ニュースレター - 一般社団法人 原子力安全推進協会

JANSI
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Vol.9(2015年春)
本ニュースレターは、当協会と接触のあったマスコミ関係者の方々に対して、当協会の活動状況をお知らせするために作っています。
H26年度危機管理研修を実施
平成27年1月13日から3日間、東京電力福島第一原子力発電所事
故で浮き彫りになった現場の最高責任者である発電所長の重い負荷を
補佐する発電所の緊急時対策本部の班長(部長、課長クラス)の皆さん
を対象に、危機管理のノウハウ
(リーダーシップ、組織管理、
コミュニケー
ション、戦略指揮等)
を学ぶ研修を消防科学総合センターの施設を借り
て行いました。
(受講者22名)
今回の研修プログラムは、日常的に緊急対応を行っている消防組織
の協力で原子力事業者向けに初めて開発し
たものです。
研修では、過酷な環境の下、状況を把握し
的確に伝達することがいかに難しいかを実
感し、
コミュニケーション力を高めるノウハ
ウを学んで頂きました。
実戦形式の机上訓練(指揮統括訓練)で
は、原子力発電所での緊急時対応等につ
いて、受講者各自が本部長、各機能班長等
の役割を考え演じることで、非常時におけ
る指揮統括のポイントを押さえ、実践能力
の向上を図って頂きました。
総合訓練の様子
また、福島第一事故時の過酷で高ストレ
スな状況を模擬した環境設定で、高放射線管理区域で倒れた人の救助
を行う演習(総合訓練)を行いました。
受講者の皆さんからは、
「危機対応において自らの足りないところに
気付かされた研修だった」、
「班長だけでなく多くの人も受講すべき」等
の高い評価を頂きました。
指揮統括訓練の様子
JANSI
「福島環境修復有識者検討委員会」による被ばく線量評価の事例解析
JANSIは福島の復旧に貢献することを目的に、
国内外で実績のある環境修復技術の調査を行い、
平成23年度にJANSI内に設置した「福
島環境修復有識者検討委員会」の指導・助言を得て、
福島への適用性が高い除染法等の検討を行ってきました。
平成25∼26年度は福島県内にある地下式の現場一時保管所のような簡易修復跡地、あるいは「天地返し」を応用した農地除染技術を
対象に、修復した周辺地域の被ばく線量を予測し、安全性を確認するための事例解析を行いました。その結果をご紹介します。
平成27年3月から中間貯蔵施設へ
除染廃棄物の搬入が開始されました
が、福島県内には正規の仮置き場に加
え、現場保管所が平成26年末で約7万
5千ヶ所もあり、搬入完了までには相当
の期間がかかると予想されますので、
保
管場所の周辺で生活する住民の皆さん
地下式現場保管所の事例
提供:福島市
の被ばく線量を予測評価し、
安全性を確
認することが重要となります。
このため、JANSIは放射性廃棄物の浅地中トレンチ処分の跡地利用
シナリオなどによる被ばく線量評価手法を適用して、地下式現場保管所
や、土の表層と深層を入れ替える天地返し等の簡易修復地周辺の線量
評価を行うこととしました。
福島県では、事故後に迅速除染を実施した公共施設や学校等の敷地
内地下に除染で出た土壌を保管している事例が相当数あることがわか
りました。これらの場所の現在の空間線量率は安全なレベル(年間被ば
く線量換算1mSv程度)
に低下しています。
しかし、今後上部覆土が風雨で削られた場合でも大丈夫かなどの不
安を感じる住民の方々がおられると考え、その不安に答えるために右図
に示すように、学校敷地内の一角に地下保管しているケースをモデル化
して事例解析を行いました。結果は覆土厚の減少等が起こっても児童
の学校滞在時の追加被ばく線量は0.1mSv/年以下となる、
という評価
JANSIのミッション
日本の原子力産業界における、
世界最高水準の安全性の追求
∼たゆまぬエクセレンスの追求∼
になりました。
これまでの4年間に得られた成果を適宜発信し、現地における安全性
向上及び廃棄物低減の支援に役立てて行きたいと考えます。
事例解析の基本条件
学校の敷地内現場保管を想定した
事例解析モデル
事故後半年経過時の学校周辺の空
間線量率:2.5μSv/時と想定
汚染部深さは10cmと想定し、1m
以上の深さで掘削し、非汚染土と
混ぜて1m厚さの保管を想定
覆土厚は修復時50cmとし、30cm
まで減少の可能性有りと想定
児童の学校滞在時間は200日/年
×
(6時間/日校舎(3階)+4時間/
日校庭)
と仮定(校舎内の遮 係数
は0.4).
