2013 年 10 月 製造販売元 塩野義製薬株式会社 ラピアクタ®点滴静注液バッグ 300mg,ラピアクタ®点滴静注液バイアル 150mg 使用上の注意改訂(肝機能障害,黄疸の追記)に関して ― よくあるお問い合わせ ― 標記製品につきましては,2013 年 7 月より,「使用上の注意」の「重要な基本的注意」及び「重大な 副作用」の項への肝機能障害,黄疸の発現に関する注意の追記をお知らせしております。今回の使用上 の注意の追記についてより正確にご理解いただくために,医療機関からいただいた代表的なお問い合わ せについてご紹介いたします。適正使用の参考にしていただければ幸甚です。 <代表的なお問い合わせ> Q. “頻度不明”とあるが,これまで何例くらい使用されてきているのか? A. 本剤の推定使用患者数は約93万人です(2010年1月の販売開始から2013年4月までの出荷数量から推 定)。国内市販後において,重篤な肝機能障害・黄疸の副作用症例は,2013年5月時点で15 例報告されています。なお,製造販売後の使用成績調査,小児に対する使用成績調査では, 外来患者さんを中心に各1174例,1199例の症例が収集され,その中に重篤な肝機能障害・ 黄疸の副作用は認められませんでした。(4頁,<ご参考>参照) Q. “投与直後から肝機能検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること”と記載されている が,投与直後からの肝機能検査は必須ということか? A. これまでに肝機能障害,黄疸が本剤の投与翌日等の早期に認められた症例が集積されてい るため(次頁,「1. 副作用発現時期」参照),投与直後からの患者さんの状態を十分に観察いた だき,個々の患者さんの状態を考慮して肝機能検査は必要に応じて行っていただきたいと いうのが主旨になります。入院患者さんでは,出来るだけ投与後早期の検査を実施いただ き,自他覚症状や検査値異常等の肝機能障害の徴候に十分に注意していただきたいと考え ております。外来患者さんにおいては,患者さん又はご家族に対して,肝機能障害に伴う 自他覚症状の発現に注意し,症状が認められた場合にはすぐに受診するよう説明していた だくなど,ご留意いただきたいと考えております。 Q. 肝障害・黄疸が発現しやすい患者の背景は? A. 重篤な肝機能障害・黄疸として報告された15例のうち,12例がインフルエンザウイルス感 染症や合併症の治療のために本剤投与時点で入院されていた患者さんでしたが,現時点で は,重篤な肝障害・黄疸が発現しやすい患者さんの背景は特定されておりません。基本的 には,患者さんの背景に関わらず,投与後の状態の観察等(次頁,【重篤な肝機能障害・黄疸の 発現に対する観察と対処】参照)にご留意いただきたいと考えております。 -1- 【重篤な肝機能障害・黄疸の発現に対する観察と対処】 本剤投与 患者の状態を十分に観察し,症状の発現・悪化に注意 自他覚症状 症状:倦怠感,食欲不振,黄疸(皮膚や白眼の黄染),発熱, 褐色尿,発疹,吐き気・嘔吐,かゆみ等 入院患者:可能な限り,投与後早期に実施 外来患者:上記症状を訴えての再診時や本剤の2回目以降 の投与の必要性判断時等,患者の状態を考慮 し,必要に応じて実施 肝機能検査 検査値異常,自他覚症状が認められた場合に は投与を中止し,適切な処置を行ってください。 【市販後の集積状況(2013 年 5 月現在)】 国内市販後において,重篤な肝機能障害,黄疸の副作用症例 15 例が集積されています。 副作用の内訳:肝機能異常 7 例,肝障害 4 例,急性肝炎 2 例,アスパラギン酸アミノトランスフ ェラーゼ増加等の検査値異常 2 例,黄疸 1 例(重複あり) 1. 副作用発現時期 症例数 本剤の単回投与 1 日後の発現症例が多く認められていました。 8 7 6 5 4 3 2 1 0 ※ ※ 初回 2 日間投与後,5 日間投与なく,再開 2 日目に発現 2. 副作用の程度,臨床症状 検査値異常の他に肝機能障害の臨床症状が認められた症例:4 例 認められた症状:黄疸,全身倦怠感,かゆみ,褐色尿 ※ 集積症例の中に,昏睡,意識レベルの低下,CT・腹部エコーで問題が認められた症例はなし 臨床検査値の変動:「5. 