2015/1/9 知覚心理学:概要 • 日常生活のほとんどは, 「探索→選択→認知→行動」の繰り返し 知覚心理学 6.知覚と行動 ブレインサイエンスシリーズ17 「脳と運動」丹治 順著 共立出版 視知覚の役割 – 「探索」と「選択」に関係する注意機能 – 物体「認知」を支える記憶(知識)システム – 知覚と「行動」の関係? 1)自分の移動(ロコモーション)に関 する視覚からのフィードバック 1. 物体認知 – 対象物の認知 – 獲物や天敵のカテゴリー判断 2. 状況の把握 – 顔色をうかがう – レスポンデント条件付け 移動にともない網膜上のイメージは変化する 3. 外界に対する適切な行動の支援 – 障害物をよけて歩く – 道具を使う 光流動(Optical flow) ロコモーション – 我々は光を知覚しているのではなくて,包囲光配 列を通して,媒質と物質の境界面の情報を知覚 している 飛行時の光流動 着陸時の光流動 • ギブソン 「生態学的視覚論」 – 生きていくために,空間の中で行動するために, 我々は知覚している 放射光 包囲光配列 – 境界面の構造・配置から,アフォーダンスを知覚 • それをどう用いることができるか 1 2015/1/9 視覚誘導性運動に障害のある患者の症例 2)事前のプログラミングとオンラインの調整 • 狭い路地を通ろうとすると,自然に肩を回す – 肩幅の1.3倍より狭いと肩を回旋する 健常者 右半球損傷患者の左手の動き • 肩の回旋は,入り口の1m手前から始まる • 入り口の幅にしたがい,回旋角度が変わる • 歩行中に障害物を発見してまたぐ 健常者 左半球損傷患者の右手の動き アプローチ時に遮断しない またいでいる最中に遮断 Mohagheghi, Moraes, & Patla (2004) またいでいる最中に遮断しない アプローチ時に遮断 またいでいる最中に遮断しない • 前方の小さな障害物をまたいで歩く またいでいる最中に遮断 ① 高さの調節:Max Toe Elevation ② 踏み切り位置の調節:Horizontal Distance ③ これらの協調:Toe Clearance アプローチ中の視覚 情報の有無が影響 • Toe Clearanceのデータ またいでいる最中の視覚 情報の有無は影響しない 障害物の高さによら ず見事に一定, 後足の方が小さい • Max Toe Elevation アプローチ中,またいでい る最中の視覚情報の有無 が影響 2 2015/1/9 結果のまとめ 3)運動学習 • どの条件でも,決してつまづかない – 障害物の数歩手前までに十分な情報を得ている • アプローチ中の遮断により,踏切位置はより手前に,踏み 越える余裕は大きくなる – 先にまたぐ足の高さは,またぐ最中の視覚の影響を受ける – 後からまたぐ足の高さはアプローチ中の視覚の影響を受けない » 後行する足の高さは事前に決定している 1. 適応的運動学習 – 個々の運動を速やかに正確に行うことを学習 2. 連続的運動学習 – 複数の運動を組み立てて一連の滑らかな動作と して行うことを学習 – 障害物が高くなっても,いつも同じ余裕でまたぐ • (視覚入力がある場合)先行する足は22㎝,後行する足は 15㎝ • ⇒事前に動作を計画するが,アプローチ中や実行中の視覚 情報を基に微調整して,無駄なくなめらかに実行している 適応的運動の例 Grip force-load force coupling 4)適応的運動学習 ぎこちない運動 滑らかで素早い運動 柔軟な運動 • 繰り返しにより学習が進む – 機械的な繰り返しではなく,多様な動作で繰り返し行うこ とが重要 「繰り返しなき繰り返し」 • 協応構造:複数の構成要素が結合して,全体として 働くシステムの構造 – ヒトの体は,多数の要素からなる複雑な供応構造をもつ • 制御が難しい • 多様な運動が可能 • 様々な補償が可能である 腕の持ち上げに合わせてグリップ力を調節している Imamizu (2010), Review 適応的運動学習:回転マウス学習 実験参加者の課題: コンピュータマウスを操 作して、画面上を動く ターゲットにカーソルを 合わせ続ける。 ターゲットとカーソルの間の距離 セッション 3 2015/1/9 マウス操作に伴う計算 1. 目標軌道の計画: – 始点と終点を確認して,経路と速度を決定する – 作業座標は,空間(視覚)座標系 2. 座標変換: 小脳:運動制御や学習に関係する – 目標軌道を身体座標系に変換する – 関節の角度や筋肉の長さ 3. 制御: – 身体座標系の値に基づき運動指令を決定する セッションの進行に伴うトラッキング誤差の推移 新たな座標変換の学習 誤差学習のモデル 内部モデル(逆モデル) もともとの 座標変換 目標軌道 (空間座標系) マウスによらない 目標軌道と正しい運動指令の関数関係を学習 目標軌道 (身体座標系) マウスにより異なる 新たな座標 変換 (空間座標系) (身体座標系) (実際の軌道) 目標軌道と実際の軌道の誤差を計算 閉ループ制御(ぎこちない)⇒開ループ制御(なめらか) 内部モデル(逆モデル) 外界からのフィードバックの時間遅れ • ある動作を行うために,どのような操作をす ればよいかを表現する脳内のモデル – 空間座標系における目標軌道を身体座標系に変 換する変換関数 – 道具によって使い分けることができる 伝達時間 運動指令 脳 効果器 動作・作用時間 外界 感覚器 処理時間 4
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