第 健康診断を受けていない地域住民 超高齢社会 のヘルスケア 「 回 19 石井文由 」の現状と課題 図1 片頭痛スクリーナー 図2 薬局での骨密度測定の様子 の、病気の早期発見、受診勧奨に もつながる可能性も期待されている。 実際に早期発見受診勧奨が行わ れた例として、筑波大学の矢作直 セルフメディケーション推進協議会理事 明治薬科大学医療製剤学研究室・セルフメディケーション学研究室教授 薬局&ドラッグストアと病院&診療所との医療連携における 「セルフメディケーション」 あるいは 「受診」 のトリアージ 也准教授による 「糖尿病診断アクセ ス革命」 プロジェクトがある。 この報告書の中で、地域薬局に 図3 薬剤師による健康相談応需の様子 おいて自己血液検査 (HbA1c) を受 けた2514人 (糖尿病の治療は受け ていない)のうち、糖尿病が強く疑 薬局やドラッグストアに来局した患者に対し、 代であり、多忙の中、 「頭痛ぐらいで……」 と軽 われた (HbA1c6.5%以 上 )12%と 一般用医薬品 (OTC) によるセルフメディケーショ 視して、医療機関を受診せずセルフメディケーデ 予備群と疑われた (同6.0 ~ 6.4%) ンを支援する、あるいは医療機関への受診を促 ョンで対応しているケースが多い。 16%に受診勧奨を行ったと報告さ すかを正しく判断 (トリアージ) することは、非常 また、受診勧奨が必要な重症頭痛の中には、 れている2)。 に重要な課題である。 市販鎮痛剤の乱用により引き起こされる薬物乱 また、明治薬科大学とウエルシア 薬局やドラッグストアにおいて薬剤師あるいは 用頭痛も含まれ、適切なトリアージとセルフメディ 薬局が行っているプロジェクトでは、 登録販売者が適切なトリアージを行うためには、 ケーションにおける適正な服薬支援が、薬局と 薬局店頭での自己血液検査、骨密 豊富な知識と技能が必要とされる。 薬剤師に強く求められている。 度検査に加え、健康相談会も併設 今回は、適切なトリアージを行う一助となり得 各診療ガイドラインは、出版物としても入手で し、受診勧奨後の治療、生活改善 る二つのポイントとして 「診療ガイドライン」 と 「簡 きる他、インターネット上での公開も進んでおり、 の支援を実施しているので以下に紹 易検査設備」 について解説したい。 各学会のホームページ、財団法人日本医療機 介する。 能評価機構が運営するウェブページMinds、医 ウエルシア薬局店頭において、骨 1.診療ガイドラインの積極的活用 学中央雑誌ウェブページなどより入手可能であ 密度測定 (図2) を実施し、薬剤師よ 近年では、軽疾患を含む多くの疾患に対し診 る。 り必要な場合には受診勧奨を行い、 療ガイドラインが策定され、エビデンスに基づい また、これらの情報を医師の監修下、主訴別 予備群の方には健康相談応需 (図 た診断基準および標準的治療法が明示されてお にまとめた書籍 『プライマリ・ケアに活かす薬局ト 3)後、生活改善のための助言、パ り、これらの情報を活用できる。 リアージ』 (堀美智子編著 じほう刊) は第二次資 ンフレットの配布、継続支援の目的 その一例として、頭痛を訴える患者に対し、 料として非常に貴重である。 でカレンダーを提供した。 セルフメディケーションで対応可能な軽度な頭痛 図4 生活改善指導による骨密度の変化 参加者は、毎日達成度合をカレンダーに記入 齢化を迎える社会にとって、国民健康寿命を延 か、受診勧奨が必要な重度の頭痛かを判断す 2.簡易検査設備の設置 しながら生活改善を実施し、定期的(3カ月ごと) 伸できる医療従事者による連携は必須であると る際には、国際頭痛学会が作成した 「国際頭痛 2014年3月31日臨床検査技師法に基づく公示 に測定を受ける。その結果、3カ月後の骨密度 考える。 分類第2版」や日本頭痛学会が作成した 「慢性 改正の交付により、薬局における自己血液検査 は有意に改善した (図4) 。 頭痛の診療ガイドライン」 の診断基準を参考にす が可能であることが明確化された。このような自 このように簡易検査やガイドラインを活用し、 1) 内藤結花、 石井正和、 清水俊一、 木内祐二 「頭痛医療における薬剤 ることができる。 己血液検査や、血圧計や加速度脈波計、体組 薬局・ドラッグストアでの適切なトリアージを行う 大学薬学雑誌2(1)31-38(2011) また、頭痛医療推進委員会作成の 「片頭痛ス 成計、骨密度計など、薬局が簡易検査の設備 ことで、適時の受診勧奨により医療機関との連 クリーナー」 (図1) などを用いることができる1)。 を兼ね備えることにより、その測定結果は適切な 携による治療、あるいは疾患予防支援、セルフ 慢性頭痛患者の多くが20 ~ 40代の生産世 トリアージの一助となり得る。また、医者嫌いや、 メディケーション支援が可能となる。未知の超高 22 2015.1 3) 2015.1 師の役割-セルフメディケーションのサポートと医療連携の必要性」 昭和 2)「糖尿病早期発見のための地域医療連携プロジェクト 『糖尿病診断 アクセス革命』 2500例調査報告書」 (2013.7.16) 3) 円入智子 「骨の健康」 維持に対する薬剤師による生活指導の効果 第12回日本セルフメディケーション学会講演要旨集26-27 (2014) 「セルフメディケーション」 の現状と課題 23
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