近畿・中部地区医系大学知的財産管理ネットワーク 新技術説明会 平成26年9月30日 心腎連関における可溶性Flt-1の 産生低下とその治療戦略への応用 奈良県立医科大学 第一内科学 教授 斎藤能彦 准教授 上村史朗 助教 竹田征治 背景 1 ・慢性腎臓病(CKD)症例では 高率に心不全を合併する (Cardio-renal syndrome type 4: CRS4) ・CKD合併心不全は重症化しや すく予後が悪い ・CKD合併心不全への既存の 治療薬は効果が少ない J Card Fail 2002; 8: 136 従来技術の問題点 ・慢性腎臓病(CKD)に合併する心不全の発症機序に は血行動態的な機序が考えられていた ・しかし、CKDから心不全発症につながる分子機序は 不明であった ・従って、分子機序に立脚した特異的治療法は存在 しなかった ・CKDのモデル動物の作成が困難で、創薬への妨げ になっていた ・CRS4のモデルマウスは存在しなかった 背景 2-1 PLGF,Flt-1,solubleFlt-1の基礎 ・PLGFはVEGFのファミリー ・受容体であるFlt-1に結合し、炎症反応、血管新生を 誘導 ・solubleFlt-1はFlt-1の細胞外ドメインからなるアイソ フォームで、PLGFに結合するがシグナルを伝えない ・Soluble Flt-1はPLGFの内因性拮抗物質として働く 背景 2-2 背景 3 CKDでsFlt-1の産生は低下 Copies/GAPDH ヒト腎生検組織 sFlt-1/GAPDH Kidney 0.8 P<0.05 0.6 0.4 * 0.2 2.5 0.0 2 Control 5/6 NR Copies/GAPDH 腎不全マウスでのsFlt-1産生 Lung 15 * 10 5 0 Control 5/6 NR 1.5 HD症例血清によるsFlt-1の産生抑制 1 0.5 0 1 2 3 CKD stage 4 慢性腎不全の病態の特徴 健常人 PLGF 慢性腎臓病 sFlt-1 sFlt-1 PLGF PLGF相対的活性亢進 慢性腎不全の病態の特徴を兼ね備えた モデルマウスの作成 S-Flt-1特異的欠損マウス • sFlt-1はEx13とEx14の間で の選択的スプライシングで 生成される • Ex13とEx14を直接繋げた transgeneを作成し knockinした。 Ex13 Ex14 変異体 Flt-1 stop sFlt-1 sFlt-1mRNA発現量 Ex13 Ex14 sFlt-1 KO腹腔内マクロファージは活性化している sFlt-1 KOに心不全を作成 ・sFLt-1 KOマウスは、 それだけでは心不全を 発症せず 大動脈縮窄モデル TAC model ・圧負荷を加えて、 心不全易発症性を検討 sFlt-1 KOの心不全易発症性の証明 左室の収縮力の低下 生命予後(K-M 解析) CRS4モデル(sFlt-1 KO+TAC処理)の その他の特徴 ・左室駆出率の低下(収縮力の低下) ・心室重量の増加 ・心室壁の増加 ・心室線維化の増悪 ・心室へのM1マクロファージの浸潤増加 ・上記変化は慢性腎臓病に合併する心不全の 変化と似ている 新技術の特徴・従来技術との比較 1 ・sFlt-1 KOマウスは腎機能は正常であるが、慢性腎 臓病で観察されるPLGF/Flt-1系の相対的活性化を示 している ・sFlt-1 KOマウスにTAC処理を施したマウスはCRS4の モデルとして、実験に供することが可能となった ・過去においては腎不全モデルにさらに心不全モデルを 作成することは、侵襲的であり、かなり困難を極めた ・慢性腎不全における心不全易発症性の機序の発見 (相対的PLGF/Flt-1系の活性化が関与) Flt-1シグナリングとレスキュー実験の経路 PlGF sFlt-1 VEGF レスキュー実験 Flt-1 1. リコンビナント sFLt-1 MCP-1 2. 抗PLGF抗体 心不全・線維化 3. 抗MCP-1抗体 レスキュー実験の結果 左室駆出率による改善度 リコンビナント sFlt-1 抗PLGF抗体 抗MCP-1抗体 EF (MCP1 Ab) 100 % 80 60 40 20 0 WT KO WT KO WT KO Control TAC TAC+MCP-1 リコンビナントsFlt-1、抗PLGF抗体、抗MCP1抗体の持続投与で、TACによる左心機能 の低下を防ぐことができた。創薬への応用 新技術の特徴と従来技術との比較 2 ・sFlt-1のCRS4に対する治療薬の可能性を示した ・PLGF・Flt-1系を創薬標的にすることが可能と なった 想定される用途 CRS4の治療薬としての観点から • 創薬 – sFlt-1の誘導体の開発 – 内因性sFlt-1産生促進剤の開発 • 対象疾患 – 慢性腎不全合併心不全の治療薬に応用 – 慢性腎不全にともなう動脈硬化に応用 実用化に向けた課題 ・慢性腎不全モデルマウスにTAC処置を行い リコンビタントsFlt-1の治療効果の確認 ・中動物(ウサギ)でCRS4モデルを開発し、sFlt-1 の効果を確認 ・WHHLウサギ(動脈硬化モデルウサギ)にリコン ビナントsFlt-1を投与し、腎不全に伴う動脈硬化 の治療効果を確認 企業への期待 • GCPグレードのリコンビナントsFlt-1作成 • sFlt-1誘導体の開発 • 内因性sFlt-1産生促進剤の探索 本技術に関する知的財産権 ・発明の名称 : CRS4の治療及び/又は予防のための 組成物、CRS4モデルマウス及びバイオマーカー ・出願番号 : 特願2013-258220 ・出願人 : 奈良県立医科大学 ・発明者 : 斎藤能彦、上村史朗、竹田征治 問い合わせ先 奈良県立医科大学大学 産学官連携推進センター 特任教授 大野安男 TEL 0744-22-3051 (ex 2481) e-mail : yohno@naramed-u.ac.jp
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