収容人数が減った場合、入場者数が前年とそれほど変わらなくても満席率は大き
く上昇することになる。例えば神戸は 2003 年に収容人数 60,000 人の神戸総合運動公園ユニバー
記念競技場から収容人数 34,000 人のホームズスタジアム神戸にホームスタジアムを変更してい
る。2002 年の 1 試合あたりの平均入場者数は 11,067 人であり、2003 年の 1 試合当たりの平均入
場者数は 11,256 人であったが、平均満席率は 2002 年が 18.5%、2003 年が 33.0%である。収容
人数が減ったことが要因にも関わらず、一見入場者数が増えたようにみえるので注意が必要であ
る。しかし大分のように収容人数が増え、入場者数も増え、結果満席率が上昇しているクラブも
あるのでこのようなクラブのデータを扱う際には個別にみる必要がある。
5 まとめ
本研究では満席率を用いた観戦需要研究を行うための基礎とすべく、J リーグにおけるホーム
スタジアムでの試合の満席率を算出すること、また満席率を従属変数として影響要因を検討する
にあたっての課題を明らかにすることを目的とした。ホームスタジアム及び収容人数の把握、ホー
ムゲームにおけるホームスタジアム開催率の算出を行った上で、ホームスタジアムにおける満席
率を算出した。分析の結果 J1 と J2 では満席率に有意差がみられること、1 試合あたりの入場者
数の平均は少ないが満席率の平均が高いクラブ、逆に 1 試合あたりの入場者数の平均は多いが満
席率の平均の低いクラブの存在が明らかになった。これらの結果を踏まえ、満席率をデータとし
J リーグにおける集客に関する基礎的研究
て用いる際の課題を考察した。第 1 にホームスタジアムでの試合数の違いに注意すること。第 2
に J1 と J2 の満席率の差を考慮すべきこと。第 3 に多くの入場者が見込まれる試合は予め試合
会場が収容人数の多い会場に変更になっており、今回の分析の対象となっていないこと。第 4 に
1999 年から 2012 年の間にホームスタジアム変更に伴う収容人数の変更が満席率にみせかけの影
響を及ぼしているケースがあること。
今後は本研究を踏まえ、満席率に影響を及ぼす要因について明らかにしていきたい。
注
1 福田拓哉、2009. J リーグイレブンミリオンプロジェクト達成に向けた課題-スタジアムの集客率に着
目した現状分析-。新潟経営大学紀要。新潟経営大学、pp131-148
2 平田竹男、ステファン・シマンスキ―、2009. 日韓 W 杯が J リーグの観客数に与えた影響に関する研究。
スポーツ産業学研究 19(1)。日本スポーツ産業学会、pp41-54
3 河合慎祐、平田竹男、2010.J リーグの観客数に影響を与える要因に関する研究。スポーツ産業学研究 18
(2)。日本スポーツ産業学会、pp11-19
4 畔蒜洋平、能智大介、平田竹男、2012.J リーグにおけるアウェイクラブが観客動員数に与える影響に関
する研究。スポーツ産業学研究 22(1)。日本スポーツ産業学会、pp97-100
5
鈴木直樹、平田竹男、2012.J リーグクラブ所在地域へのプロ野球チーム新規フランチャイズが J リー
グクラブの観客数に与えた影響。スポーツ産業学研究 22(2)。日本スポーツ産業学会、pp305-310
6 J リーグイヤーブック。公益社団法人日本プロサッカーリーグ
7 J リーグ公式ホームページ、http://www.j-league.or.jp/
8 橋本純一、2010. スポーツ観戦空間:そのパースペクティブ及び現在と未来。橋本純一編、スポーツ観
戦学。世界思想社、p11