コーヒーの抗酸化性に寄与する要因について

第3日目E会場
3E−06p 力力ロールの活性酸素消去機構
3E−07p油脂の光増感酸化に対するカロテノイドおよびポリ
0新藤一敏1)、上條一香1)、山田愛1)、北澤宏明2)、北川優2)、曽我部敦2)
1)日本女子大・家政・食物、2)東洋紡・バイオフロンティアプロジェクト推進室
フェノールの防止効果
O櫻井玲奈1)、戸谷洋一郎1)、原節子n
【緒論】当研究室ではモミジガサ(別名しどけ)に含まれるカカロールがラット
1)成踵大・理工
脳脂質過酸化に対して極めて高い抑制作用を有することを見出し、2004
年度の本大会で報告した。その後の研究で、カカロールが様々な活性酸
素種を消去する能力を有することが明らかとなって来ている(前演者の報
【目的】光増感剤であるクロロフィル(ChDを含むバージンオリーブ油は光増
感酸化を受けやすいため、有効な酸化防止策を講ずる必要がある。一方、
告)。しかしながらカカロールがどのような反応機構により活性酸素種を消
去するかについてはいまだ全く知見がないため、カカロールの酸化反応物
の構造を確認することによりその解明を試みた。【方法】精製したカカロー
ルを一重項酸素と反応させた(メチレンブルー法)。得られた酸化反応物を
精製し、その構造を解析、決定した。またいくつかの酸化反応物について
ラット脳脂質過酸化抑制作用を検討した。【結果および考察】カカロールを
一重項酸素と反応させた結果、3時間ほどで完全にカカロールは消失し、多
β一カロテン(β一car)やアスタキサンチン(Asta)などのカロテノイドは活性酸素
を消去し、酸化を抑制することが注目されている。本研究では、光増感酸
化に及ぼすChl含有量の影響と、各種カロテノイド、トコフェロール(Toc)お
よびポリフェノールの光増感酸化に対する防止効果について検討した。【方
法】ホウレン草からシリカゲルカラム分画により濃縮したCh1区分をオリーブ油
に添加して、蛍光灯照射下で酸化試験を行った。まず、光増感酸化に対
するChi含有量の影響を検討した後、オリーブ油およびCh110ppm添加オ
リーブ油に対する各種カロテノイド、Toc、ポリフェノールの酸化防止効果と
くの酸化反応物スポットがTLC上確認された。量の多い数成分について
シリカゲルカラム、ODS HPLC分取により精製を行い、NMR,MS分析を用
最適添加量について検討した。なお、カロテノイドとしてはβ一carとヘマトコッ
いてその構造を解析した。その結果、カカロールはベンゼン環、フラン環部
分に複数の一重項酸素との反応点を有することが判明した。またいくつか
の反応物についてラット脳脂質過酸化抑制作用を検討した結果、その構造
によって抗酸化活性に大きな差が存在することが明らかとなった。これは一
てはルイボスティー抽出物、ブドウ種子抽出物、エピガロカテキンガレート、プ
重項酸素消去試験とラット脳脂質過酸化抑制試験では主たる活性酸素種
カス藻を原料とするAsta含有油脂(Asta約8%含有)を、ポリフェノールとし
ロピルガレートを使用した。また、酸化試験においては、電位差滴定法によ
り過酸化物価(PV)、HPLC法によりToc量、吸光度法によりCh1含有量お
よびカロテノイド含有量を経時的に追跡した。【結論】油脂中のCh1含有量
の増加に伴ってPVは顕著に上昇し、オリーブ油の酸化が促進された。また、
が異なり、カカロールの反応機構が活性酸素種によって異なることを示して
Chlを含まないオリーブ油に対して、各種カロテノイド、ポリフェノールおよび
いると考えられる。
Tocは酸化防止効果を示した。さらに、10ppmのCh1を添加したオリーブ
油の光増感酸化は、β一carを2,400ppm添加することによって抑制できるこ
とが判明し、Toc添加系よりもβ一car添加系においてPVが顕著に抑制され、
優れた防止効果が確認された。なお、両者の共存による相和効果がみら
れたが・その効果は主にβ一carに依存していた。AstaにおいてもCh1の添
加・無添加のいずれのオリーブ油に対して酸化防止効果があると認められ
た。しかし、ポリフェノールはCh1無添加油脂に対しては酸化防止効果を示
したが、Chlによる光増感酸化に対しては酸化防止効果を示さなかった。
3E−08p コーヒーの抗酸化性に寄与する要因について
3E−09p味噌の発酵・熟成過程における機能性成分について
の検討
0飯田綾1)、小長井ちづる1)、グユエン・ヴァンチュエン1)
○神山真澄1)、唐沢秀行1)、岸本良美2)、谷真理子2)、近藤和雄2)
1)日本女子大・食物
【目的】コーヒーには多種類の抗酸化成分が含まれていることが知られてい
