パワー半導体の世界市場に関する調査結果 2014

2014 年 8 月 4 日
パワー半導体の世界市場に関する調査結果 2014
-SiC パワー半導体は 2016 年から本格的に市場が立ち上がる-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にてパワー半導体の世界市場について調査を実施した。
1.調査期間:2013 年 10 月~2014 年 6 月
2.調査対象:パワー半導体メーカ、ウエハーメーカ、システムメーカ
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<パワー半導体とは>
パワー半導体とは、主にインバータ回路やコンバータ回路で使われており、電力のスイッチングや変換、モータ制
御等で必要となる半導体素子をさす。
本調査では、パワーMOSFET ( Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)/IPD(Intelligent Power
Device)やダイオード、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーモジュール、バイポーラトランジスタなどのパ
ワーデバイスを対象とし、Si(シリコン)によるパワー半導体に、SiC(シリコンカーバイド)もしくは GaN(ガリウムナイトラ
イド)など次世代材料によるパワー半導体を加えて、市場規模を算出した。
【調査結果サマリー】
‹ 2013 年におけるパワー半導体の世界市場は 143 億 1,300 万ドルへ成長
2013 年のパワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、前年比 5.9%増となる 143 億
1,300 万ドルとなった。2012 年はマイナス成長であったが、2013 年は中国市場の需要回復、自動車分野
の堅調な伸び、新エネルギー向け機器への投資拡大などがけん引役となりプラス成長となった。
◆ 白物家電、自動車、産業機器向けの需要が市場を牽引し、2020 年におけるパワー半導体の世
界市場は 294 億 5,000 万ドルになると予測
2014 年もプラス成長が見込まれ、2015 年以降は白物家電、自動車、産業機器向け需要拡大が期待出
来る。デバイス別で見ると、パワーモジュールの伸びが最も高く、次世代自動車(HV/EV)や新エネルギ
ー向け機器、工場設備などの成長分野における普及拡大が見込まれ、2020 年のパワー半導体の世界市
場規模(メーカ出荷金額ベース)は、294 億 5,000 万ドルになると予測する。
‹ SiC、GaN などを使った次世代パワー半導体市場は、2016 年から本格的に SiC 市場が立ち上が
り、2020 年の市場規模は 28 億 2,000 万ドルに達すると予測
Si(シリコン)によるパワー半導体の性能が物理的限界に近づきつつある中で、Siよりも低損失、高速ス
イッチング、高耐熱性が実現可能なSiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)を使った次世
代パワー半導体が注目されている。SiC はこれまでダイオードの採用が中心であったが、2013 年からトラ
ンジスタの搭載も一部用途で始まっている。2014 年後半から 6 インチの SiC ウエハーでの量産がデバイ
スメーカ各社で始まり、2015~2016 年にかけてコストダウンと採用用途の拡大が進む。SiC パワー半導体
が市場を牽引し、2020 年の次世代パワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は 28 億 2,000
万ドルと予測する。
◆ 資料体裁
資料名:「進展するパワー半導体の最新動向と将来展望 2014-2015」
発刊日:2014 年 6 月 30 日
体 裁:A4 判 139 頁
定 価:130,000 円(消費税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2014 年 8 月 4 日
【 調査結果の概要 】
1. 2013 年の市場概況と 2014 年の見通し
2013 年のパワー半導体の世界市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、前年比 5.9%増となる 143 億
1,300 万ドルとなった(図表 1 参照)。2013 年がプラス成長となった要因としては、以下の 3 点が挙げられ
る。
(1)中国市場の回復
(2)自動車分野の需要拡大
(3)新エネルギー向け機器への投資拡大
2012 年は受注が低迷した中国市場であったが、2013 年の後半から産業機器や白物家電、新エネルギ
ー向け機器、電鉄などの分野で需要が回復した。産業機器分野は汎用インバータ、サーボモータ向けが
