海洋堆積物深部におけるアミノ酸の分布と有機物の熟成プロセス ○淵田 茂司,岡崎 香生里,益田 晴恵(大阪市立大学大学院) 海洋堆積物中に保存される有機物は親生元素,特に炭素,窒素のリザーバーとして機能し,生物化 学的サイクルの中で重要な役割を果たしている.なかでも,生物起源のタンパク質やアミノ酸は全有 機炭素量(TOC)の 10–15wt.%を,全窒素量(TN)の 30–40 wt.%を占めると考えられおり(Kawahata and Ishizuka, 1993),同定可能な有機物の大部分を占める.海洋底堆積物浅部(100–200 mbsf 程度)におけ るアミノ酸を含む有機物の分布や特徴については,これまで多数報告されている.しかし,海洋堆積 物深部中に保存される有機物についての研究報告は依然少ない.本研究では,IODP 第 338 次航海 (2012–2013,ちきゅう)で採取された堆積物コア(最大 913 mbsf)中のアミノ酸を測定し,海洋堆積 物深部における有機物の特徴について報告する. 熊野灘沖(33°18’N, 136°38’E)から採取された堆積物コア試料は,乾燥後 6 N の塩酸と混合し 110 °C で 22 時間反応させた.溶出した全加水分解性アミノ酸(THAA)の濃度を,高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いて測定した.THAA の分布は下のグラフに示す.TOC 値,TN 値および間隙水中のア ンモニア濃度値は船上分析で得られたものである.THAA の濃度は表層部(< 4 mbsf)で著しく高く, 4600–6730 μmol/g であった.これは堆積物中のアミノ酸が海洋の生物活動に由来することを示す.そ の後,THAA の濃度は深度とともに急速に減少し,100 mbsf 付近では 314–820 μmol/g であった.この 間,間隙水中のアンモニア濃度が著しく増加している.これはアミノ酸などの生体有機物が生物活動 によって分解されていることを示唆している.THAA 濃度はその後も減少し続け,最深部(913 mbsf) では 177.1 μmol/g であった.THAA は浅部で急激に減少するのに対して,TOC 値および TN 値はあま り変化していない.TOC のうち THAA が占める炭素の割合は 1.6 %から 0.2 %で,海洋堆積物中の有機 物の大部分は生体有機物ではなく,ケロジェンなどの腐食物質として存在している可能性が高い.発 表では,アミノ酸の組成,全炭素同位体比および Rock-Eval の分析結果を交え,海洋堆積物深部におけ る有機物の存在形態と熟成プロセスについて考察する. NH4+ (mM) THAA (μM) 0 2000 4000 6000 0 5 10 TOC (wt.%) 0.0 0 Depth (mbsf) 200 400 600 800 C0002 C0021 C0022 1000 (in in terstital w ater) 0.5 1.0 TN (wt.%) 0.0 0.1 0.2
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