日本マグネシウム協会会長新年年頭所感

年 頭 所 感
一般社団法人日本マグネシウム協会
会 長 加藤 数良
新年、あけましておめでとうございます。
平成26年の新春を迎え、謹んでお慶びを申しあげます。
昨年を顧みますと、安倍政権が新たな経済成長戦略として進めておりました
「アベノミクス」の政策が、消費税 10%への引き上げ時期先送りと共に、年末
に行われました衆議院総選挙にて与党の圧勝により信任されましたことから、
より一層の経済再生を目指し、積極的な金融緩和政策によるデフレからの脱却
が期待されるところとなりました。このため企業活動を活発化するための減税
の実現や、地方創生の実施に向けた本格的な長期ビジョンの策定が実現するも
のと思われます。
さて、我が国のマグネシウム産業ですが、円安効果などにより国内製造業に
明るさが戻りつつあることから、これまで生産の海外移転が続いておりました
自動車産業やノートパソコン・携帯電話などの携帯電子機器産業におきまして、
生産の国内回帰が少しずつ実現し始めており、国内における順調な需要の回復
となっています。このため、2014 年の国内マグネシウム需要は 3 年振りに回復
基調となり、総需要量は前年比 10% 超の増加となる約 4 万トンを実現するもの
と考えております。純マグネシウムの需要においては、アルミ合金添加や鉄鋼
脱硫、ノジュラー鋳鉄、粉末といった各部門が安定的に推移し、厳しい状況に
ありましたチタン還元市場も回復が見込まれることから、全体としては好調な
回復を示すものと見られています。ただ、以前から成長が期待されております
マグネシウム合金の需要については、まだまだ回復の基調が遅く、ダイカスト、
鋳物、射出成形、圧延、押出、その他合金の各部門が前年に比べ弱含みに推移
するものと見られています。厳しい状況が続く合金需要ですが、この中で圧延
については、引き続きノートパソコンの筐体やスマートフォーンなどへの採用
が進んでいます。更に、マグネシウムを電極板に用いた一次電池の開発が、昨
年末に大容量の非常用マグネシウム空気電池が市販されるまでとなりました。
この間、当会では国内における積極的なマグネシウムの需要開発を図るため、
輸送機器分野における各種部品のマグネ化を目指し、未来開拓研究プロジェク
ト「革新的新構造材料等研究開発」において調査事業を実施すると共に、「自
動車マグネシウム適用拡大検討委員会」、「マグネシウム合金高速車両構体実
用化技術委員会」などの活動を進めております。更に、昨年は予期せぬマグネ
シウム加工工場における火災事故が発生しましたことから、安全なマグネシウ
ム加工作業のための研究開発や、難燃マグネシウム合金の実用化調査、安全作
業を徹底するための講演会などを積極的に実施してまいりました。また、全国
各地域で実施されておりますマグネシウム事業化のための研究会などについ
て、微力ではありますがご支援ご協力をさせていただきました。
海外を見ますと、昨年のマグネシウムの生産量は、世界全体で約 100 万トン
になったものと見られます。依然として中国が中心ではありますが、マグネシ
ウム生産企業は拡大の傾向を示しており、中国青海省の塩湖を利用した電解法
によるマグネシウム製錬工場の他、イラン、オーストラリア、トルコなどで新
たなマグネシウム製錬が実現化する状況にあります。世界全体の需要量におき
ましては、80 万トンを超えるものと見られており、本年以降も順調に需要量が
増えていくことと予想されております。欧州では以前から自動車に対する厳し
い CO2 の排出量規制の設定が予定されておりますが、米国、中国でも地球温暖化
対策として新たな CO2 排出量削減目標が示されたことにより、その対策の一つと
して車体軽量化の動きが進むことが想定されることから、自動車へのマグネシ
ウムの適用が特に増加していくものと考えられております。昨年にはルノーサ
ムスン社が、自動車部品への適用例がほとんど無いマグネシウム合金板材によ
り、バックパネルやルーフを開発するというニュースが発表されるなど、自動
車部品への適用拡大の流れが着実に進行しております。高い技術力を有する我
が国が、このマグネシウムで軽量化という流れを牽引できるよう、先に述べま
した輸送機器分野における各種部品のマグネ化への活動を今後の用途開発促進
へと繋げなければならないと感じております。
安倍政権継続による国内経済状況向上への期待から始まりました新年です
が、国内マグネシウム産業の成長発展へも結びつけられるように努力したいと
考えております。
燃えにくいマグネシウム材料をはじめとする技術開発が進んでいることによ
り、輸送機器部品、電子機器部品といった従来からの需要分野を更に成長させ、
省エネルギー化、環境対策の向上への貢献度を高めていくことに加え、高齢化
社会へ向けた福祉機器の軽量化、電池材料としての活用など、その特性を幅広
い分野で活用できるよう、努めてまいります。
また、当会の会員はマグネシウム製品の製造に係る企業を中心に構成されて
おりますが、マグネシウム需要の主要分野であるアルミニウム産業をはじめ、
鉄鋼、チタン産業に係わる方々とも交流を深めていくことが重要と考え、マグ
ネシウムの安定供給に向けた意見交換等を行う「マグネシウム地金需要家交流
会」を 3 月に開催いたします。この会をきっかけとし、マグネシウムに関係す
る多くの分野の方々にとって当会が重要な存在となるような活動を展開してい
きたいと考えております。
更に、昨年から活動が活発化しており、当会との協力体制も強まってきてお
ります国際マグネシウム協会(IMA)と引き続き良い情報交換などを行いつつ、
我が国のマグネシウム産業のグローバル化の端緒にできればと考えておりま
す。
多くの可能性を持つ「マグネシウム」。実用金属材料の中で最も軽量である
ことは広く知られるところであり、資源も無尽蔵に近く豊富に存在し、人体に
も害を及ぼすことのない元素であります。このマグネシウムに係る我が国の産
業の成長、そして一般社団法人日本マグネシウム協会の充実に対し何卒倍旧の
ご支援をお願いいたしますと共に、会員並びに関係各位のご健勝とご発展を心
から祈念申しあげ年頭のご挨拶とさせていただきます。