パワーデバイス ハンドブック

パワーデバイス ハンドブック 省エネ社会を実現!さらなる成長が見込まれるキーデバイスの最新動向
パワー MOSFET メーンに展開
㈱東芝 セミコンダクター&ストレージ社
ディスクリート事業の6割弱
保守やメンテナンス事業に特化してお
動車のバッテリー用途や DC/DC コン
り、事業を拡大しようというスタンス
バーター用途に出荷が増えており、近
同社の半導体事業は NAND フラッ
ではない。
い将来、高耐圧パワー MOSFET の主
シュが主役であるが、パワーデバイス
目下、重点強化しているのがパワー
力製品になるという。さらに、現在は
事業においても、高い技術力を武器に
MOSFET だ。パワー MOSFET は低耐
第 5 世代品の開発も進めており、15 年
グローバル市場でシェア拡大に成功す
圧から高耐圧品まで幅広く製品を取
以降の市場投入を計画している。村上
るなど、着実に成果を上げている。
り揃えており、主に低耐圧品ではトレ
氏によれば「ピラーピッチを細くする
同社のパワーデバイス事業はディ
ンチプロセス、高耐圧品ではスーパー
などとして、オン抵抗の低減を図って
スクリート事業に含まれている。う
ジャンクション(SJ)プロセスを採用
いく」としており、遠からず技術的な
ち、6 割弱がパワーデバイス事業であ
する。
めどは立つという。
り、 主 力 事 業 の 1 つ だ。 製 品 分 野 は
SJ-MOSFET は「DTMOS」シリーズ
主力のパワー MOSFET のほか、サイ
として展開しており、現在第 4 世代品
リスタやトライアックなども手がけ
となる「DTMOS Ⅳ」が 2011 年夏から
る。IGBT に関しては、04 年に三菱電
量産されている。第 4 世代品では SJ 構
パワーデバイスの前工程生産の主
機に売却しているが、IEGT(Injection
造を作る工程において、新たにシング
力工場は加賀東芝エレクトロニクス。
Enhanced Gate Transistor)と呼ばれ
ルエピ方式を採用している点が大きな
8 インチラインでパワー MOSFET な
る超高耐圧品に関しては、引き続き自
特徴だ。これまでの SJ-MOSFET はマ
どを生産する。競合他社が先行する
社で製品展開を行っている。トライ
ルチエピ方式が採用されていたが、n
300mm 生産について、村上氏は明言
アックやサイリスタにおいては現状、
層と p 層の境界面に濃度変化が生じや
を避けたが、「パワーデバイスでも、
൐ঢ়ȁΓη΋ϋΘ·ΗȜ&ΑΠτȜΐ২͈ުୡ
2,258
‫׫ؙ‬
2,500
1,800 2,000
‫ުא‬၌‫ף‬
1,500
958
664
1,000
‫׫ؙ‬
473
500
14,000
11,827
11,650 0
12,000 11,395
9,802 9,029
ΟͻΑ·ςȜΠ
10,000
8,000
ΏΑΞθLSI
6,000
ικς
4,000
2,000
0
10ාഽ 11
12
13
14
すいなどの課題があった。
いずれ 300mm ウエハーの時代が来る
これに対し、シングルエピ
のは違いない。内部で試作などをやっ
方式は一括エピを行うこと
ているが、当社で 300mm を立ち上げ
で、直線的に p 層を形成す
るのはまだまだ先というのが認識だ。
ることができ、特性面では
ただし、時期は別として必ずやる」と、
優れている。さらに、同社
コスト競争に打ち勝っていく姿勢を強
のパワーデバイス技師長で
調した。
ある村上浩一氏によれば、
一方、次世代に向けては SiC パワー
