丸山の視点 - シティバンク

2015 年 2 月 20 日発行
英語ヒヤリングの
上達プロセス
英語のヒヤリングの上達のプロセスには何段階かがあるが、ネイティブ
スピーカーでもない限り、100%の聞き取りは不可能ではなかろう
か?
丸 山
純 一
(まるやま じゅんいち)
シティグループ・ジャパン・
ホールディングス株式会社
執行役員
外
資系の金融機関に勤務する日本人の常として、筆者も英語には苦
労している一人である。今回は二回のシリーズに分けて、筆者の
考える典型的な日本人のヒヤリングとスピーキングの上達プロセスを考
えてみたいと思う。
1977 年に東京大学法学部卒業後、大蔵
省(現財務省)に入省。アメリカ合衆国日本
大使館(在ワシントン)や欧州復興開発銀行
(在ロンドンの国際機関)などの在外勤務を
経験した後、財務省国際局において様々
な課長ポストを歴任。その後、外務省欧州
局審議官、金融庁国際担当審議官を経
て、2009 年 7 月から 1 年間横浜税関長を
務める。2010 年 10 月、シティバンク銀行
顧問に就任し、2011 年 1 月より副会長。
2013 年 7 月よりシティグループ・ジャパン・
ホールディングス株式会社に移り、現在執
行役員、ガバメント・アフェアーズ担当。米
国プリンストン大学にて修士号を取得。三重
県出身。
通の日本人の場合、大学まで卒業しても英会話学校などで特別の
普
訓練でもしない限り、アメリカやイギリスに行っていきなり現地
のネイティブが話していることがわかる、ということはまず不可能であ
る。そういった時点でのヒヤリングの程度はゼロから1割程度で、ネイ
ティブの言っている簡単な単語が聞き取れるにすぎず、ネイティブとの
本格的な会話は成立しない。
現
地で語学学校に行ったりホームステイしたりするうちに、ネイテ
ィブの言っている英語の3割くらいが理解できるようになってく
ると、少し英語がわかった気分になる。ネイティブが会話で何を言おう
としているのかおぼろげながらわかるようになってくるし、ソコソコの
対応もできるようになってくる。ただし、この段階ではネイティブの発
言をまったく誤解してしまうこともあり、ヒヤリングにはまだリスクが
ある。このレベルのヒヤリング能力にはたいていの人が比較的早く到達
する。
◎
「シティバンク 丸山の視点」は丸山純一氏、個人の見解となります。シティバンク銀行株式会社またはシティグループにおける各社の見解とは異なります。
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2015 年 2 月 20 日発行
さ
らに経験を積んでいくうちに、ネイティブの言っている英語の5
割ないし6割くらいがわかるようになってくる。ここまでくると、
ネイティブの言っていることがかなりわかった気になる。この「わかっ
た気になる」ということが結構大切で、アチコチのイベントや集まりに
顔を出してもなんとか対応できるようになり自信も出てくるので、それ
がさらなるコミュニケーションの機会につながり、
「英語ができる」とい
う気分になってくる。ただし、この3割から5~6割まで到達するには、
たいていの人の場合は一定の高原状態、すなわち一生懸命英語を勉強し
ているのになかなか上達しないというプロセスを経てからになる。ある
時点で、テレビの英語がなんだかよく理解できるような気分になり、周
囲のネイティブの話す英語もよく聞こえてくるようになるのである。
さ
て、ここからさらに上達するのが難しい。筆者の考えでは、帰国
子女でもない限り、通常の日本人が100%ネイティブの英語を
聞き取るというのは不可能で、8割から9割英語を聞き取れればそれは
ほぼ完ぺきに聞き取っているのと同じである。この域に達すると、ネイ
ティブと互角に会話ができることになる。我々の日本語の会話を考えて
みても、周囲の雑音がうるさかったり、話者の声が小さかったりして、
かならずしも常に日本語を100%聞き取っているわけではない。しか
し、話の前後から聞き取れなかった部分は簡単に推測できるし、肝心な
部分が聞き取れなければすぐに聞き返せる。
英
語もこれと同じで、8割から9割聞き取っていれば、聞き取れて
いない部分の推測も容易にできるし、本当に大事な部分が聞き取
れていないと思ったら聞き返せるのである。ここまでくればシメタもの
である。ということで、普通の日本人は100%のヒヤリングではなく、
8割から9割の聞き取りを目指せばいいということになるが、普通の日
本人がこの領域に到達するにはそれなりの努力と時間がかかる、という
ことはお忘れなく。
◎
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