好調で、低コストの汎用インバータの工場設備への普及が進んでいる。他に自動車向けの設備投資が拡
大したために、生産ラインの組み立て用ロボットに搭載されるサーボモータ向けの IPM(Intelligent Power
Module、以下 IPM)の需要も増している。また、白物家電についても在庫調整が落ち着き、一時期鈍化し
ていたエアコンのインバータ化率もようやく 50%を越えてきている。
自動車分野では世界の自動車販売台数が順調に拡大し、車載向けダイオードや MOSFET、IGBT モ
ジュールなどの需要が拡大している。特に低燃費に直結するアイドルストップシステム(以下、ISS)や電動
パワーステアリング(以下、EPS)の市場規模が拡大し、HV(Hybrid Vehicle 以下、HV)についても日本市
場を中心に増加した。また、車両に搭載される電装品は増加傾向にある事から、ECU(Electronic control
unit、以下 ECU)に実装されるダイオードや MOSFET の需要も拡大している。
欧州太陽光発電産業協会(EPIA)の発表によると、2013 年の世界の太陽光発電の年間導入量は前年
比 2 桁の伸びを示し、中国が年間導入量でトップとなり、2 位は日本、3 位は米国となった。このため、
2012 年から引き続き日本、米国において太陽光発電用 PCS(パワーコンディショナー、以下 PCS)向け
IGBT モジュールの出荷は好調に推移し、中国向けについても需要が回復している。
2013 年後半から引き続き堅調に市場は推移しており、2014 年のパワー半導体の世界市場規模(メーカ
出荷金額ベース)を前年比 6.2%増の 152 億ドルと予測する。情報・通信分野では、PC や LCD-TV(液晶
テレビ)、各種デジタル家電向け MOSFET の需要が回復しており、一部のパワー半導体メーカでは 2014
年前半の工場稼働率が 80~100%に達した。このため、下期の受注を一部断っているメーカが出てきて
おり、下半期の計画値に対しては見通しを上方修正するメーカも出る見込みである。
産業機器についても、中国市場向けの汎用インバータやサーボモータ、白物家電向け IPM の出荷が
引き続き好調であり、電鉄向けの需要も戻ってきている。また、アジア市場における白物家電の出荷も好
調に推移し、白物家電用 IPM を生産するメーカの工場稼働率はフル生産に近い状況である。
自動車もまた、引き続き好調な販売台数で推移しており、自動車向け MOSFET、ダイオードも堅調に拡
大する見込みである。
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2014 年 8 月 4 日
図表 1. パワー半導体の世界市場規模推移と予測
(単位:億ドル)
300
SiC/GaN
Si
250
金額(億ドル)
200
150
100
50
0
2013CY
2014CY
2015CY
2016CY
2017CY
2018CY
2019CY
2020CY
予測
(単位:億ドル)
年
2013CY
市場
Si
前年比
SiC / GaN
前年比
合計
前年比
2014CY
予測
2015CY
予測
2016CY
予測
2017CY
予測
2018CY
予測
2019CY
予測
2020CY
予測
142.2
150.5
162.3
178.0
196.9
218.9
242.8
266.3
105.9%
105.8%
107.8%
109.7%
110.6%
111.2%
110.9%
109.7%
0.9
1.5
3.1
6.2
10.7
14.9
20.6
28.2
112.5%
166.7%
206.7%
200.0%
172.6%
139.3%
138.3%
136.9%
143.1
152.0
165.4
184.2
207.6
233.8
263.4
294.5
105.9%
106.2%
108.8%
111.4%
112.7%
112.6%
112.7%
111.8%
矢野経済研究所推計
注 1:メーカ出荷金額ベース
注 2:2013 年は実績値、2014~2020 年は予測値
注 3:パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)/IPD(Intelligent Power Device)やダイオード、
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーモジュール、バイポーラトランジスタなどのパワーデバイスを対象とし、Si
(シリコン)によるパワー半導体に、SiC(シリコンカーバイド)もしくは GaN(ガリウムナイトライド)など次世代材料によるパワー
半導体を加えて、市場規模を算出した。
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2014 年 8 月 4 日
2. 今後の可能性と予測
2-1.2020 年までのパワー半導体市場予測
