実機ロボティックスワームの二点間往復タスクにおける群れ行動生成

平成 26 年度 卒業論文概要
実機ロボティックスワームの二点間往復タスクにおける群れ行動生成
B115232 中谷 繁仁
【背景と目的】
Swarm Robotics (SR) は多数の比較的単純な自律ロボットを利用し,局所的な相互作用を通し
て,群れとしての協調行動を創発することを目的とする研究領域である.本研究では,SR のタス
クの一つである Coordinated motion を実環境で取り扱う.これは多くの社会性生物に見られる振
る舞いを指し,まとまりを維持しつつ移動する行動の生成を目的としたものである.Coordinated
0.6
0.4
0.2
0.0
largest aggregate
0.8
1.0
motion では局所的な相互作用による個体間の反発や接近が動的に変化することで群れの形状が変
化し適応的にタスクを達成する.この局所的な相互作用とは各個体の他個体または環境に対する
意思決定により生じる.そこで本研究では各ロボットの意思決定に着目し,これを動的に変化さ
せることで,より群れとしてのまとまりを維持しながらタスクを達成する群れ行動の生成を目指
す.また動的に変化する局所的な意思決定が群れ行動に与える影響を観察する.各ロボットの動
的な意思決定の手段として,Stochastic Learning Automaton(SLA) を用いて周囲の環境から学習
し,behavior-based の設計手法に基づいて組み込まれた行動規則の中から学習した結果に応じて
確率的に選択する方法をとる.
【実験】
Landmark
本実験で使用する我々が設計,製作したロ
ボットを Fig.1 に,実験環境とロボット群の初
期配置を Fig.2 に示す.実験には 10 台の移動
ロボットを用い,環境中の二箇所に設置された
ランドマークを往復するタスクを取り扱う.こ
Landmark
れにより生成された群れ行動を定量的に評価す
Fig. 2: Experimental enviFig. 1: Robot
ることで.各ロボットの行動規則の動的な変化
ronment
による群れ行動の生成とタスク達成への影響を検証する.評価指標には群れのまとまり具合を示
す指標である largest aggregate を用いる.これは群れ全体のロボット台数に対する最大の集合に
属するロボット台数の割合を表すものである.
【実験結果 · 考察】
Fig.3 に条件を変えて生成した群れ行動の largest aggregate による評価を示す.左から各ロボットが実験中に
学習を通じて動的に行動規則を変化させた場合の群れ行
動の評価,一定時間学習して得た結果に基づき,各行動
規則の台数を固定した場合と各行動規則を選択する確率
を固定した場合の群れ行動の評価を示す.図より台数や
Dynamic_change Behavior_fixed Probability_fixed
確率を固定した場合と比べて,各ロボットがより動的に
conditions
振る舞う方が群れとしてまとまりを維持しているといえ
Fig. 3: largest aggregate for conditions
る.また,ランドマークの往復回数も差が出なかったこ
とから,各ロボットの動的な意思決定は,より群れとし
てのまとまりを維持しながらタスクの達成を可能にすることを確認した.