JANSIは、事業者の意向に影響されない独立性をもった仕組み・体制を構築し、事業
者に対して客観的に評価、提言・勧告及び支援を行い、原子力施設の安全性向上に向
けた不断の取組みを牽引します。
活動の概要
●安全性向上対策の評価と提言・勧告及び支援
●原子力施設の評価と提言・勧告及び支援
●これらの事業に関連する基盤業務
米国のFLEX戦略と地域対応センターについて ∼既存インフラを活用、追加費用を最小限に抑えた実利的戦略∼
2014年に開所した米国の「地域対応センター」
(Regional Response Center)。米国の設計基準外事象(シビアアクシ
デント)戦略と、
この一端を担うRRCについてご紹介します。
既存のインフラシステムをフル活用
FLEX戦略とRRC
PIMでは、貯蔵施設の運営維持は倉庫業なども営むBarnhart社が
請負い、配送はFedEx社に委託しています。RRCはこのPIMを拡張し、
メンフィスとフェニックスにあるBarnhart社の敷地に貯蔵施設を増設し
たものです。配送を担うFedEx社は運転手の非常呼び出し、移動ルート
や積み荷のリアルタイム監視体制などの緊急輸送体制を本来業務とし
て整備しているため、24時間以内の配送要求についても十分な実力を
有しています。呼び出しがあれば、運転手はトラクターを運転してRRC
に駆けつけ、指定されたトレーラーを連結し、FedEx社の本部指令に
従って目的地に移動します。
RRC
(フェニックス)
の正面
米国では、
東京電力福島第一原子力発電所事故のような長時間にわた
る全交流電源喪失事故への対応戦略をFLEX
(Diverse and Flexible
Coping Strategies)
と称して立案し、体制の整備を進めています。
FLEX戦略の基本は、交流電源を必要としない各原子力発電所の恒
設設備を用いて原子炉を冷却し炉心損傷を防止するものですが、その
バックアップの可搬式ポンプや電源などの資機材(FLEX機器)
を用いた
対応も整備しています。
RRCは、発電所に保管しているFLEX機器と同じセットを一式、事象発
生後24時間以内に事
象が発生したサイトに
配送する発電所外から
の支援活動を担うもの
です。
RRCはテネシー州メ
ンフィスとアリゾナ州
フェニックスとの2か所
に設置され、
これで全米
を相互にカバーします。 米国に2か所設置されたRRC
仕様の共通化と共同購入による費用削減
RRCのFLEX機器は、2か所のRRCに5セットずつ、計10セット配置
されています。これを100ユニットで共有しますから、各ユニットは
1/10の費用負担で100%予備を確保することが可能です。
RRCのモデルは、
30年以上の実績を有するPIM(Pooled Inventory
Management)という互助システムです。PIMに参加する発電所で不
具合が生じた場合、共同購入しておいた予備品を当該ユニット宛に緊急
搬送する一種の保険の仕組みです。PIMの大きなメリットは共同購入に
よるバーゲニングパワーです。米国ではまずFLEX機器の仕様、
製造者、
型式の統一を行い、機種を最小限に絞り込んだうえでPWR、BWR全ユ
ニットでの共同購入扱いとしました。共通化に加え共有化を図ったこと
で、FLEXの導入に伴う費用負担を大幅に抑えることに成功しました。
トレーラーに載せられ整然と保管されたFLEX機器
また、PIMシステムに追加して、発電所と連絡を取り輸送計画を統括
する機能、及び現地でFLEX機器を発電所へ円滑に引き渡すサイトサ
ポートスタッフを派遣する機能を、AREVA社に委託したこともRRCの
大きな特徴です。AREVA社は運転保守などのサポート業務を幅広く手
掛けており、
トラブル発生時に技術者や作業員を発電所に緊急派遣する
体制を整えています。ただし、AREVA社はあくまでサポートであり、現
場でのFLEX機器の移動、接続、運転操作はサイトの責任です。
このように、FedEx社やAREVA社が、本来業務で維持している緊急
時体制をフル活用するシステムとしたため、平時の費用負担はほとんど
なく、呼び出し訓練程度で機能維持の確認が可能です。事業者にとって
は最小費用負担で万一の保険に加入しているような感覚です。なお、
こ
の緊急時体制をSAFERチームと呼ぶことからRRCはNATIONAL
SAFER RESPONSE CENTERと呼ばれています。
米国原子力産業界の底力
米国は、平時は個人主義の強い国柄ではありますが、非常時には30
近い事業者と100基のユニットが産業界として一致団結し、規制側の納
得しうるRRC戦略を3年程度で構築し、安全性向上と経済性の両立を
実現させました。わが国としても参考としなければならない事例や教訓
が多く含まれていると考えます。
ICONE23の開催について
平成27年5月17日から21日、
第23回原子力工学国際会議
(ICONE23、
大会組織委員長:JANSI松浦代表)
が幕張メッセ
(千葉県)
で開催されます。
JANSIは、
この運営に協力しています。
会議のテーマは" Nuclear Power ‒ Reliable Global Energy "。本会議では、機械工学、原子力工学に関する最新の研究
(次世代炉の開発研
究等)
や実践状況が多数報告されると期待されています。
また、各国を代表する方々からの基調講演、学識経験者、有識者による世界の原子力政
策、
規制基準、
福島第一事故等に関する9つのパネル講演、
学生を含む若手技術者向けのワークショップなども予定されています。参加登録は4月24日
(金)
まで受付けていますので、
ご関心のある方はお申し込みください。
会議の詳細は、公式ホームページ
(http://www.icone23.org/)
を閲覧頂くか、ICONE23事務局
([email protected])
までお問合せください。