2020 年のパワー半導体の世界市場(メーカ出荷金額ベース)は、294 億 5,000 万ドルになると予測する。
2013 年から 2020 年までの年平均成長率は 10.9%になり、2020 年の市場規模は 2013 年の 2.1 倍となる。
(図表 1 参照)
需要分野別に見ると、今後も白物家電と産業機器、自動車分野がパワー半導体市場のけん引役となる。
白物家電は、中国、東南アジア諸国の経済成長に合わせて普及拡大が進んでおり、特にエアコンのイン
バータ化率が上昇している。このため、耐圧 600V の IPM の需要が伸びる事が予測され、パワー半導体メ
ーカ各社では IPM の生産能力拡大のための設備投資を進めている。
産業分野については、汎用インバータやサーボモータなどの産業機器・設備、太陽光発電や風力発電
などの新エネルギー向け機器、電鉄向けの需要が拡大する。汎用インバータや UPS(無停電電源装置
以下、UPS)は新興国市場の工場設備で採用率が上昇しており、サーボモータも半導体製造装置や産業
用ロボット向け需要が伸張すると予測する。太陽光発電は中国と日本、米国、風力発電はアジアが需要
の中心となる。インドやブラジルなど新興国でも太陽光発電のプロジェクトが 2014~2015 年にかけて立ち
上がる予定で、耐圧 1200V の IGBT モジュールの需要が拡大する見込みである。風力発電についても欧
州からアジア市場での需要拡大が期待されており、陸上から洋上風力発電への設備投資が活発化して
いる。また、風車の大型化も進んでおり、それにともなう IGBT モジュールの大容量化、マトリックスコンバ
ータの採用なども進展していくと考える。
自動車については、燃費向上や CO2 削減のために EPS や ISS の普及が進み、搭載される ECU の数も
増加し、車両 1 台あたりに使用されるパワー半導体の数は伸長する。欧州では EURO 6(欧州の排ガス規
制)に対応するために、車両電源の 48V 化が本格化する可能性が高く、それにともないパワー半導体の
搭載個数はさらに増す。また、世界の HV/EV(Electric Vehicle 以下、EV)出荷台数は、2020 年には
1,200 万台規模に達すると予測し、IGBT モジュールの需要も拡大する見込みである。EPS や電動エアコ
ン、電動ポンプ向けなどのパワー半導体は、コストダウンのためにモジュール化が進むと考えられる。
2-2.SiC や GaN などの次世代パワー半導体の採用動向
SiC(シリコンカーバイド)や GaN(ガリウムナイトライド)などの次世代パワー半導体の世界市場規模(メー
カ出荷金額ベース)は、2020 年に 28 億 2,000 万ドルになると予測する。2013 年から 2020 年までの年平
均成長率は 63.6%である。
先行して市場が立ち上がっている SiC パワー半導体は、2014 年後半から 2015 年にかけて 6 インチの
SiC ウエハーでの量産、トレンチタイプの製品投入が各社で始まり、SiC トランジスタのコストダウンが進む。
このため、ダイオードだけでなく、スイッチング素子に SiC トランジスタの適用が始まり、フル SiC モジュー
ルの標準品の市場投入が活発化すると考える。特に SiC パワー半導体の採用メリットが大きいのが、長時
間稼動で高効率が求められる太陽光発電用 PCS や UPS、産業機器用電源などである。すでに一部の特
殊産業機器で SiC トランジスタの搭載は始まっているが、採用が本格化するのは 2015 年以降である。ま
た、SiC パワー半導体を採用した太陽光発電用 PCS は欧州メーカが先行していたが、日本でも 10kW 以
上の PCS を中心に 2015 年から搭載が始まる。車載分野については、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle) /EV
向け車載充電器での採用が始まっており、昇圧コンバータなどでの評価試験が進んでいる。HV/EV のメ
インインバータへの採用は 2019~2020 年頃になる見通しで、車載分野における SiC パワー半導体の普
及拡大は 2020 年以降になる可能性が高いと予測する。
GaN パワー半導体については、耐圧 600V の GaN トランジスタのサンプル出荷が 2013 年から始まって
いる。量産については SiC パワー半導体よりも遅れているが、2015 年から 2016 年にかけてサーバや通信
基地局用電源、家庭用太陽光発電用 PCS での採用が見込まれ、PC 用 AC アダプター、フラットパネルデ
ィスプレイ、車載充電器などでも評価試験が始まっている。2017~2018 年にかけては、6 インチから 8 イン
チの GaN On Si ウエハーでの量産が始まり、コストダウンによる市場拡大が期待される。
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