「リードタイムの短縮につ
ɦ‫ުא‬၌‫͉ף‬12ාഽ̥ͣΑΠτȜΐমު͜‫͚܄‬
パワーデバイスの主力前工程拠点である加賀東芝エレクトロニクス
28
300mm立ち上げも検討課題に
第 2 章 パワーデバイスメーカーの生産・投資計画
デ バ イ ス の 開 発 に 力 を 入 れ て い る。
ながり、プロセスコ
13 年 3 月には、姫路半導体工場で SiC-
ストを安くすること
SBD(ショットキーバリアダイオー
ができる」という。
ド)の量産を開始したと発表。現在、
シングルエピ方式に
650V 耐圧品をスイッチ電源向けに量
よ る SJ 構 造 の 作 製
産しているほか、1700V 耐圧の開発も
は東芝が業界に先駆
完了している。現在は 4 インチライン
けて行っており、同
で SiC パワーデバイスを生産している
社の技術力の高さを
が、6 インチ化についても、ウエハー
物語っている。
の安定調達や低価格化が進めば、切り
第4世 代 品 は 自
替えを積極的に検討していく考えだ。
パワーデバイス ハンドブック 省エネ社会を実現!さらなる成長が見込まれるキーデバイスの最新動向
デバイス&シリコン材料製造のローカル大手企業
中環半導体
天津中環半導体股份有限公司
パワーデバイスの開発・製造に注力
半導体の封止技術を採用した生産ライ
また、13 年 6 月には、フフホト市政
ンを導入し、天津市ハイテク企業に登
府と晶盛機電と共同出資で、LED 用サ
ディスクリート製造などを主体とす
録された。2000 年、シリコン材料事
ファイアインゴットを製造する内蒙古
る天津のローカル系半導体メーカーの
業を本業とする天津市環欧半導体材料
晶環電子材料を設立した。半導体や材
中環半導体は、ダイオード、シリコン
を設立、人工衛星やロケットなどに使
料分野などで手広く事業展開を拡大し
ウエハーなどを製造している。近年、
用する太陽電池用のシリコン材料を開
ている。中環半導体はグループで 13
半導体分野では IGBT などのパワーデ
発した。中国初の有人軌道飛行に成功
年に 37.3 億元(約 593 億円)を売り上
バイス、太陽電池分野では n 型単結晶
した国産宇宙船の「神舟 5 号」に同社
げた。
型シリコンウエハー、LED 用サファイ
製のシリコンウエハーを使用した太陽
ア基板など事業の多角化を進めてい
電池が搭載された実績を持つ。
09年に6インチで
る。パワーデバイス分野では、整流ダ
中環半導体は 04 年、株式会社に組
パワーデバイスを製造
イオード、高圧ダイオード、ブリッジ
織変更し、07 年に深圳証券取引所の中
ダイオード、FRD、ショットキーダイ
小企業ボードにて株式を上場させた。
オード、TVS ダイオード、MOSFET、
IGBT などを製品としている。
中環半導体は 09 年、6 インチウエ
ハー対応で 0.35μm プロセスのパワー
太陽電池用シリコン材料で事業拡大
デバイスの生産ラインを立ち上げ、09
年末から生産を開始した。この生産ラ
中環半導体のシリコン材料の製造子
インは月産能力が 3 万枚あり、その後
会社の天津市環欧半導体材料は 2011
IGBT の生産も始めた。11 年 1 月には、
中環半導体の前身となる天津市半導
年、外部企業との共同出資により内蒙
米 ACA と共同出資で天津環聯電子科
体材料厰は 1958 年に設立された。69
古欧晶石英を設立し、石英ルツボの生
技を設立し、4 インチ半導体のチップ
年に天津市第三半導体器件工場も設
産を開始した。ルツボ内製化により、
製造も開始した。
立され、75 年にダイオードの生産を開
