卒業証書授与式校長式辞 - 島根県立松江東高等学校

平成26年度
島根県立松江東高等学校
卒業証書授与式
式辞
梅一輪、風一陣。そこかしこに温かな春の気配が芽吹く今日の佳き日、島
根県立松江東高等学校第30回卒業証書授与式を、かくも盛大に挙行できま
すことに、心より感謝申し上げます。
松江東高校第30期卒業生となる234名の皆さん、ご卒業おめでとう。
教職員を代表して、皆さんに心よりお祝いを申し上げます。
ご家族の皆さまにも、この晴れの日を共にと、多数ご出席いただきました
こと、本当に嬉しく思っています。お子様のご卒業、おめでとうございます。
そして3年間、本校での教育にお力添えをいただきましたこと、本当にあり
がとうございました。
また、PTA会長生和康宏様をはじめ、多数のご来賓の皆さまにご臨席賜
り、卒業生の前途を祝福していただけることに、厚くお礼を申し上げます。
さて、卒業生の皆さん、年度初めの4月10日、初めての3年学年集会で、
皆さんにこんな短歌を紹介しました。
「青春と いう字に横棒 多いのは ハードルたくさん 跳ぶからだろう」
一つ一つ目の前のハードルを跳び越えて行くのが若者。そして、東高3年生
として、県総体をはじめ、高校生活における様々なハードルを、みんなでし
っかり跳びきって欲しいとエールを送りました。
東雲祭、受験……跳び越えるのが容易ではないハードルのほうが多かった
のではないかと思いますが、仲間や家族、先生、多くの方々に支えられなが
ら、諦めることなく確かな軌跡を残し、今、こうして高校卒業という、人生での
一つの大きな区切りとなるハードルを越えていく君たちを、とても逞しく感じて
います。よく頑張りました。
ただ、皆さんには、この先も、越えていかなければならないそれぞれのハ
ードルがあります。君たちには、それらのハードルを、この松江東高校の3年
間で蓄えた力で、雄々しく跳び越えていって欲しいと願っています。
本校では今年度、将来に亘って生き抜いていく「生きる力」を育てるため、
「3つの力を伸ばす」ことを重点目標に挙げました。
「人とつながって生きる力」
「自己の未来を切り拓いていく力」
「地域社会の未来と関わっていく力」という、3つの力です。
この3つの力は、これから皆さんが出会うハードルを跳び越え、自分らしく
生きていくための原動力となる力と考えています。
どうか、今後の人生においても、
「 人 と つ な が っ て 生 き る 」「 自 己 の 未 来 を 切 り 拓 い て い く 」「 地 域 社 会 の 未 来
と関わる」
この3つの力を、大切にしていって欲しいと思います。
ところで皆さんは、昨年度、松江東高校創立30周年という記念すべき年に
立ち会いました。記念講演での池上彰さんの話を覚えていますか。NHK入社
後も、仕事中にもいつでも勉強を怠らなかった経験を話され、池上さんの、
あの広く深い知の秘密が、演題のとおり「学び続けること」にあることが紹介さ
れました。
私は、心根が純朴で、素直であることを持ち味とする皆さんには、まだま
だ、いろんな事を吸収し、自分の可能性を広げ、伸ばしていく余地が大いに
あると信じています。
そのためにも、素直さを保ちながら、本校創立30周年の節目に聞いた、池
上さんのいう「学び続けること」を大切にして欲しいし、「学び続ける力」こ
そが本当の意味の「学力」とも言えると知っておいて欲しいと思います。
昨年の体育祭の前日、校庭で、3年生がメインとなる応援合戦を、少しで
も良いものに仕上げようと、ぎりぎりまで真剣に練習をリードしている3年
生の姿を見ながら、私は「大いなる未完成」という言葉を思い浮かべました。
と ぎゆう
奥 村 土 牛 と い う 、 平 成 2 年 に 101 歳 で 亡 く な る ま で 、 ず っ と 創 作 活 動 を 続
けた日本画壇の最高峰に位置した画家がいます。彼の芸術が本当に花開いた
の は 6 0 才 以 降 と 言 え る 、 そ の 土 牛 の 著 作 、『 牛 の あ ゆ み 』( 中 公 文 庫 ) に 、
こんな記述があります。
や
そ
じ
『私の仕事もやっと少し分かりかけてきたかと思ったら、いつか八十路を越
してしまった。私は、これから死ぬまで、初心を忘れず、拙くとも生きた絵
が描きたい。難しいことではあるが、それが念願であり、生きがいだと思っ
ている。芸術に完成はありえない。要は、どこまで大きく未完成で終わるかで
あ る 。 余 命 も 少 な い が 、 一 日 を 大 切 に 精 進 し て い き た い 。』
こ れ は 、奥 村 土 牛 、84 歳 の と き の 言 葉 で す 。84 歳 で の 、こ の 言 葉 。私 た ち に 、
希望や生きる勇気を与えてくれる言葉ではないでしょうか。
この『芸術』の部分を、自分に合わせて置き換えれば、どんな人にも当て
はまります。目指すのは、小さな完成ではなく「大いなる未完成」。
ひ た む き に 努 力 し 、 私 に 、「 大 い な る 未 完 成 」 と い う 言 葉 を 想 起 さ せ て く れ
た3年生の皆さんの姿。これからも、学びを止めることなく、小さな完成で
は な く 、「 大 い な る 未 完 成 」 を 目 指 し て 、 悔 い の な い よ う 、 日 々 「 大 い な る 未
完成」のための精進を積み重ねつつ、それぞれの道を進んでいって欲しいと
思います。
期待ばかり話してきましたが、これから皆さんが生きていく社会は、少子
高齢化に加え、グローバル化や情報化が進展していく、変化に富んだ時代と
なります。困難なことに遭遇することも多いことでしょう。
昨年の夏休み前の学年集会で話した「三つのシンボウ」を覚えていますか。
辛さを抱えて逃げ出さない「辛抱」を続けていけば、自分の中に一本の確か
な「心棒」ができ、そんな人には、周りからの「信望」も自然と生まれてく
る、と話しました。挫けそうになったときには、「シンボウ」「シンボウ」と呟い
て、自らの未来を切り拓いていってくれればと願っています。
私は、教育は「私たちの希望」を育てていくことでもあると思っています。現
在 、 政 府 が 進 め よ う と し て い る 「 地 方 創 世 」 と い う こ と も 、 結 局 は 、「 希 望 を
担う人づくり」こそが大事なのではないでしょうか。
松江東高校第30期卒業生の皆さん、皆さんはここに集うみんなの「輩(と
も が ら )」 で あ り 、 今 後 の 社 会 を 担 う 「 み ん な の 希 望 」 と な る べ き 存 在 で す 。
世界の、日本の、島根の、それぞれのふるさとの、そして、ご家族や友人の、
私 た ち 教 職 員 や 在 校 生 の 、「 み ん な の 希 望 」 と し て 、 皆 さ ん が 元 気 で 逞 し く 進
んで行かれることを願って式辞と致します。
平成二十七年三月四日
島根県立松江東高等学校長
飯塚
勝
「あの鐘を鳴らすのはあなた」
歌手:和田アキ子
あなたに逢えてよかった
つまずいて傷ついて泣き叫んでも
町は今 眠りの中
人はみな 悩みの中
作詞:阿久悠
作曲:森田公一
あなたには希望の匂いがする
爽やかな希望の匂いがする
あの鐘を鳴らすのはあなた
あの鐘を鳴らすのはあなた