専門評価会 評価結果報告書 「縦型BC-MOSFETによる三次元集積工学と応用展開」 (研究代表者 遠藤 哲郎、PM 柴田 直) 総合評価 本研究開発課題は、コスト性、市場性もにらんだ計画となっており、産業界や社会へのインパクトが 非常に大きいことが期待できることから、推進すべき課題と評価する。 これまで、将来の集積回路の微細化の限界に備え、多くの縦型MOSトランジスタが提案されてき たが、動作検証は単体のトランジスタのみであり、集積回路レベルでの動作は報告されていなかった。 縦型ボディチャネル(BC-)MOSFETは、研究代表者がCRESTにおいて高電流駆動力、低消費電 力という単体デバイスとしての特徴を明らかにするとともに、1Mビットのメモリとしての動作をも実証し たデバイスであり、ACCELではその特徴を最大限生かしてワーキングメモリへの応用を目指す意欲 的な提案内容となっている。実用化した場合の波及効果は極めて大きい。 本研究開発を進めるにあたり、以下のことについて留意されたい。 1) 本研究開発の推進に当たって、縦型BC-MOSFETの本質的な課題を明確にし、その課題解決 への対策に注力することで、集積デバイスとしての見通しを早い時期に提示できるようにするこ と。 2) 既存技術がトランジスタや回路の微細化を目指す流れであるのに対して、本技術が微細化ととも に進化するのか、ポスト微細化となり得るのかも検討すること。 3) 本分野は競争の激しい分野なので、定期的に他技術の開発動向の把握に努め、必要に応じて ベンチマークの見直しも行うこと。 4) メモリへの応用を目指す場合、大量生産が可能であることが求められる。この観点で国際規格に 沿った信頼性評価を定期的に行い、課題が抽出された場合には、その対策を柔軟に計画に盛り 込むこと。 1 評価項目別評価 ① 企業や投資家等へ具体的な技術的成立性の証明・提示をすることができる研究開発計画で あるか。 挑戦する価値のある優れた研究開発計画であると言える。 研究代表者はCRESTにおいて、縦型 BC-MOSFETの集積プロセス技術と回路設計技術に関 する要素技術の開発、ならびに1Mビットのメモリの動作検証に成功している。縦型MOSFETを用 いた集積回路の動作検証はこれまでに例がなく、研究代表者のグループの準備状況は十分整って いると判断できる。 本研究開発計画は、縦型 BC-MOSFETの高電流駆動力、低消費電力、放熱性が良いという既 存のトランジスタ技術に対する優位性を生かして、DRAM、ならびにSTT-MARMを作製し、高速、 低消費電力のワーキングメモリを実現しようとする意欲的な研究開発であり、メモリが実用化した場合 の波及効果は極めて大きい。また、限られた期間で最大限の成果を上げられるように、新規の研究 開発が必要な項目を絞り込み、想定される課題に対しても縦型 BC-MOSFETの特徴を生かした解 決法を示すなど、妥当な研究開発計画となっている。 ② 世界をリードする顕著な研究成果が出ているか。 研究成果として発信されている研究代表者の論文の情報に加え、まだ公表されていないCREST の研究成果も確認したところ、縦型 BC-MOSFET単体デバイスの特性だけでなく、その集積化に 向けた研究開発において世界をリードする顕著な研究成果がでていると評価できる。 ③ その他のご意見(改善すべき点など) 集積回路の試作に関しては、企業が共同研究体制として参画しており、信頼できる試作結果が得 られるとともに、研究開発成果の継承も大いに期待される。 本技術がワーキングメモリだけでなく、ストレージクラスメモリやロジックへの展開にもつながること を期待する。 平成26年2月12日 「縦型BC-MOSFETによる三次元集積工学と応用展開」 専門評価会 主査 東京工業大学 名誉教授 石原 宏 専門評価会 評価者名簿 主査 石原 宏 東京工業大学 名誉教授 大場 隆之 東京工業大学 異種機能集積研究センター 教授 財満 鎭明 名古屋大学 大学院工学研究科 教授 仁田山 晃寛 株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 副センター長 平本 俊郎 東京大学 生産技術研究所 教授 松澤 昭 東京工業大学 大学院理工学研究科 教授 2
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