製造コストの低減を狙う。
中環半導体の IGBT 製品は天津の 6
始。89 年に天津市第三半導体器件工
12 年 8 月には中環半導体と内モン
インチ工場で製造され、1200V(15A
場が天津市中環半導体に改組され、グ
ゴル自治区のフフホト市政府、米太陽
/ 20A / 25A) と 3300V(10A) の
ループ傘下に第四半導体器件厰(ディ
電池大手のサンパワー、内モンゴル電
NPT(Non Punch-through)トレンチ
スクリート製造)、第五半導体器件厰
力と共同出資でギガワットクラスの
IGBT を生産している。1200V 製品は
(バイポーラ製造)、第六半導体器件厰
メガソーラーの建設プロジェクトに
量産しており、3300V は試作を完了し
(シリコン材料)、半導体材料厰厂(シ
調印し、華夏聚光(内蒙古)光伏電力
ている。
リコンおよびゲルマニウムの結晶イン
を設立した。また、12 年 12 月、中環
天津の 6 インチ工場では IGBT 製造
ゴット)など天津の国営半導体関連企
半導体のみの資本で中環境能源(内蒙
に必要なバックグラインド
(裏面研削)
業を集約した。
古)を設立し、メガソーラーの建設を
工程の設備も保有している。
中環半導体は 94 年、自社開発した
開始した。
天津の国営半導体工場を合併・再編
第 4 章 中国パワーデバイス関連企業の事業戦略
73
パワーデバイス ハンドブック 省エネ社会を実現!さらなる成長が見込まれるキーデバイスの最新動向
Ag シンターのダイアタッチ材を開発
アレントジャパン
Alent Japan
SiC/GaNを視野に
同社は7 ∼ 8年前からこのダイア
イスと貼り合わせて使用する手法で量
タッチ材を開発・改良している。供給
産されている。
アレントジャパン㈱(アルファ事業
形態はペースト状とフィルム状の 2 タ
従来は接合材料に高融点はんだなど
部 = 神 奈 川 県 平 塚 市 東 豊 田 480-28、
イプを揃える。ペーストタイプはメタ
を採用していたが、同素材よりも低温
Tel.0463-53-3333)は、高熱伝導性を
ルマスクを使ってスキージヘッドで塗
(250℃)で接合できるため、ウエハー
誇る次世代の接合材料、ダイアタッチ
布するもので、あらゆるモジュール工
の反りや歩留まり低下が抑制でき、有
「Argomax」を開発、量産体制も構築
程に対応しやすく工程の自由度が高
効面積の最大化で大幅なコストダウン
している。同製品は、既存の高温鉛は
い。一方、フィルムタイプはプロセス
につながると、顧客から高い評価を得
んだ/鉛フリーはんだ材料を代替す
を簡略化でき、かつ大面積でもティル
ているようだ。
る。特に、高温動作が確認されている
トを抑制し、平坦性を確保できるなど
もう 1 つのダイアタッチ材「Atrox」
新材料の SiC や GaN のパワーモジュー
の利点を売りにしている。
は、銀ペースト中心に高温対応が要求
される LED やパワーディスクリート
ル向けを狙っている。チップシュリン
クが進むため、より電流密度が向上す
工法そのものを提案
半導体や電子部品をプリント基板に
る次世代 IGBT モジュール向けも視野
に入れている。
技術開発・実用化で一歩リードか
ダイアタッチ材の主力製品の 1 つ
の導電性接着剤としての普及が進む。
特にフィルムタイプは、チップの実
実装する工程の 2 次実装向け鉛フリー
装(接合プロセス)手法そのものを独
高温はんだとして「Innolot」もライン
自で提案している。同工法は「ダイ・
アップ。チップレベル∼ボードレベル
