平成26年 2月 香港からの新婚旅行・撮影旅行誘致について

香港からの新婚旅行・撮影旅行誘致について
香港事務所
渡邉 大輔
沖縄県は新たな観光客の誘致政策として、香港からの結婚に端を発する旅行
客の誘致に力を入れ一定の成果を上げている。今回のレポートでは香港人の海
外挙式の動向を明らかにして、どのようにすれば福岡に来てもらえるのかを検
討した。
1.香港の結婚費用
最近の香港の結婚では婚前の写真集作成、披露宴が一般的なスタイルである。
結婚関連情報ポータルサイトとして有名な「生活易(ESDlife)」が 2013 年に行っ
た、今後2年以内に結婚予定のある香港人を対象とした調査によると、新婚旅行
を含む結婚にかかる費用は平均で約 31 万香港ドル(約 404 万円)と、過去6年間
で 60%も増加していることが判明した。平均年収が 15 万香港ドル(195 万円)
の香港人にとって、この金額は年収の約2倍にあたり、相当な出費だと理解で
きる。
2.婚前の写真集作成旅行
日本であまり馴染みのな
項目
一組あたり平均費用
い習慣として、婚前の写真集
婚前写真集作成
2.3万HK$(約30万円)
作成がある。香港では休日に
4.7万HK$(約61万円)
なるとセントラルの繁華街、 指輪・アクセサリー
15.7万HK$(約204万円)
砂浜、離島等でウェディング 披露宴
ドレスとタキシードを着た 披露宴撮影
1.2万HK$(約16万円)
男女が二人の写真集作成の 新婚旅行
3.7万HK$(約48万円)
ための撮影をしている光景
その他
3.5万HK$(約46万円)
をよく見かける。以前はスタ
合計
31.1万HK$(約404万円)
ジオで写真を撮るだけのシ
表 香港のブライダル関連平均費用
ンプルなものが主流だった
が、今はプロのスタッフを雇い、何日も泊りがけで海外へ撮影に出かけることも
珍しくなく、 写真集作成には平均で約 2 万 3,000 香港ドル(約 30 万円)と、そ
れなりのお金をかけているようだ(表参照)。海外での撮影の場合、カメラマン
のほかにメイクアップアーティスト、アシスタントなども同行するプランにす
ると、費用は莫大になる。
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3.香港人の海外挙式人気
香港メディアの大
紀元によると、香港人
カップルの結婚に際
しての海外撮影は現
在ほぼ 50%に達してお
り、その行き先のトッ
プは台湾、第2位が日
本だと報じられてい
る。そんな香港人の日
本での挙式場所とし
て、近年人気を集めて
いるのが沖縄だ。
沖縄県は沖縄リゾ
ートウェディングに
かなり力を入れてい
図 沖縄リゾートウェディングの推移(沖縄県作成)
る1。沖縄リゾートウェ
ディングとは、沖縄県外及び海外に在住する新郎新婦が、沖縄でウェディング
を挙げることを目的に来県し行うものだ。平成 11 年に年 200 組であったものが
平成 24 年は 9,118 組と、13 年間で実に 46 倍の伸びを見せている。海外からの
挙式組数は平成 24 年には 447 組を超え、そのうち香港からは 295 組と6割以
上を占めている。
香港人カップルから要望の高い「リーガルウェディング」による挙式も増え
ている。
「リーガルウェディング」とは法的に効力を持つ海外での挙式のことで、
具体的には、海外から挙式目的で訪日したカップルが、日本の法律に基づき市
町村の窓口で婚姻手続きを行い、「婚姻届受理証明書」2を発行してもらう行為
を指す。この証明書を翻訳して自国の役所に提出すると、本国でも婚姻が成立
し、日本方式で婚姻した記録も残る。
「リーガルウェディング」ではない場合、日本への旅は「挙式をする」ので
はなく、新婚旅行を兼ねた写真撮影に留まるが、法的に効力のある挙式になる
ことで、多くの参列者を連れてくる傾向が見られるようになった。特に香港で
は富裕層に人気があり、参列者が増加することで挙式以外の経済効果が高くな
り、沖縄への外国人観光客増加にもつながってくる。
沖縄県香港事務所によると、沖縄での挙式費用は香港より価格が割高だが、
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マスメディアを活用した広報宣伝活動、県やコンベンションビューローと県内企業による沖縄リゾート
ウェディング協議会の設立、フェアの開催(東京・大阪・香港)など。
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この婚姻届受理証明書により、香港内において証明書の作成が必要なくなる。
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県の取り組みが功を奏して人気が上昇し、平成 25 年の挙式数は 500 組を超えた
とのことであった。さらに、今年はさまざまな偶然3が重なり、香港人の挙式件
数が増えると予想されるため、沖縄での挙式もさらに増加すると予想している。
4.福岡にもチャンスあり
香港人が海外ウェディン
グ先を選ぶ対象は、先述の
リーガルウェディングがで
きる場所である以外に、風
光明媚な撮影地、挙式施設
があることが重要となる。
沖縄に負けない魅力を福岡
県が発信するとして、まず
は婚前写真のロケ地として
の誘致に力を入れてはどう
だろうか。門司港レトロ、
写真 前撮撮影旅行を特集した機内誌
マリンワールド海の中道、
能古島、太宰府天満宮、福
岡タワー、柳川お堀めぐりなど、様々なシーンを演出できる組み合わせが福岡
空港から1時間圏内にあるのは、滞在期間中に効率的に写真撮影を行いたい香
港人カップルには大きな魅力となる。城や神社での和装ショットも撮りたいと
いう需要も満たせる。また、最近人気が出てきているという夜景を含めた撮影
も、屋台など福岡ならではのロケ地が多数ある。
そして、撮影地からウェディングの場所へと展開を広げていくことを考える
と、福岡の最大の強みであるショッピングと食の魅力を、ウェディング参列者
の挙式後の過ごし方として打ち出せばよいのではないか。
小川知事が去年の 10 月に香港の旅行代理店 EGL ツアーズの袁社長を訪問し
た際、福岡は香港から近いため魅力的なチャペルや写真撮影のスポットを整備
できればその対象地域として非常に可能性があるとの発言があった。またその
際、細かい指摘になるが、雨の日など天候が悪い場合のプランなどのきめ細や
かな、新婚カップルの福岡での挙式を失望させない、日本ならではの提案も大
切になってくるような助言も受けた。
直近の福岡-香港間の航空機材の大型化や LCC 就航により座席が増えた今、
新たな香港人観光客の誘致手法として、ウェディング場所やその前段の撮影地
香港では、立春や閏月は縁起がいいと言われている。今年は、旧暦の1月 15 日(中国のバレンタインデ
ー)と西暦のバレンタインデーが重なり、立春が2度あり、また閏月があり、60 年に1度の結婚するに
いい年と言われている。
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として訴求することが重要になるだろう。その場合、ただの撮影旅行や新婚旅
行にするのではなく、沖縄県のように、
「リーガルウェディング」を行えるよう
にすることによって、正式な挙式を行い、参列者も連れてくるようになると効
果が高い。
福岡県香港事務所では、ブライダルツアーを積極的に日本に誘致している旅
行社からの情報収集を進め、福岡のブライダル業界に情報提供を行っていきた
い。さらに、普段は入れない場所での撮影許可やシチュエーションなど新たな
撮影スポットの創出や、香港人が望む特別感を演出するなど、積極的に新プラ
ンの作成を行っていき、一人でも多くの香港人が福岡へ来てもらえるように今
後も努力していく。
※ 為替レート
1HK$=13 円
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