代表的な症例」参照 3. 処置,転帰 【処置】併用薬剤の中止,肝庇護剤投与が中心。その他,禁酒,安静,ステロイド投与等 【転帰】回復又は軽快:13 例,未回復のまま基礎疾患の 4 型スキルス胃癌で死亡:1 例,不明 1 例 -2- 4. 患者背景 15 例中 12 例は,インフルエンザウイルス感染症や合併症の治療のために本剤投与時点で 入院中の患者でした。 表:入院患者の背景疾患 表:副作用症例の患者背景 項目 全て 性別 年齢 入院・外来 (本剤投与時) 合併症 (本剤投与時) 男 女 15 歳未満 15~64 歳 65 歳以上 入院 外来 不明 あり なし 不明 疾患群 1) 症例数 15 9 6 11) 2 12 12 2 12) 12 2 12) 全て 感染症および寄生虫症 インフルエンザ インフルエンザ以外(肺炎 等) 良性,悪性および詳細不明の新生物(嚢 胞およびポリープを含む) 血液およびリンパ系障害 代謝および栄養障害 神経系障害 心臓障害 呼吸器,胸郭および縦隔障害 胃腸障害 腎および尿路障害 先天性,家族性および遺伝性障害 傷害,中毒および処置合併症 1) 左心低形成症候群のためフォンタン手術施行直後の 患者 2) 副作用発現後の救急搬送先施設からの報告のため, 本剤投与時の詳細不明 症例数 2) 12 11 11 5 2 2 2 3 3 1 2 2 1 1 1) ICH 国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)器官別大分類 (SOC)に基づく 2) 重複あり 5. 代表的な症例 (1) 症例の概要 1(肝機能障害) 患者 副作用 1 日投与量 使用理由 投与回数 性・年齢 経過及び処置( :発現日) (合併症) 男・70 代 A 型インフ 300 mg 投与 2 日前 近医にて,A 型インフルエンザと診断 ルエンザ 1回 投与開始日 オセルタミビルリン酸塩 2 日投与するも,急性呼吸不全を起こ (肺炎,慢性 (投与終了日) し,当院救急搬送。喘息,COPD の急性増悪と考えられた。搬入 閉塞性肺疾 時:BNP 113.5 pg/mL,HBs 抗原(-),HCV 抗体(-) 患,喘息) A 型インフルエンザに対して,本剤点滴静注。肺炎を併発してい たため,抗生剤スルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウ ム 6 g/日投与 既往歴 投与終了 1 日後 AST 13200 IU/L,ALT 4430 IU/L と上昇 抗生剤を変更。意識障害はなし なし 投与終了 2 日後 AST 8280 IU/L,ALT 4400 IU/L 投与終了 5 日後 AST 116 IU/L,ALT 953 IU/L と軽快傾向 投与終了 9 日後 人工呼吸器装着中 併用薬 スルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウム 投与終了 投与日 (搬入時) 1 日後 2 日後 3 日後 5 日後 9 日後 AST(GOT)(IU/L) ALT(GPT)(IU/L) LDH(IU/L) γ-GTP(IU/L) Al-P(IU/L) 臨床検査 総ビリルビン(mg/dL) の推移 直接ビリルビン(mg/dL) プロトロンビン時間(秒) プロトロンビン活性(%) PT-INR APTT(秒) フィブリノーゲン(mg/dL) FDP(μg/mL) 血小板数(×104/mm3) プロカルシトニン(ng/mL) 報告者 の見解 48 25 13200 4430 8280 4400 1545 2190 116 953 81 265 303 16 235 0.3 0.1 11.2 97 0.98 31.6 25.4 - 13220 23 213 0.5 0.3 17.6 44 1.56 39.7 10.7 - 7300 70 252 0.7 0.5 21.2 34 1.88 58 242 16.0 8.9 12.02 1042 98 250 1.2 0.8 26.7 25 2.38 127.9 5.7 - 420 68 204 1.3 0.8 17.5 45 1.55 180 3 - 358 138 348 0.7 0.4 11.8 89 1.04 53 4.5 - 既にオセルタミビルリン酸塩を 2 日内服されていたが,内服困難にて本剤投与。