Clickable dysiherbaine の合成研究 横浜市立大学 天然物合成研究室

Clickable dysiherbaine の合成研究
横浜市立大学
天然物合成研究室
福島孝一
イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluRs)に作用する神経生理活性化合物には様々なものが存
在し、それらの相互作用も多様である。ダイシハーベイン 1(DH, Fig. 1)は、1997 年に酒井らによってミク
ロネシア産海綿 Lendenfeldia chondrodes より単離・構造決定された神経生理活性化合物である。グルタミ
ン酸構造を持ち、iGluR5 に特異的に作用してチャネルを作動させる興奮性のアミノ酸であることが知られ
ている。DH の全合成は既に達成されているが、今後のさらなる生物学研究のためのケミカルプローブ化
を見据えて、クリックケミストリーに適用可能なアルキンを導入した DH プローブ前駆体 2(clickable DH,
Fig. 1)の合成が有用であると考えた。そこで本研究では DH プローブ前駆体の合成を目的とした。
DH プローブ前駆体 2 の合成は、高度に酸素官能基化されたモノラクトン 3 もしくはビスラクトン 4 を
鍵中間体として経由するルートを計画した(スキーム1)。そして二環性骨格の構築は 3/4 にビニル基
を導入し、閉環メタセシス反応によって行うことにした。また中間体 6 からは既知のルートを参考に DH
プローブ前駆体の合成につなげることとした。
モノラクトン 3 までの合成をスキーム 2 に示した。出発原料をマロン酸ジエチル(7)として既知の反応
よりテトラエステル 8 へと導き、続いて BPO によってα位に酸素官能基を導入したジベンゾエート 9 へ
と導いた。加水分解、エステル化、ラクトン化を続けて行う事でラクトン 3 は容易に合成することができた。
しかしラクトン 3 からのビスラクトン 4 への変換は困難であった。そのため、モノラクトン 3 から DH プロー
ブ前駆体 2 の合成を行うことにした。現在は、モノラクトン 3 にメタセシス基質へ導くためのビニル基導
入の検討を行っているのでその結果もあわせて報告する。