るが、その詳細は未だ解明されていない。そこで演者らは、コーヒーの抗
酸化性に寄与する要因を明らかにする為に、未加熱・加熱クロロゲン酸、
及びその分解生成物の抗酸化性を比較した。更に、コーヒーより分離した
メラノイジン、及びモデル系メラノイジンの抗酸化性について検討した。
【方法】クロロゲン酸は、170∼300℃の6段階の温度で加熱し試料とした。
未加熱及び加熱したクロロゲン酸の抗酸化性は、ラット脳ホモジネートにお
ける過酸化脂質(TBA値)生成抑制率を測定し、指標とした。また、クロ
ロゲン酸を加熱することにより生成される7種のフェノール成分についても抗
酸化性を比較した。レギュラーコーヒーは一定の粗さに挽いたコーヒー豆に
水を加えて加熱し、またインスタントコーヒーはコーヒー粉末を熱湯に溶解し
た後、それぞれを透析、凍結乾燥し、SephadexG−25で分離し、凍結乾燥
を行いコーヒー由来のメラノイジンを得た。モデル系メラノイジンは、糖にアミ
ノ酸又はクロロゲン酸をコーヒー生豆における構成比率で反応させ、透析し
て得た。これらの抗酸化性についても上記の方法により測定した。
【結果】クロロゲン酸の加熱による抗酸化能への影響について検討したとこ
ろ、未加熱から190℃加熱までのものは抗酸化性にほとんど変化は無かっ
たが、190∼210℃にかけて著しく高くなり、230℃で最大となった。300℃で
は顕著に低下した。クロロゲン酸の分解生成物は、カフェ酸、4メチルカテ
コール、ピロガロールが高い抗酸化性を示した。コーヒーメラノイジンの抗
酸化性は、レギュラーコーヒー由来のものとインスタントコーヒー由来のもので
同等であった。モデル系メラノイジンは、クロロゲン酸・糖混合メラノイジン
が高い抗酸化能を示した。これらの結果から、一般にコーヒーが焙煎され
る210∼230℃の温度帯においてクロロゲン酸は分解され、カフェ酸、4メ
チルカテコール、ピロガロールなどが生成することにより、コーヒーの抗酸化
性が発現することが推測された。また、コーヒーメラノイジンの抗酸化性に
は主にクロロゲン酸と糖の反応が寄与することが示唆された。
1)長野県工業技術総合センター 食品技術部門 加工食品部、2)お茶の水女
子大学 生活環境研究センター
【目的】味噌は、さまざまな生理機能が期待されている。これは、熟成過程
において、各種微生物の産生する酵素作用で、原料素材中には存在しな
い新たな機能性成分が生体調節機能に影響を及ぼすためだと考えられて
いる。しかし、発酵・熟成期間を追って、機能性を検討した報告は、少なく、
味噌における生理機能の解明は、十分でない。そこで、本研究は、味噌
の熟成過程による機能性成分の分析およびその効果について検討すること
を目的とする。【方法】味噌(米麹と大豆で作る米味噌)の熟成工程におい
て、発酵、熟成期間の異なる味噌8種類(仕込み1週間、2週間、1ヶ月、
15ヶ月,2ヶ月、3ヶ月、3.5ヶ月、4ヶ月熟成)を作製した。各味噌のエタノー
ル抽出液の抗酸化能を低比重リポ蛋白(LDL)を用いた1ag dme assayに
より比較検討するとともに、各味噌中の成分を分析した。熟成により増加
した成分について、血管内皮細胞(HUVEC)における機能性を検討した。
【結果】熟成期間が長い味噌ほど、総ポリフェノール量は増加し、大豆イソ
フラボンのうち、アグリコン型の量が増加した。各味噌の抗酸化能について
も・熟成に伴い・1agtimeの伸長が認められた(controlと比較して15倍
∼3倍の延長)。そこで、大豆イソフラボンアグリコン型であるgenistein、
(iai(izein、glyciteinおよびe(1uolについて、1agtime assayを行ったところ、
全ての成分において、抗酸化能を認め、中でもequo1は特に強い抗酸化能
を認めた(10μM添加により、controlと比較して2.5倍の延長)。HUVEC
に酸化LDLを添加すると、apoptosisをおこすことが認められたが、同時に
equo1を添加することにより、これを抑制した。この際、細胞内活性酸素の
産生に関わるNAD(P)H oxidaseのサブユニットのmRNAレベルでの発現
量、および弛緩メディエーターであるeNOSに影響を与えていることが示さ
れた。【結論】味噌の発酵、熟成過程において、大豆イソフラボンのアグリ
コン型が増加し、抗酸化能が増強した。大豆イソフラボンのアグリコン型お
よび代謝物のequolは、HUVECにおいて、酸化LDL刺激による細胞内
活性酸素の産生を抑制し、apoptosisを抑制した。
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