中型動物の農作物被害防止柵楽落くんの低コスト型 らく らく 楽落くんライト 設置マニュアル 埼玉県農林総合研究センター鳥獣害防除担当 <対象動物> アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマなど中型動物、イノシシ ハクビシン、アライグマ、タヌキなどの中型動物被害対策として、スイートコーンや イチゴ、スイカなどで、被害にあう時期にだけ設置する楽落くんの低コスト型「楽落くん ライト」を開発しました。 トリカルネットの代わりに防風ネットを用い、資材コストを大幅に引き下げることが できました。ただし、ネットがやわらかい欠点を補うため、設置には手間がかかります。 1 必要資材及び設置費用(100m設置する場合の目安) 平らで四角形の畑の目安数字なので、不整型や傾斜畑では、2割程度多めに 準備した方がよいと思います。 ※防風ネット(1m幅×50m、目合い6mm)を2分割 樹脂ポール(直径8mm×長さ90cm) ポール用クリップ(直径8mm用) 100m 50本 100個 直管パイプ(直径19mm×長さ90cm) 4本 ホース(内径22mm×長さ10cm) 4本 結束バンド(150mm) 200本 結束バンド(200mm) 100本 通電線 200m 電気柵本体(出力周期が1.0~1.3秒のものが理想) 1台 ※通常販売されている防風網は目合い4mmで、直径8mmの樹脂ポールが通せないため、 必ず目合い6mmを使用してください。 2 設置の準備 (1)柵を張る位置の外周を測り、設置計画を立てます。 ・柵の外側に、人が歩いて通れる管理道を必ずつくってください。畑の境界ぎりぎ りまでの柵は侵入されやすくなります。(アスファルト、コンクリート舗装は、電 気を通しにくく感電しない。段差が近いと、飛び込みにより侵入されやすい。) ・中の作物と柵を設置する位置 は最低50cm以上離してください。作物との距離 は、作物の成長を想定し、葉や蔓が通電線に触れない位置に設定します。 ・通電線に当たって漏電しないよう、雑草は刈っておいてください。 (2)材料を準備します。 ・ネットは50cmに切断します。ここでは、高さ1m(目合い6mm)のネット の2分割を想定しています。ノコギリ、ハサミなどで切断します。 ・あらかじめ樹脂ポールにクリップを取り付けておきます。(ポールを打ち込む際 にハンマーなどでたたくと、ポールの先端がつぶれて、クリップが着けにくくなり ます。) ポールの先端がつぶれると、 ネットを切断 クリップが入らない ポールにクリップを 着けておく ・直管パイプは、パイプカッターなどで切断します。 ・ホースは、内径がパイプの太さより2~3mm広いものを選びます。 (例:直管パイプの太さ19mmの場合 → ホースの内径22mm) パイプカッターで 直管パイプを切断 ホースに切断した 直管パイプを通す 3 設置方法 (1)ネットを埋め込むための溝を掘ります。 設置計画に沿って、作物との距離、 管理道を十分にとり、柵を設置する位 置の外側に、ネットの裾を埋め込むた めの溝(深さ10cm程度)を掘りま す。 (2)ネットを張ります。 ・ポールの間隔は2mを目安に設置します。ただし、変形した畑や段差、傾斜地 では余分に資材が必要になり、角部には力がかかるため補強が必要になります。 ・ネットの裾(埋め込む部分)15cmを残し、ポールを編み込むように通しま す。(写真①) ・柵のたるみを少なくするため、ネッ トを引っ張りながら、ポールを設置し ていきます。(写真②) ・ネットの最上部をクリップに掛け ます。(写真③) ネットにポールを 通す 写真① ネットを強めに 引っ張りながら ネットをクリップ ポールを設置 に掛ける 写真② 写真③ ・ネットの継ぎ目は、隙間ができないように重ねてつなぎます。(写真④) ・ネットのたるみは、設置したネットの上部に編み込んである補強紐を引き出し、 強く引っ張るとピンと張ることができます。(写真⑤) ネットのつなぎ目 ネットのたるみを無くすため、 補強紐を引き出す 写真⑤ 写真④ 引き出した紐を結んで固定 ・ネットを強く張るため、柵の角は補強の直管パイプを使用します。(写真⑥) (マニュアルでは、直管パイプを90cmに切断し30cm程度の打ち込みで 想定していますが、雨等でほ場がぬかるとパイプが動く場合があり、打ち込める ようなら40cmほど打ち込みしっかりさせます。) ・直管パイプは電気を通してしまうので、必ず絶縁資材としてホース又は碍子を 使用します。