トランスファー・フィルム(DTF)」と
までのトータル接合技術を売りにして
呼ばれる。チップをピックアップし
いる。これも車載用途を視野に高信頼
「Argomax」は、従来のはんだ材の熱
て、いったんダイアタッチフィ
伝 導 特 性 が 10 ∼ 25W/m・K と い っ た
ルムをチップに転写し、その後
レベルであるのに対して、250W/m・K
に絶縁基板(DBC)上へダイボ
と 10 倍以上の優れた熱伝導性を有し
ンディングするという流れだ。
ているのが特徴だ。さらに、はんだ材
市販のフリップチップ対応ダ
の塗布量よりも少ない 30 ∼ 50μm 厚
イボンダーを使うことができ、
においても信頼性の高い接着強度が確
スムーズな実装が行えるとし
保できる。
ている。同社では材料供給に
また、接合時間は数秒∼ 30 分で十
とどまらず、生産プロセスの提
分としており、他の素材や同業他社な
案まで、一歩踏み込んだかたち
どが提供する製品と比較しても接合時
で顧客サービスを展開するの
間が短い。すでに国内外多数の顧客と
が特徴だ。
何らかの NDA(秘密保持契約)を結び、
なお、12 年からフィルム状ダ
共同開発を進めているという。
イアタッチ材の供給を開始して
これらの実装材料の最適条件を探る
いる。サイリスタと呼ばれる大
ため、3D 焼結パラメーターを取得し
電力変換素子向けで、6 インチ
てデータベースを構築するなど、研究
ウエハーサイズに対応する。こ
開発や実用化の点で同市場において
の製品はダイ・トランスファー・
リーダー的存在といえる。
フィルム工法を適用せず、デバ
日本法人の社屋
Argomax のフィルムタイプ製品
第 5 章 材料メーカーの事業戦略
89
パワーデバイス ハンドブック 省エネ社会を実現!さらなる成長が見込まれるキーデバイスの最新動向
฼൵ఘࢥા໦ື଎Ȇཤ٬ൽȆཤ൐ཤ
■ 北海道 ■
【函館市】
△ ㈱ジェイデバイスセミコンダクタ 函館地区
【三笠市】
△ 北海道オリジン㈱
【千歳市】
△ ㈱デンソーエレクトロニクス
▲ ミツミ電機㈱ 千歳事業所
【恵庭市】
▲ 京セミ㈱ 恵庭事業所
‫ل‬ᘬ⣔
■ 青森県 ■
【五所川原市】
▲ 富士電機津軽セミコンダクタ㈱
【北津軽郡鶴田町】
△ ハイコンポーネンツ青森㈱
Ⱂ᎓᭔
ᲆ
ᨀ
᭔
஀
ཆ
᭔
■ 岩手県 ■
【北上市】
△ アムコー岩手㈱
△ ㈱ミスズ工業 岩手工場
▲ 岩手東芝エレクトロニクス㈱
【奥州市】
△ ㈱ミズサワセミコンダクタ
【胆沢郡金ケ崎町】
▲ ㈱デンソー岩手
■ 秋田県 ■
【秋田市】
△ マイクロン秋田㈱
【由利本荘市】
▲ ㈱秋田新電元 飛鳥工場
△ ㈱秋田新電元 大浦工場
【大仙市】
△ セイコーインスツル㈱ 秋田事業所
ɝȁ֚۹ࢥા
ɣȁஜࢥ೾ࢥા
ɢȁࢃࢥ೾ࢥા
ɞȁࡄ‫ݪ‬ਫ਼Ȇࡄ‫ٳݪ‬อࢥા
ġġġġΟΎͼϋΓϋΗȜ
əȁْࠗಎ
ɦȁ̷͈ఈ
106
第 6 章 半導体工場分布図・ディレクトリー
書 名 ..................パワーデバイス ハンドブック
体裁・頁数 ...........A4 変形判 オフセット刷り 126 頁
定 価 ..................12,000 円+税
この PDF ファイルは株式会社産業タイムズ社が、サンプル閲覧用に作成したものです。
この書類の記事・写真図画等の著作権は株式会社産業タイムズ社、またはその情報の提供者に帰属します。
再配布にあたっては内容の改変を行わないでください。
Copyright (C) 2014 Sangyo Times, Inc. All rights reserved.