翌日の血液検査にて,肝機 能検査値が急上昇した。タイミング的にも本剤の可能性は否定できないと考える。肺炎を併発していたため, 併用したスルバクタムナトリウム・アンピシリンナトリウムの可能性も完全には否定しきれないと考える。 -3- (2) 症例の概要 2(肝機能障害,黄疸) 患者 1 日投与量 使用理由 投与回数 性・年齢 (合併症) 男・70 代 A 型インフ 300 mg ルエンザ 1回 (なし) 副作用 経過及び処置( :発現日) 投与 1 日前 嘔吐 1 回あり。40℃の発熱。夕方より具合が悪かったらしいと家 族が連れて来院。レボフロキサシン水和物 500 mg/日,ドンペリ ドン 30 mg/日,アセトアミノフェン 1200 mg/日,レバミピド 300 mg/日処方。インフルエンザも疑われたため,翌日の来院を指示 投与開始日 インフルエンザテストで A 型陽性。軽度の嘔気あり。一応朝は (投与終了日) お粥が食べられた。本剤 300 mg/日点滴 投与終了 1 日後 解熱したが,少し体が黄色いようだと来院。肝機能検査を実施 既往歴 投与終了 3 日後 食欲あり。自分では何ともないとのこと。肝機能検査で改善を確 認。安静の継続を指示 なし 投与終了 10 日後 肝機能検査し,ほぼ元に戻ったことを確認。飲酒をもう 1 週中止 するよう指示 併用薬 レボフロキサシン水和物,ドンペリドン,レバミピド,アセトアミノフェン 投与 投与終了 5 日前 1 日後 3 日後 10 日後 臨床検査 の推移 担当医 の見解 AST(GOT)(IU/L) ALT(GPT)(IU/L) 20 13 212 308 87 193 23 49 Al-P(IU/L) γ-GTP(IU/L) 総ビリルビン(mg/dL) 直接ビリルビン(mg/dL) LAP(IU/L) 186 24 - 563 310 6.0 4.6 124 494 251 2.10 0.67 98 343 167 1.46 71 インフルエンザ A 型として治療し,翌日には平熱となり,自覚症状も改善し,楽になったが,同居の家 族により,顔が黄色いのでおかしいとのことで受診され,検査で肝機能障害を確認。自宅での安静指示の みで特定の薬剤も使わなかったが,速やかに肝機能の改善を見た。 <ご参考:製造販売後調査における肝機能障害関連副作用の発現状況> 使用成績調査: 0 例/1174 例(外来 1136 例,入院 38 例) 小児に対する特定使用成績調査:非重篤 2 例/1199 例(外来 1061 例,入院 138 例) 上記の集積症例とは背景が異なりますが,本剤が外来患者中心に使用されていた製造 販売後調査において,重篤な肝機能障害の副作用は認められませんでした。 1. 使用成績調査(安全性評価対象症例:1174 例) (1) 患者背景 【入院・外来】外来:96.8%,入院:3.2% 【年齢層】15 歳未満:5.9%,15 歳以上 65 歳未満:83.0%,65 歳以上:11.1% 【合併症】あり:27.0%,なし:73.0% (2) 副作用発現率 全体の副作用発現率:4.34%(51 例/1174 例)(主な副作用:下痢 22 件等) 肝機能障害関連の副作用症例数:0 例 2. 小児に対する特定使用成績調査(安全性評価対象症例:1199 例) (1) 患者背景(15 歳未満の小児を対象とした調査) 【入院・外来】外来:88.5%,入院:11.5% 【合併症】あり:34.7%,なし:65.3% (2) 副作用発現率 全体の副作用発現率:7.67%(92 例/1199 例)(主な副作用:下痢 30 件等) 肝機能障害関連の副作用症例数:肝機能異常,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加各 1 例(い ずれも非重篤) 製造販売元 大阪市中央区道修町 3-1-8 〒541-0045 -4– RAC-X-12(A1) 2013 年 10 月作成
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