ネットの最上部に通電線を設置するので、通電線がパイプに触れ て漏電しないよ うに、ネットをホースの下側(2cm程度)と重なるように結束バンドで固定し ます。(写真⑥) 直管パイプ(補強支柱) 通電線設置位置 ネットを2cm程度ホース に重ね、結束バンドで固定 写真⑥ (3)ネットの裾を埋めます。 ・ポールに取り付けたクリップを地上35cm(ネット最上部)、40cmに調整し ネットの高さをあわせます。(写真⑦) ・ネットの裾を外側に垂らし埋めます。(写真⑧) クリップとネットの ネットの裾を柵の外側に 高さを調整 垂らす クリップ 埋 め る 40cm 写真⑧ 35cm 写真⑦ ネットの裾を埋める (4)通電線を設置します。 ・クリップには通電線を掛けるところが左右2カ所ついています。地上35cmに設 置したクリップにはネットが掛かっているため、ネットの掛かっていない側に通電線 を通します。(写真⑨) クリップ左側にネットが掛かっている 拡大 空いている側に通電線を通す 写真⑨ ・通電線が緩んでしまわないよう、ピンと張った状態で角の補強支柱(ホース)に巻 き付け、結束バンドで固定します。(写真⑩)柵の距離が長い場合は、角の補強支柱 を追加したり、長い直線の中間部分に追加すると引っ張る力が分散され、柵がたるみ にくくなります。 ・補強支柱の絶縁資材としてガイシを利用することもできます。(写真⑪) 柵の角(ホース使用) 通電線をホースに巻き付け、 結束バンドで固定 拡大 写真⑩ 5cm 柵の角(補強支柱2本+ ガイシ使用) 写真⑪ ・ネットと通電線の間隔が広がらないよう、結束バンドでポール間のネットと通電 線を数カ所固定します。高さ35cmの通電線とネットを150mmの結束バンド で3カ所、高さ40cmの通電線とネットを200mmの結束バンドで2カ所固定 します。( 図①、写真⑫ )マニュアル通りに固定してもネットと通電線の間隔が 広がってしまう場合は、結束バンドを追加してください。 図① 高さ40cmの通電線は、 長さ200mmの結束バン ドで固定 高さ35cmの通電線は、 長さ150mmの結束バン 写真⑫ ドで固定 ・結束バンドが少ないと、動物がネットに前足を掛けた時に通電線とネットの間に広 い隙間ができてしまい、侵入されやすくなります。(写真⑬) ・結束バンドでネットと通電線を固定することで侵入防止効果を高めています。ネッ トが下がると同時に通電線も下がるため感電しやすくなります。(写真⑭) 結束バンドで固定しないと、 隙間ができやすくなる 写真⑬ 結束バンドで固定していなかったため、 改善 タヌキがネットに前足を掛けた時に、通 電線とネットの間に広い隙間ができて しまい、そこから侵入しようとしている 結束バンドで固定すると、ネット が下がると同時に通電線が下が ってくるため感電しやすくなる 写真⑭ (5)電気柵本体を設置します。 ・設置した通電線の長さに合った本体を選びましょう。 (例:設置した通電線の総延長が300m場合、有効柵線距離が500mの本体) ・本体によって電気の流れる間隔(出力周期)が異なり、この間隔が長いほど感電 する確率が低くなり、侵入されやすくなります。(出力周期は、1.0~1.3秒の ものが理想です。) 電気柵本体 4 ポイントを守って効果のある電気柵設置をしましょう! (1)被害が出る前に設置! 一度でも食べさせると、アナグマなどは執着して入ろうとします。 初めてできた障害物(電気柵)を見た動物が、それが安全なものな のかを探査する時に、いかに感電させられるかがポイントです。 (2)設置した日に必ず通電! 収穫終了後も、柵を片付ける日まで24時間通電! 探査したときに感電しないと、「電気柵だ」と認識しなくなる場 合があります。設置当日に必ず通電してください。 「収穫物がないから」と通電していないと、柵に慣れて次作や翌 年作で柵の効果がなくなる場合があります。 動物は明け方や夕方でも動きます。スイッチを「昼夜切り替え」 にすると、動物の侵入時に通電していない場合があります。 (3)漏電しないよう、雑草管理はこまめにしてください! 通電線に雑草が当たっていると、漏電して電気が弱かったり、電 気が通っていない場合があり、電気柵の効果がなくなります。 栽培しているカボチャなどのツルや葉も、通電線に当たっている 場合があるので注意してください。 約束を守って100%の効果を!
© Copyright 2025 ExpyDoc