ひとこと(江良 修)

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The journal of nagasakiken medical association
10月26日深夜、 NNN ドキュメント『「11別
つながらなかった救急 6分20手少』を見た。相死
要は以下のとおり。
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平成23年Ⅱ月9日、・一人暮らしの男子学生
の遺体が山形市内のアパートの一室で見つかっ
た。死亡推定時刻はⅡ月1日頃。携帯電話に
残されていた最後の発信先は「H9」。 9日前の
10月31日午前5時Ⅱ分だった。
10月31日午前5時Ⅱ分、男子学生は動け
ないほどの容態の悪化のため救急車を要請した
が、対応した消防署員が6分20秒という異常
なほど長い応答時間を費やしながら「救急車の
要請なし」と判断。タクシーで病院を受診する
ように言い救急車を出動させなかった。通報を
受けた山形市消防本部にはその時の音声記録が
残っていた。途切れ途切れの声、荒い息、遣いな
ど、その声は誰が聞いても尋常な状態とは思わ
れなし寸隶子だった。しかも通報当時、山形市消
防本部の管内で救急車の出動はなく、 5台全て
が出動できる状態だった。救急車が出動してい
れば助かった可能性が高いとして遺族が訴訟を
起こし民事裁判となった。
山形市は、消防署員の対応はマニュアルに
沿ってなされており、救急車要請時の学生の応
答から自力で受診可能と判断したとし、学生の
死亡原因との因果関係が不確かなので謝罪の必
要もR割賞の必要もないという姿勢を示している。
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死亡後10日ほど経過していたため直接の死
亡原因が不明瞭になっているが、司法解剖の結
果では「ウイルス性心哨劣炎」力浅是われているよ
うだ。
いずれにしても、男子学生が危険な薬物を
使っていたとか、持病があったとか、明らかな
別の要因がない限り、急、性発症の病死であるこ
とには異論はないであろう。このケースは病死
だからこそ救急出動しなかったことが問題なの
だ。
検屍の経.験から、病死の場合、在宅での孤独
死は、,患者が受診出来ない状態(救急へ通報し
山形市長や山形市消防本部は、「一消防署職
員が,患者の病状について判断を下す信今断と
いってもいい)」という、医師法に抵触しかね
ない行為を公然と行っていること自体が問題で
あることに気づいていないのだろうか。
消防署から学生の住居までわずか1キロ余り。
すぐに出動していれば、 6分20秒もかからず
に患者の容態を確認できたはずである。
番組中で、軽症者の不適切な救急車要請事例
が増えている事や、搬送件数の増力肌こ伴う相対
的な救急車の不足などが、出動しないケースの
理由として挙げられていたが、今回の事例で論
点にはならない。最も問題にすべきは、現場で
病状を確認するという基本的な行動をとらない
で、医師ではない一消防署員が、電話一本で患
者の病気の診断(病状、重症度などを含む)を
下したことである。隊女急車の要請なし」の判
断は明らかに過失だと思う。このような怠慢事
例に対して、医師の医療過誤に対して過剰な反
応を示す警察が何もしないでいることも肺に落
ちなし、。
一人暮らしの学生が当院を受診し、インフル
エンザなどにより高熱でぐったりしている時、
私は、入院を勧めたり、状況が許せば自宅から
家族に来てもらうように指導したり、友人に
時々電話を入れて様子を伺ってもらうよう頼ん
だりと、,患者が長時間一人だけの環境にならな
いよう細心の注意を払っている。
軽症者の救急車要請は確かに社会的問題であ
る。社会的啓蒙と国民一人一人の自覚に委ねる
しかない。ただ、結果的に軽症であっても、
人には重症感がある場合がある。その逆もある。
診断し重症度を決められるのは診察した医師だ
けだ。だから、患者と医師を結ぶ命綱である救
急、隊は、いかなる理由があろうとも救急車の要
請を拒否してはならないのである。
年末の忙ししⅧ寺期で大変だとは思うが、この
うな悲しい事件が二度と起きないよう、救急
隊員の皆さんには大いに活躍して頂きたいと思
( H26.11.1 )
つ0
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ど)のために起こる事は明白である。今回のケー
スは、,患者からの要請を退け救急車の出動をし
なかったことが、学生が受診できなかった原因
である。つまり、消防署員の対応と死亡との間
「ひとこと」を脱稿した後、衆議院の解散総
選挙が決まった。この号が会員の手元に届く頃
は結果が出ているだろう。政治の診断・治療を
するのは政治家である。国民の健康・安全を守
るため、現場をよく見て誤診の無いよう肝に銘
には因果関係があるのだ。
じて欲しいものである。
れるノ\がいない、本ノ\が通幸艮できないな
(江良修)
長崎県医師会報[平成26年12月15日発行・第827号]、毎月1回発行、定価 1音関50円
発行所/長崎県医師会・編集兼発行人/牟田幹久
広報委員会/委員長・江良修、委員・増崎英明、米満伸久、山本広樹、寺井裕二
安永暁生、佐々木豊裕、古田千事、牟田幹久、長谷川宏、増元秀雄
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長崎県医師会報第827号平成26年12月
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