一橋大学商学部「観光経営論」講義レジュメ 「MICE とは何かー地域への効果と今後の取り組み」川島久男 2014/12/01 川島アソシエイツ代表 *MICE とは Meeting, Incentive, Convention, Exhibition or Event の略であり、「会議、 展示会、イベントの総称」である。 *Meeting は企業が主催する会議、セミナー、シンポジウムで、たとえば日経新聞社主催 「世界経営者会議」などがある。Incentive は報奨旅行と呼ばれ、企業が成績優秀な社員や 代理店を招待する旅行やイベントのこと。Convention は、医学会議や業界の会議など学会 や協会が主催する会議のほかサミットや APEC のような政府、自治体、国際機関が主催す る会議である。Exhibition/Event は展示会、見本市、文化スポーツイベントなどで、東京モ ーターショー、東京国際映画祭などである。東京オリンピックも広い意味で含まれる。 *日本の MICE の経済効果は推定約7兆円で、観光産業全体の 1/3 を占める。一人当たり 参加者の消費額は一般観光客より多く、主催者、同伴者、出展者支出も見込まれ、コンベン ションセンターやホテルをはじめとする幅広い地域サプライヤーへの経済的恩恵があり、 税収も増やす。MICE 参加者の40%は観光客として再訪問するという統計もある。 *MICE は経済効果にとどまらず、雇用を増やし、地域にイノベーション(新しい事業価 値)を引き起こし、主催者や地域、国のブランドイメージを向上させる。 *一般観光と MICE の際立つ違いは、一般観光の主たる担い手は「消費者」、すなわち一般 個人客なのに対し、MICE の中心は、法人や団体の「主催者」である点である。したがって MICE の誘致には一般観光とは違う戦略が必要である。 *地域が MICE で成功するには、主催者や参加者を地域全体で歓迎するシステム、MICE のために地域の新しい魅力を再整備、地域のパートナーシップなどを含めたデスティネー ションマーケティング(DM)が重要である。 *DM の推進機関としてコンベンションビューロー(CB)が重要であるが、我が国の CB は 人材的にも財政的にも世界水準に遠く及ばず、十分に機能していない。マーケティング戦略 策定実行に関わる専門家の採用やプロパー職員の養成などに注力すべきである。 *2013年の国際会議統計では国際会議開催件数で、日本は世界7位、アジアで1位であ るが、都市別でみれば、東京はアジアで7位とソウル(2位)より下位である。 *日本の MICE 競争力の源泉は、レベルが高く、層の厚いアカデミアとビジネスの存在で ある。最近まで国や地域が MICE 推進に特に力をいれてきたわけでもないのに、国際会議 開催件数ではアジアで1位の地位を保つことができているのは、この重要な潜在的主催者 の存在のおかげである。しかしながら、この潜在的主催者は様々な理由により、必ずしも MICE 開催に前向きになっていない状況がある。MICE 誘致競争も激化し、アジア各国の 主催者のレベルも上がってきているので、対策が急務である。 *日本の取り組むべき今後の課題としては、主催者が MICE を開催する環境のさらなる整 備(主催者活性化)、都市のコンベンションビューローを中心とする MICE 競争力強化、政 治や行政への MICE 啓蒙と人材育成、業界団体の強化が考えられる。
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